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山口百恵 夜のヒットスタジオ DVD BOX 発売!!!!

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 フジテレビ開局50周年記念
 山口百恵 in 夜のヒットスタジオ DVD-BOX

 伝説的音楽番組 フジテレビ「夜のヒットスタジオ」が遂にDVDで蘇る!
 山口百恵の魅力を全て凝縮し「オープニングメドレー」含め120回以上の
 歌唱シーンを盛り込んだ完全版DVD BOXが遂に発売!!

 ・伝説的音楽番組 フジテレビ「夜のヒットスタジオ」初の映像作品!!
 ・1975年6月23日~1980年10月6日の放送分(全56回/全24曲)を収録
 ・音楽番組出演映像としては初収録となる楽曲9曲、
  「オープニングメドレー」含め120回以上の歌唱シーン収録
 ・山口百恵ファン必見!! トークや「歌謡ドラマ」など番組内秘蔵映像を収録!!
 ・最後の出演となった'80年10月6日「特集サヨナラ山口百恵」収録!


  2010年6月30日発売 ¥19,950(税込)[¥19,000(税抜)]
  販売元:エイベックス・マーケティング



 というわけで、またしてもとんでもないものが発売される。
 '09年12月に発売されて大反響を巻き起こした5枚組DVDボックス『ザ・ベストテン 山口百恵』に続き、今度は山口百恵の〈夜のヒットスタジオ〉出演映像(現存分)を完全網羅した6枚組DVDボックスの登場である。これは間違いなく百恵引退30周年企画の真打ちである。山口百恵の最強の歌唱映像群がここで蘇る。百恵ファンになって以来、私はずっとこの時が来るのを夢見ていた。普段は決して泣かない私も、こんなニュースを聞いた日には、番組最終出演回の百恵のごとく、紙吹雪の中、ただ涙して俯くしかない。


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笑いが止まらないほど素晴らしい黄金時代の〈夜ヒット〉('77年8月8日放送)

 〈夜のヒットスタジオ〉は'68年11月4日から'90年10月3日まで、フジテレビにて毎週月曜夜10時に生放送されていた1時間の歌番組('80年代後半は水曜夜9時から2時間枠)。司会は、前田武彦&芳村真理('68~73年)に始まり、以後、三波伸介('74~76年)、井上順('76~85年)、古舘伊知郎('85年~)の順に男性パートナーが交代して芳村とコンビを組んでいった。中でも、井上順&芳村真理が司会を務めていた'70年代後半は、沢田研二、山口百恵、ピンクレディーらが活躍する歌謡曲黄金期に当たり、その名司会ぶりとあわせて、まさしく番組の黄金時代と呼ぶに相応しい。

 百恵の〈夜ヒット〉初出演は'73年7月30日(当時14歳)、曲はデビュー・シングル「としごろ」だった。この初出演から最後の'80年10月6日まで、百恵はこの番組に計83回(*1)出演している。残念ながら、フジテレビに保存されている番組映像は主に'75年以降の放送分で、それ以前の回は数本が残るのみと言われている。今回のDVDボックスには、現存する中で最古の百恵出演回となる'75年6月23日(「夏ひらく青春」)から、'80年10月6日の百恵引退特番「特集サヨナラ山口百恵」まで、計56回分の出演映像が収録される。

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「夏ひらく青春」──現存する最古の百恵〈夜ヒット〉出演回('75年6月23日放送)
それ以前の回は、すべて風船のように空の彼方へ飛んでいってしまいました


 収録曲は以下の全24曲。

◆夏ひらく青春 ◆ささやかな欲望 ◆白い約束 ◆愛に走って
◆横須賀ストーリー ◆パールカラーにゆれて ◆初恋草紙 ◆夢先案内人
◆イミテイション・ゴールド ◆秋桜 ◆乙女座宮
◆プレイバック Part 2 ◆絶体絶命 ◆いい日旅立ち ◆美・サイレント
◆愛の嵐 ◆しなやかに歌って ◆愛染橋 ◆謝肉祭
◆ロックンロール・ウィドウ ◆不死鳥伝説 ◆一恵
◆This is my trial ◆さよならの向う側

 百恵はおよそ3ヶ月に1枚のペースでシングルを発表し、月1回の頻度で番組に出演していたので、各曲に対して大体3回分ほどのパフォーマンスがある(最後の4曲に関しては1回しか歌われていないが)。歌唱や演奏のニュアンスは毎回異なり、後年になるに従って、セットや演出にも様々な趣向が凝らされるようになってくる。〈ザ・ベストテン〉同様、どの回にも違った見応え、聴き応えがある。

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 では、〈ザ・ベストテン〉と、今回の〈夜のヒットスタジオ〉はどのように違うか。
 '78年1月から始まったTBSのライバル番組〈ザ・ベストテン〉は、ランキング方式で常に流行歌手を出演させる、いかにもキャッチーで庶民的な番組作りが特徴だった。一方、〈夜ヒット〉は、売上げや人気に関係なく、常に様々なジャンルの歌手を迎え、間口の広さと高度な演出で、より純粋に音楽番組としての質を追求していた。放送時間帯も、〈ザ・ベストテン〉の夜9時に対して夜10時と遅く、やや大人向けとも言える落ち着いた雰囲気を特徴とする。

 〈ザ・ベストテン〉と言って恐らく多くの人が思い出すのが、ランキング、追っかけ中継、大掛かりで往々にして意味不明なセットといった、歌そのものとは直接関係ないバラエティ的要素であるのに対し、〈夜ヒット〉で印象的なのは、とにかく各出演者たちが見せる歌唱パフォーマンスそのものの迫力である。また、〈ザ・ベストテン〉を含め、2コーラス目以降を切り詰めた短縮版で歌が披露されるのが慣例だった当時の歌番組の中で、〈夜ヒット〉が原則的にフル・コーラスで歌手に歌わせる方針を採っていたことも特筆される。歌がメディアとして現在とは比較にならないほど力を持っていた時代の、まさに王道にして最高の歌番組が〈夜のヒットスタジオ〉なのである。当時の歌謡曲黄金期の歌手たちが放っていたオーラを、この番組ほど生々しく伝えるものはない。

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 『ザ・ベストテン 山口百恵』に関する記事の時にも書いたが、〈夜ヒット〉の番組オーケストラである“ダン池田とニューブリード”は、〈ザ・ベストテン〉の“宮間利之とニューハード”に較べると明らかに聴き劣りがする。サウンド面で〈ザ・ベストテン〉に一歩譲る〈夜ヒット〉だが、その代わり、この番組はとにかく映像が圧倒的に素晴らしかった。特筆すべきは、カメラと照明である。

 〈夜ヒット〉は〈ザ・ベストテン〉と違い、トークとパフォーマンスが全てスタジオ内の同一空間で進行する。パフォーマンス中も、画面後方に他の出演者たちが待機する雛壇が普通に映り込んだりしている。つまり、ひとつの巨大空間しかないため、基本的に別スペースで大掛かりなセットを準備したりすることができない。普通なら変化のない退屈な映像になってしまいそうなものだが、〈夜ヒット〉のスタッフは、これをほとんどカメラと照明のセンスだけで、変幻自在のスペクタクル空間にしてしまうのである。

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「プレイバック Part 2」('78年6月12日放送)

 例えば、'78年6月12日の「プレイバック Part 2」。特別なセットや演出もなく、普通のスタジオ空間で単純に百恵が歌っている様子を見せる映像なので、カメラと照明の鋭さがよく分かる。

 〈夜ヒット〉のスタッフは、基本的に歌詞や曲調を踏まえた画作りをする。「プレイバック Part 2」は、真紅なポルシェで女が疾走する歌である。ここでは3台のカメラが前後、左右、上下に激しく動きながら百恵を捉え、ポルシェのスピード感を見事に表現している。百恵は一箇所に立って歌っているだけにもかかわらず、まるで激走するポルシェを追いかけるような映像になっているのである。“緑の中を走り抜けてく~”という歌詞に合わせ、照明は森をイメージしている。この緑の照明にしても、ベタな緑ではなく、きちんと抽象的に森を感じさせるような複雑な陰影の光になっていて、実に美しい。
 2コーラス目(他の歌番組では割愛される)の冒頭で、ポルシェを駆る主人公は、森の中から“はるかな波がキラキラ光る海岸通り”へ突き抜ける。スタジオ内は、それまでの深い緑から一変して、眩しい白光で満たされる。3台のカメラはアクロバティックな動きで疾走する百恵を追い続ける。主人公が自問する箇所(“これは昨夜の~”)で、ズームアウトしながら百恵に近づくカメラ(*2)が素晴らしい。動揺する主人公の心理状態がまるで視覚化されているようだ。サビの“Play Back, Play Back”の連呼にズームでアクセントを付けたり、ここぞという場所で百恵の表情をアップで捉えるところなども実に的確である。

 スタジオで3台のカメラは一体どのような動きをしているのか。百恵を捉えながら脇へ捌けたかと思うと、すぐに次のカメラがそれをフォローする動きで百恵を捉えたりしている(黒い三連星のジェットストリームアタックを思わせる、恐ろしく複雑なフォーメーション)。ここまで大胆に動いて、よく他のカメラが画面内に映り込んだり、カメラ同士でぶつかったりしないものだと思う。この映像を観るだけでも、カメラの動きやスイッチングのタイミングが、曲の進行に添って完璧に計算されていることが分かる。この番組のカメラ台本の緻密さは、本当に異常である。しかも、歌手ごとにカメラ台本が異なり、更には、それらの複雑で高度な画作りをすべて生放送でやっているのだから恐ろしい。〈夜ヒット〉に較べたら、〈ザ・ベストテン〉のカメラなど全く寝ているとしか思えない。

 この映像を観る視聴者の多くは、例えば、〈ザ・ベストテン〉を観ながら大掛かりなセットに注目するようには、カメラや照明の効果を意識することはないように思う。印象に残るのは、飽くまで山口百恵の姿であり、その歌の迫力である。〈夜ヒット〉の演出は、このように、音楽そのものをさり気なく的確に引き立てる非常に洗練されたものだった。他にも、カメラが歌手に寄っている間に背景にセットが用意されていたり、合成映像で自然風景を映し出したり、限られた空間を使って逆に視聴者を驚かせるような名演出がたくさん行われている(特別な演出がない時も、歌手が間奏で立ち位置を移動して、背景に変化をつけるというような細かい工夫もされていた)。ちょっとした音楽ヴィデオ並みのパフォーマンス映像を、生放送で毎週量産していたというのは、本当に驚くべきことである。映像的にここまでレベルの高い音楽番組は、世界的にもちょっと他に思い当たらない。

 現在のテレビ番組を観ていて、〈夜ヒット〉から感じるような作り手の熱意、あるいは殺気のようなものを、私はあまり感じ取ることはできない。この番組のスタッフたちは、毎週どのようにして、どんな思いで、これらの映像を作り出していたのだろうか。今回のDVDボックス発売に際して、当時の番組関係者の回想、番組制作秘話などが、何らかの形で纏められることを期待せずにはいられない。

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オープニング・メドレー(下段は百恵がトリを務めて持ち歌を歌った回)

 〈夜ヒット〉には、メインの歌唱パフォーマンスの他に、“オープニング・メドレー(紹介メドレー)”という名物コーナーがあった。番組冒頭で、その日の出演歌手たちが、次に登場する歌手の持ち歌を、紹介を兼ねてリレー式に歌い継ぐというものである。演歌歌手がポップスを歌ったり、ロック歌手が演歌を歌うような場合も多く、そのミスマッチぶりがとても面白い。専門外の歌を歌うことで、その歌手の個性や歌唱力が如実に顕れるため、何気にプロとしての力量が問われるコーナーでもあった。トリは必ず大物歌手が務め、自分の持ち歌でメドレーを締める(百恵も後年になるにしたがってトリを務めることが多くなった)。トリの歌手が歌っている際、他の出演者たちが後ろで変な振付のダンスをするのも慣例だった。他の出演者のトーク中に後ろでシラケているような現在の日本の若い“アーティスト”たちには、見栄もプライドも関係なく、皆で和気藹々と踊る当時の歌手たちの品位と芸人精神を是非とも見習ってもらいたい。ああいうことが真面目にできてこそ、立派な大人というものである。

 また、〈夜ヒット〉には、'76年春まで“歌謡ドラマ”という名物コーナーもあった。その回で歌われる曲をモチーフに、出演者たちがコント調の寸劇を繰り広げ、それがそのまま曲の導入になるという趣向だった(はっきり言って、あまり面白くない)。現存する百恵出演回の中にもこれがいくつかあり、“オープニング・メドレー”と共に今回のDVDに収録される。これに加えて、特典ディスクには、〈夜ヒット〉以外の百恵のフジテレビ出演映像(「スター千一夜」他)が収録されるという。全く至れり尽くせりである。総収録時間、約7時間。

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百恵〈夜ヒット〉での最後の瞬間('80年10月6日放送「特集サヨナラ山口百恵」)
最終カットの百恵は静止画だとゲロッているようにも見えるが、出演者に向かってお辞儀をしている


 今後、百恵のテレビ映像集で『山口百恵 in 夜のヒットスタジオ』を超えるものは出ない。〈夜ヒット〉を超える歌番組は存在しないからだ。定価は19,950円だが、私はゼロがひとつ多くても買ってしまうかもしれない(それがなんと、今なら某有名ネット通販サイトで14,763円で予約注文できてしまう! 『ザ・ベストテン 山口百恵』よりぐっとお買い得。本当にこんな安くていいのか?!)。

 他に書きたいことはいくらでもあるが、喜び疲れてしまった。
 百恵ファンはもちろん、山口百恵になんとなく興味を持っているそこのあなたは、このDVDボックスを思い切って購入するべきである。CDよりも、むしろこちらを先に買うべきだ。これは本当にハルマゲドン級のブツである。これ以上望めない究極の商品が実現してしまい、私はちょっと寂しさすら覚えている(次は『沢田研二 in 夜のヒットスタジオ』でお願いします)。〈夜ヒット〉万歳!!


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*1 83回という百恵の〈夜ヒット〉総出演回数はウィキペディアに拠る。

*2 ヒッチコック『めまい』で有名な撮影技術。ズームインしながら離れる逆パターンもある。被写体サイズはそのままで背景の距離感だけ変わるため、不安を煽るような不思議な効果が生まれる。マイケル「Thriller」のヴィデオでも効果的に使われている(群舞直前のオーラ・レイのショット)。



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