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アデュに訊け!──シャーデー最新語録



 北米を絶好調ツアー中のシャーデー・アデュが、いくつかアメリカのローカル・メディアの取材に応えている。'11年7月初旬に複数のインタヴュー記事が立て続けにネット上に出た。その中に、ファンの質問にアデュが自ら答えるという面白い企画があったので紹介してみたい。

※上の写真は'10年9月30日、アリシア・キーズと共演した〈Black Ball〉コンサート出演時のもの(最新アデュではありません)


MAYBE I WOULD BE A TAXI DRIVER

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 Cleveland.com(The Plain Dealer紙)の7月8日付けの記事。記者によるアデュへの通常インタヴューの他に、このサイトは読者からの質問にアデュが答えるという特別企画を組んだ。質問が選ばれた人には、シャーデーのクリーヴランド公演('11年7月9日)のペア・チケットがプレゼントされる。ラッキーな4人の当選者のうち、特賞のラリー・ヴェッキアさんは、コンサート・チケットに加え、シャーデーにバック・ステージで会えるという豪華特典もゲットした。4人の質問とアデュの回答は以下の通り。


◆こんにちは、シャーデー
 僕の質問は音楽とは何の関係もありません。誰か3人の人(故人も含む)と夕食を一緒にできるとしたら、誰がいいですか? また、その理由は? よろしくお願いします。──ラリー・ヴェッキア
♥こんにちは、ラリー
 3人に絞り込むのは無理だわ。勝手口からこっそり他の人も入れるしかないわね。
 私のお祖母ちゃん──いつも私に料理を作ってくれたから、今度は私がご馳走してあげたい。ガンジー──彼の分までフライド・ポテトを全部食べちゃえるから。シェイクスピア──私がご飯を焦がしている間、彼ならお客さんを退屈させないだろうから。

◆こんにちは、シャーデー
 レコーディングやツアーをするまで、なぜあれほど長く休養することにしたのか教えてもらえますか? 美しく才能にも恵まれているあなたにとって、この空白期間はあまりにも長すぎます。今の世界にはあなたの歌が必要なのです!──マーク・チョジク
♥こんにちは、マーク
 別に休養することにしたわけじゃないのよ。ただ自分の生活に引き戻されちゃったの。実生活での経験を基に歌を書くわけだから、決して休養していることにはならないんじゃないかしら。

◆こんにちは、シャーデー
 2つ質問があります。“成功”という言葉をどのように定義しますか? また、もし音楽を仕事にしていなかったら、何をやっていたと思いますか?──ポインセチア・マッケンジー
♥こんにちは、ポインセチア
 成功というのは、自分がベストを尽くしたと思えること、そして、完璧でないことで自分を責めないことね。
 多分、私はタクシーの運転手になったと思う。その日その日でどこへ行くかも分からないし、自分が乗せる色んな人たちの人生を詮索することもできる。鏡を持って後ろ向きに近づきでもしない限り、私はお客の誰にも気付かれないの。

◆こんにちは、シャーデー
 あなたのスタイルは常にとてもユニークでした。身売りしたり音楽の流行に飛び乗る必要もなかった。キャリアを通してあなたは自分自身に誠実であり続けました。誰の影響で歌手になったのですか?──ブライアン・タトル
♥こんにちは、ブライアン
 誰か一人の影響で歌手になったわけじゃないわ。音楽の愛と、たまたま幸運が続いたおかげね。


 相変わらずのシャーデー節である。この軽みと余裕っぷりがたまらない。
 “成功”という言葉に関して、“自分がベストを尽くしたと思えること(knowing you have done your best)”というのは割と常識的な見解だと思うが、そこに更に“完璧でないことで自分を責めないこと(not blaming yourself for being imperfect)”と付け加えているのにはちょっと唸らされた。これは素晴らしい定義だと思う。さすが大人だな、という気が改めてする。完璧な人生などない。やれるだけのことをやった上で、“欲を言い出せばきりがない。これでもまだいい方だよ”と笠智衆のようにつぶやき、自分のささやかな人生に満足するゆとりが大切なのである。
 
 特賞に選ばれた最初の質問に対するアデュの回答で、少し興味深い点がある。夕食を一緒にしたい人物としてガンジーを挙げ、その理由を“彼のフライド・ポテトを全部食べちゃえるから”としているのは、ガンジーが小食だったことをネタにした軽いジョークだが、実はかつて、オバマ大統領が高校生から全く同じ質問をされ、同じようにガンジーの名前を挙げたことがあるのだ。'09年9月8日、大統領がヴァージニア州のウェイクフィールド高校を訪れた際、そこでリリーという名の女子生徒から“故人も含めて誰とでも食事をできるとしたら誰がいいですか?”と訊かれた。オバマはこう答えた──“故人も含めて、となるとものすごい候補数だな……。う~ん、そうねえ……。う~ん、きっとガンジーかな。私の偉大なヒーローだよ。ただ、食事は恐らくとてもささやかなものになるだろうね(笑)。彼は小食だったから”。
 アデュはこのオバマと高校生のやりとりを知っていたのではないだろうか。全く同じ質問をされ、オバマと同じくガンジーを挙げつつ、彼女らしいユーモラスな回答になっているところが面白い。

 “歌手になっていなかったら?”と訊かれて“タクシーの運転手”と答えているのも、いかにもアデュらしい。彼女は'92年の雑誌インタヴューでも全く同じ質問をされ、その時も同じように答えていた。

「タクシーの運転手になってみたいわね。変わった人たちに会えるし、あちこち行けるから」(December 1992, Details)

 タクシー運転手、シャーデー・アデュ。何となく『ナイト・オン・ザ・プラネット(Night On Earth)』(1991)のウィノナ・ライダーのキャラが思い出される。機会があれば、アデュには是非、タクシー運転手の役で映画にカメオ出演して欲しい。ポーカーフェイスのスピード狂でお客を恐がらせる運転手を演じさせると面白いと思う(*1)

 『LOVERS ROCK』発表時、AOLの企画でアデュがファンの質問に答えるというオンライン・チャット・イベントが行われたことがあった('00年11月14日)。アデュがこうしてファンの質問に答えるのは、それ以来のことになるだろうか。ちなみに、そのチャットでアデュは、あるファンから“好きなことは何ですか?”と訊かれ、幼い娘と遊ぶこと、音楽を作ること、庭いじり、踊ること、の他に、“街なかで遠くから人々を眺めること”を挙げていた。人を観察するのが好きなようだ。タクシーの運転手になりたい、というのは、そんな彼女の性格がよく現れた答えだと思う。


YOU'LL NEVER CATCH ME TWITTERING

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『SOLDIER OF LOVE』発表時のアデュ

 アデュの人生は至ってマイペースである。とはいえ、彼女は決してのらりくらりと暮らしているわけではない。Cleveland.comのインタヴューでは、こんなことを喋っている。

「私をツイッターで見つけようたって無理よ。時間がなくて、いつもてんてこ舞いだもの。私は自分の生活で忙しい。充実した生活だし、充実した人々や充実した出来事に囲まれて暮らしている。でも、それは私の生活の日常の世界だから、他の人に入ってきて欲しいとは思わない。私たちの音楽を聴いてくれてる人たちだって、私の生活を必ずしも知りたいとは思わないでしょう。私の生活について知る必要なんてないのよ。ぶっちゃけた話、ツイッターをやる時間がある人たちが不思議でしようがないわ。私なんかひっきりなしのお祭り騒ぎみたいな生活で、とてもそんな時間ないもの。一体どうやって暇を見つけて、“私たちに赤ちゃんが産まれそうです”とかいちいち報告していられるのかしら。(インタヴュアー:昼に何を食べたか、とか?)昼に何を食べたか! まったく。私なんか昼に何を食べたか既に思い出せないわよ。もう次のことで頭がいっぱいだわ」

 他のインタヴューでも似たようなことを話している。“音楽活動の間の長い空白期間は何をしているんですか?”という問いに対する答えである。

「悠々自適の生活なんて一度も送ったことがないと言っておきたいわ。私の生活はいつも大変なのよ。まるでサーカスのリングの中にいるみたい。時間がなくて自分が好きなことも滅多にできないし。庭で野菜を育てるとかね。馬に乗ったり、丘を散歩して空を眺めたりとか。もし時間が買えるなら、持っているお金を全部注ぎ込むわ」(7 July 2011, The Columbus Dispatch)

 そう、主婦は忙しいのだ。しかし、彼女は主婦であると同時に、世界的なバンドの看板歌手でもある。スーパー主婦、シャーデー・アデュ。彼女は今、忙しい家庭生活を中断して世界ツアーを行っている。今の彼女は誰の目にも明らかに多忙である。

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'11年ツアーで「Smooth Operator」を歌うアデュ

 80公演以上にも及ぶ今回の世界ツアー。連日同じショウをやっていて飽きることはないのだろうか?

「簡単に飽きることはないわ。私はそういうタイプの人間じゃない。毎晩が挑戦だもの。行く場所や国が毎回違うわけだから。常に変わっていくわけ」(6 July 2011, The Indianapolis Star)

 ヒット曲を演り続けることにうんざりすることは?

「気乗りはしなかったわね。耳にタコができるくらい聞いてきてるから。“もう演らせないでちょうだい”って感じだった。でも、考えたの。(昔の曲を演るのは)結構プレッシャー高いのよね。おかしなことに私は今──これは自分でも本当に驚いてるんだけど──昔の曲を歌うのが楽しくなってきてる。何かこう、以前にはなかった軽みのようなものがあるのよね。これまで以上に古い曲も演ってるところよ」(7 July 2011, The Columbus Dispatch)

 シャーデーは裏切らない。決して中途半端なことはしない。やる時はやるし、やらない時は本当に何もやらない(笑)。飽くまで自己流を貫くシャーデーは、それゆえにファンから絶大な信頼を寄せられる。

「バンドがこれまでとってきた行動を商業的な観点から分析したら、私たちのやり方は賢明ではないという結論が出るでしょうね。“先行きは暗い”と。実際、私たちのマネージャーにしてみたらたまらないわよね。彼は私たちの仕事ぶりに四苦八苦よ。いつだってほんのちょっとしか曲が上がってこないから。結局のところ、すべては音楽にかかってるのよね。それが私たちの成功を支えてきた。心から生まれているものだからよ。失敗しても、しょげることはない。然るべき理由があってやったことなんだから。どうなるか分からないけど、そうするより他ないのよ」(6 July 2011, The Indianapolis Star)

 エレガンス、洗練といった言葉で形容されるシャーデーのスタイル。そうした“シャーデー流”のお手本として、アデュは具体的に何人か敬愛するアーティストの名前を挙げている。

「マイルス・デイヴィスや、セザリア・エヴォラといった気高いラテンの女性たち(*2)──彼らは自分のやり方で物事をやり、自分自身であることを恐れない。自分の地位を守るために身売りしない。彼らはアイデンティティをしっかり持っている。ミュージシャンや作家でも、私は自己流を貫いてる人が好き。レイ・ラモンターニュとかスヌープ・ドッグとかね」(同上)

 現時点で11月末まで予定されているシャーデーの世界ツアー。ツアーが終われば、彼女はきっとまた私たちの前から姿を消してしまう。約束なしのお別れである。“シャーデーらしさ”というものを私たちが愛するなら、そんな彼女の生き方もまた受け入れなければならない。こうして当たり前のように彼女の発言に触れられる幸福を、今、しっかり噛みしめておきたい。彼女が私たちのもとにいるのは、あとほんの数ヶ月のことに過ぎないのである(悲)。


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(*1)タクシー運転手の話で思い出したが、アデュには、車の暴走運転の嫌疑で警察に捕まる、というちょっと恥ずかしい過去がある。ロイター通信の報道によると、事件は'97年2月27日、彼女が当時住んでいたジャマイカのモンテゴ・ベイで起きた。大通りを車で走っていたアデュは、混雑している交差点で警官に一時停止の指示を出されたが、そのまま通過してしまい、パトカーに追いかけられた。車を停めたアデュはそのまま警察署へ連行され、そこで自分を捕まえた警官に対して悪態をついたという(笑)。3月10日に一度出廷し、142ドルを払って保釈処分になったアデュだったが、6月25日の審理に出廷しなかったため(既に出国してイギリスで暮らしていた)、結局、逮捕状が発行されることになった。
 “私は国際的なお尋ね者なのよ”と事件のことが後に本人の口から語られている。“私は母と娘と一緒で、違反を犯した時は大人しくしていたわ”(March 2001, Essence)。捕まった時、アデュは警官から賄賂を強要されたが、これを拒否。また、暴走運転をしたことを認める書類へサインすることも拒否したという。“正直、交通事件という程のものではなかったのよ。とんでもない茶番劇に膨れ上がってしまったわ”(13 November 2000, Time)。逮捕を避けるため、アデュは二度とジャマイカへ戻るつもりはないと話している。

(*2)'00年11月14日のAOLチャットの際、“普段どんなアーティストの音楽を聴いてるんですか? 今、あなたのCDプレイヤーに入っているのは何?”と訊かれ、アデュは、セザリア・エヴォラに加えてメルセデス・ソーサの名も挙げていた。ちなみに、その時彼女が他に挙げたアーティストは、アル・グリーン、アレサ・フランクリン、グレゴリー・アイザック、Qティップ。


※The Indianapolis Star紙の'11年7月6日付けのインタヴュー記事で、アデュは「Still In Love With You」と「The Moon And The Sky」リミックスについても語っている。それらの発言は過去記事“The Ultimate Collection”の追記で取り上げた。

※ツアーの進行状況は以下の記事で常にフォローしています

Soldier Of Love Tour [2011]
Soldier Of Love Tour on YouTube

| Sade News | 01:47 | TOP↑

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