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Is It A Crime? [video]

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IS IT A CRIME? (1985)
Directed: Brian Ward

 「Is It A Crime」は『PROMISE』からの第二弾ヴィデオで、同じくブライアン・ワードが監督した先行の「The Sweetest Taboo」ヴィデオから繋がる形式をとっている。それぞれ独立していながら、同時にストーリーや演出に連続性があるヴィデオという点では、個人的に同時期のアーハ「Take On Me」~「The Sun Always Shines On TV」、あるいはロバート・パーマーの一連のモデルお姉ちゃんシリーズが印象深いが、こうした続きものが作られるのも、あの手この手のアイデア合戦が白熱していた'80年代半ばの音楽ヴィデオ全盛期ならではという感じがする。

 恋人との幸福な日々が追想される前編「The Sweetest Taboo」、そして後編「Is It A Crime」では、別れた両者の現在の想いが交錯する。場所は同じくマンハッタンのロフト=シャーデーのリハーサル・ルームという設定(但し、アデュの服装は異なる。ちなみに、ここでの衣装はライヴ・エイド出演時と同じ)。クサいことはクサいが、歌詞を踏まえて観賞すると、なかなかに良くできた味わい深い連作ヴィデオである。


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 ロフトで歌うアデュ、そして同じくニューヨークにいる元恋人の男、この両者を交互に見せながらヴィデオは進行する。アデュの回想するスペインのアルメリアで、男は優しくタフな感じの堅気風だったが、現在では印象が一変し、ダークスーツにループタイ、髪をオールバックにした不良中年と化している。男のこの豹変ぶりが、時間の悲しい経過と現在の両者の距離を端的に物語る。街頭に立つ子分のような人物に平手打ちを喰らわせて怒鳴りつける冒頭場面から察するに、男は恐らくヤクザな商売に手を染めている(怒っているのは稼ぎを巡ってだろう。ポン引きか売人?)。苛つきながら男はタクシーを拾い、どこかへと向かう。

 「The Sweetest Taboo」では、2人がスペインで過ごした日々がアデュによって追懐されるが、ここでは逆に男の側から回想されるのが大きな違いだ。裸で泳ぐ麗しいアデュ。喧嘩をして“大嫌い!”と叫ぶ蓮っ葉なアデュ。様々な記憶がタクシー内の男の脳裡に去来する。喧嘩の場面が何度も回想されるので、これが破局の引き金だったのだろう(この回想場面に登場するソバージュ頭のアデュはジョディ・ワトリーのようで、まるで別人である。こんなアデュは嫌だ)。
 一方、アデュは窓際で男への想いを切々と歌う。曇りガラスの "Temor"(=Fear/恐れ)というスペイン語は、前編「The Sweetest Taboo」の最後、その日の夕暮れ時にアデュが指で書いたものである。2人とも互いに未練を感じていながら、“恐れ”が決定的な距離を生んでいるということか。この "Temor" というキーワードは、半分スペイン語で歌われる「Fear」(『PROMISE』収録)とも繋がる。

 タクシーを降りた男。男が向かっていたのは、アデュがいるこのロフトだった。男が着くと既に部屋は暗く、誰もいない。窓際で男はアデュの書いた "Temor" の文字を目にする。驚きと共にしばし黙考した後、忌々しそうにこれを手で拭き消し、男がその場を去るところでヴィデオは終わる。よくある恋のすれ違い。この後も2人が縒りを戻すことは、恐らくないのだろう。そう、これはやはり“イケない恋”なのである。

 ところで、このヴィデオの舞台がマンハッタンに設定されているのは、歌詞の中に“エンパイア・ステート”が登場するからに違いなく、よく見ると、男を乗せたタクシーが走る風景の中にHotel Empireのネオンを見つけることもできる。
 また、"Temor" の文字が窓に残っていることで、男がロフトを訪れたのがこのリハの同日で、しかもアデュたちが去ってからそう長く時間が経っていないことが知れるが、窓の外の明るさに注目すると、「The Sweetest Taboo」~「Is It A Crime」の2曲にわたって、きちんとその日の時間の経過が表されていることも分かる。「The Sweetest Taboo」ではまだ明るい夕暮れ前、「Is It A Crime」では空が赤く染まった夕方、そして、男が到着するのが完全に日が落ちた夜更けなのだ(ちなみに、ロフト場面の撮影場所は、実際のニューヨークではなく、ロンドンのタワー・ブリッジ近くのスタジオ。窓の外の景色は全く人工的なものである)。


 さて、こうしたメロドラマが盛り込まれたヴィデオではあるが、私が最も好きなのは曲が始まる前の冒頭部分だったりする。

 このヴィデオは、シャーデーのリハーサル場所になっているロフトの部屋に、着替えを済ませたアデュが入ってくる場面から始まる(手には「The Sweetest Taboo」で着ていた茶色のボレロとジーンズを持っている)。他のメンバーは彼女なしでリハをしており(「Wired」を演奏している)、そこに“お待たせ~”という感じでアデュが現れるのだが、そこで彼女がお色直しの成果を披露して愛嬌を振りまくシーンがまず良い。紅一点の登場で野郎だらけの場の空気が変わり、にわかに活気づく。このヴィデオは単体だと、アデュがリハに遅刻してきたようにも見えるのだが(“何時にどこでと約束する時には、絶対に遅れてくるシャーデーには他の人たちより1時間早い時刻をいっておかなくてはならない”という話が、'93年ツアーのパンフレットに載っている)、実際、彼らのリハーサルというのはこういう雰囲気なのではないかと思わせ、フィクションながらも生々しい、かなり印象的なオープニングになっている。

 また、曲の準備に入るメンバーが一通り映された後、アデュがバンドに向かって微笑むカットが挿入されるが、この笑顔がたまらなく良い。彼女は無表情なクール・ビューティのイメージで売っていたが、そのせいもあって、時たま見せるこうした笑顔が凄まじく魅力的に映る(これならいくら遅刻しても誰も文句を言う気にならない?)。個人的には、これだけでもこのヴィデオはOKである。

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