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追悼 GEORGE MICHAEL(午後)──ブルーのち自由



 ジョージ・マイケル追悼記事の後編。ワム!時代の名曲を訳した前編“晴れのちブルー”に続いて、今度はソロ時代の名曲を訳す。取り上げるのは、2nd『Listen Without Prejudice Vol. 1』(1990)の主要曲「Freedom 90」。

 言うまでもなく、ワム!時代のヒット「Freedom」のセルフ・リメイクではない。ポップ・スターから脱却し、何ものにも束縛されない自由なソウル道を邁進し始めた新生ジョージ・マイケルの渾身の所信表明。以後のジョージの姿勢が明快に示された、彼にとって終生のテーマ曲とも言える作品だ。

 ここでは歌詞の拙訳(偏見なしに読んでほしい)とあわせて、同曲の音楽ヴィデオではなく、'93年12月1日の世界エイズ・デーにロンドンで行われたHIV/エイズ撲滅のための慈善コンサート〈Concert Of Hope〉の映像をご覧いただきたい。主催のナショナル・エイズ・トラストの支援者でもあるダイアナ妃を客席に迎えたこのコンサートに、ジョージ・マイケルはミック・ハックネル、k.d.ラングと共に出演し、トリで圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。もちろん「Freedom 90」も歌われる。彼の素晴らしさ、偉大さは、このライヴ映像を観れば嫌というほど分かる。往年の彼をよく知らない淑女の皆さん、そして若き野郎どもも、どうか偏見なしに観てほしい。これぞ最高のジョージ・マイケルだ。

 心から冥福を祈る。ジョージ・マイケルよ、永遠なれ!

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追悼 GEORGE MICHAEL(午前)──晴れのちブルー



 ジェイムズ・ブラウン、マイケル・ジャクソン、そして、プリンス。この10年で3人ともいなくなってしまった……という記事を書いたクリスマスの翌日、ジョージ・マイケルの訃報が届いた。'16年12月25日永眠、享年53歳。

 '80年代、小学生の頃に洋楽の洗礼を受けた私にとって、ジョージ・マイケルは特別なスターの一人である。両親が音楽好きだったため、私の家では多くのアメリカのトップ40ヒットと一緒にいつもワム!の曲が流れていた。'80年代後半、家に初めてCDコンポがやって来たとき、親が最初に購入したCDもワム!のベスト盤『The Final』だった(じきに私が家で一番の音楽中毒になってしまい、そのCDはほとんど私の私物になった)。マイケル・ジャクソン、プリンス、スティーヴィー・ワンダーらと並んで、ジョージ・マイケルは、現在に至るまでの私の音楽の趣味のいわば“初期設定”をした人だ。

 イギリスのブルーアイド・ソウル歌手と言うと、ダスティ・スプリングフィールド、トム・ジョーンズ、スティーヴ・ウィンウッド、ロバート・パーマー、アニー・レノックス、ミック・ハックネル、近年だと、エイミー・ワインハウス、アデル(グラミーでのジョージ・マイケル追悼パフォーマンスは素晴らしかった)、サム・スミスといった名前が思い浮かぶ。改めて考えると、ジョージ・マイケルは歴代のブルーアイド・ソウル歌手の中でも類を見ない才能の持ち主である。歌手としてだけでなく、ソングライター、プロデューサー、ポップ・スターとしても圧倒的な輝きを放った。範囲をアメリカにまで広げても、白人で彼ほど黒人音楽を自分のものにし、普遍的な名曲を数多く生んだアーティストはいないのではないか。彼ほど黒人音楽に憧れた青年はいないのではないか。

 私にとってジョージ・マイケルは、プリンスとシャーデーの中間に位置するようなアーティストである。ワム!解散後のソロ初作『Faith』(1987)で芸術的にも商業的にもプリンスに比肩する成功を収めた後(最大瞬間風速は同時期のプリンスを余裕で超えていた)、2nd『Listen Without Prejudice Vol. 1』(1990)でポップ・スターから脱却し、より真摯に自分の芸術に取り組むようになった。時代やアメリカの黒人音楽とは距離を置き、白でも黒でもない独自の親密なソウル・ミュージックをストイックに追求する姿勢は、寡作化が進んでいった点も含め、シャーデーによく似ていると思う。滋味を増した6年後の3rd『Older』(1996)は、『Love Deluxe』やイーフレイム・ルイス『Skin(ジョージ・マイケル好きは必聴)と並ぶ孤高かつ至高の'90年代UKソウル作品として、私の心に深く刻まれている。私生活でのスキャンダルやカミングアウトもありつつ、21世紀には、円熟味とかつてのポップさが調和した傑作『Patience』(2004)を発表。ポップ・ミュージック界で不動の地位を築きながら、カヴァー集『Songs From The Last Century』(1999)やライヴ盤『Symphonica』(2014)では(決して守りではない)思い切ったジャズ〜スタンダード志向も見せた。自由とソウルを求めて勇敢に我が道を行く姿は、シャーデーを通り越して、ニーナ・シモンさえ思わせるものだった。

 後年のプリンスもそうだったが、ジョージ・マイケルには“エレガント”という言葉がよく似合う。“エレガント”とは──私の定義では──自分が何を好きかよく分かっていて、そのために何をすればいいかよく分かっている、ブレのない人のことを表す言葉である。ジョージ・マイケルはそういう人だった。これからいくらでも素晴らしい作品を作れたはずなのに……彼ほどのアーティストがなぜ53歳で逝かなければならないのか。作品を聴き返すほどに悔しさが込み上げてくる。

 自分にとって重大な意味を持つアーティストが亡くなると、私は心の整理のために追悼記事を書き、その人のキャリアの中で自分が最も好きな曲をひとつ選んで歌詞を和訳することにしている。他界から2ヶ月近く経った今頃になってジョージの追悼記事を書いているのは、その決定的な1曲がなかなか選べなかったためである。これは本当に難しい選択だった。悩みに悩んだ末、私はワム!時代とソロ時代から1曲ずつ選ぶことにした。

 まず、ワム!の「Blue (Armed With Love)」を訳す。シングル「Club Tropicana」(1983)のB面曲。元のスタジオ録音版は部分的にヴォーカルが入った“半インスト曲”とでも言うべき奇妙な出来だったが、'85年4月の中国公演で披露された完全な歌入りのライヴ版が、後にワム!の最終作『Music From The Edge Of Heaven』(1986)に収録された。その素晴らしいパフォーマンスの様子は、彼らの中国ツアーを追ったドキュメンタリー映像作品『Foreign Skies(異国の空)』(1986)で観ることができる(観客たちの表情も素晴らしい)

 この曲を選んだのは、当時のワム!のバンドに、後にシャーデーのツアーやレコーディングに参加することになるリロイ・オズボーン(バック・ヴォーカル)とトレヴァー・マレル(ドラム)が含まれているせいもあるが、最大の理由は、ジョージらしさが自然に滲み出たワム!時代屈指の名曲だと思うからである。ミラクルズ「More Love」をブルーにしたようなソウルフルでグルーヴィーなミディアム。陽気でイケイケなイメージが強いワム!だが、彼の書く曲には常に独特な翳りや湿り気があり、それが私は大好きだった。ジョージの空は、まるでイギリスの空のようにいつも曇っていた。“ブルー”というのは、彼の作品を形容するのにぴったりの言葉だと思う。

 ジョージよ、天国の空模様はどうだろう。こっちはすっかりブルーだ。

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Benjamin Clementine──ネメシス(因果応報)



 ベンジャミン・クレメンタイン『At Least For Now』(2015)からのシングル曲「Nemesis」。スクリーミン・ジェイ・ホーキンス風のマイナー調三拍子のピアノ伴奏に乗せて歌われるのは、怨念めいた失恋の苦しみ。恋人に向かって“ちくしょう、俺を捨てやがって、今にツケが回るぞ!”と告げる別れの歌なのだが、“ネメシス”(ギリシャ神話に登場する懲罰の女神)やら“起源(genesis)”やら“異教(heresy)”やら、いちいち語彙が変だし、表現も相当にひねくれている。なんと面倒くさい失恋男だろう。さすが詩人と言うか、イギリス人と言うか……。

 ニーナ・シモンのようにしか聞こえないヴードゥー感たっぷりの捨て台詞(“So long you run”)も強烈。“いい夢見させてもらったよ、あばよ!”の心をベンジャミン・クレメンタインが歌うとこうなる。「I Put A Spell On You」の呪いは続く!

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Gorillaz feat. Benjamin Clementine──トランプの黙示録



 壁つくりカネを拝もう崇めよう──
 
 ベンジャミン・クレメンタインが客演したゴリラズの新曲「Hallelujah Money(お金バンザイ)」は、'17年1月20日に発足したドナルド・トランプ米政権を痛烈に皮肉ったエレクトロニック・ゴスペル。“ゴスペル(福音)”と言うよりは、むしろ“黙示録”と呼んだ方がしっくりくる、不気味な終末感を湛えた曲だ。

 ドナルド・トランプが大統領に就任する前日の1月19日に公開された同曲ヴィデオは、CGで再現されたトランプ・ビルのエレベーターが舞台(上の画像が実際のトランプ・ビルのエレベーター・ホール。多くのサイトが“トランプ・タワー”と書いているが、正確には違う)。ゴリラズが傍受した防犯カメラの映像という設定(?)で、金ピカのエレベーターに乗ったひとりの男=ベンジャミン・クレメンタインの独白が、正面からの固定アングルで延々と捉えられる。語りの内容については、以下に訳出する歌詞をご覧いただきたい。エレベーター内で歌う男の背後には、20世紀の様々な映画──『動物農場』(1954)、『光る眼』(1960)、『バラカ』(1992)、西部劇俳優時代のクリント・イーストウッド(『ローハイド』? イーストウッドは共和党支持者で、消極的なトランプ支持者)等々──や、得体の知れないドキュメンタリー映像の断片が脈絡なく映し出され、ベンジャミンの不吉な語りと相まって、混沌とした終末ムードを強く醸し出す。

 今回のゴリラズとの共演により、これまでベンジャミン・クレメンタインを取り上げてこなかったメディアでも彼の名前が見られるようになった。ファン「We Are Young」への客演でジャネール・モネイが(無駄に)脚光を浴びたときのことを思い出すが、あまり必然性が感じられなかったあのコラボと「Hallelujah Money」は違う。これはベンジャミンの存在なしでは成り立たない曲だ。寓話的な歌詞や演劇的な語り口には、彼の持ち味がしっかりと活かされている。まるでオセアニア国(『1984年』)のプロパガンダ映像でも見るようだ。ジョージ・オーウェルの風刺精神を汲んだ、いかにもイギリス人らしい反トランプ・ソングである。

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| Man's Man's Man's World | 02:05 | TOP↑

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Giovanni James──みっともないぜ



「俺は魔法をかけるのが好きなんだ。ニーナ・シモン、レッド・ツェッペリン、ニルヴァーナ、マイケル・ジャクソン、プリンス──パワフルな人たちってのは魔法をかけるもんさ」(25 May 2016, Rolling Stone)

 そう語るのは、'16年3月末にWarner Bros.から6曲入りEP『Whutcha Want』でデビューしたニューヨーク出身のシンガー・ソングライター、ジョヴァンニ・ジェイムズ。'50年代ロックンロールとヒップホップを融合させたサウンドは、“21世紀版リトル・リチャード”、あるいは“黒人版ウィリー・ムーン”とでも形容したくなる破天荒さだ。

 EPからシングル・カットされた「Shame On You」が痛快だ。先日1月8日が誕生日だった某有名ロックンロール・スターの超有名曲から拝借したリフに、リトル・リチャードがラップしているような豪快なヴォーカルが乗る。“ジャッカルのように荒々しい”という売り文句もダテではない。オールドファッションな音楽性とは逆に、歌詞には現代的なメッセージが読み取れる。YouTubeで公開された同曲ヴィデオの解説欄で、ジョヴァンニはこう言っている。

「今の世界には恥を知るべき人たちがたくさんいる。この歌には俺の個人的な思いが込められてるけど、聴く人が自分の人生に当てはめて意味を取ってもらえればいい。それが芸術の美点だ。受け手の感じ方によって様々な解釈があっていいのさ!」

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| Man's Man's Man's World | 02:50 | TOP↑

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