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Abri──炎のソウル賛歌「Back To The Sun」



 シャーデーの前座を務めた中東の熱きソウル・マン、ハムダン・アル・アブリ。彼のキャリアの礎となった4人組ソウル・バンド、アブリの「Back To The Sun」という曲を拙訳で紹介しておきたい(ハムダン・アル・アブリ、および、アブリについては前回記事参照)。

 「Back To The Sun」はアブリの1stアルバム『SUNCHILD』(2007)で最初に発表され、彼らの2nd『BLANK NOTES』(2009)に大幅にアレンジを変えた再録音版が収録された。聴いて頂きたいのは、この曲の完成形とも言える後者の再録音版である。

 この曲では、他界した過去の偉大な音楽家たち──ジミ・ヘンドリクス、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョン・コルトレーン、ビリー・ホリデイ、ダニー・ハサウェイ、マーヴィン・ゲイ、ボブ・マーリーら──の名前が、実際の作品の引用を交えて次々と連呼されていく。原点(太陽)へ回帰し、彼らの魂を継承していこう、というアブリの姿勢が示された最高に熱いソウル・アンセムである。アブリのみならず、これは“ソウル”を探求するすべての人にとってテーマ・ソングとなり得る曲だと思う。私はこの名曲を一人でも多くの音楽ファンに知ってもらいたい。熱いソウルを探しているあなたは今すぐこの曲を聴くべきだ。




 Back To The Sun
 (Julian Symes/Hamdan Al Abri)
 
 There must be some kind of way out of here
 A famous poet wrote
 And Jimi Hendrix found it
 It seems so long since Jobim's been gone
 But we're still singing his songs
 We surely are
 After Coltrane played his sketches of pain
 The world would never be the same again
 And Billie Holiday
 Sung in such a way
 I can still hear her today
 A flower in her hair
 Power in her stare
 Strange fruit
 
 ここから抜け出す方策があるはずだ(*1)
 ある有名な詩人がそう書いた
 それをジミ・ヘンドリクスが見つけた
 ジョビンが逝ってから久しい
 でも僕らはいまだに彼の歌を歌ってる
 そうだとも
 コルトレーンが苦悩のスケッチを奏でた後(*2)
 世界は二度と同じではなくなった
 ビリー・ホリデイ
 彼女も同じように歌った
 いまも彼女の歌声が聞こえる
 髪に飾られた花
 強烈な眼差し
 奇妙な果実(*3)
 
 I've been searching so long
 Didn't know where I went wrong
 But I heard the answer, In a song
 And don't you know?
 That everybody goes
 Back to the Sun
 Back to where it begun
 
 ずっと探し求めてきた
 いったいどこでどう間違えたのか
 だけど僕は歌の中に答えを聞いた
 いいかい
 誰もが立ち戻るんだ
 あの太陽へ
 すべてが始まった場所へ
 
 And Donny Hatherway passed away
 Before the world had a chance to say
 'Your Everything is Everything is everything'
 We miss the style of your ghetto hymns
 (Talkin bout the ghetto)
 And Marvin, Marvin
 What are we going to do now?
 Who's gonna sing songs of freedom?
 And Bob Marley, Bob Marley
 He's way above the clouds
 And one day, & one day
 The lion will shine again
 
 ダニー・ハサウェイが亡くなった
 世界は彼に言いそびれてしまった
 君の『Everything is Everything』こそすべてだ、と(*4)
 あんたのゲットー讃歌が恋しいよ
 (ゲットーのお話)
 マーヴィン マーヴィン
 僕らはどうすればいい?
 誰が自由の歌を歌うんだい?(*5)
 ボブ・マーリー ボブ・マーリー
 彼は雲の上だ
 いつの日か いつの日か
 ライオンは再び輝くだろう(*6)
 
 I've been searching so long
 Didn't know where I went wrong
 But I heard the answer, In a song
 And don't you know?
 That everybody goes
 Back to the Sun
 Back to where it begun
 
 ずっと探し求めてきた
 いったいどこでどう間違えたのか
 だけど僕は歌の中に答えを聞いた
 いいかい
 誰もが立ち戻るんだ
 あの太陽へ
 すべてが始まった場所へ


(*1)There must be some kind of way out of here ──ボブ・ディラン「All Along The Watchtower(見張り塔からずっと)」(1967)冒頭の一節。“有名な詩人”とはもちろんディランのこと。ジミ・ヘンドリクスのカヴァー版(1968)はあまりにも有名。ディランのオリジナル版では“There must be some way out of here”だが、ジミヘン版では“There must be some kind of way out of here”と歌われている。U2も『RATTLE AND HUM(魂の叫び)』(1988)でこの曲をカヴァーしていたが、アブリとかつてのU2の熱さは似ているかもしれない。彼らはいずれも辺境からアメリカの音楽を発見した若き探求者である。

(*2)Coltrane played his sketches of pain──マイルス・ディヴィス『SKETCHES OF SPAIN』(1960)のタイトルと掛けられている。

(*3)Strange fruit──ビリー・ホリデイの代表曲。邦題「奇妙な果実」。アメリカ南部の黒人差別を告発した歌。リンチにかけられ、木に吊された黒人の死体が“奇妙な果実”と歌われる。髪の花飾りはビリー・ホリデイのトレードマーク。髪を引っ詰めてポニーテールにした後年のビリー・ホリデイの髪型は、シャーデー・アデュのトレードマークにもなった。

(*4)Everything is Everything──'70年発表のダニー・ハサウェイの1st。邦題『新しきソウルの光と道』。「Back To The Sun」では、これに続いて、同作収録の「The Ghetto」から“Talkin bout the ghetto”のリフレインが引用される。「The Ghetto」は観客がリフレインを合唱する『LIVE』(1972)収録のライヴ版が名高い。

(*5)songs of freedom──ボブ・マーリー「Redemption Song」(1980)の一節。'92年に発売されたボブ・マーリーの4枚組CDボックス・セットのタイトルにもなった。

(*6)The lion──ボブ・マーリーが広めたラスタファリ運動を象徴する動物。ラスタファリアンがジャー(神)の化身として崇拝するハイレ・セラシエ1世(エチオピア帝国最後の皇帝)を示す。




Hamdan Al-Abri──中東より魂(ソウル)をこめて

| Man's Man's Man's World | 04:20 | TOP↑

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