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Love Is Stronger Than Pride [single]

Epic_CDSADE1.jpg
LOVE IS STRONGER THAN PRIDE
7": Epic SADE 1, 2 April 1988 (UK)
Side 1: Love Is Stronger Than Pride (4:16)
Side 2: Super Bien Total (4:02)*

12": Epic SADE T1, 2 April 1988 (UK)
Side 1: Love Is Stronger Than Pride (4:16)
Side 2: Super Bien Total [Extended Mix] (6:52)*

CD5": Epic CD SADE 1, 2 April 1988 (UK)
CD3": Epic 651477 9, 1988 (Austria)

Love Is Stronger Than Pride (4:16) / Super Bien Total [Extended Mix] (6:52)*

* written by Osbourne/Hale/Matthewman
Photography: Levon Parian
Design: Sade, Graham Smith

UK chart: #44


 『STRONGER THAN PRIDE』に約1ヶ月先行して発売された第一弾シングル。
 
 カヴァー写真はアルバム同様、同曲のPV撮影時のスチール('88年2月、カリフォルニアのズマ・ビーチにて)。アルバム、および、そこからのシングル群のカヴァーでは、タイトル表記が毛筆風の文字で統一されているが(どことなく前年のプリンス『SIGN 'O' THE TIMES』のそれを思わせる)、この「Love Is Stronger Than Pride」のみ平凡なフォント使いになっている。どうせならすべて統一してほしかった気もするが、もしかするとこの先行シングルのカヴァー制作時点では、まだデザイン・コンセプトが確定していなかったのかもしれない。

 表題曲はアルバム版をそのまま収録。シングルを買って表題曲がアルバム版だと結構悲しいものがある。12"ならLPよりも音が良いのでまだ購入価値があるが、CDだとはっきり言って何の意味もない。リミックスを施すか、せめてシングル(ラジオ)・エディットにでもして欲しいところだが、この曲には特にカットする部分もなかったりする。「Love Is Stronger Than Pride」のリミックス(マッド・プロフェッサーによる)は、'92年のシングル「Feel No Pain」まで待たなければならない。

 
 お楽しみのカップリングは、アルバム未収インスト曲「Super Bien Total」。16ビートの横ノリ・ジャズ・ファンクで、ヘイル、マシューマン、そして、'85年からシャーデーのツアーとレコーディングに参加している準メンバー的な助っ人、リロイ・オズボーンの共作曲である。'93年の日本独自企画EP『Remix Deluxe』にも収録されているので、日本のファンはそちらで簡単に聴くこともできる(となると、いよいよこのシングルの価値は下がる)。
 この曲の要は何と言ってもグルーヴィーなベース・ラインにあるが、肝心のポール・デンマンは作曲者としてクレジットされていない。なぜか。これはもしかすると、このベース・ラインが彼によって考えられたものではないことを示しているのかもしれない。というのも、実はこの曲のベース・ラインには明らかな元ネタが存在するのである。

Sky Islands ラテン・フュージョン・バンド、カルデラの2作目『SKY ISLANDS』(1977)冒頭に収録されている表題曲「Sky Islands」がそれ。「Super Bien Total」のベース・ラインは、この曲のそれと瓜二つなのだ。そればかりか、そもそも「Super Bien Total」という曲自体が、この「Sky Islands」にあまりにも似ている。上モノのアレンジやコード進行は異なるが、屋台骨に関してはほとんどコピー状態で、限りなくパクリに近い印象すら受けてしまう。
 「Super Bien Total」には主旋律がなく、全体的に素描に近い趣があるが、「Sky Islands」はキーボードとスキャットがテーマを作り、サックスとギターのソロを中盤でフィーチャーする完成された楽曲構造を持つ。アレンジも緻密で、ラテン・パーカッションの熱さも印象的。重量感溢れるプレグレッシヴなフュージョン・ファンクの傑作だ。作者はアース・ウィンド&ファイアのラリー・ダンで、彼はこのアルバムに共同プロデュースと、作曲(2曲)、シンセ・ソロ(1曲)でも参加している(カルデラの中心人物である鍵盤のエドアルド・デル・バリオはアース作品にも参加があり、両者の親交は深いようだ。ちなみに、カヴァーのイラストはアース作品でお馴染みの長岡秀星)。また、「Sky Islands」では正式メンバーのカルロス・ヴェガに代わり、ラルフ・ハンフリーがドラムを叩いている(チェスター・トンプソンも1曲参加)。
 とにかく熱くて濃い強力盤なのだが、無闇に散らかることもなく、すっきりとまとまって聴きやすいところが凄い。カルデラは南米出身のメンバーを中心に結成されたインスト主体のバンドで、『SKY ISLANDS』には、コンドルが飛んでいくのが見えるようなフォルクローレ調の曲まで入っていたりする。そうしたラテン要素をフックに生み出されるトリッキーで分厚いフュージョン・サウンドは、驚くほど完成度が高く、聴きようによってはポップでさえある。こういう音は、各メンバーによほど優れたバランス感覚が備わっていないと生まれないものだろう。

 「Red Eye」「Wired」などでラテン・ジャズ趣味を露わにしてきたシャーデーのメンバーたちが、カルデラを聴いていないわけがない。むしろ大好きなはずである。これはパクリや盗作と言うより、レア・グルーヴ~アシッド・ジャズの文脈における温故知新の一環として捉えたほうがしっくりくる。つまり、マッシヴ・アタックが「Safe From Harm」で、ビリー・コブハム「Stratus」のベース・ラインを借用したのと同じようなことがここで行われているのである。

Dianne 「Sky Islands」は、アルバムにもこの曲を含む2曲で客演していたダイアン・リーヴスが、Blue Noteから10年後に発表したメジャー・デビュー作『DIANNE REEVES』(1987)で冒頭曲として取り上げてもいる(そもそも私が「Sky Islands」という曲を知ったのも、彼女のこのアルバムを通してだった)。
 カルデラのオリジナル版は基本的にインストで、彼女のヴォーカルはスキャットだったが、リメイクに際して新たに自ら歌詞をつけ、これを見事な歌モノにしている。彼女の従兄弟でもあるジョージ・デュークのプロデュースで、アルバム自体も懐の深い傑作。エドアルド(エディ)・デル・バリオ作品が1曲取り上げられている他、同じくカルデラ人脈からジョージ・デル・バリオがストリングスで2曲参加。全体的にクワイエット・ストーム路線の聴きやすい作品に仕上がっているので、シャーデー・ファンにも一聴をお勧めしたい。


 「Love Is Stronger Than Pride」が発売された'80年代後半は、音楽ソフトのメディアの主流がアナログ盤からCDへ移行する過渡期に当たり、シャーデーのシングルもここからCDでも発売されるようになった。『STRONGER THAN PRIDE』からは「Love Is Stronger Than Pride」「Paradise」「Nothing Can Come Between Us」「Turn My Back On You」の全4曲がシングルに切られ(フランス独自7"「Haunt Me」を除く)、そのすべてに、通常の7"/12"と併せ、イギリス盤5"CDシングル(通常CDプラケース)、オーストリア盤3"CDシングル(紙ジャケ)が存在する。イギリス盤、オーストリア盤CDシングル共に、収録内容は基本的に12"と同じだが、タイトルによってはフォーマットごとに細かい相違がある場合もあり、なかなか一筋縄ではいかない(特に「Paradise」は変則的)。
 また、イギリス盤5"CDでは、ジャケットが二つ折りのブックレット状態になっていて、広げると内側にアナログ盤スリーヴでは見られない写真と表題曲歌詞が掲載されている(「Turn My Back On You」のみ例外で、ジャケットはただの正方形の紙切れ1枚)。「Love Is Stronger Than Pride」の場合、ブックレット内側には、同PV撮影時のスチール(メンバー4人が浜辺でたむろしているモノクロ写真。'88年3月、クラクトン・オン・シーにて撮影)が歌詞と共に掲載されている。

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