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シャーデー大賞2013を占う



 '13年の〈シャーデー大賞〉は一体誰が獲るのだろう。
 
 “そんな賞あったっけ?”という人に一応説明しておくと、この賞はシャーデーを記念し、独自のソウル・ミュージックをエレガントに追求している(主に女性)アーティストに毎年与えられる音楽賞である。文学界における芥川賞、直木賞などと同じ趣旨の賞だ。今日、設立された。


 昨年のジェシー・ウェアに続き、今年はライという強烈なシャーデー・フォロワーが登場した。ライの衝撃的デビュー作『女性』('13年3月)から間髪入れず、別ユニットのクアドロンで早くも次作『なだれ』('13年6月)──ジャケがシャーデーへのオマージュ──を投下してきたロビン・ハンニバルのなだれっぷり、その止まるところを知らないノー・オーディナリーなシャーデー愛には目を見張るものがある。他にも、シャーデーの漂泊感とプリンス〜ディアンジェロの粘着感を併せ持ったロサンゼルスの白人兄弟デュオ、インク inc.、エレクトロニカ〜ミニマル・テクノ寄りのサウンドでシャーデーのクールネスに迫るオーストラリア出身/ロンドン在住の白人女性歌手、ジョージ・メイプル George Maple、サウンド/ヴィジュアル共にライに近い美意識を感じさせるロンドンの白人4人組ポップ・バンド、ウーマンズ・アワー Woman's Hour といったシャーデーの子供たち……と言うよりは、甥・姪とでも呼ぶべき(つまり、直系ではなく傍系)、実に微妙な似方をした新人アーティストが続々と現れている(この辺の状況は鬼の音楽千里眼ブログ、キープ・クール・フールさんの記事で知りました)

 ひと昔前、シャーデーに似ているアーティストと言えば、ゴアペレ、インディア・アリー、リズ・ライトのようなオーガニック・ソウル系の黒人女性アーティストと相場が決まっていた。それが昨今では、普段あまり日光を浴びていなさそうな草食系の若者、特に白人の若者(しかも男子)が、どういうわけかシャーデー的なサウンドに引き寄せられているようだ。ゴスペルに基づかないシャーデーの囁くようなヴォーカルは、確かに白人にも模倣しやすいものだと思う。なんか、シャーデーだったら出来そうじゃん?──そう思うのかどうかは知らないが、彼らはミニマルでアブストラクトでアトモスフェリックでアンビエントな夢幻的音響に包まれながら、孤独なソウルをぼそぼそと不器用に歌い上げる。その歌声は寝室で微睡んでいるようにも聞こえるし、ツイッターで誰に向けるでもなく呟いているようにも聞こえる。彼らの奏でる新感覚のインティメイトなソウル・ミュージックは、スウィート・ソウルならぬ、ツイート・ソウルである(って、猛烈につまらない洒落だが、私はジャンルの細分化についていけないので、勝手にそう呼んで納得している)

 '00年代のオーガニック・ソウル系の歌姫たちは、基本的に『LOVERS ROCK』(2000)に近い雰囲気の音を鳴らしていたが、現在の若手アーティストたちが参照しているシャーデー作品は、もっぱらふた昔前の『LOVE DELUXE』(1992)である。ソウルとエレクトロニクスの融合のひとつの理想的な雛型、いわば“'90年代の『MIDNIGHT LOVE』”として再評価されているのかもしれないし、あるいは、あのアルバムが持つある種の閉塞感やダウナー感が、現代の若者の気分と合うのかもしれない。いずれにせよ、最も青写真としやすい近現代のベッドルーム・ソウルの古典として『LOVE DELUXE』が参照されていることは間違いないと思われる。アンゴ Ango(安吾?!)というカナダの白人男性歌手がカヴァーした「No Ordinary Love」(2012)──ノア“40”シェビブの「The Moon And The Sky」リミックスに近い感触──は、ツイッター世代の耳にシャーデーがどのように聞こえているかが分かるようで面白い(このカヴァーもキープ・クール・フールさんの記事で知りました)


I'M A FOOL, SUCH A FOOL FOR YOU... ALICE SMITH

 というわけで、かなりの激戦・混戦が予想される今年の〈シャーデー大賞〉なのだが、目下、私が熱い視線を注いでいる(というか、完全に惚れている)のは、冒頭に写真を掲載したニューヨーク出身の女性歌手である。『彼女』の歌声やサウンドは決してシャーデーに似ているわけではない。というか、この人がやっているソウル・ミュージックは、シャーデーを含め、他の誰にも似ていない。全く独特としか言いようがない立ち位置とスタンスで、果敢に自分の表現を追求している人だ。そして、彼女の歌は──これは私にとって非常に重要なポイントなのだが──少しも微睡んでいない。その真摯なヴォーカル、ボーダーレスな音楽性、洗練されたポップ・テイスト、オーセンティックなソウル感覚、凛とした佇まいに、私は“シャーデーっぽい”と言われる昨今のどんなアーティストよりもシャーデー的なものを感じる。山口百恵とシャーデーは似ている、というのと同じ意味で、あるいは、松井秀喜とバンドキャンプは似ている(©キープ・クール・フール)というのと同じ意味で、この人はシャーデーに似ているのである。

 '13年3月後半に発表された彼女のアルバムは、それまで私のCDプレイヤーに居座っていたライやローラ・マヴーラのアルバムを蹴落とし、クアドロンの新譜も寄せ付けない圧倒的な強さで現在も王座をキープしている。あまり共感は得られないかもしれないが、彼女は'13年〈シャーデー大賞〉のダークホースだと言っておきたい。シャーデーとテレンス・トレント・ダービーを混ぜ合わせたような彼女の個性的な顔(魚顔というか、爬虫類顔というか……)を見かけたら、要注目だ。特に、私のようにツイッターを利用しない音楽ファンは(?)。



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