2017 081234567891011121314151617181920212223242526272829302017 10

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

Daniel Cloud Campos──ヒップホップ時代のジーン・ケリー?



 シャーデーの'11年ツアーで披露されている新曲「Love Is Found」('11年7月にはライヴ映像を基にした音楽ヴィデオも公開された)。この曲のパフォーマンスで使われているスクリーン映像にアデュと共に登場し、ジャズ・ヒップホップ調の素晴らしいダンスを披露している青年が、このダニエル・クラウド・カンポスである。

 マドンナのバック・ダンサーとして名を上げた人物だが、彼は本業のダンサーの他にも、映像作品の制作(監督・脚本・編集)を手掛けたり、時に音楽制作や俳優もこなすマルチな才能の持ち主である。そして、マイケル・ジャクソン同様、往年のミュージカル映画の愛好家でもある。フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ドナルド・オコナーらのダンスを、ヒップホップのダイナミズムと現代的なユーモア感覚で蘇らせるかのような彼の表現には、いかにもマイケル・ジャクソンから衣鉢を継いだような趣があって面白い。アッシャー、ニーヨ、クリス・ブラウンといった一般的にマイケルの後継者と目されているスターたちより、ある意味、私はこのクラウドの方によほどマイケル的なものを感じてしまう。単なる“一流ダンサー”では片付けられない、要注目の曲者だ。


フロアを空に変える変幻自在の雲男

Cloud2.jpg

 ダニエル・クラウド・カンポスは、'83年5月6日生まれの現在28歳。生まれはアメリカのジョージア州アデル、育ちはカリフォルニア州サンディエゴ。白人とフィリピン人の血が混ざっているため、顔立ちは微妙に東洋人っぽい。生粋のBボーイで、10~11歳の頃から2人の兄の影響でBボーイング(=ブレイキング。いわゆるブレイクダンス)を始めたという。フロリダのBボーイング・クルー、スキル・メソッズ Skill Methodz のメンバーでもある。一対一による同ダンスの勝ち抜き世界選手権大会“Red Bull BC One”で準優勝('09年、ニューヨーク)に輝いたこともある実力の持ち主だ。

 超人的な運動神経で、まるで重力が存在しないかのように縦横無尽に空間を動き回るクラウド。彼の踊りは非常にシャープで流麗。力強いが、同時に飄々とした独特の軽みがある。その動きはカンフー・ファイターも思わせる。まるで踊りながら戦っているようだ。彼は自分のダンス・スタイルについてこう語る。

「自分の踊りは見ないから、何と説明していいか分からないな。感じるままに踊ってるだけだから、自分のスタイルを説明することなんてできないよ。“ニンジャ”とか“Bボーイ・ブルース・リー”とか言われたりもするけど、どうなんだろう。“クラウド(雲)”という僕の名前がすべてを語っているんじゃないかな。雲というのは刻一刻と形を変えながら動くだろ。それは空に描かれるアートだ。フロアは空であり、僕はそこにアートを創り出す“クラウド(雲)”というわけさ。そこには雷や雨といったまた違った力強い動きもある。僕に説明できるのはそんなところさ!」(23 January 2011, Koreanroc.com)

Cloud15.jpg
マドンナの'06年〈Confessions〉ツアーに参加したクラウド

 '04年、クラウドはマドンナの〈Re-Invention〉ツアーにバック・ダンサーとして起用された。'06年の〈Confessions〉ツアーにも引き続き参加。DVD化もされた'06年ツアーでは、「Live To Tell」への導入となるインタールード「Confessions」で彼のアクロバティックなダンスが大きくフィーチャーされている。彼の姿は〈Re-Invention〉ツアーのドキュメンタリー映画『I'm Going To Tell You A Secret』、音楽ヴィデオ「Hung Up」「Sorry」でも見ることができる(「Hung Up」では料理店の場面で大活躍)。マドンナとの仕事によってクラウドのキャリアは大きく切り開かれることになった。以後、彼はリアーナ「SOS」(2006/ナイキ版)、MVP「Bounce, Shake, Move, Stop」(2006)、パウリナ・ルビオ「Nada Puede Cambiarme」(2007/スラッシュ出演)、オースティン・ブラウン『85』(2011)のヴィデオ、また、ギャップiPod nanoのCF(共に'09年)にも出演を果たしている。

Cloud4.jpgCloud5.jpg
ギャップ(左)とiPod nano(右)のCFに出演したクラウド

Cloud6.jpg
シャキーラのヴィデオ「Did It Again」に出演したクラウド

 クラウドが客演した作品の中で、役の重要性、また、人脈的にも特筆されるのは、シャキーラのヴィデオ「Did It Again」(2009)。シャキーラとその恋人役のクラウドがベッドの上で喧嘩するように激しく踊りながら絡み合う。クラウドは持ち前のスキルを生かした超人的な動きを見せ、ヴィデオの要とも言える重要な役割を果たしている。この男女の闘争的な絡みは「Love Is Found」のそれにかなり近いものがある。ヴィデオの監督は、ソフィ・ミュラー。この作品への出演が、後に「Love Is Found」で彼が起用されるきっかけになったと思われる。

Cloud7.jpgCloud8.jpg
『ステップ・アップ3』(左)、『The LXD』(右)に出演したクラウド

 クラウドはジョン・M・チュ監督の青春ダンス映画『ステップ・アップ3(Step Up 3D)』(2010)、同監督によるアクション・ダンス映画『The LXD - The Legion of Extraordinary Dancers』(2010)にも出演している。
 『ステップ・アップ3』では、主人公たちのダンス・チーム“パイレーツ”と敵対する悪者チーム“サムライ”の一員として登場。『ブレイクダンス(Breakin')』(1984)のポッピン・タコを思わせるクールなキャラでブレイキングを披露している(映画自体、『ブレイクダンス』のアップデイト版のような内容なのだが。個人的には、古典ミュージカルへのオマージュ溢れるワンショット撮影の「I Won't Dance」場面が思いきりツボ。泣いたぞ)。
 『The LXD』は、“フォース”によく似た特殊能力を持つダンス軍団LXDと悪のダンス軍団の戦いを描いた異色のダンス映画。インターネットで公開された1話10分のシリーズ作品で、現時点で20話(2シーズン)まで進行している(日本未公開。1&2シーズンをまとめた北米版DVDあり)。物語自体は大したことはないが、各話ごとにストーリーテリングやフィーチャーされるダンサーのスタイルが異なっていて、かなり見応えがある。クラウドは、LXDと対立する悪の軍団Organization Xの謎めいた殺し屋の役で出演している(これまたクールな役どころだが、なかなか彼のまともなダンス場面が出てこない……)。

 というわけで、ざっと彼のキャリアを紹介してみたが、ここまでは割と普通である。もちろん、これだけでも十分に立派なのだが、有名アーティストのバックを務め、音楽ヴィデオや映画、CFなどに出演するダンサーは決して珍しくない。大抵は振付師という職に収まっていくものだが、クラウドはそうした他のダンサーたちとはちょっと毛色が違う。単に踊ったり振付をするだけでなく、彼は同時に映画を撮る才能を持っていて、映像作品という形でも自分のダンス表現を提示しているのである。自分で自分主演の映画を撮ってしまう自己プロデュース型のダンサーというのは珍しい。
 クラウドは自分のYouTubeチャンネル(floorstatik)で、自主制作の短編映画をいくつも発表している。そして、それがどれもなかなかに面白いのだ。私が彼に注目する理由もまさにこの点にある。ここで、彼が監督・主演を務めた代表的な短編ミュージカル作品をいくつか紹介することにしたい。


クラウドの必見ショート・フィルム

Cloud9.jpg
THE PAPERBOY (2008)
Directed: Daniel Cloud Campos
Music: Daniel Cloud Campos
Starring: Daniel Cloud Campos

 クラウドが単独で監督を務めた初の短編作品(約7分)。主演、音楽、脚本、編集もすべて自分。煉瓦造りの建物が並ぶ古風な町並み。ノイズが加えられたモノクロ映像とあわせて、舞台は20世紀前半のような雰囲気。サスペンダーをつけてキャスケットを被った新聞配達の少年=クラウドが、人気のない早朝の路地で、ビッグ・ビート風のインスト曲に乗せて踊りまくる。路上でパワームーヴを決めたり、柵を飛び越え、壁を蹴って宙返りしながら縦横無尽に路地を動き回る彼の姿が、ダイナミックなカメラワークで捉えられる。非常に闘争的だが、同時に彼は怯え、何かから懸命に逃れようとしているように見える。映画の後半、新聞配達のバッグを持ったクラウドのドッペルゲンガーが現れ、彼に迫ってくる。これが恐らく彼を駆り立てている恐怖の正体なのだろう。彼のダンスは、自分の人生を変えるための闘争なのかもしれない。ロケーションの雰囲気も含め、微妙にルイ・マルの短編「影を殺した男(William Wilson)」('68年のオムニバス映画『世にも怪奇な物語』第二話)を思い出させるか。パワフルなブレイキング、パラノイアックな映像、ホラー・サスペンス調の演出が融合した詩的なダンス映像作品。最後に“続く(to be continued...)”というテロップが出るが、今のところ続編は公開されていない。


Cloud10.jpg
WELCOME HOME (2010)
Directed: Daniel Cloud Campos
Music: "Galaxy" by War
Starring: Daniel Cloud Campos, Jaime "Venum" Burgos

 約5分のコミカルな短編。キャリーケースを引いて久しぶりに自分のアパートへ帰ってきたクラウド。部屋に入ってみると、そこは散らかり放題のゴミ溜め状態。冷蔵庫には“お帰り、相棒よ!”という呑気な張り紙。クラウドが留守の間、ずぼらなルームメイトは一切掃除をしていなかったのだ。奮起したクラウドは、怒濤の勢いで部屋を片付けていく。ウォーの「Galaxy」に乗って、クラウドが踊りながら掃除する様子がテンポ良く描かれていて実に楽しい。すっかり片付いたところで、問題の同居人が帰宅。見違えるように綺麗になった部屋の様子に喜んだのも束の間、奥にある自分の部屋に入ってみると……というオチも小気味よい。ドラマの中に自然にダンスが盛り込まれたこの短編には往年のミュージカル映画のような趣がある。クラウドがほうき型クリーナーを使って踊る場面は、『Thousands Cheer』(1943)でジーン・ケリーがモップやほうきと踊る「Let Me Call You Sweetheart」、『ブレイクダンス』(1984)でブガルー・シュリンプがほうきで道路を掃きながら踊る「Tour De France」、あるいは、『恋愛準決勝戦(Royal Wedding)』(1951)でフレッド・アステアが帽子掛けと踊る「Sunday Jumps」といった過去のMGMミュージカルの名場面を連想させる。クラウドの軽妙なキャラも魅力的だ。

クラウドによる作品解説「ルームメイトがいると色々と困らせられることがある。“最後に笑うのは誰か”っていう、ルームメイトとのよくある駆け引きを話にしてみたんだ。お楽しみあれ!」


Cloud11.jpg
THE RAIN DODGER (2011)
Directed: Daniel Cloud Campos
Music: "Singin' In The Rain" by Gene Kelly; "Chariots Of Fire" by Vangelis
Starring: Daniel Cloud Campos, Tamara Levinson

 雨に怯える男を描いた約8分の爆笑ミュージカル・ギャグ短編。タイトルは“雨を避ける男”。朝、ベッドで目を覚ますと、外から雨音が聞こえる。同棲している彼女からクラウドが“車にある傘を取ってきてちょうだい”と頼まれる。愛犬のカポを散歩に連れていくのに傘が要ると言うのだ。家から離れた駐車場まで傘を取りに行かされるはめになったクラウド。彼は気が進まない。彼は“雨恐怖症”なのだ。フードを被り、おっかなびっくり雨をかわしながら(笑)必死の形相で駐車場を目指すクラウドが見ものだ。持ち前のダンス能力を活かしたヘンテコな動きが素晴らしい。BGMはジーン・ケリーが歌う「Singin' In The Rain」。『雨に唄えば』の同ミュージカル場面の記憶と相まって、これが猛烈に可笑しい。やっとの思いで車に辿りつき、遂に傘をゲットしたクラウドだったが……そこには“OMG. It's unbelievable!”な展開が待ち受けていた(爆笑)。雨が降っているだけなのに、ほとんどゾンビ映画並の騒ぎである。ヴァンゲリスの音楽とスローモーションを使って『炎のランナー』のパロディを見せる無駄に劇的な後半も笑える。この発想の面白さ。演出の的確さ。お遊び的な軽いパロディ映画には違いないのだが、空から降る雨だけを使ってここまで面白い作品を撮れるクラウドには、やはり映画作りの確かなセンスがあるように思う。
 ちなみに、この短編はポッパーのデヴィッド・エルスウェア David Elsewhere が合成でケリーに扮して踊った『雨に唄えば』のパロディCF(2005/フォルクスワーゲン)を少し思い出させる。クラウドはあのCFに触発されたのだろうか? 共演のタマラ・レヴィンソンは実際にクラウドの恋人で、彼と一緒にマドンナのツアーに参加していたダンサー(『ステップ・アップ3』にも出演)。クラウドは彼女のダンスをフィーチャーした映像作品も撮っている。

クラウドによる作品解説「人はなぜ雨を恐れるのか? 雨が降り始めた途端、人は大騒ぎで雨宿りできる場所に駆け込む。何が僕たちをそんなに錯乱させるのだろう? だって、たかが水じゃないか。ヨレヨレの服のままその日を過ごさなければいけないという不快感のせいだろうか。あるいは、髪が無茶苦茶になったり、マスカラが落ちたりするせいだろうか。いずれにせよ、雨に濡れるのが困ったことには違いないよね。というわけで、雨続きの一週間、外出もできず家で暇を持て余していた僕らは、小雨に怯える男のくだらない映画を撮ることにした。これは映画として真面目に受け取ってもらうようなものじゃない。単にみんなに楽しんでもらいたくて作ったんだ。ハハ!! お楽しみあれ!」


Cloud12.jpg
THE MUSIC BOX (2011)
Directed: Daniel Cloud Campos
Music: Daniel Cloud Campos & Nathan Lanier (Guitar Solo by David Curtain)
Starring: Daniel Cloud Campos, Troy Christian

 約10分の短編。現時点でのクラウドの最新作であり('11年3月27日公開)、最高傑作と言ってもいいだろう。賃貸アパートを探しているクラウドが、ある一戸建ての物件を訪れる。広々とした建物の中を見て回り、好感触を得るクラウド。そこには何か自分に語りかけてくるような不思議な魅力があった。クラウドが何気なく柱を叩くと、どういうわけかスネアドラムの音が響く。床を踏むと、今度はバスドラムの音が。彼が触れると、部屋の至るところからベース、ピアノ、ストリングス、ギターといった様々な楽器の音が聞こえてくる。それらはアンサンブルを紡ぎ出し、徐々に音楽として完成されていく。部屋とジャム・セッションしながらご機嫌に踊るクラウド。アパートの管理人は大騒ぎしているクラウドを見つけてビックリ。管理人にはクラウドに聞こえているサウンドが聞こえないのだ。“耳を澄ます者だけに聞こえる(ONLY THOSE WHO LISTEN CAN HEAR)”という最後のメッセージがすべてを語っている。あらゆる場所に音楽はある。どんなノイズでも音楽になり得る。耳を傾けることの大切さは、多くの優れたダンサーや音楽家が口を揃えて言うことだ。この短編は、そうしたダンスと音楽の真髄を実に楽しく分かりやすく伝えている(過去記事“The Nicholas Brothers (part 5)”、“ビートでポン!──Takeshi visits Savion Glover's studio”も参照して欲しい)。
 現実的なドラマ場面と非現実的なダンス場面が地続きになっているこの短編も、やはり往年のミュージカル映画的である。クラウドのアクロバティックなダンスは、基本的にはジーン・ケリーやドナルド・オコナーを思わせるが、部屋を楽器のように演奏してしまうこの短編では、その流麗な動きも含めて、かなりフレッド・アステアに近い印象を受ける。アステアはよく色んなものを叩いたり蹴ったりしながら踊った。実際に楽器(特にドラム)を演奏しながら踊る名ナンバーも多い。アステアが船の機関室でノイズに合わせて踊る『踊らん哉(Shall We Dance)』(1937)の「Slap That Bass」、タップしながらドラムを叩く『踊る騎士(A Damsel In Distress)』(1937)の「Nice Work If You Can Get It」、営倉で壁や柱を蹴りながらタップを踏む『踊る結婚式(You'll Never Get Rich)』(1941)の「Since I Kissed My Baby Goodbye」、玩具屋で楽器を演奏しながら踊る『イースター・パレード(Easter Parade)』(1948)の「Drum Crazy」などを見れば、クラウドがこの短編でアステアの遺伝子をしっかり受け継いでいることが分かるだろう。NBCで放映されたアステアのテレビ特番『An Evening with Fred Astaire』(1958)には、アステアがパントマイムだけで楽器を演奏する「Prop Dance(小道具ダンス)」という秀逸なナンバーが登場するが、これなどは『The Music Box』の元ネタと言ってもいいくらいだ。往年のミュージカル映画が持っていた単純明快な楽しさを現代に蘇らせるクラウド。アステアやマイケル・ジャクソンがこの作品を見たら大喜びしたに違いない。

クラウドによる作品解説「新しい賃貸アパートを探している若者の話で、彼はその場所と運命的に巡り会ってしまう。自分に語りかけてくる場所があったら、その音に合わせるしかないのさ」


Cloud13.jpg
『The LXD』の撮影合間に撮られた短編『The Ho Down』

 クラウドは他にも色々と短編作品を発表している。いかにもお遊び的な即席ギャグ映像や、素描のような作品も多いが、中でも注目されるのは、彼が手掛けた最初の短編『Heaven Awaits』(2005)と、豪華キャストによる『The Ho Down』(2010)。前者は6分の純粋なホラー作品で、クラウドは共同で監督、脚本、撮影、編集を務めた他、出演(殺人鬼役)と音楽も担当している。後者は、先述のインターネット映画『The LXD』(第19&20話)の撮影合間に、『The LXD』出演者たちと撮影セットをそのまま使って撮られた8分半のおバカ西部劇パロディ。これらを観ると、決してミュージカルだけでなく、彼が映画作家として様々なボキャブラリーを持っていることが分かる。

 クラウドは自分の夢をこう語る。

「僕のゴールは映画だ。長編映画の脚本を書いてるところで、僕はそこで監督と役者をやりたい。短編や音楽ヴィデオを撮ってきたから、今度は長編を撮りたいんだ。ダンス映画さ。本格的にダンスを取り入れた作品にしたいと思ってる。近年よくあるコマーシャルなものではなくてね」(23 January 2011, Koreanroc.com)

 往年のミュージカル俳優のようなウィットと軽みを持つBボーイ、クラウド。アステアやドナルド・オコナーも思い出させるが、自ら映画監督も務める点で、タイプとしてはジーン・ケリーに最も近いと言えるかもしれない。また、彼らが残した古典をよく学び、自分の肉体を使ってそれらを現代的なスタイルで継承している点では、間違いなくマイケル・ジャクソンを彷彿させる。

 彼の超人的な踊りには驚くばかりだが、ヒップホップ・ダンスに詳しくない私には、正直、他のBボーイたちと較べてクラウドの技のどこがどう凄いのか、あまりよく分からない(色んなBボーイの映像を見ると、技術的にはどれもみんな同じくらい凄いと感じてしまう)。ただ、単純にダンス素人の目から見ると、クラウドの踊りには華があるように思う。彼のダンスの魅力は恐らく彼自身のキャラクターと深く結びついているもので、技術では補えないものだろう。同時に、自分で自分のダンスを演出し、誰もが楽しめる映像作品を作れるクラウドは、ダンサーとして明らかに異彩を放つ存在だ。単純にダンス自体の質を追求するだけでなく、最終的にそれをどのように見せるのか、それで一体何を伝えるのか──パフォーマーとしてだけでなく、プロデューサー的な視点で自分の表現を考え、それを具体的に作品として結実させられるダンサーは、そう多くはないと思う。

 明日の雲はどのように形を変え、どこへ流れていくのか。天気予報は必ずしも当たらないが、この雲はいつかきっと大きくなると思う。私はクラウドの持っているヴィジョンと情熱に期待している。


Red Bull BC One 2009

Cloud14.jpg

 最後におまけとして、'09年11月18日にNYで行われたブレイクダンス世界大会“Red Bull BC One”におけるクラウドの全対戦映像へのリンクを張っておく。この大会は予選で絞り込まれた16人の精鋭による勝ち抜きトーナメント方式でBボーイ世界一の座が争われる。判定は5人の審査員による多数決で決まる。クラウドは順調に勝ち進むが、決勝戦で'05年の同大会優勝者Lilouと当たり、僅差で惜しくも破れた。これらを見るとクラウドのダンス・スタイルがよく分かるだろう(圧倒的なカッコよさを見せる準決勝のパフォーマンスは特に必見。BGMがハーバライザー「Goldrush」というのもたまらない)。

準々々決勝──Cloud vs Kaku
 準々決勝──Cloud vs Differ
  準決勝──Cloud vs Neguin
   決勝──Cloud vs Lilou

 ちなみに、クラウドはインタヴューで“バトルは性に合わない。好きではない。争うのはエゴだよ”と語っている。名実共に世界トップクラスのBボーイだから言えることかもしれない。




Daniel Cloud Campos──渾身のマイケル・トリビュート
Daniel Cloud Campos──出没! 笑撃の踊るゾンビ

| Dance to Jazz and All That Jazz | 04:32 | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT