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Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 8)

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 '11年9月3日(土)。いよいよシャーデーのラスベガス公演が始まる。MGMグランド・ガーデン・アリーナのスタンド席で、私は放心状態で開演の時を待っていた。

 まずは前座のジョン・レジェンドである。私が生レジェンドを目撃するのは、'07年1月11日の東京国際フォーラムA公演(2nd『ONCE AGAIN』時のツアー)以来、2度目。あれからレジェンドは3rd『EVOLVER』(2008)を発表し、顔に似合わないイケメン路線(?)で中途半端に弾けてみたり、かと思えば、ザ・ルーツとタッグを組み、自身のルーツ(原点)を探求するかのようなクラシック・ソウルのシリアスなカヴァー集『WAKE UP!』(2010)を制作してみたりと、やたら振幅の激しい活動を行っている。ここ数年のレジェンドは、次の方向性を模索する過渡期的な時期にあるようだ。衝撃のデビューから7年、“伝説”の男は今、一体どのようなことになっているのか。
 
 ベガスの観客はシャーデーにしか興味がないのか、レジェンドが登場する開演の午後8時の時点で、会場はまだ空席だらけだった。実を言うと、私もシャーデーのことで頭が一杯で、ジョン・レジェンドのことは事前にあまり気にかけていなかった(悪いな、レジェンド)。定刻をちょうど10分過ぎた午後8時10分、6割ほど観客が入ったグランド・ガーデン・アリーナの客電が落ちた。


LET'S GET LIFTED, VEGAS!

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「Rolling In The Deep」でレジェンド登場!

 威勢の良いバスドラの4つ打ちが場内に響き渡る。ステージ中央の後方から、白いスーツに身を包んだジョン・レジェンドが颯爽と現れた。赤い照明に照らされてマイクスタンドの前に立ち、バスドラの4つ打ちに乗ってアカペラで歌い出す。アデルの「Rolling In The Deep」! まだ6割程度しか埋まっていないにもかかわらず、広い場内は大きな歓声で包まれた。さすがアメリカの観客。声がデカい。盛り上がり方が違う。途中からバック・ヴォーカル隊が入り、レジェンドの歌を盛り立てる。アデルのオリジナル版と基本的にニュアンスは一緒だが、アカペラでバック・ヴォーカルとの絡みが強調されているため、更にゴスペル色が強まっている。レジェンドのヴォーカルはいきなり絶好調だ。安定感のある伸びやかな声でサビを熱く歌い上げる。最後の“And you played it...”のフレーズを何度もねちっこく繰り返して盛り上げ、1コーラスを歌い切ったところで終了。

 この軽いジャブから間髪入れず、今度はフルバンドで「Hard Times」(『WAKE UP!』収録)に突入。カーティス・メイフィールドがベイビー・ヒューイに書き下ろした'71年作品。貧民街の黒人の閉塞感を歌ったヘヴィな曲だ。レジェンドのカヴァーはオリジナルのベイビー・ヒューイ版に忠実だが、ライヴでは例のサンプルも使わず、テンポを上げた完全な人力ヴァージョンで披露。鋭いホーンのヒット、パワフルにフィルを叩き込むドラム、疾走感溢れるオルガン、ザ・ルーツとのスタジオ版にはないレジェンド自身の弾く熱っぽいピアノ伴奏が曲を更にヒートアップさせる。'78年生まれだというのに、本当に'70年代のソウル・レジェンドのようなステージだ。総勢11名による分厚くタイトなアンサンブルは聴き応え十分。さすがシャーデーと一緒に50回近く公演を重ねてきただけのことはある。当たり前だが、前座出演で会場が満席でなくても、手抜きは一切ない。むしろ更に気合いが入っているような印象さえ受ける。額に浮かぶ血管がスタンド席から見えるような熱演ぶりにグッとくる。

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白熱の「Alright」メドレー

 挨拶代わりにカヴァー2曲をカマしたところで、立て続けにいきなり必殺曲「Used To Love U」! “ラスベガス!! ラスベガス!! ショウへようこそ! ジョン・レジェンドです。みんな準備はいいか?!”と客を煽り、ピアノを離れて再びスタンドマイクで歌う。バック・バンドは、ドラム、ベース、ギター、キーボードに、女性バック・ヴォーカル3人、ホーン3人が加わった10人(トランペットを除いて全員黒人)。シーケンス類は基本的に使わず、非常にオーセンティックな生バンド・サウンドを聴かせてくれる。レジェンドのバンドってこんなに良かったっけ?と思うくらい引き締まった熱い演奏だ。私が観た'07年の来日公演ではホーン隊がいなかったので、余計にパワフルに感じられる。メンバーも以前とはかなり変わっているようだ。

 2分ちょっとの凝縮版で早々と絶頂に達した「Used To Love U」に続き、矢継ぎ早に始まったのは「Alright」! ぬおお~。怒濤の展開。これまたテンションが高い。おまけにテンポもちょっと速いぞ。うねる低音リフとドラムの鋭いシンコペーションにどんどん引き込まれる。
 序盤から一気にKOを狙いに行くかのような連続パンチに目眩を覚えていると、曲は中盤で劇的に転調し、メドレーで得体の知れないスロー&ヘヴィな曲になだれ込んだ。悶々とした不穏なホーン・リフをバックに、レジェンドが“I've been watching you... the way you move your sexy body...”と歌い、そこにバック・ヴォーカルの女性3人が“Bring your body close to mine”というキャッチーな合いの手を入れる。ビートルズ「I Want You」の無限ループ部分にも似た異様な緊迫感のある曲だ。2nd期のツアーで演っていた「I Can Change」~「I Want You」のメドレーを彷彿させる。演奏はどんどん過熱し、終盤ではジャケットを脱ぎ捨てたレジェンドが“You make me wanna scream! Make me wanna get down on my knees!”と跪きながら熱唱して観客を盛り上げる。鬼のように叩き込むドラム。切れまくりのホーン隊。バンドの演奏も全開だ。レジェンドのステージは事前にYouTubeで軽くチェックしていたが、このメドレーを聴いたのはこの時が初めてだった。私は焦った。新曲だろうか? 「Alright」とメドレーにされたこの曲は一体何なのか?

 後になって、私はこれがパーラメント「I've Been Watching You (Move Your Sexy Body)」('76年『THE CLONES OF DR. FUNKENSTEIN』収録)だったということを知って愕然とした。分からなかった……。ファンケンシュタイン博士に土下座で謝らなければならない。私は全く聴き込みが足りていませんでした。全くファンクが足りていませんでした。レジェンドの熱演には観客も大喝采だった。これはすごい。やったぜ、レジェンド。この白熱の「Alright」メドレーはコンサートの中でも間違いなく白眉だった。

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新曲「Dreams」を披露

 怒濤の攻めっぷりで見事に会場を沸かせたレジェンド。再びピアノに戻り、今度は静かな弾き語りで聴かせる。緩やかなイントロを弾きながら、“次のアルバムに収録される「Dreams」という曲です”と曲紹介。「Ordinary People」や「Again」を思わせるレジェンド得意のメロディアスなバラードだ。“君と一緒にいられるのは夢を見ている時だけかもしれない。僕は起きたくない。恋人たちのようにずっと夢見ていたい。ひょっとしたら夢は叶うかもしれないよ”と歌われる。
 この曲の歌詞は、まさにこの夜の私の心情そのまんまである。ジョン・レジェンドとシャーデーのステージを眺めながら、私は本当に夢を見ているようだった。自分のいる状況が信じられなかったし、あれは現実だったのだろうか、と今でもふと思うことがある。ステージを眺めている間、私はずっとこの夢を見ていたいと思った。レジェンドのこの新曲は私に特別な印象を与えた。

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「Let's Get Lifted」

 しっとりと新曲を聴かせたところで、またまた1stから、今度は「Let's Get Lifted」。いいのか、おいしい曲をここまで一気に放出してしまって。これも快演だったが、「Used To Love U」と同じく2分半くらいの短縮版。レジェンドは次から次へと惜しげもなく代表曲を連発していく。

 ところで、レジェンドのショウの最中も観客はどんどん入場を続けている。私の席は通路側だったので、次々と人が入って来るのがよく分かった(録音していたので、すぐ脇の階段をドカドカと下りていく足音や、客を誘導する係員の大声がやけに気になってしまった)。観客の増加とレジェンドの好演により、会場は熱気を増し、歓声はどんどん大きくなっていった。

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「Slow Dance」──女性客にいやらしく抱きつくレジェンド

 中盤で定番曲「Slow Dance」が登場。この曲では、レジェンドが女性客をステージに上げて一緒に踊るのがお約束である。アリーナ席の女性客がたくさん挙手し、その中から若い黒人女性が一人選ばれた。ベタベタと女性客に絡みつく職権濫用レジェンドに観客は大盛り上がり。下半身も“Wake Up!”してしまうレジェンドなのだった。演奏後にレジェンドが女性に名前を訊ねる。この日の被害者(?)はラティーシャさん。ここで会場はグッと和やかなムードになった。
 日本公演の「Slow Dance」でもこのチーク・タイム(というか、セクハラ・タイム)はある。'07年1月の国際フォーラム公演でステージに上げられた日本人女性はかなり大胆で、ステージで逆にレジェンドの服を脱がせていた。見ていてちょっと恥ずかしかったのをよく覚えている。

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「Save Room」

 「Slow Dance」の次は、同じく2ndから「P.D.A.」「Save Room」という同系統のポップなミディアムが続いた。いい曲がいくらでも出てくる。華やかなホーン・アレンジが加えられた「P.D.A.」などは、ちょっとスティーヴィー・ワンダー(「If You Really Love Me」あたり)を彷彿させる雰囲気がある。「P.D.A.」には私の隣りに座っていた若い白人女性が強く反応していた。こういう普遍的なポップ・ソングを書けるところがレジェンドの強みであると改めて感じた。

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「I'll Go Crazy」を熱唱

 聴かせるミディアムで観客を魅了したところで「I Can Change」が登場。いつも通りブレイクダウンで観客に手拍子を促し、熱い展開を見せる。1stの曲はやはり確実に盛り上がる。最高潮に達したところでいきなりギアチェンジし、今度はシャッフルのブルージーなナンバーが始まった。三連でピアノを弾きながらレジェンドが叫ぶ──“James Brown said... if you leave me, I'll go crazy!”。出た~、JBの「I'll Go Crazy」! この曲がレパートリーに入っていることは事前に知っていたが、実際に演ってくれたのは嬉しかった。分厚いホーン、熱いロッキン・ギター、華やかな女性コーラスがレジェンドのシャウトを盛り立てる。レジェンドにはこういう素朴でオールドタイミーな曲が実によく合う。

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「Ordinary People」

 ひとしきり盛り上がったところで、初めて3rdから「Everybody Knows」を披露。U2あたりが演りそうなロッカ・バラードだ(「Walk On」とかに近い。R.E.M.の「Everybody Hurts」のパクリのようでもある)。スツールに腰掛けながらギターとコンガのシンプルな伴奏で歌い、途中からフルバンドになって熱くなる。3rdは1回聴いただけで放置状態だったので、こんな曲もあったんだなあ、と思った(悪いな、レジェンド)。ポップな味付けが施されたスタジオ版より、ライヴのアレンジの方が曲の魅力がストレートに伝わってくる。

 そして、遂に出た、「Ordinary People」。最後はやっぱりこれだ。ピンスポットを浴びながら、しっとりと聴かせる。以前は終盤からバンドが絡んでいたが、今回は完全にソロの弾き語り。サビの“Take it slow...”では客席から自然と合唱が起こった。ヴォーカルよりも、レジェンドのピアノ演奏の素晴らしさに耳を奪われてしまう。最後はメリスマをたっぷり利かせてサビを引っ張り、見事に観客を盛り上げた。

 「Ordinary People」のコード進行と歌メロは、スティーヴィー「My Cherie Amour」のサビ(“ラララ~”)と一緒だったりするのだが(レジェンドとスティーヴィーはこの曲で何度も共演している)、「Everybody Knows」からの流れで聴いて、私はもうひとつU2の「Stay (Faraway, So Close!)」という曲を思い出した。これもやっぱり「My Cherie Amour」に似ているのだ(“ラララ~”の代わりに“オオオ~”と歌っている)。音楽の大いなる因果を感じてしまう。ちなみに、レジェンドは'08年にU2の「Pride (In The Name Of Love)」をカヴァーしていたりもする(オバマ支援アルバム『YES WE CAN: Voices Of A Grassroots Movement』収録)。

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「Green Light」で大団円

 「Ordinary People」を歌い終わり、そのままピアノをつま弾きながら観客に語りかける。“今日はどうもありがとう。ここにいられて嬉しいよ。もう1曲演ってもいいかな”と言い、シャーデーに謝辞を述べて会場を沸かせた後、3rdからの1stシングルだったアップ「Green Light」のサビを歌い出す。アンドレ3000をフィーチャーした──と言うより、レジェンドがアンドレ作品にフィーチャーされたような──異色のエレクトロ・チューンだ。“準備はいいか? みんな立ち上がって踊ってくれ! いくぞ、ベガス!”という煽りで、それまでずっと座ってまったりショウを楽しんでいた観客が総立ちになる。生ドラムが爆裂し(アンドレのヴォーカルが出てくるブリッジ部分が鬼だ)、更に分厚いホーンがガンガンにアゲまくる。ドラムの猛烈な煽りでグルーヴがやたら前のめりになっている。なんだ、この闇雲な疾走感は。生で聴く「Green Light」は、オリジナルのスタジオ版とは大きく印象が違った。これと似たようなものを前にもどこかで聴いたことがあるような……。「Another Star」?! サンバではないのだが、まさにああいう暴走機関車みたいなノリだ。電流を注いでメカゴジラ化させた「Another Star」──これがライヴ版「Green Light」から私が受けた印象である(そう言えば、アンドレのラップの中にはスティーヴィー・ワンダーの名前が織り込まれていた)。これは熱い。レジェンドは途中からピアノの上に乗って熱演(ビリー・ジョエルみたい)。“Yeah!”のコール&レスポンスで曲は最高潮に達した。一度フィニッシュした後、リプライズの演奏に乗ってバンドメンバーを全員紹介。第1部、ジョン・レジェンドのショウは大盛り上がりのうちに終わった。終演は午後9時ちょうど。まるで計っていたかのようにきっかり50分のショウだった。

 後でセットリストを書き出してみたら、50分で14曲も演っていた(「Alright」とメドレーにされた「I've Been Watching You」を入れると15曲)。1曲1曲をコンパクトに纏めている上、ガンガン曲を繰り出してくるので、僅か50分とはいえ、かなりの見応え・聴き応えがある。

 ただ、これはレジェンドのショウの基本的なスタイルでもあったりする。レジェンドはライヴで曲をあまり引っ張ることはなく、手堅い演奏でいつも次から次へと歌(楽曲)を披露していく。'07年の来日公演を観た時は、その辺が逆に物足りなかった。せっかく曲が盛り上がってきたと思ったら、さっさと終わって次の曲へ行ってしまうし、バンドの面々が主張するようなライヴらしい場面もあまり見られない。1曲1曲のパフォーマンスは良くても、3~4分の曲が2時間近くひたすら連発されるだけだと、どうしてもダレてしまう。ショウ全体としてはかなり淡泊な印象を受けたのだが、今回の公演の場合、次々と曲を繰り出す聴かせ方が、50分という尺で見事に映えた。知名度の高い1stと2ndの曲を中心にしたセットリストも、自分のために集まったわけではない観客を相手にした前座公演という点を考えれば妥当だろう。おいしい曲がたくさん聴けたし、50分という時間の割には、やたらとお得感のある充実した内容だった。もうちょい演って欲しいなと思うところで終わったので、丁度良かったのかもしれない。他にもまだまだ聴きたい曲はあった。「Heaven」「Number One」「Again」「Show Me」……。定番クライマックスの「So High」もこの日は演らなかった(レパートリーには入っているが、ラスベガス公演では外された。セットリストは日によって微妙に変えているようだ)。いい曲が本当にいくらでもある。「Wake Up Everybody」も演って欲しかったが……。

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ジョン・レジェンドの1st~3rd(2004~08)と、ザ・ルーツとの共演アルバム(2010)

 私はレジェンドの3rd『EVOLVER(直訳:進化する者)』があまり好きではない。発表当時、一度聴いてすぐに放り出してしまったし、いま改めて聴き返しても“なんだかなあ”という気がする。音が好みでない、ということではない。個々の楽曲やサウンドはそれなりに楽しめる。中でも、アルバムの性格を決定付けている「It's Over」「Quickly」「Satisfaction」あたりは、知らない新人歌手の作品だったら、むしろ積極的にファンになってしまいそうなほどカッコいいと思う(あまり大きな文字では書けないが、この記事を書きながら今更ながらにハマっていたりする)。看板曲「Green Light」にしても、アウトキャストのアルバムに入っていれば素直に楽しめただろう。カッコ良ければそれでいい、という聴き方もあるが、しかし、これがジョン・レジェンドである必要があるのか、という疑問が私にはどうしても拭いきれないのだ。この“進化”はあまりにも安易ではないか。他人のふんどしで相撲をとっているようにも見えるし、今回のラスベガス公演の熱演を見せられると、『EVOLVER』のテクスチュアに改めて借り物っぽさを感じてしまう。終盤のスロー「I Love, You Love」などは文句なしに傑作だと思うし、ライヴでの「Green Light」の快演にも驚かされはしたが……。中途半端に面白いから扱いに困る。
 『EVOLVER』は、ちょっと優等生的に纏まり過ぎる嫌いもあった彼の作品が大きく殻を破った点、あるいは、職業作曲家としてのレジェンドの懐の深さが確認できる点で面白いアルバムだとは思う。今時のサウンドを取り入れるのは悪いことではない。攻めの姿勢も買いたい。ただ、もっとレジェンド流でやって欲しいのだ。私はもっと熱いガチンコのレジェンドの音が聴きたい。

 今回、シャーデーの前座で観たレジェンドのショウは、決して“未来の伝説”を予見させるようなものではなかったが、それでも、“伝説”が今なおリアルであることを示す素晴らしいものだった。次のアルバムでは、“進化”ではなく、是非とも“深化”したジョン・レジェンドを聴かせて欲しい(『EVOLVER』と『WAKE UP!』の真ん中を行くことができれば最高だと思うのだが)。


01. Rolling In The Deep
02. Hard Times
03. Used To Love U
04. Alright - I've Been Watching You (Move Your Sexy Body)
05. Dreams
06. Let's Get Lifted
07. Slow Dance
08. P.D.A. (We Just Don't Care)
09. Save Room
10. I Can Change
11. I'll Go Crazy
12. Everybody Knows
13. Ordinary People
14. Green Light

20:10 - 21:00

September 3, 2011, MGM Grand Garden Arena, Las Vegas
Personnel: John Legend (vocals, piano), Eugene Roberts (keyboards, musical director), Kenny Wright (bass), Rashid Williams (drums), Shon Hinton (guitar), Allen Arthur (sax), Clayton Riley (trumpet), Brent White (trombone), Lacey Jones, Ashley Simpson, Natalie Imani (backing Vocals)

※「Alright」とメドレーにされた曲がパーラメント「I've Been Watching You (Move Your Sexy Body)」であることは、本記事の公開と同時にYouTubeに音源を上げた時点で初めて分かった。動画のコメント欄で教えてくれた人がいたのだ(アップしてから僅か数時間後、超速攻でご指摘を頂いた)。これに伴って記事の該当箇所を一部加筆・修正した。指摘してくださったMaqumvaArkestraさん、本当にどうも有り難うございました。


WAITING FOR THE THREE LITTLE BIRDS

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レジェンドの機材を片付け始めるローディーたち(午後9時2分撮影)

 午後9時。ジョン・レジェンドのショウが終わると客電がつき、ステージに大勢のローディーが出てきてセットの交換を始めた。この時点でステージに幕は下りておらず、彼らが機材を片付ける様子が客席からすべて見えた。私は作業の一部始終をずっと興味深く眺めていた。

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セット交換と並行して照明のチェックも行われる(午後9時3分撮影)

 最初、ステージは暗かったが、そのうち青い照明がついた。レジェンドの部で使用されていなかったステージ後方やステージ縁の照明が輝き、また、一瞬ではあるが、後方の壁の全面を占めるメイン・スクリーンに「Skin」で登場する熱線のイメージも映った。セット交換と同時に、シャーデーの部で使用する照明やスクリーンの動作チェックをしているのだ。このインターミッションの間、ステージ両脇のサブ・スクリーンには再び『THE ULTIMATE COLLECTION』のシャーデーの顔写真が左右対称で映し出されたが、レジェンドの部の開演前に見られた天井付近の広告はすべて消灯していた。

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てきぱきと機材を片付けるローディーたち(左=午後9時3分撮影/右=午後9時11分撮影)

 レジェンドの機材はあっという間に片付けられていった。ステージの上は完全に何もないのっぺらぼう状態になっていく。ステージ前方にあった機材が撤収されると、後方の床に4つの四角い穴が空いているのがよく見えた。ステージ上にシャーデー用の機材は何もセッティングされない。機材はすべてステージの下に隠されているのだ。

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3枚の巨大な幕がステージを覆う(午後9時13分撮影)

 午後9時12分、機材の撤収作業が終わり、ステージ前方に3枚の巨大な黒い幕が下ろされた。僅か10分でセット・チェンジ完了である(速っ)。ステージを覆うこの黒い幕はショウのオープニングで効果を発揮するのだが、これを客電がついた状態で見るのは初めてだった。完全に暗闇の中に溶け込んでいて、遠くから見ると幕があることすらよく分からない。ステージはただ真っ暗な闇に包まれている。

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休憩時間中の場内(午後9時16分撮影)

 ジョン・レジェンドの開演時に6割程度しか埋まっていなかった客席は、この休憩の時点で9割前後埋まっているように見えた。トイレに行ったりロビーに出ている観客も多いので正確には分からないが、最終的にほぼ満席に近い状態になったのではないだろうか。あまりの人の少なさに最初はどうなるかと思ったが、大勢の観客を見て安心した。

 客層は予想通り幅広かった。白人と黒人が半々くらいだろうか(白人の方が微妙に多いかもしれない)。年齢層はかなり高めで、中年のカップルが目立つが、20~30代の若い世代も結構いた。印象的だったのは、裕福そうな人が多いということ。異様な高級感を漂わせた黒人カップルとかがそこら中にいたりして、結構ビビってしまう。ゴージャスに着飾った女性客もちらほら目にした。ラスベガスなので、他と較べて観客のリッチ度は高かったかもしれない。ちなみに、私の右隣りに座っていたのは若い白人女性2人組、前は中年白人夫婦、後ろは年齢不詳の黒人男性だった(左側は通路)。日本人、もしくはアジア系は、私の周囲では一人も見かけなかった。

 '01年ツアーのライヴ映像『Lovers Live』には、シャーデーのコンサートに集まった観客の姿がたくさん映っている。あの会場の様子を私はずっと遠い世界の光景として眺めるだけだった。その光景が今、自分の目の前に広がっている。あの幸福な観客の一人に自分がなっていると思うと、とても不思議な感じがした。休憩時間の間、私は自分の席に座ったまま完全に放心状態で、ただただ場内をキョロキョロと見回していた。

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シャーデーの登場を待つ観客たち(午後9時36分撮影)

 休憩が何分あるのかは分からなかった。場内アナウンスは一切ない。日本だと“場内での写真撮影・録音・録画等は……”とか“間もなく開演です”とかいうアナウンスがあるものだが、何もない。一体いつ始まるのか。午後9時半、レジェンドの部が終わって30分経過しても開演する気配はなかった。

 とはいえ、私は開演時にきちんと合図があることを事前に知っていた。休憩時間の間中、場内にはずっとBGMが流れている。このBGMがボブ・マーリーの「Three Little Birds」に変わったら、それが開演の合図なのだ。この曲が流れた後、客電が落ちてショウが始まるのである。私はこれがいつ来るかと思って、ずっとドキドキしていた。BGMにはプリンス「I Feel For You」、デヴィッド・ボウイ「Golden Years」などが流れていたのを覚えている。

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本当にシャーデーは登場するのか?(午後9時37分撮影)

 この期に及んでも、私はもう少しでシャーデーが目の前に現れるということが信じられなかった。第一、彼らはちゃんとラスベガスに到着しているのだろうか? このラスベガス公演の前日、シャーデーはアリゾナ州フェニックスで公演している。翌日にはカリフォルニア州オンタリオでの公演が控えている。ラスベガスは3夜連続公演の真ん中だった。ちゃんと移動できているのだろうか? 途中で倒れたりしていないだろうか?

 ラスベガス公演は北米ツアー(全54公演)の中で49公演目、世界ツアー初日のフランス、ニース公演から数えると、ちょうど70公演目に当たる。4月29日のツアー開幕以来、私はYouTubeに投稿されるオーディエンス撮り動画で、それらの公演の様子をすべて見てきた。4ヶ月間、パソコンのモニターを通して追いかけ続けてきたシャーデーの世界ツアー。その現場に、いま自分がいる。まだ誰も観ていない70公演目が、今まさに目の前で始まろうとしている。この時の興奮を、私はとても言葉で説明することができない。

 休憩時間はちっとも長いと感じなかった。私はいつまでも待っていられた。むしろ、ずっと待っていたいとさえ思った。あと数分でシャーデーが観られる──この幸福な瞬間がいつまでも続けばいいと思った。私は席に座りながら完全に時間の感覚を失っていた。それはまさに夢を見ている時と同じ状態だった。

 午後9時45分。突然、場内BGMの音量が大きくなった。
 MGMグランド・ガーデン・アリーナに“三羽の小鳥”がやって来た。
 
(続く)


※写真はすべて筆者撮影(クリックで拡大可)

Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 1)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 2)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 3)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 4)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 5)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 6)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 7)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 8)
Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 (part 9)

Soldier Of Love Tour [2011]
Soldier Of Love Tour on YouTube

| Sade @ MGM Grand Garden Arena 2011 | 22:50 | TOP↑

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