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takeSomeCrime──地下室のクール・キャット



 この部屋をご存じだろうか?

 板張りの壁に鮮やかな緑色のカーペット。納屋のような雰囲気の室内には、床の緑によく映える赤いソファが2台と、大きなボーリング球のような赤い球体がひとつ置かれている。右奥の角のソファにはストラトキャスターが立てかけられ、その反対側の角にはギターアンプが見える。アンプの手前のソファには大抵ルービックキューブが転がっている(6面揃っていることもあれば、やりかけの時もある)。正面の壁の右上にある小窓──その奇妙な位置から、ここが地下室だということが分かる──は常に白いカーテンが覆い、外から差し込む強い光を遮断している。小窓にはカーテンと一緒に白いソックスが一組ぶら下がっている。

 この部屋を見てすぐに“あ!”と思う人は、恐らくかなりダンスが好きな人だろう。この見知らぬ他人の部屋に、もしかすると今日からあなたは愛着を感じるようになるかもしれない。この部屋の主──Take Some Crime(あるいは、Forsythe)と名乗るカナダの青年──がこの記事の主人公である。


COOL CAT IN THE BASEMENT

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大ヒット動画「Catgroove」

 Take Some Crimeに関する情報は極めて少ない。彼の本名、生年月日、生い立ち、所在地等はすべて謎に包まれている。彼は自分の素性をあまり明かしたくないようだ。はっきり判っているのは、彼がカナダのどこかに住む20代の白人青年であること(学生らしい)、そして、ある時、父親から贈られたビデオカメラで試しに自分の踊る様子を撮影し、その動画をYouTubeに投稿するうちに世界中の注目を集めるようになってしまったということである。

 YouTubeには自分の踊る様子を撮影して投稿する無名の素人ダンサーたちが大勢いる。この青年もそうしたダンサーのうちの一人なのだが、彼の動画の人気ぶりは群を抜いている。彼のYouTubeチャンネル〈takeSomeCrime〉は、'12年1月現在、合計動画再生数約2千万回、チャンネル登録者数約4万人。これまで投稿された150本近くの動画は、いずれも彼が踊っている様子を固定カメラで普通に撮影したものである。音楽には既成曲が使われているものの、無名ダンサーの何の変哲もないダンス動画がここまで注目を集めるというのはすごい(名のあるダンサーでもこれだけの視聴数を集めるのは容易でないだろう)。

 まずは彼の代表的なダンス動画「Catgroove」を見てもらいたい(上の画像をクリック)。これは彼の動画の中で最も視聴されているもので、'10年2月20日に公開されて以来、現在まで約700万回にも及ぶ再生回数を稼いでいる。

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エレクトロ・スウィング関連作──パロヴ・ステラー、ミスター・スクラフ、ヴァルデック

 動画で使われている「Catgroove」は、オーストリアのエレクトロ・スウィング・ユニット、パロヴ・ステラー Parov Stelarのアルバム『COCO』(2009)の収録曲である(パロヴ・ステラーは基本的にMarcus FurederというDJの個人プロジェクトだが、“Parov Stelar Band”としてバンド活動も展開している)。“エレクトロ・スウィング”というのは、古いスウィング・ジャズをハウスやブレイクビーツで現代風に料理したダンス音楽の総称。'00年代末頃からヨーロッパを中心にかなり流行っているようで、同種の曲を集めた編集盤もたくさん出ている。ミスター・スクラフ Mr. Scruff の「Get A Move On」(1999)という大傑作曲を覚えている人も多いと思うが、基本的にああいう感じのサウンドである。個人的には、パロヴ・ステラーと同じオーストリアのユニット、ヴァルデック Waldeck の『BALLROOM STORIES』(2007)がリスニング向け&レゲエ~ダブ風味で結構気に入っている(ヴァルデックはもともとマッシヴ・アタック風のトリップホップ・ユニットだったが、この3作目でいきなりエレクトロ・スウィングに化けた)。

 さて、私が音楽ジャンルの説明をしている間に動画はご覧頂けただろうか。アップテンポのエレクトロ・スウィング「Catgroove」に乗って、カナダの無名の青年は実に魅力的なダンスを披露している。完全な一発撮りのワンショット映像で、しかも、踊りは全くのアドリブである(振付が考えられていないことは、曲の終わり部分で彼が慌てて動きを止める点からも窺い知れる。恐らく彼は事前に曲自体もあまりよく聴き込んでいないのだ)。しかし、このご機嫌なダンスはどうだろう。曲のフィーリングを完璧に捉え、完全に音楽と一体化している。まるで音楽を目で見るようではないか。最初から最後までとにかく目が釘付けにされる。

 彼が踊っているダンスのスタイルは、基本的に“テクトニック”と呼ばれるものである(“ミルキーウェイ”とも言う)。テクトニックは'07年頃をピークにフランスのパリで爆発的に流行ったストリート・ダンスで、一般的にテクノやエレクトロに合わせて踊られる。ワッキング、ポッピング、ロッキング、ブレイキングといった昔からあるダンス・スタイルをごちゃ混ぜにしたような踊りで、ひとつひとつの動き自体に特に目新しさはないのだが、動きの組み合わせ、音楽との組み合わせ方が新鮮だった。最も特徴的な要素は、腕をぶんぶんヌンチャクのように振り回すワッキング(ヴォーギングのディスコ版のような踊り。パンキングとも言う)と、ポッピング(パントマイム風ダンス。MJがよくやる変な動きのダンス)だろうか。ステップはブレイキング(頭で回ったりするアクロバティックなダンス。Bボーイングとも言う)の立ち踊り風なところもある。趣としては、'80年代にエレクトロ・ファンクに合わせてよく踊られたポッピングとロッキング(これはちょっと説明が難しいが、ポンコツ・ロボットが体操しているようなコミカルで忙しないダンス。よく動きが止まる。腕の動きはワッキングと似ている)の混合スタイルにちょっと近いかもしれない(あるいは、近くないかもしれない)。言葉で説明しても伝わらないので、結局、YouTubeで見てもらった方が早いかもしれない。

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リンディ・ホップ──Leon JamesとWilla Mae Ricker(1942/ジョン・ミリ撮影)

 テクトニックをベースにしながら、彼は他にも色んな面白い動きを見せている。中でも抜群のハマリ具合を見せているのが、山高帽を使ったコミカルなアクションと、チャールストンのステップである。チャールストンは'20年代後半に世界規模で大流行した軽快なフットワークが特徴のダンス。動画の中で彼が何度も見せる、脚を前後に組み替えながら片脚を大きく振り上げて横に回すような動きがそれである。チャールストンの軽やかなステップは、'30年代以降、リンディ・ホップ(男女ペアで踊られるアクロバティックな黒人ダンス。ブレイキングの先祖)の土台にもなった。つまり、エレクトロ・スウィングがネタにしている往年のスウィング・ジャズで実際に踊られていたステップを彼はやっているのである。チャールストンはブレイキングの立ち踊りのルーツのようなダンスでもあるので、エレクトロや(スウィング感を伴った)ヒップホップのような現代的なダンス音楽とも相性がいい。この古くて新しいステップが、ノスタルジックなエレクトロ・スウィングのサウンドと完璧にマッチして、何とも小粋で鯔背なムードを醸し出しているのである(実際に彼が参考にしたのは、リンディ・ホッパーのアル・マインズ&レオン・ジェイムズ Al Minns and Leon James の'50年代の映像だと思うが)。

 ダンスの他に、黒スーツに山高帽というスタイリッシュなファッション、背景になっている彼の風変わりな部屋も実にいい味を出している。後半で帽子と上着を脱ぎ捨てるあたりも最高だ。私はダンスの専門家ではないので、技術的なことはよく分からない。しかし、乗りとセンスだけで踊っているようなところが本当にカッコいいと思うし、逆にそこが普通のプロにはちょっと出せない味ではないかとも思う。勢いまかせの彼のダンスは、見ていてとにかく気持ちがいいのだ。あまりに気持ち良くて、何度も何度も見てしまう。全く低予算もいいところだが、私はこの映像作品(敢えて“作品”と呼びたい)を、往年のミュージカル映画の名ダンス場面や、マイケル・ジャクソンのショート・フィルムなどと比較しても、何ら引けを取らない大傑作だと思う。この男はすごい。

 彼のダンス動画は、基本的にどれも自室の奇妙な地下室──緑のカーペットが敷かれた納屋みたいな部屋──で撮られている。「Catgroove」同様、大抵が固定アングルのワンショット映像で、1曲通して行き当たりばったりでひたすら踊りまくるというのが彼の動画の大きな特徴である。最近のメジャー映画や音楽ヴィデオのダンス場面は、やたら速いカット割りや派手なエフェクト処理のせいで、ダンサーが何をやっているのかよく分からなかったり、動きがSFXにしか見えないようなものが多い。ゆえに、こうした往年のミュージカル映画のような素朴でドキュメンタリー的なダンス映像は逆に新鮮である。視聴者は純粋にダンスだけを見ることができる。彼のダンス動画の魅力のひとつは、この一発撮りのワンショット映像がもたらすライヴ感の高さにある。


THE WORLD OF TSC - FORSYTHE, GUILE, OGG

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フォーサイス名義のダンス──ハイカラ系?

 面白いことに、彼は3つの名前を持っている。ダンスや音楽のスタイルに合わせて、ダンサー名義を使い分けているのである。3つの個性は本人によって明確に説明が与えられているわけではないが、パフォーマンスを見比べると、それぞれ何となく特徴や傾向があるのが分かる。

 3つの中で最も代表的かつキャッチーなのは、「Catgroove」でも使われている“フォーサイス(Forsythe)”という名義によるダンス。クールでクラッシーでスタイリッシュ、とにかくご機嫌でノリノリなのがフォーサイスの特徴と言えるだろうか。スーツやハットでドレスアップしていることが多く、いかにも洒落者といった感じである。中にはステッキを使ったパフォーマンスもある(ステッキさばきはちっとも上手くないが)。普通、テクトニックはカジュアルなストリート・ファッションで踊られるものだが、彼はそこに色々と捻りを加えて遊んでいるわけである。「Catgroove」のダンスが気に入った人は、まずこのフォーサイス名義のダンス動画をチェックするといいだろう。特に「Catgroove」と同時に撮影・公開された「Your Man」(画像1段目左)は、「Catgroove」と甲乙つけがたい必見の傑作だ。フォーサイス名義のダンスでは音楽にエレクトロ・スウィング(主にパロヴ・ステラー)が多く使われているが、中にはジャミロクワイで踊っている動画(画像4段目右)などもある。尚、リアルボーイ「The Ritz」(画像2段目右)は、アステアの代表曲だった「Puttin' On The Ritz」のエレクトロ・スウィング版である。

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ガイル名義のダンス──マッスル系?

 フォーサイスと同じくらい個性的なのが“ガイル(Guile)”名義のダンス。特徴はハードでワイルドでアグレッシヴ。かなりアクロバティックな動きも見られる。上半身裸で踊っていることもあり、筋肉系と言うか、格闘技系と言うか、非常に闘争的な踊りを見せるのがこのガイルである。踊りながら自分の肉体の可能性を探求しているようにも見える。クレイジーで笑える要素もあり。彼は子供の頃から空手を習っていたそうで、その影響が最も如実に顕れているのがガイル名義のダンスではないだろうか(実際、彼のダンス歴は、父親から貰ったカメラで試しに自分が空手をやる様子を撮影したところから始まっている。何となく音楽をかけたら、空手がそのままダンスになってしまったのだという)。音楽にはスクリレックス等、主にロック寄りのアグレッシヴでグリッチーなエレクトロが使われている。

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オッグ名義のダンス──何でもあり系?

 3つの名義の中で最も個性がよく分からないのが、“オッグ(Ogg)”である。エレクトロ・ジャズを使ったフォーサイス的な踊りもあるし、ガイル風の闘争的な雰囲気もある。ただ、特徴と言っていいかどうか分からないが、このオッグ名義のダンスからは全体的にかなりアブストラクトでエクスペリメンタルな印象を受ける。自分の持っているスタイルをすべて統合したフリースタイルがオッグなのかもしれない。使われている音楽にも一貫性がないが、エイフェックス・ツイン(画像3段目左)やスクエアプッシャー(画像3段目右/義足ダンスって何だよ……。ペッグ・レッグ・ベイツ?)を使った踊りには、オッグの実験的で進歩的な側面がよく顕れているような気がする。

 彼のダンスはすべてこれら3つの名義で振り分けられているわけではなく、名義なしのダンス動画も多い。彼自身、自分のスタイルを模索中で、これらの方向性はまだ漠然としたものに過ぎないようだ。いずれにせよ、これらを見てはっきり分かるのは、彼が即興性に重点を置いたダンスを追求しているということである。彼は振付によって“完成された”踊りというものを目指していない。失敗しても彼は撮り直さない。乗り一発勝負の意図されないスポンテニアス(自発的・自然発生的)な身体の動きこそ、彼のダンスの最大の魅力である。こうした試み(セッション)のひとつひとつが、YouTubeというメディアによって立派にエンターテインメントになってしまうという点も実に面白いと思う。


TSC IN EARLY DAYS

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Take Some Crimeの初期のダンス

 彼は'06年7月11日に現在のYouTubeアカウント(takeSomeCrime)を取得しているが、最初の動画が投稿されたのは、それから1年以上経った'07年11月7日のことだった。彼がダンスを始めたのもちょうどその頃だったという。最初の動画「Dance learning」(画像左)を見ると、踊りにはまだ素朴さが感じられるものの(部屋のレイアウトも後年とかなり違う)、きちんと様になっていてちょっと驚かされる。空手経験者で、もともと身体を使うことに慣れていたにせよ、ダンス初心者でここまで踊れるというのは大したものではないだろうか。大反響を巻き起こすことになる傑作ダンスを彼がものにしたのは、それから約2年3ヶ月後の'10年2月。「Catgroove」はちょうど50本目の動画だった。

 本人も認めていることだが、踊り始めた当初、彼はフランスのダンサー、スポーク Spoke から莫大な影響を受けていた。スポークはSMDBという3人組ダンス・チームのリーダーで、テクトニック(ミルキーウェイ)の最大のスター・ダンサーである。見比べるとよく分かるが、Take Some Crimeの初期の踊りはスポークそのまんまである。スポークは(私の見る限り)テクトニックの踊り手の中でも動きがとにかく抜群に滑らかで、ポッピングの要素が強いところが特徴である。スポークのダンス・スタイルはSMDBの公式YouTubeチャンネル(SMDBspoke)で公開されている'07年初頭の動画3本(1 2 3)でよく分かるが、その中にはTake Some Crimeの動きの元ネタがいくつも発見できる。カナダの空手少年は、YouTubeでスポークのようなストリート・ダンサーたちの映像を見ながら独学でダンスを習得していった。彼のダンスの中には今でもスポークの影響が残っているが、前述の3つの個性からも分かる通り、十分にエピゴーネンの域を脱して独自のスタイルを作っていると思う。

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ゾンビ・ダンス(左)、初心者向けダンス講座(右)

 初期の動画でちょっと変わっているのは「Dayn & Daladubz - Fog (Zombie)」(画像左)。上半身裸でネクタイをしてゾンビ風に踊っている。「Thriller」とは一味違うゾンビ・ダンスが楽しめる(笑)。「Tutorial - Basic Hipwork/Footwork」(画像右)では、彼が初心者向けにダンスの基礎を教えてくれる。この中で彼は“ランニング・マン”(その場で走っているように見せるトリッキーなステップ。ジャネットMCハマーが昔やっていたアレ)のやり方を非常に分かりやすく教示している。彼のやるランニング・マンは実にフォームが美しい。これは出来るようになると楽しいので、彼をお手本にして覚えてみては如何だろう。

 初期のダンスを見ても感じるのは、音楽に対する彼の感度の良さである。ストリート・ダンスにはバトルの要素があるため、ダンサーは技を誇示することに気を取られやすい(と思う)が、彼の場合、単純に自分の趣味で踊っているせいか、動きを音楽に押しつけている感じがまるでない。音に対してごく自然に身体が反応しているような印象を受ける。まるで音楽を身体で翻訳しているようなのだ。だから彼のダンスは見ていて気持ちがいい。見ているとこっちまで踊っているような気になってくる。私は音楽に対する彼のこの正直さが本当に素晴らしいと思う。


TSC GOES OUTSIDE

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「Baby I'm Yours」──フォーサイス名義の激クールなダンス

 Take Some Crimeの動画はいつも自室内で撮影されているが、稀に屋外で踊っているものもある。その中で是非見てもらいたいのが、「Catgroove」の約半年後に公開された上の動画である(当ブログの'12年1月2日の記事で新年の挨拶代わりに紹介したもの)。ブレイクボットのエレクトロ・ディスコ「Baby I'm Yours」に乗って、黒スーツに白ハットを被った彼が路上で踊りまくる。名義はフォーサイスで、とにかくノリノリである。このシャープで軽やかな動きはどうだろう。背景のレンガの壁がマイケル『OFF THE WALL』ジャケの壁に見えてくるのは私だけだろうか。死ぬほどカッコいい。華麗な足さばきが見られる足下のクロースアップ・ショットも最高である。同時に公開された足下だけを見せる別ヴァージョン動画も必見だ(『フットルース』の傑作オープニング場面を思い出させる)。

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日本で踊るTSC

 実は彼には来日経験がある。'10年初夏に公開された複数の動画で、なんと彼は日本で踊っているのである。渋谷駅前のスクランブル交差点や日光(渋い)など様々な場所で踊る様子が確認できる。いずれも駅構内などの公共の場でゲリラ的に撮影されている。彼は一体何のために日本を訪れたのか……? どうでもいい情報だが、東武日光駅構内で撮影された動画(画像下段右)に映っている“ザ・金谷テラス”は、'08年3月にオープンした金谷ホテル直営の喫茶店である。


TSC BREAKS OUT OF THE INTERNET

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ドイツのテレビCM(左)、モナーキーのライヴ(右)で踊るTSC

 YouTubeでの彼のダンス活動は次第にアーティストやメディアの注目を集めるようになった。まず最初に声を掛けてきたのは、「Catgroove」の生みの親、パロヴ・ステラーだった。ダンス動画「Catgroove」の公開から5ヶ月後の'10年7月17日、カナダの無名ダンサーは、ウィーンで毎年開催されている巨大慈善イベント〈Life Ball〉でパロヴ・ステラーのショウに招かれ、彼らと夢の共演を果たした。「Catgroove」演奏時には、動画と全く同じ格好をしてステージ中央で踊り、見事に主役を務めている(YouTubeでその公演の様子を見ると、複数の曲で踊っているのが分かる)。当時、「Catgroove」動画は再生数100万回にも届いていなかったそうなので、これは大抜擢と言える。

 '11年には、UKのシンセポップ・デュオ、モナーキーのコーチェラ・フェスティヴァルでのショウに招かれ、「Love Get Out Of My Way」という曲でダンスを披露した(画像右/4月15日。当日観客が一緒に踊れるよう、1ヶ月前に彼のチャンネルの「Monarchy - Flashmob Dance for Coachella」という動画で振付が公開されている)。また、同年には、ドイツの大手通販会社、MyBestBrandsのテレビCMにダンス動画「Catgroove」が使用された(画像左/CGで室内に商品が合成されている)。ネットを飛び出して遂にお茶の間まで進出してしまったTake Some Crime。現在、彼はAgency 4 Artistsという事務所に所属し、セミ・プロのような状態になっている。

 尚、“Take Some Crime”というのは飽くまで彼のYouTubeチャンネルの名称であり、彼の正式な芸名は“フォーサイス”だそうである(事務所のプロフィールでも彼はこの名前で紹介されている)。但し、一般的に彼は“Take Some Crime”という名称で認知されていて、ほとんどの人が彼のことをチャンネル名、もしくは、それを略した“TSC”の3文字で呼ぶ。“フォーサイス”は前記の3つのキャラの中のひとつだが、要は、まず基本的にフォーサイスという名前があり、そこから外れるスタイルのダンスを踊る時のために、新たに2つの名義が使われるようになったということらしい。


EVERYBODY FOLLOWS TSC

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TSCに触発された動画の数々

 Take Some Crimeのダンスは世界中の人々を魅了し、次々とフォロワーを生んでもいる。YouTubeには彼のダンスに触発された動画がたくさん投稿されている。彼の踊りを見ると、誰でも“自分もこんな風に踊りたい!”と思わされる。ダンス経験がないような人も立ち上がらせてしまうところが彼のすごさである。TSC風に踊る素人ダンス動画の他に、山高帽を被りながら「Catgroove」に乗ってジャグリングをする珍動画(画像3段目右)や、ブラジルのアニメーターたちが「Catgroove」のダンスをアニメ化した力作トリビュート動画(画像4段目左)などもある。彼の踊りはダンス・ファンだけにアピールするものではない。これらを見ると、彼の踊りがいかに多くの様々な人たちから愛されているかがよく分かる。
 TSCフォロワーの中で私が最も感銘を受けたのは、フォーサイスのダンス動画「Booty Swing」を見ながら夢中で踊りを真似る幼い姉弟の姿である(画像1段目)。この幼児たちのテンションの上がりっぷりはどうだろう。子供は正直である。彼の踊りには、誰もが釣られて身体を動かしてしまう魔法のような力がある。彼のダンスは全く音楽そのものだ。


TSC MOVES AWAY FROM THE BASEMENT?!

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新しい白い部屋で踊るTSC

 Take Some Crimeと言えば緑のカーペットの奇妙な地下室がトレードマークだったが、どうしたわけか、最近の動画でその部屋は見られなくなっている。'11年11月1日公開の動画を最後に、視聴者が長年慣れ親しんだカナダの地下室は彼の動画から姿を消してしまったのである。しばらく外で撮られた動画が続いていたが、'12年1月に入って、新たに白い部屋が動画に登場した。これは彼のチャンネル始まって以来の大事件である。彼は引っ越してしまったのだろうか?

 真相を突き止めるべく、私はフォーサイス本人から直接話を聞くことにした。彼のキャリアは分からないことだらけである。あなたの記事を書きたいから不明な点について教えてくれ、とメールで簡単な質問状を出したところ、約27時間後に感動的な回答メールが返ってきた。彼は私の問いにひとつひとつ非常に丁寧に答えてくれたのだった(結局、私たちのメールのやりとりは1週間ほど続いた)。

 次回、日本初となるフォーサイス(Take Some Crime)の独占インタヴューをお届けする。



takeSomeCrime──独占! 踊る空手インタヴュー

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