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とびきりのタブー

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 『PROMISE』(1985)からの先行シングル曲「The Sweetest Taboo」。「Smooth Operator」と並ぶ初期シャーデーの決定的代表曲のひとつ。

 倍速で刻まれるリム&ヘッド・ショットのドラム・パターンが刺激的で、得意の軽快なボッサ〜ラテン調でありながら、重心はぐっと低く、実にファンキー。そこに気持ち良く乗るアデュの流麗な歌メロと官能的な歌詞。かなり複雑な構造の曲にもかかわらず、印象は驚くほどスムーズだ。この洗練されたシャーデー流ファンクには、彼らの確かな成長と、3作目以降にも通じる独特のクールネスが早くも感じられる。この曲で彼らは「Smooth Operator」を余裕で超えた。シャーデーの魅力が濃縮された、とびきりの名曲である。


 The Sweetest Tatoo
 (Adu/Ditcham)
 
 If I tell you
 If I tell you now
 Will you keep on
 Will you keep on loving me
 If I tell you
 If I tell you how I feel
 Will you keep bringing out the best in me
 
 もし私が
 もし私がいま伝えたら
 あなたはずっと
 あなたはずっと私を愛してくれる?
 もし私が
 もし私がこの気持ちを伝えたら
 あなたはずっと私を輝かせていてくれる?
 
 You give me, you give me the sweetest taboo
 You give me, you're giving me the sweetest taboo
 Too good for me
 
 あなたはとびきりのタブーを味わわせてくれる
 あなたはとびきりのタブーを味わわせてくれる
 眩しすぎるわ
 
 There's a quiet storm
 And it never felt like this before
 There's a quiet storm
 That is you
 There's a quiet storm
 And it never felt this hot before
 Giving me something that's taboo
 (Sometimes I think you're just too good for me)
 
 静かな嵐がある
 こんな感じは生まれて初めて
 静かな嵐がある
 それはあなた
 静かな嵐がある
 こんな熱気は生まれて初めて
 あなたが教えてくれるのはタブーの味
 (時々 私にはあなたが眩しすぎる)

 You give me the sweetest taboo
 That's why I'm in love with you
 You give me the sweetest taboo
 Sometimes I think you're just too good for me

 あなたはとびきりのタブーを味わわせてくれる
 そんなあなたに私は夢中
 あなたはとびきりのタブーを味わわせてくれる
 時々 私にはあなたが眩しすぎる
 
 I'd do anything for you, I'd stand out in the rain
 Anything you want me to do, don't let it slip away
 
 あなたのためなら何でもする 雨にも負けない
 あなたが私に望むこと 何でも言って頂だい
 
 There's a quiet storm
 And it never felt like this before
 There'a a quiet storm
 I think it's you
 There'a a quiet storm
 And I never felt this hot before
 Giving me something that's taboo
 
 静かな嵐がある
 こんな感じは生まれて初めて
 静かな嵐がある
 まさにあなた
 静かな嵐がある
 こんな熱さは生まれて初めて
 あなたが教えてくれるのはタブーの味

 You give me the sweetest taboo
 That's why I'm in love with you
 You give me, you're giving me the sweetest taboo
 Too good for me
 
 あなたはとびきりのタブーを味わわせてくれる
 そんなあなたに私は夢中
 あなたはとびきりのタブーを味わわせてくれる
 眩しすぎるわ
 
 You've got the biggest heart
 Sometimes I think you're just too good for me
 Every day is Christmas, and every night is new year's eve
 
 あなたの心はどこまでも広い
 時々 私にはあなたが眩しすぎる
 毎日がクリスマス 毎晩が大晦日

 Will you keep on loving me
 Will you keep on, will you keep on
 Bringing out the best in me
 
 ずっと私を愛してくれる?
 あなたはずっと あなたはずっと
 私を輝かせていてくれる?


 まず、この曲は“Taboo”という単語の決まり具合が素晴らしい。『PROMISE』冒頭を飾るのが「Is It A Crime」、そして2曲目がこの「The Sweetest Taboo」。“Crime” と “Taboo”、つまりどちらも“イケないこと”であって、恋のスリルと官能を歌うシャーデーの艶にますます磨きがかかっている。おまけに、“Taboo”はペレス・プラード(と加藤茶)でお馴染みのラテン・ナンバーのタイトルでもある。こうした何気ないラテンの香りが、アデュのエキゾチックな風貌とも相まって、当時の彼らに他のポップ/ロック勢とは一味違う独特の輝きと色気を与えていたように思う。この曲の大ヒットによって、アデュは時代のセックス・シンボルにもなっていく。

 もうひとつこの歌で注目されるのは“quiet storm”という言葉。クワイエット・ストームとは、'70年代半ばにアメリカで始まり、以降、全米都市部を中心に定着したラジオ番組の形式を指す言葉である(スモーキー・ロビンソンの'75年の作品名に因む)。そこで流される大人向けの落ち着いたソウル、メロウなジャズ~フュージョン類と同じテイストを持ったアーティストが'80年代半ばから次々と登場し、クワイエット・ストームは音楽ジャンルとしても興隆するようになる。MTV向けの派手なポップスに辟易していたリスナーにとって、それはまさに清涼剤のような音楽だった。

 シャーデーのアメリカでの成功も、そうした流れの中でもたらされたものだった。アニタ・ベイカーの『RAPTURE』('86年3月発売)がヒットし、クワイエット・ストームというタームが脚光を浴びるのが'86年。「The Sweetest Taboo」('85年10月発売)は、その旋風到来よりも微妙に早い時期にヒットしている。まさにシャーデー最大の大当たり曲で、この時ほど彼らが時代の流れにピタリと合致した瞬間もないだろう。このキーワードは曲の頭と終わりに入る嵐の効果音によって強調され、この名曲をひときわ印象深いものにしている。

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 「The Sweetest Taboo」をアデュと共作しているのは、当時のツアー/レコーディング・メンバーの一人であるパーカッション/ドラム奏者、マーティン・ディッチャム。曲の要となるボサノヴァ調のドラム・パターンは、もともと彼がリズムマシン(Yamaha RX11)で作ったループで、そこに添えられた基本的なコード進行をもとに、他のメンバーが構成を整え、肉付けをしながら徐々に形になっていったという。
 
 シャーデーの全アルバムにエンジニアとプロデュースで関わるマイク・ペラが、Sound On Sound誌('04年11月号)で彼らとの作業について語っている。

「通常、シャーデーが気に入って何か書けそうだと思ったら、彼女とバンドでそれに取り組んでいくんだ。シャーデー作品でひとつ面白いのは、それが彼女だけでなく、バンドの産物だということ。曲ができるまで必ず様々な過程というものがある。ソロ・アーティストの場合とは違うんだ。皆でアイデアを出し、彼女が気に入った部分を見つけ、それが曲になっていく。そうやっていつも形になるし、それが彼女の強みのひとつだね。彼女だけじゃないんだよ。つまり、彼女は確かにユニークだし、際立った個性があって、それはそれで素晴らしいけど、彼女にはバンドがついているわけで、そういう点も素晴らしいということさ。音楽的な発展があるんだ。彼らは不動のメンバーでずっとやってきた。あまりないことだし、一般的にその辺がちょっと見過ごされているんじゃないかな」

 「The Sweetest Taboo」で私が最も好きなのは、リズムが変わって横ノリになる中盤の部分だ。あの8小節は最後に出来上がったらしい。

「〈Taboo〉で彼女は素晴らしいヴォーカルを録音した。すごく色っぽかったね。それからあちこち固めていった。例えば、“I'd anything for you, I'd stand out in the rain”と彼女が歌うミドル部分とかね。あの場合は、空いていた8小節を埋めるために何かもうちょいリズミックなものが必要だったんだ。シャーデーのすごいところは、人が考えもしないようなアイデアを出してくるところさ。僕らが最終的に上の階の“ギャラリー”(Power Plant 第三スタジオ)へミックスをやりに行くまでに、彼女は全部それを仕上げてしまったんだ」

 さり気ないサウンドだが、「The Sweetest Taboo」はよく聴くと実はかなり手が込んでいて、ファースト時の作品とは次元が異なるのがよく分かる。滑らかなのどごし、洗練されたクリアな味。キレがあってコクがある、何度聴いても飽きがこない、実にシャーデーらしい名曲だと思う。

「サビ部分ではヴォコーダー処理した語りっぽいラインが出てくる。マリンバとか、Emulatorのヴォイスパッド的な高音もあるし、ヴァース部分ではピアノの低音、終盤になると変わったパーカッションの音も入ってくる。マーティン(・ディッチャム)とデイヴ(・アーリー)がスタジオ内で、カフェにあるようなテーブルに腰掛けてね。デイヴは瓶の口の部分を吹いて、マーティンはグラスを並べてフォークで叩いたんだ。それを2本のマイク(Neumann U87)を背中合わせに組んで録った。2人とも爆笑してしまって、おかげでゲートをかまして笑い声を消すはめになったよ。サンプリングなしの生録りだったんだけど、これはすごく曲にハマったね。効果音集から持ってきたイントロとアウトロの雨の音にしてもそう。雷鳴の音はリバーブをかけたRolandのアンプをそっと床に数インチ落として出したんだ。中のコイルがグワ~ンと振動してね。だから、あれはすごく印象主義的な雷鳴なんだよ。ツアーでは本物の雷鳴の効果音が使われていたけどね」

「どれも最初から計画してそうなったわけじゃない。あれこれ試しながら決まっていくものなんだ。そうやって、細かい要素があちこちから聞こえてくるような刺激的な音になっている。一度聴いただけではすべて把握できない。基本的にはシンプルなんだけど、よく聴かないと分からないところもある。実際には色んな音が入っているから、聴くたびに発見があるわけさ。すべては鳴るべくして鳴っているんだよ」

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