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憎みきれない女たらし Part 2

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 '84年2月イギリス発売のデビュー・シングル「Your Love Is King」のB面曲「Love Affair With Life」。アルバム収録されず、いまだCD化もされていないシャーデーのレア・トラックのひとつ。'84年ツアーの際にはアンコールで演奏され、これでステージを締めくくっていた。

 ピアノとサックスのみをバックにしたジャジーなスロー・バラードで、プレイボーイに翻弄される女の心情が切々と歌い上げられる。“裏「Smooth Operator」”とでも呼びたいシャーデー初期の隠れた佳作である。


 Love Affair With Life
 (Adu)
 
 You play a love affair with life
 You stay and dance with every night
 This moments from dawn to dusk you chase
 But I'm lost now
 Where do I stand in the race
 
 あなたの人生はお遊び
 毎晩 踊って過ごしてばかり
 暁から黄昏へ あなたの心が移ろうとき
 途方に暮れる私がいる
 自分はあなたの何なのかと
 
 You play to empty eyes in crowded bars
 I can't believe we've come this far yet got nowhere
 What is there left for me in this
 Everytime you play
 Is your first kiss
 
 賑わうバーで あなたの演奏が空しく響く
 いつまで経っても中途半端な私たち
 いったい私をどうしてくれるの
 あなたはいつ誰とでも
 ファースト・キスを味わう
 
 I'm not a pastime
 I'm not your pastime
 Don't play around with me
 You can't play me
 I'm not a melody
 Don't play around with me
 
 私は玩具じゃない
 あなたの玩具じゃない
 私を玩ぶのはやめて
 勝手にしないで
 私は音符じゃないのだから
 私を玩ぶのはやめて
 
 I'm not a pastime
 I'm not your pastime
 Don't play around with me
 You can't play me
 I'm not a melody
 I'm not a melody
 I'm not a melody
 
 私は玩具じゃない
 あなたの玩具じゃない
 私を玩ぶのはやめて
 勝手にしないで
 私は音符じゃないのだから
 私は音符じゃないのだから
 私は音符じゃないのだから
  
 
 表題にもなっている出だしのフレーズは、直訳すると“あなたは人生と情事に耽る”。この曲の歌詞はちょっと表現が捻られていて、「人生」や「時」を遊び相手の女のように擬人化しながら、刹那的に生きる浮気性の男の性格を描いている。この捻りは“play”という単語の使い方に最もよく顕れていて、これを“演奏する”と“玩ぶ”の2つの意味で掛けているところが、つまり、この詞のフックということになる。この手の英語詞は普通に和訳しようとすると必ず日本語として破綻するので厄介だ(上の拙訳もあまり上手くできたとは思わない)。

 男はバーで演奏するミュージシャンで、曲のアレンジからしてサックス奏者であることが想像される。女たらしのサックス吹きというのはかなり類型的なイメージだ。男は音符(メロディ)を操るように、女を自分の気分で弄ぶ。決してひとりの相手と関係を継続することなく、常にリセットを繰り返し、女の尻を追うように、その時その時の興奮だけを求めて人生を生きているような人間である。それを“play”のダブル・ミーニングで落としているところが、実にクサい。初期のシャーデーの詞は、こういうちょっとした捻りや言葉遊びで洒落てみせるものが多く、この曲などはその典型と言える。

 クレジットを参照すると、作/アデュ、編曲/レイ・セントジョンとなっている。歌詞は完全にアデュに違いないだろうが、楽器を演奏しない彼女が単独で作曲までしたとは考えにくいので、実際にはセントジョンが音楽的な鍵をほとんど握っていると思われる。レイ・セントジョンは、シャーデーの母体バンド、プライドのギタリストで、「Smooth Operator」の作詞作曲者。「Smooth Operator」がスケこましを客観的に描写する歌詞だったのに対し、この曲では遊ばれた女の感情が主観的に表現されているのがポイントだ。「Smooth Operator」と「Love Affair With Life」を較べると、同じように女たらしを主題にした歌詞でも、両者でアプローチが全く異るのが面白い(シャーデーらしいのはこちら)。

 シングル盤には“ライヴ録音”と記されているが、録音された会場・日付の記載は一切ない。歓声の類は全く聞こえず、実際にはスタジオ録音とほとんど変わらないサウンド。ただ、アデュの歌唱の危なっかしさに、いかにも一発録り的な雰囲気が感じられはする。得意の中低域ではなく、ファルセットを多用しながら終始ハイピッチで歌っているのが珍しい。彼女の個性にはややミスマッチとも言える歌メロで、実際、かなり無理気味に歌っているところに、いかにも初期の習作らしさが感じられたりもする。


 「Love Affair With Life」はシャーデーのレパートリーの中でも最初期のもののひとつで、レコード・デビュー以前からステージで演奏されていた。'82年12月(日付不明)と'83年2月27日、ロンドンの老舗ジャズ・クラブ、ロニー・スコッツに彼らが出演した際に既に披露されているのだが、そこでは全くアレンジの異なるフルバンドでの演奏だった。スチュアート・マシューマンがサックスではなくギターをプレイし、ミドル~アップ・テンポのシャッフル・ビートで、まるでザ・スミスのようなギター・ポップ調のサウンドだったのである(アンドリュー・ヘイル加入前のためキーボードはいない)。レコード・デビュー前のクラブ時代の彼らは、いかにもロンドン版フェイク・ジャズといった趣のサウンドが特徴だったが、曲によってはニュー・ウェイヴ・バンドかと思うようなアグレッシヴな演奏も聴かせていた。シングルB面に収録されたジャズ・バラード調の再アレンジ版と比較すると、彼らの試行錯誤と洗練の過程がよく分かる。

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