Studio Albums: OPERA PUCCINO (1998) L'AMOUR EST MORT (2001) LE CACTUS DE SIBERIE (2004) LIPOPETTE BAR (2006) with The Jazzbastards L'ARME DE PAIX (2009) ROI SANS CARROSSE (2012)
Live Albums: BLACK TOUR DESPERADO (2005) MINUTES MAGIQUES (2010)
初期は割とUS志向だが、シャンソン、ジャズ、ジプシー音楽、ロックなどを取り込みながら徐々に音楽性の幅を広げ、フランスらしいミクスチャー感とリリシズムを湛えた独自のヒップホップ・サウンドを聴かせるようになった。音作りも、後年になるに従ってサンプリングから生演奏を主体にしたものに変わってきている。ターニング・ポイントとなったのは、“オキシモ・プッチーノ&ザ・ジャズバスターズ”名義でBlue Noteから発表された『LIPOPETTE BAR』(2006)。白人4人組バンドと共に、サンプリングと生演奏を組み合わせたジャズ・ヒップホップ(アルチュール・アッシュみたいな音)を展開し、大きく表現の幅を広げた。これに続くソロ名義の『L'ARME DE PAIX』(2009)では、スライ・ジョンソン、ケイナーン、オリヴィア・ルイズ(フランスの女性ポップ歌手)、ベン・ロンクル・ソウル(フランスのレトロ・ソウル歌手)といった多彩なゲスト陣を向かえながら、“シャンソン・ヒップホップ”と言うべき独自のスタイルを確立。それに磨きをかけた最新盤『ROI SANS CARROSSE』(2012)は、余裕のキャリア最高作となっている。
プッチーノは一体どんなことを歌っているのかと訊かれれば、“ん〜……わかんない!”と(ローラ風に)答えるしかない。音楽は国境を越えると言われるが、言葉の壁はやはり厚い(泣)。リリックが理解できない以上、ジャック・ブレルとの類似点も私にはきちんと説明することができないのだが、一応、分かりやすい接点を示しておくと、彼は『L'HIP-HOPEE: LA GRANDE EPOPEE DU HIP-HOP FRANCAIS』(2000)という仏ヒップホップ勢によるシャンソン・カヴァー集でブレルの代表曲「Ces gens-la」をカヴァーしている他、5th『L'ARME DE PAIX』では、「Sur la route d'Amsterdam」という「Amsterdam」の替え歌パロディをやっていたりする。また、近年はラップだけでなく、歌も少し歌うようになっていて(決して上手くはないが)、最新作ではヒップホップ版「Padam Padam」といった風情の「Pam Pa Nam」という名曲も生まれている。
昨日の記事“Stromae──ストロマエは男前”のおまけ。特大ヒット「Alors on danse」も良いが、私の一番のお気に入りは、アルバム『CHEESE』(2010)から2ndシングルに切られた「Te Quiero(テ・キエロ)」という曲。私のお粗末な自作リリックではなく、やはりストロマエ本人の作品をきちんと紹介しておきたい。これを聴けば、彼が“現代版ジャック・ブレル”と言われる理由がよく分かるだろう。
私は全くフランス語を解さないのだが、彼が何を歌っているのかどうしても知りたくて、結局、ネット上にある複数の英訳を参照しながら自力でこの歌を和訳してしまった。細部の正誤は保証しないが、彼は大体こんなことを歌っている。表題にもなっているサビの“Te quiero(テ・キエロ)”は、“I love you”もしくは“I want you”を意味するスペイン語。愛の囚人と化した無様な男を描いた歌は、「Ne Me Quitte Pas」(1959)や「Mathilde」(1964)といったジャック・ブレルの狂おしい恋歌を思わせる(“彼女の影になれたら”という一節は、実際に「Ne Me Quitte Pas」を意識しているかもしれない)。ブレルからの影響はストロマエ自身も公言している。こういう歌をアッパーなダンス・トラックに乗せてしまうというのがスゴい。
Black Eyed Peas + Stromae - Alors on Danse / Don't Stop The Party Broadcast: 6 June 2011 (France)
フランスのテレビ番組〈Taratata〉でストロマエがブラック・アイド・ピーズと共演した時の映像('11年6月6日放映)。スマートフォンを見ながら新曲「Don't Stop The Party」を歌うウィル・アイ・アム(笑)。“歌詞を覚えていないとは何事だ”、“ウィル・アイ・アムはツイッターをチェックしているだけだ”などと話題になった。彼は単にスマホの新しい使い方(ステージでカンペとして使える)を示したかったのではないだろうか?
Stromae '85年生まれ。ベルギー、ブリュッセル出身のラッパー/シンガー・ソングライター。本名 Paul Van Haver。芸名はマエストロの倒語。ラップ・デュオ、Suspicionでの活動を経て、'07年に4曲入りEP『Juste un cerveau, un flow, un fond et un mic...』でソロ・デビュー。ユーロダンスにシャンソン風情の仏語ラップを乗せた'09年9月発表のシングル「Alors on danse(そして人は踊る)」が、本国ベルギーをはじめ、フランス、ドイツ、オーストリア、イタリアなどヨーロッパ16ヶ国で1位となる爆発的ヒットを記録し、一躍トップ・スターの座に。'10年6月、1stアルバム『CHEESE』発表。その作風や歌唱スタイル、佇まいなどから“現代版ジャック・ブレル”とも言われている。'13年5月13日、3年ぶりの新曲「Papaoutai」を発表。