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Stromae──死ぬまでテ・キエロ



 昨日の記事“Stromae──ストロマエは男前”のおまけ。特大ヒット「Alors on danse」も良いが、私の一番のお気に入りは、アルバム『CHEESE』(2010)から2ndシングルに切られた「Te Quiero(テ・キエロ)」という曲。私のお粗末な自作リリックではなく、やはりストロマエ本人の作品をきちんと紹介しておきたい。これを聴けば、彼が“現代版ジャック・ブレル”と言われる理由がよく分かるだろう。




 Te Quiero
 (Stromae)
 
 ある日 彼女と出会い 俺はすぐに悟った
 バカな駆け引きをすることになるだろう
 宝石やらキスやら 甘い言葉や浮気やら
 殴り合いの喧嘩やら あれこれと
 どうせ俺には何も残らない
 できた子供も彼女のもの
 判事だってそう言うだろう
 俺の取り分はテレビと薄汚れたジーンズがいいところ
 
 死ぬまで死ぬほど愛してる
 “誓います”と人は懲りずに言い続ける
 たとえ気が変わるとしても
 間違いだと分かっていても
 人は生き方を改めない
 俺も死ぬまで同じ失敗を繰り返すだろう
 
 テ・キエロ
 彼女の影になれたら
 でも俺は彼女が嫌なんだ
 テ・キエロ
 この世の果てまでも
 彼女は俺につきまとう
 テ・キエロ
 そう 俺は彼女を愛してた
 好きで好きでたまらないんだ
 テ・キエロ
 俺はどこへも逃げられない
 死ぬまでずっと
 テ・キエロ
 テ・キエロ
 死ぬまでずっと
 テ・キエロ
 テ・キエロ
 テ・キエロ
 
 ある日 彼女と再会し 俺はすぐに悟るだろう
 こいつは堂々巡りに違いない
 第二子誕生 新しい判事 ガキたちの小便のにおい
 また同じことの繰り返しだ
 いつものジーンズをはいた俺
 だけど今度はホームレス
 幻滅し 橋の上から あるいは崖かビルの天辺から
 飛び降りる俺の姿はさぞかし間抜けだろう
 
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 
 死ぬまで死ぬほど愛してる
 “誓います”と人は懲りずに言い続ける
 たとえ気が変わるとしても
 間違いだと分かっていても
 人は生き方を改めない
 俺も死ぬまで同じ失敗を繰り返すだろう
 
 テ・キエロ
 彼女の影になれたら
 でも俺は彼女が嫌なんだ
 テ・キエロ
 この世の果てまでも
 彼女は俺につきまとう
 テ・キエロ
 そう 俺は彼女を愛してた
 好きで好きでたまらないんだ
 テ・キエロ
 俺はどこへも逃げられない
 死ぬまでずっと
 テ・キエロ
 テ・キエロ
 死ぬまでずっと
 テ・キエロ
 テ・キエロ
 
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 死ぬほど彼女を愛してるんだ
 死ぬほど彼女を愛してるんだ


 私は全くフランス語を解さないのだが、彼が何を歌っているのかどうしても知りたくて、結局、ネット上にある複数の英訳を参照しながら自力でこの歌を和訳してしまった。細部の正誤は保証しないが、彼は大体こんなことを歌っている。表題にもなっているサビの“Te quiero(テ・キエロ)”は、“I love you”もしくは“I want you”を意味するスペイン語。愛の囚人と化した無様な男を描いた歌は、「Ne Me Quitte Pas」(1959)や「Mathilde」(1964)といったジャック・ブレルの狂おしい恋歌を思わせる(“彼女の影になれたら”という一節は、実際に「Ne Me Quitte Pas」を意識しているかもしれない)。ブレルからの影響はストロマエ自身も公言している。こういう歌をアッパーなダンス・トラックに乗せてしまうというのがスゴい。

Stromae_TQ2.jpg
ジャック・ブレルの高座──ブレルはレコードよりも映像で

 ジャック・ブレルはまるで落語家のような歌い手だった(ステージではいつも汗だくだったが)。饒舌でシアトリカルなブレル的な表現を、ストロマエはラップのスタイルで咀嚼し、現代的なエレクトロニック・サウンドと馴染ませることに成功している。ストロマエを聴いていると、ブレルが現代の若者だったら本当にラッパーになっていたかもしれないと思わされる。まさに21世紀のジャック・ブレルという感じだ。ジプシー・スウィング調のアコースティック・サウンドで正道を行く“21世紀のエディット・ピアフ”ことZAZも素敵だが、ストロマエは彼女とはまた全く違う方法で伝統的なシャンソンを現代に継承している。この古くて新しい破天荒な感覚は、'50年代ロックンロールを電気ショックで蘇らせるウィリー・ムーンと通じるものがある。登場はストロマエの方が先だが、今なら“シャンソン版ウィリー・ムーン”というキャッチ・フレーズもありかもしれない。

 本記事の冒頭に埋め込んだのは、ストロマエがブレルを気取りながら「Te Quiero」を生で歌っているプロモ動画。別に制作された正式な音楽ヴィデオも悪くないが、ワンショットのこのパフォーマンス映像がやはり印象的だ。

 名前もキャラもキャッチーなストロマエは、日本でももっと知られていい存在だと思う。音が音だけに、ZAZほど従来のシャンソン・ファンからの支持は得られないかもしれないが、逆に、普段ヒップホップやエレクトロを聴いている若い音楽ファンが彼を通してシャンソンに目覚めるなら、それはそれでまた素晴らしいことに違いない。後ろ前でもストロマエ。とりあえず、きちんとした対訳つき日本盤の発売を求む。

※ちなみに、ジャック・ブレルの映像は'66年オランピア公演が定番(マジで半端ない)。単体でもDVD化されているが、お薦めは'63年クノック公演映像と一緒になった2枚組DVD(いずれもPAL方式)。歌詞対訳字幕つきの日本版をどうにか実現してもらいたい。


Stromae+BEP.jpg
Black Eyed Peas + Stromae - Alors on Danse / Don't Stop The Party
Broadcast: 6 June 2011 (France)

 フランスのテレビ番組〈Taratata〉でストロマエがブラック・アイド・ピーズと共演した時の映像('11年6月6日放映)。スマートフォンを見ながら新曲「Don't Stop The Party」を歌うウィル・アイ・アム(笑)。“歌詞を覚えていないとは何事だ”、“ウィル・アイ・アムはツイッターをチェックしているだけだ”などと話題になった。彼は単にスマホの新しい使い方(ステージでカンペとして使える)を示したかったのではないだろうか?



Stromae──ストロマエは男前
Oxmo Puccino──黒いジャック・ブレル

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