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Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 3)



 シャーデーを観るためにやって来たラスベガス。コンサート前日に当たる9月2日(金)の昼過ぎに現地に到着した私は、コンサートが行われる予定のメガ・ホテル、MGMグランドで軽く吠えた後、ひとまず宿にチェックインすることにした。


STRANGER IN PARADISE

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MGMグランドからトロピカーナ通りを望む(向こう側に見えるのはフーターズ)

 私の宿泊先はMGMグランドではない。東京から大枚をはたいて飛行機でやって来た私に、あんな場所に泊まる金が残っているわけがない。私がねぐらに選んだのは、MGMグランドの近くにあるAmericas Best Value Innという名前の“ひとつ星”ホテルだった。正確に言うと、ホテルではなく、モーテルである。

 Americas Best Value Innは、MGMグランドからトロピカーナ通りを東へ(つまり空港方面に)進んだところにある。地図で見るとMGMグランドの目と鼻の先という感じなのだが、歩いても歩いても見つからず、結局、辿り着くまでたっぷり10分はかかった(上の写真に写っているホテル、フーターズ Hooters の遥か先にある)。ラスベガスは実際に行ってみると、とにかく街の面積の広さに驚く。目的地まで思った以上の距離があり、徒歩での移動にやたらと時間が掛かるのである。

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Americas Best Value Inn──真ん中のガラス扉を入ったところにフロントがある

 白と青のペンキで塗られたいかにもアメリカンな佇まいのそのモーテルは、道路からちょっと奥まったところにあった。メガ安くさい。何も考えていないこの青色の感じとか、本当にセンスがないなと思う。しかし、それだけに料金も安い。事前にネットで宿を確保する際、MGMグランド近辺のホテルを色々と物色したところ、ここがダントツで安かったのだ。私が利用した時は1泊45ドルだった。2日泊まってもたったの90ドルである(閑散期はもっと安い)。モーテルのHPでは、“Location, location, location. Americas Best Value Inn Las Vegas is located directly across from the MGM Grand Hotel”と、とにかく立地の良さが謳われていた。飛行機代とコンサートのチケット代は安くならない。切り詰められるのは宿代と食費くらいしかないわけで、私に選択の余地はなかった。

 事務所のような雰囲気のフロントには、私服姿の白人のおばちゃんが1人いた。私の予約はきちんと入っていたが、シングルではなくツインの部屋でもいいか、と言う。話がちょっと違うのだが、喫煙可能な部屋なら何でもいいということで承諾した。モーテルの見取り図を渡され、“実は一番奥の建物なんだけど……”と部屋の位置を説明された。このモーテルは裏手に同じような2階建ての棟がずらりと並んでいる。私の部屋があるのは一番奥の第8棟で、フロントのある第1棟から更に100メートルくらい歩かなければならなかった。MGMグランドからどんどん離れていく。ちっとも近くない。炎天下の中をひたすら歩く。途中の棟と棟の間には、うらぶれた感じの小さなプールがひとつあって、そこで白人の家族連れが水遊びをしていた。

 ようやく自分の部屋に辿り着き、フロントで受け取ったカードで鍵を開けて中に入ろうとすると、ドアが開かない。カードを差し込むとカチッというロック解除の音がするのだが、L字型の取っ手を捻っても全く開かないのだ。どうなっているんだ。フロントまで訊ねに戻るには、炎天下の中をまた100メートル歩かなければならない。ドアの前で汗だくになって5分くらい悪戦苦闘した末、取っ手がもぎ取れるのを覚悟でありったけの力で捻ってみると、ガコッと鈍い音がしてようやくドアが開いた。私はかつてこんなに固いドアを開けたことはない。

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1泊45ドルの部屋

 部屋は超シンプルだった。ベッドが2つ、テレビ1台、奥に洗面所とトイレ&風呂。あとは何もない。ジム・ジャームッシュの映画とかに出てきそうな冴えない部屋だ。ベッドの壁に付いているランプは中国製。窓際にあるゴツい旧式のエアコンのスイッチを押すと、ブオ~ッというものすごい作動音がした。まあ、良しとしよう。2日間ねぐらにするにはこれで十分である。

 宿にもチェックインし、やっと落ち着いたところで、私は猛烈に喉が乾いていることを思い出した。今すぐ何か飲まないと死んでしまう。ロサンゼルス空港で取り上げられた紅茶花伝が今ここにあれば……。私はセキュリティ・チェックのあの黒人係員を恨めしく思い出した(もう一度書くが、まだ半分も飲んでいなかったのだ)。とりあえず、何か冷たい飲み物を買いに行くとしよう。

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アメリカ名物、コカコーラとペプシ……

 再び100メートルてくてく歩いてフロントの方へ行く。先ほどチェックインの時に会ったおばちゃんが外で欠伸をしていた。“エクスキューズ・ミー。このへんにソフトドリンクの自動販売機はありませんか?”。“そっち歩いていくとあるわよ”と言って、おばちゃんはモーテルの裏手の方を指差した。言われた方向へしばらく歩いていくと、モーテルの宿泊者が利用するコインランドリーがあり、そこに自販機が2台置いてあった。確かにあることはあったのだが、コカコーラとペプシ、2台ある自販機にはどちらにも“OUT OF ORDER”と書かれた張り紙が貼ってあった。“OUT OF ORDER”というのは、日本語で言うと、いわゆる“故障中”ということである。なんだよ、このモーテルは……。

 向こうには日本のように自販機がそこら中にあるわけではない。ないことはないが、非常に数が少ないし、売られている飲み物の種類も限られている。日本のようなコンビニもない。私はベガスで日本の便利さを痛感した。自販機を探しながら、私は結局、再びストリップまで来てしまい、MGMグランドから北へ歩いて6~7分くらいのところにあるWalgreensという大型ドラッグストアで、7 UPとミネラルウォーターを買った。飲み物を買いに行くだけで、往復30~40分くらい掛かっただろうか。実にバカらしい。猛烈に暑い上、さすがに疲れたので、日が落ちるまでひとまず宿で休むことにした。

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夕暮れ時、モーテルから北西にMGMグランドを望む

 部屋でガイドブックをパラパラめくりながら行動予定を少し考えた後、午後7時過ぎに外出することに。せっかくラスベガスまで来たのだから、ストリップをちょっと散策してみようと思った。外は既に夕暮れ時で、昼間の酷暑が嘘のように涼しくなっていた。私はTシャツの上に長袖のシャツ・ジャケットのようなものを着ていたのだが、日が落ちると長袖でも普通に過ごしやすい。

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 私の宿泊するモーテルと隣りのモーテルの間に、ヤシの木がいくつも植えてあった。高い木々を見上げた時、私はハッと驚いた。そこには、とてつもなく広い空があった。空は私の視界いっぱいに広がっていた。なんて大きな空なんだろう。ラスベガスというのは、本当に砂漠の中のオアシスといった感じの街で、賑やかなストリップをちょっと離れると途端に辺鄙になる。東京のように高い建物が密集していないので、視界を遮るものが何もないのだ。空はうっすら赤く染まっていた。こんなに美しく広い空を見たのは久しぶりだった。アメリカの広大な空の下で、私はしばらく立ちつくした。

(続く)


※写真はすべて筆者撮影(クリックで拡大可)

Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 1)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 2)
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