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Janelle Monae──はじめまして、ジャネル・モネイです

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 ジャネル・モネイが面白い。
 
 モノトーンのタキシードに身を包み、でっかいポンパドール頭、小っちゃい身体で、ジェイムズ・ブラウンのように歌って踊る女の子。バリバリのソウル・シスターかと思いきや、アルバムではコンセプチュアルなフューチャー・ポップ路線を打ち出していて、やけにアート志向が強かったりする。アルバム・コンセプトと連動したヴィデオ作品も、ファンキーかつ非常にインテレクチュアルで、実に不思議な魅力を持っている。女JB? 黒いレディー・ガガ? 彼女は一体何者なのか。

 '10年5月18日、ジャネル・モネイは'07年のEPに続くフル・アルバム『THE ARCHANDROID(直訳:大アンドロイド)』を発表し、本格的なデビューを果たした。2719年のメトロポリスからやって来たというジャネル嬢。何やら奇天烈でキワモノっぽい雰囲気も漂うが、パッチリお目々の丸っこい顔立ちは、よく見るとやけに可愛かったりもする(これ重要)。とにかく彼女の一挙一動から目が離せない。いま、私は完全に“ジャネル萌えー!”なのである。


SOUL SISTER NO.1 FROM THE FUTURE
未来からやって来たソウル・シスター No.1


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 本名、ジャネル・モネイ・ロビンソン Janelle Monae Robinson。'85年12月1日生まれ。『オズの魔法使』のドロシーの故郷、カンザス州カンザス・シティに生まれ育ったジャネルは、高校卒業後、ブロードウェイのミュージカル女優になることを考えてニューヨークの演劇専門学校に通う。彼女が最初に志したのが歌手ではなく、ミュージカル女優だったというのは、その作品の演劇性を考えると実に納得のいく話である。

「とても変わった子供だったわね。教会でも食料品店でも、どこでもいきなり歌い出したりして。で、ある時、ミュージカルをやれるんじゃないかと思った。この情熱は演技に活かせるぞ、と。それでニューヨークのThe American Musical and Dramatic Academyに通ったんだけど、他人を演じるのが嫌で辞めちゃった。私は自分の作品を作りたかったの」(17 May 2010, pitchfork.com)

 その後、アトランタへ移り、ジョージア・ペリメーター大学で科学を学ぶ傍ら、地元で音楽活動を始める。やがてアウトキャストのビッグ・ボーイの目に留まり、彼のレーベル、Purple Ribbonのコンピレーション『GOT PURP? VOL.2』(2005)に2曲が取り上げられる。翌年、アウトキャストの映画『アイドルワイルド(Idlewild)』(2006)のサントラ盤にも2曲(「Call The Law」「In Your Dreams」)でフィーチャーされ、その名が徐々に知られるようになった。

 '07年8月、ジャネルは仲間たちと立ち上げたインディ・レーベル、ワンダランド・アーツ・ソサエティ The Wondaland Arts Society から5曲入りEP『METROPOLIS SUITE I OF IV: THE CHASE』をオンライン発売。これは、2719年のメトロポリスを舞台に、人間に恋をしたアンドロイドの少女の逃避行を描いたミュージカル風の音楽作品──フリッツ・ラングの古典『メトロポリス(Metropolis)』(1927)に触発されている──で、表題通り、全4楽章から成る“メトロポリス組曲”の第1楽章として発表された。このミニ・アルバムのリリース・パーティに来ていたディディ(ショーン・コムズ)から作品配給の援助を申し出られ、後に彼のレーベル、Bad Boyと契約。同作は'08年8月、『METROPOLIS: THE CHASE (Special Edition)』と改められ、2曲のボーナス・トラックを追加してBad Boyからメジャー・リリースされた。この野心的な作品はメディアからも好意的に評価され、そこからのシングル「Many Moons」は、'09年の第51回グラミー賞で、最優秀アーバン/オルタナティヴ・パフォーマンス部門でノミネートも受けた。

 そして、'10年5月、ディディ&ビッグ・ボーイの超強力バックアップを受け、満を持して、“メトロポリス組曲”の第2~3楽章となる初のフル・アルバム『THE ARCHANDROID』の発表に至る。

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ジャネル・モネイの作品──『METROPOLIS』『THE ARCHANDROID』(上段)
シングル「Many Moons」「Tightrope」「Cold War」(下段)


 ジャネルのアルバムには、R&B、ポップ、ロックから、映画音楽風のスコアまで、様々なタイプの曲が詰まっている。音楽性の雑多さは、ひとまずプリンスやアウトキャスト作品に近いと言える。
 ジャンルの折衷やクロスオーヴァーは現在では何ら珍しいことではなくなったが、彼女の場合、それによって独自のサウンドを追求すると言うよりは、むしろ、様々な音楽性を叙述のための道具として使い分けている感覚が強い。明確な“ジャネル・サウンド”というものはなく、音楽性や歌唱スタイルは、曲によって別人の作品かと思うくらい激しく変化する。サウンドは変幻自在の舞台装置であり、そこに登場するジャネルは、歌手というよりは、むしろ女優、あるいは、我々を別世界へと誘う狂言回しに近い。次から次へと場面が転換し、ひとつの壮大な物語が浮かび上がっていく彼女のアルバムは、まるで耳で聴く映画のようだ。アルバムの世界観を映像化したヴィデオ作品にしても、凝りに凝ったアーティスティックなもので、まさに“ショート・フィルム”といった趣を呈している(上のジャケ画像にヴィデオへのリンクが張ってあるので、未見の方は是非。「Tightrope」は必見)。ここまで徹底的にコンセプチュアルな物語形式の作品は、黒人アーティストとしては非常に珍しい。

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プロデューサーのチャック・ライトニングとネイト・“ロケット”・ワンダー。2人はディープ・コットンというロック・ユニットも組んでいる(パンク+ヒップホップで“パンク・ホップ”だそうだ)

 曲作りとプロデュースは、ジャネル自身と、彼女が所属するアーティスト集団(兼レーベル)、ワンダランド・アーツ・ソサエティのメンバーである、ネイト・“ロケット”・ワンダー Nate "Rocket" Wonder、チャック・ライトニング Chuck Lightning の3人が中心になって行っている。ビッグ・ボーイとディディはエグゼクティヴ・プロデューサーとして名を連ねるのみで、制作には基本的にタッチしていない(ビッグ・ボーイがシングル曲「Tightrope」にラップで参加している程度)。リリース名義こそジャネル・モネイの個人名だが、実質的に彼女の作品は、ワンダランド・アーツ・ソサエティという集団による、ジャネルを主役にした音と映像の一大プロジェクトと考えた方がいいかもしれない。この壮大な“メトロポリス組曲”は、ジャネルによって“E-Motion Picture”(“emotion=感情”と“motion picture=映画”の合成語)と説明されている。

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ライヴで燃えるジャネル・モネイ

 そのような極めてインテレクチャルな創作を行う一方、ジャネルがライヴ・パフォーマーとしても優れた才能を持っている点が特筆される。コンセプトやヴィジュアル先行のアーティストはライヴに弱いことが少なくないが、彼女はコンサート活動にも力を注いでいて、ステージではJB直系の非常にストレートで熱いパフォーマンスを見せたりする(その魅力はショート・フィルムにも反映されている)。凝った映像作品やコンセプトでガチガチに固めなくても、彼女は、それこそJBやマイケルのように、身体ひとつで観客を魅了する力をきちんと持っているのである。インテレクチャルではあるが、決して頭でっかちではない(頭髪はデカいが)。アンドロイドなのに、ソウルがある。そして、文学少女っぽいくせに、やたら可愛い(これ大事)。彼女のこの不思議なバランス感覚に、私はとても惹かれるのである。

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元気ハツラツ! エリカ・バドゥと仲良くツアー中のジャネル


 さて、以上は単なるイントロの基礎知識である。
 ここからが本題なのだが、長くなるのでエントリーを分けることにした。
 
 次回、第2章では、ジャネルのユニフォームである“タキシード”に注目する。



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