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俺だってMJ──金字塔「Thriller」を再現せよ!



 明けましておめでとうございます。今回は新春特別企画として、初詣にも行かず家で寝正月を過ごしている音楽ピープルの皆さんに最高の暇つぶしを提供することにしたい。
 
 '83年12月に公開されたマイケル・ジャクソンの短編ミュージカル映画「Thriller」。ジョン・ランディスが監督したこの音楽ヴィデオの金字塔も、今年で遂に30周年を迎えた(作品については過去記事“マイケルの最強ショート・フィルム10選【第3位】”参照)。劇中の群舞を大人数で踊る試みが世界中で行われていることはよく知られていると思うが、約13分間のショート・フィルムそのものを再現した映像作品もまたたくさん作られていることをご存じだろうか?

 YouTubeには世界中のファンが制作した様々なリメイク版「Thriller」が投稿されている。製作費60万ドルのオリジナル版を、少ない予算や限られた人員で再現しようとする素人たちの涙ぐましい努力は一見に値する。ダンスはもちろん、カメラワークやカット割りまでオリジナルの映像を可能な限り忠実に再現したそれらのリメイク版からは、「Thriller」という映像作品の完成度の高さや、この作品がいかに多くの人々から愛されているかがよく伝わってくる。2013年の正月は、愛すべきリメイク版「Thriller」の数々を見ながら、MJの偉大さを改めて確認することにしたい。

 パロディ映像も多く作られている「Thriller」だが、今回は飽くまで“リメイク”という点にこだわり、笑いを取ることを目的にオリジナルを改変したパロディ版は取り上げないことにする。真正面から古典に挑む真摯かつ無謀な姿勢を重視したい。さて、素人は一体どこまでオリジナルの域に迫れるのか。マイケルとオーラもビックリのリメイク版「Thriller」の数々をお楽しみあれ!


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JAK APPLESTILL'S THRILLER (2009) Recommend!
Directed: Harry Frishberg
Starring: Jak Applestill, Kaleigh Young

 まずはこれを見て欲しい。アメリカの高校生が同級生たちと制作した驚異の完全再現版。最初から最後まで、ほぼすべてのショットがオリジナル通りに再現されている。ビルボードが煌々と輝く映画館や、オーラ・レイが逃げ込む空家などはさすがに予算の都合で再現できていないが、全編にわたって出来る限り似たようなロケーションで撮影されているのが素晴らしい。2人がゾンビに包囲される路地など、よくぞここまで似た雰囲気の場所を見つけたなと感心する。ゾンビたちのメイクや衣装もかなりの再現力。映画青年が撮った作品らしく、撮影技術もしっかりしている。最高なのは、主役を演じたJak Applestillのキャラ。マイケルとは似ても似つかないアジア系のルックスが醸し出すズッコケ感がたまらない。狼男への変身場面で見せる彼の迫真の演技に心を動かされない人はいないだろう。ダンスも冴えないが、一所懸命に踊っている姿には胸を打たれる。マイケルになりきればなりきるほど可笑しい。オーラ役の娘──なぜか超可愛い──の演技の下手さ加減も最高だ。個人的にツボだったのは、映画館内の場面でのポップコーンの飛び方(笑)。何度見ても笑える。今回紹介するリメイク版の中では、これがダントツの完成度だ。とにかくこれを見てリメイク版「Thriller」の醍醐味を知って欲しい。10点満点。

 尚、YouTubeにアップできる動画1本あたりの長さの上限が15分になったのは'10年7月29日以降で、それ以前は標準的に10分に制限されていた。そのため、約13分のこの動画はPart 1とPart 2に分割されている(画像にはPart 1へのリンクが張ってある)。


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THE HOUSE'S THRILLER (2009)
Directed: Philip David Hogan
Starring: Gregpike.ca, Nikki Janes

 カナダの若者によるリメイク。これも全体的にかなり再現度の高い作品だが、色んな点で詰めの甘さが目立つ。近所に適当な墓場がなかったようで、映画館を出てからの一連の場面は波止場で撮影。ゾンビ・メイクはかなりいい加減だ。主人公2人を包囲するゾンビの1人(オリジナルではヴィンセント・パターソン演じる)が口からダラ〜ッと垂らす液体は、どう見てもただの水である。肝心の群舞は明らかに練習不足で、みんな雰囲気で何となく踊っている。“Cause this is thriller!”で一斉に横を向くところでは、人によって逆を向いたりしている(もっとちゃんと練習しようぜ)。空家にゾンビが押し入る場面は、破壊するための板を室内に張るなどしてなかなか気合いを入れて再現。マスクを使った狼男の変身場面も結構それっぽい。一番の見ものは、最後にマイケルが振り向くオチ場面。オリジナルでは振り向いたマイケルの顔がストップモーションになるが、このリメイク版では役者が人力で止まっている。それは違うだろう(笑)。いくつかの台詞場面でオリジナル版音声を使い回しているのが残念。台詞部分に関しては、上手く工夫してすべて自分たちで喋った方が絶対に面白い。この動画もPart 1とPart 2に分割されている。7点。


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THRILLER BY NIGHT (2010)
Directed: Antonio Santoro

 イタリア版リメイク。台詞はイタリア語だが、字幕がなくても何を喋っているか分かるのがいい(笑)。そして、狼男の変身が急すぎる(笑)。撮影も編集も完全に素人レベルだが、墓場を自分たちで作ったり、スモークを焚いてそれらしい雰囲気を出している点は評価したい。ゾンビの人数が多く、大勢の仲間と楽しみながら作った様子が窺える。主人公のゾンビ・メイクがいい加減すぎるのが残念(黒く塗っただけ)。振り向いて歌い出した時に顔が元に戻らないのも減点。群舞以降は大幅に尺を切り詰め、オーラが空家ではなく車に逃げ込んであっという間に夢から醒める。オーラ役が美人。6点。


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THRILLER (2010)
Directed: Alberto Ferrigno
Starring: Alberto Ferrigno, Iolanda Zaccaria

 これもイタリア産だが、レベルは低い。台詞部分もすべてオリジナル版音声の使い回し。あまり見るべき点のない残念なリメイクだが、オーラ役はまあまあ美人。マイケル役は薄毛の冴えない男。リメイク版「Thriller」全般に言えることだが、どことなくヒロイン役の女性に対する主役の男の下心が感じられる。“「Thriller」のリメイク版を撮るからオーラ役やってくれない?”というのは実に良い口実である。リメイク版「Thriller」の中には、MJトリビュートと言うより、単に目当ての女子と仲良くなるために制作されたものも少なくないのではないか(まあ、映画なんてそんなものだ)。4点。


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THRILLER (2008)

 アメリカの高校生によるリメイク。マイケル役は頑張っているが、オーラ役の演技があまりにもショボすぎる。“おまえ、やる気あんのか?”と問い詰めたい。オーラ役の女性の“いかにも付き合いでやってる感”というのも、素人リメイク「Thriller」の大きな見所のひとつである。狼男の変身は2段階で表現。第1段階の変身顔が妙にリアルで恐い。映画館の場面も本物らしく撮れている。一本道での歌唱場面は端折り、早々にゾンビ登場。墓場ではなく、校内ロケで自己流にアレンジしてホラー・ムードを演出。主役2人とゾンビ群の演技はなぜか別撮り(編集で同じ場所にいるように見せている)。群舞場面に学園祭(?)で「Thriller」を踊った時の映像を使い回しているのは大減点だ。最後のオチ場面では、振り向いた青年がカメラに向かって“第4回AVAへようこそ”と言う。この高校で催されているAspects of Video Awardsというイベント用に制作されたものらしい。4点。


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THRILLER (2009) Recommend!
Directed: Nick Orris
Starring: Sarah Selverian, Mike Stratton, Nick Orris, Shayla White

 アメリカの高校生によるリメイク。個人的に非常に好きな作品。朝の校内テレビ放送で流すために作ったらしい。いきなり“言っておきたいことがあるんだ”の告白場面から始まる。冒頭の映画内映画を白黒にしたのは技アリ。ネタバレになるが、このリメイク版は“通常マイケル”と“怪物マイケル(狼男&ゾンビ)”を別人が演じている。怪物マイケル役は監督のNick Orris自らが担当。狼男の変身場面はOrrisの演技力も手伝ってかなりインパクト大。映画館は学校の教室で代用。一本道での歌唱場面はすっ飛ばし、校舎の至る所でゾンビが目覚め始める。主人公2人が包囲されるのは学校の中庭。続く群舞場面が最高だ。向かって左に突出して身体の大きな黒人女子生徒がいる。主役よりも背が高く、明らかにフォーメーションのバランスがおかしい(笑)。色んなタイプの生徒が混じっているところがアメリカの学校らしくて実に良い。マイケルのスピン場面は、一回転スピンを編集でリピートして再現(笑)。校舎内に逃げ込んだオーラ役をゾンビたちが追いつめる終盤も上出来だ。床を突き破る代わりに段ボール箱から出てくるのが爆笑ものだが、意外にそれっぽく見えるから侮れない。金や技術がなくても、情熱と団結力と工夫次第で「Thriller」は再現できる。素人リメイクの手本と言うべき秀作。9点。


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JOSHUA WEIN'S THRILLER (2008)
Directed: Joshua Wein
Starring: Joshua Wein, Alison Zentgraf

 アメリカの若者によるリメイク。狼男の変身場面でゾンビに変身してしまう(笑)。フィルターをかけたダークな青い色調がなかなかいい味を出している(暗すぎるが)。本物の墓場で撮影されたゾンビ出現場面は、ゾンビが現れる様子をフェード処理で上手く表現。昼間の墓場をゾンビが彷徨う映像は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』みたいで、かなりいい雰囲気だ。エンドロールのNG集からは仲間と楽しんで作っている様子が伝わってくる。'11年に再編集版が投稿されているが、最初の'08年版の方が良い。5点。


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MICHAEL HORVATH'S THRILLER (2009)
Directed: Michael Horvath
Starring: Michael Horvath, Jazmine Marvoni

 アメリカの若者によるリメイク。映画館内の場面からスタート。台詞がオリジナル版音声なのが残念だが、全体的にはかなり頑張っている方だ。主役の動きは結構マイケルっぽさを掴んでいる。群舞場面での気合い入りすぎなオーバーアクションがいい感じ。マンホールからゾンビが出てくる場面は素人リメイクでは省略されるのが普通だが、ここでは本物のマンホールが使われている。無理矢理開けたのだろうか(良い子は真似しないように)。エンドロールとメイキングはPart 2で。6点。


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THRILLER (2010)

 メキシコの若者によるリメイク。台詞はオリジナル版音声の使い回し。マンホールはドラム缶で代用。群舞はショボすぎるが、練習不足による動きのぎこちなさが図らずもゾンビっぽさを醸し出している。主役の2人は顔を黒く塗っているようだが、これは不要(悪気がないのは分かるが、これはやってはいけない)。むしろ、マイケル役が振り返るオチ場面できちんと怪物メイクをするべきだ。Part 1とPart 2の分割アップ。4点。


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THRILLER (2011)
Directed: Ben Watson
Starring: Toni Bird, Jon Winter, Lottie Heels

 イギリスの大学生によるリメイク。映画館内の場面からスタート。マイケル役の男がチャラい。色んな場所で撮影されているが、あまり大した効果は上げられていない。群舞は舞台上で再現されるが、これはやはり屋外ロケでお願いしたい。群舞場面のマイケルは別人が演じているが、ダンスは冴えない。ロケや美術のセンスにイギリスっぽさが感じられるのが見所と言えば見所か。3点。


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THRILLER 2012 (2012)
Starring: Alexis Simmons, Taylor Katsanis

 アメリカの若者によるリメイク。映画館外から群舞場面までを再現。オーラの衣装もきちんと再現されている。墓場場面もかなりリアル。地中からゾンビが出てくる様子まで再現した努力は評価したいが、ここまでやるなら完全版を撮って欲しかった。特に笑いどころもなく(別に笑わせることが目的ではないのだが)、再現度の高さの割には中途半端な印象の作品。7点。


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THRILLER (2008)
Directed: Josh Dixon
Starring: Nader Vaziri, Lexi Kupratis

 アメリカの高校生によるリメイク。映画館外の場面からスタート。一本道の歌唱場面は省略。主人公のダンスはショボいが、撮影・編集技術はほとんどプロ級。一般の素人にはちょっと真似できない映像クオリティだ。監督のJosh Dixonは当時なんと17歳。リメイクはただ巧いだけでもダメなのだが……。7.5点。


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THRILLER 670 (2009)
Directed: Benoit Turgeon
Starring: Max Keily, Ann-Marie Laroche

 カナダのケベックにあるFuture Shopという電気店のスタッフが作ったリメイク。これは結構面白い。まず、冒頭の狼男映画が独自のシリアルキラーものにアレンジされている(が、つまらない上に無駄に長い)。ゾンビが出現するのは墓場ではなく、電気店内。主人公2人は電気店を訪れてゾンビに遭遇することになる。冷蔵庫や洗濯機などの家電製品からゾンビが登場する画は新鮮だ。一番の見ものは店内での群舞。かなり練習を積んだらしく、ダンスは完成度が高い。ゾンビ・メイクやスモークを焚いた演出も本格的。撮影と編集も良く、非常に見応えのあるダンス場面になっている。店内でオーラがゾンビに追いつめられる終盤にもっと力を入れて欲しかった。アイデア賞を上げたい作品。8点。


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GOODLOOK'S DILLER (2010)

 勝新太郎似の車椅子の男がマイケル役を演じるドイツ産の異色リメイク。オーラが車椅子の狼男に追いかけられたり(なんで追いつかれるんだ)、主人公が車椅子のまま無理矢理ゾンビ・ダンスを踊るところが見もの。群舞場面では、車輪を前に回転させながら(?)後ろへ下がる“車椅子ムーンウォーク”も見られる。最後はオーラが車に逃げ込んでゾンビに追いつめられる。台詞がすべてオリジナル版音声なのが残念だが、車椅子でマイケル役に挑戦した無謀さを高く買いたい。あと、オーラ役のおネエちゃんがセクシー。8点。


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THRILLER BY MICHAEL ANICET (2010) Recommend!
Directed: Manouchka Kelly Labouba
Starring: Jean Anicet Ngadi, Ana Faye

 ガボン共和国産のドープなリメイク。冒頭の映画内映画は、既存の複数の映画から映像を流用。最初に見た時は何が始まったのかと思った。わけの分からない怪しげな映像のオンパレードには、オーラでなくとも席を立ちたくなる(笑)。観客が2人だけなのもシュールだ。主役のJean Anicet Ngadi(芸名 Michael Anicet)はプロのMJ芸人らしく、ダンスはさすが素人とは格が違う。一本道の歌唱場面は素人リメイクではあまり面白くならないものだが、独自の振付によるAnicetの切れたダンスで実に魅力的な場面になっている(オーラも一緒に踊る!)。同じく振付に独自のアレンジを加えた群舞場面も見もの。ゾンビ集団はメイクもダンスも完成度が高い。オーラは空家に逃げ込まず、屋外で壁際に追いつめられたところで夢から醒める。Anicetのヤバげなキャラと本格派のダンス、オーラ役のAna Fayeの好演も光る秀逸なリメイク。9点。


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THE SPIFF KIDZ IN THRILLER (2011)
Directed: Spike
Starring: The Spiff Kidz

 サウス・キャロライナのヒップホップ・クルー、The Spiff Kidzによるリメイク。何だよこれ……(笑)。狼男の変身場面から強引にゾンビ出現場面へ接続し、わけが分からないままとにかく群舞が始まる。ダンスの切れはさすが数多の白人リメイク版とはひと味違う。アフリカン・テイストのゾンビ・メイクも良い。群舞の途中でオーラが夢から醒め、いきなりエンディングへ飛ぶ。決して完成度は高くないが、“面白ければ何でもいい”というヒップホップらしい自由なクリエイティヴ精神を高く評価したい。6点。


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THRILLER (2006)
Directed: David Z
Starring: Topaz Wong

 アメリカの中国系の女性がマイケル役を務めるリメイク。残念ながら群舞場面のみだが、メイク、ダンス、撮影、編集、すべてにおいてレベルが高い。ロケーションも素晴らしい(ブルックリンらしい)。単純に“再現”という点では、素人リメイクの限界をほぼ極めている。7.5点。


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SAM SAVONA'S THRILLER (2007)
Directed: Harry Ferone
Starring: Sam Savona, Bob May, Kristyn Czapkowski

 女性がマイケル、男性がオーラ役を務めるアメリカのリメイク版。冒頭の映画内映画を白黒にしたり、群舞を複数箇所で撮影して編集でミックスするなど、様々な工夫が見られるが、いかんせん野暮ったい。男女逆転版を作るなら、もっと高度なユーモア・センスが必要だろう。悪い意味で学芸会的。冒頭を白黒にし、狼男を別人が演じるというアイデアは、先述のNick Orris版リメイクに影響を与えたかもしれない(ここでは吸血鬼という設定らしいが、変身顔がリアルすぎて引いてしまう)。Part 1とPart 2の分割アップ。力作ではあるが……4点。


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THRILLER (2009)
Directed: Mauricio Alvarado
Starring: Thalia Jackson Sanchez, Diana Salinas

 メキシコの女性版リメイク。マイケル役もオーラ役も女性。映画館内の場面からスタート。空家のゾンビ襲撃場面は結構頑張っているが、素人リメイクとしては中の下くらいの出来。主役の女性のキャラによほど魅力がない限り、女性版で面白いリメイクを作るのは難しいだろう。4点。


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THRILLER (2009)
Directed: Rose Emanuel
Starring: Rose Emanuel, Susannah Shaw

 アメリカの女子仲間によるリメイク。完全に内輪受けレベル。これは人様に見せるようなものではない。ただ、それなりに熱意は伝わってくるので、2点。


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THRILLER (2008)
Directed: Rebecca Bone
Starring: Jesse Bone

 カナダの若者によるリメイク。およそやる気が感じられない。主役の男はメイクすらしていない(演技もしていない)。私が最も評価しないのは、オリジナルに対する思い入れや敬意が感じられないこういう作品である。こんないい加減なリメイクなら最初から作らない方がいい。0点。


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THRILLER (2009)
Directed: Joe Lindner
Starring: Yo Conway

 アメリカの学生によるリメイク。これも酷い。どうせやるならもっと真剣にやれと言いたい。これも主役の男がメイクをしていない。0点にしたいが、一応、スリラー・ジャケットを用意したり、自己流にアレンジしようという監督の意志が感じられるので、1点。


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THRILLER (2009)
Directed: Ali Villegas
Starring: Aisek, Airam

 メキシコのチビっ子版。玩具の車に乗って登場するオープニングがナイス。車を降りたところで、おっさんが地面に倒れているのが意味不明(笑)。チビっ子版らしくほのぼのといい感じで進行するが、墓場場面と空家場面でオリジナル版「Thriller」の映像をそのまま使い回してしまっているのが大減点。音声は構わないが、映像は絶対にオリジナルを使ってはいけない。主役の子(10歳)はダンスも頑張っているだけに、実に惜しい。Part 1とPart 2の分割アップ。4点。


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THRILLER (2010)
Directed: Uriel Rico Moncada Tebin

 同じくメキシコのチビっ子版。撮影、編集、演技、あらゆる点で緩いが、そこに憎めない味がある子供らしいマジカルな作品。無駄に長い冒頭の狼男シークエンスから子供パワーが炸裂。ゾンビ・ダンスは全く独自の振付。オーラがゾンビに追われる終盤の展開も実に独創的だ。あまりに自由すぎて詩情すら漂う。6点。


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MICHAEL JACKSON'S THRILLER (2006)
Directed: Philipp Lents & Miriam Lents
Starring: Lego figure, more Lego figures

 再現動画の定番、レゴを使ったリメイク。始めから終わりまで丁寧に再現されている。狼男のリアルな変身場面が見もの(笑)。ダンスはちょっと動きが硬いか。力作。8点。


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LEGO MICHAEL JACKSON'S THRILLER (2011)
Directed: Jaden McCarty
Starring: (Lego) Michael Jackson, Ola Ray

 同じくレゴ版。狼男の変身場面からスタート。セットも可能な限りレゴで再現され、上記の2006年版よりもレゴ度が上がっている。撮影も良く、カット割りもオリジナルに忠実。ダンスはこちらのレゴの方がやや上手いようだ。夢から醒めた時のオーラの表情が良い。これも力作。8点。レゴによるMJ動画は、他にも「Beat It」(最高)、「Billie Jean」など色々あるので、暇人はYouTubeで検索してみよう。


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MICHAEL JACKSON'S THRILLER (2011)
Directed: Kiminori Tanoue

 日本人が作ったCGアニメ版。登場人物がすべて二頭身の動物キャラ(ぬいぐるみ風)に置き換えられている。マイケルの相棒バブルズに想を得て、主人公2人はお猿さん。レゴ版と同様、ほのぼのとしたキャラのミスマッチぶりが面白い。狼猿への変身場面も楽しい(もうちょい狼っぽくなっても良かったかも)。CGだけあって、群舞は全員の動きが完璧に揃っている。キャラを除き、映像はすべてオリジナルを忠実に再現。すごい完成度だ。8点。好評を受けて、'12年には続編「Beat It」も作られた(キャラの表情が豊かで、より生き生きとした魅力的な作品になっている。微妙に動きをずらして各キャラの個性をしっかり描き分けた群舞場面が素晴らしい。「Beat It」には9点を献上したい。最後に「Say Say Say」を作って三部作にすることをお勧めしたい)。


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JAPANESE OFFICE WORKER'S THRILLER (2009)

 日本の会社員によるリメイク。上司に内緒で休日の会社内で撮影したという力作。残念ながらゾンビ出現〜群舞場面のみだが、再現度はかなり高い。ダンスはそれなりだが、メイクは気合いが入っているし、カット割りもオリジナルに忠実。会社員という自分たちの個性や、オフィスというロケーションを生かした独自の演出があるともっと面白い作品になったと思う(例えば、MJ役の主人公が上司に起こされて叱られる夢オチをつけるとか。で、隣の机で仕事しているヒロイン役の女性に白い目で見られる。最後に、主人公を叱った上司のおっさんが去り際にカメラを振り向くと……)。オリジナル版の映像と並列した比較版動画の方が先に投稿されているが、リメイクは必ずしもオリジナル版と似ていることが重要なのではない。7点。


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ADAM SEVANI'S THRILLER (2008) Recommend!
Directed: Corey Grant
Starring: Adam Sevani, Alyson Stoner

 リメイク版「Thriller」の模範として最後に紹介したいのがこれ。青春ダンス映画『ステップ・アップ』シリーズでお馴染みのアダム・セヴァーニ主演のリメイク。オーラ役は『ステップ・アップ3』(2010/ダニエル・クラウド・カンポスも出演)で名コンビぶりを見せたアリソン・ストーナー。脚本は大幅に改変されている。主人公2人の乗った車が夜の田舎道で立ち往生した後、アダムが1人で車を降りて墓場に迷い込む。アリソンは車に残り、アダムだけがゾンビに遭遇することになる。最大の見ものは、大胆な解釈で全く新たに生まれ変わった群舞場面。現代風のシャープな振付を織り込み、マイケル・ピーターズとMJが作り上げた鉄壁の名ルーティンを見事に更新した。さすがプロだけあって、ダンスの切れ味も素晴らしい。群舞場面でアダムの衣裳がいきなりスリラー・ジャケット(黄色ヴァージョン!)に変わるあたりも良い。群舞終了と同時にゾンビ集団は忽然と消え、アダムがアリソンの待機する車に戻って“いや〜、すごい体験しちゃったよ!”と報告する場面で締め括られる。バック・ダンサーたちをフィーチャーしたエンドロールもカッコいい。独創性、技術、オリジナルへの敬意、すべてが揃った最高のリメイク。10点。


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 “新春洋画劇場──リメイク版「Thriller」の世界”は如何だっただろうか。ピンからキリまで色々とあるが、どれも作り手の個性が感じられて楽しい。これらのリメイク版を通して、オリジナル版「Thriller」の面白さを再確認して頂けたのではないかと思う。

 記事の文脈上、もっぱら“どこまでオリジナル版を忠実に再現できているか”という点に比重を置いて話を進めてきたが、私が本当に注目し、評価しているのは“いかにオリジナル版と違うか”という点である。当たり前のことだが、リメイク版の存在価値はオリジナル版と違うからこそ、ある。頑張って再現しようとして、しきれなかった部分にこそ真の面白さがあるのである。今回は評価軸を明確にするため、各作品に敢えて点数をつけた。制作者が意図しているか否かにかかわらず、オリジナル版との差異に独自の面白さがあるものに私は高得点をつけた。ただ再現するだけではダメで、リメイク版はオリジナル版と“いかにズレるか”という点が肝なのである。作り手の創意、情熱、勘違い、未熟さ等から生まれる(時に予期せぬ)ズレ。感動はそこに生まれる。

 「Thriller」ほど多くの人に知られ、誰でも楽しめるネタとなるような映像作品というのは稀である。他界しても尚、マイケルはその作品によって世界中の人々を結びつける役割を果たしている。また、'12年11月にはミュージカルとゾンビ映画を融合したダニエル・クラウド・カンポスによる全く新たな傑作ショート・フィルム『The Dancing Dead』も登場した。クラウドの短編は決して「Thriller」のリメイクではないが、明らかにその派生作品である。MJ作品が更新され、形を変えて次代に継承されていくのを見るのは、ファンとしても嬉しい限りだ。「Thriller」は今後も世界中の人々を触発し、多くの素晴らしい“子供”たちを生み続けていくだろう。マイケルが残してくれた偉大な文化遺産に改めて感謝したい。

 いやぁ、「Thriller」って本当にいいもんですね〜。
 それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!



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