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Everytime it rains〜雨が降るたびに



 今でもオルゴノンの夢を見る
 泣きながら目を覚ます僕
 あなたは雨を作り出そうとしている
 あと一歩というところで
 夢と共にあなたは消えてしまう
 
 父さん あなたはまるで
 暗闇で光る僕のヨーヨーのよう
 特別であるがゆえに危険だった
 だから僕は土に埋めて忘れるよ
 
 雨が降るたびに
 父さんの姿が思い浮かぶ
 お日さまが現れるように
 ああ 何か素敵なことが起こりそう
 いつかはわからないけど
 そう言うだけで起こる気がするんだ
 
 高い頂の上で
 へりから眺めると
 彼らがやってくるのが見えた
 大きな黒い車に乗せられた父さんはとても小さくて
 あの権力者たちを脅かすような人には見えなかった
 
 ヨーヨーは庭に隠したけど
 父さんを政府から隠すことはできない
 ああ 父さん 忘れないよ
 
 息子に任せておいて


Cloudbusting2.jpg
CLOUDBUSTING (1985)
Directed by Julian Doyle
Conceived by Terry Gilliam and Kate Bush
Based on "A Book of Dreams" by Peter Reich
Starring Kate Bush and Donald Sutherland


 I still dream of Organon
 I wake up crying
 You're making rain
 And you're just in reach
 When you and sleep escape me
 
 You're like my yo-yo
 That glowed in the dark
 What made it special
 Made it dangerous
 So I bury it and forget
 
 Everytime it rains
 You're here in my head
 Like the sun coming out
 Ooh I just know that something good is gonna happen
 And I don't know when
 But just saying it could even make it happen
 
 On top of the world
 Looking over the edge
 You could see them coming
 You looked too small
 In their big black car
 To be a threat to the men in power
 
 I hid my yo-yo in the garden
 I can't hide you from the government
 Oh God, daddy - I won't forget
 
 Your son's coming out


「これは私にとってとても特別な歌。何年も前に出会った1冊の本に触発されたものなの。行きつけの本屋でたまたま見つけた本なんだけど。『A Book of Dreams』という題名に惹かれて、私はそれを棚から取りだした。知らない本なんていつも手に取らなかったのに。それがこの、ピーター・ライヒという人が書いた素晴らしいお話との出会いだった。彼のお父さんについての回想録なんだけど、子供の視点から書かれているの。自分の幼少時代の話で、彼にとって父親がいかに摩訶不思議な存在であったかが書かれてる。お父さんはヴィルヘルム・ライヒというすごく立派な精神分析家だったんだけど、研究内容が大きな物議を醸して、最終的に投獄されて獄死してしまった。その本には、彼がお父さんと一緒に雲追い(クラウドバスティング)に行く話が出てくる。空に向けると雲を消散させたり集めたりできる機械があって、雲を集めると雨が降るのよ。その機械はオルゴン・エネルギーを利用したものだった。それがライヒの提唱する理論の中核でもあったんだけど。とにかく驚くべき本でね。とても悲しい話なんだけど、子供ならではのハッとさせるような純真さがあって。成長するにつれ、彼が自分の子供時代にしがみつく様子が伝わってきて、どんどん悲しみが増してくる。私はその本にとても感銘を受けた。この歌は何とかその話を伝えようとしているの」──ケイト・ブッシュ(26 January 1992, BBC Radio 1, Classic Albums)

「この歌では、暗い所で光るヨーヨーが重要な鍵になっている。それはピーターが親友から貰ったもので、彼の宝物でもあった。でも、お父さんは、物質には良いエネルギーと悪いエネルギーを発するものがあると考えていて。当時、光る玩具に使われていた原料はとても有害なものだった。それでお父さんはそのヨーヨーを禁止し、彼に捨てるよう言った。でも、彼は捨てないで、それを庭に埋めたの。それでお父さんに叱られずに済むし、しかも、掘り返せばまたいつでも遊べるからよ。そのヨーヨーが大好きで、彼にとって特別なものだったこと、そして、それが危険なものと見なされていたこと──そこにはある面で繋がりがある。彼はお父さんのことが大好きだった。そして、お父さんは一部の人たちから危険視されていた……。ヨーヨーを埋めておいて、遊びたくなった時にいつでも取り戻せるというのは、彼にとってはしてやったりだった。でも、お父さんが連れて行かれることに関しては為す術がない。彼は全く無力なのね。けど、もっと大事なのは、父親なしで生きていく淋しさや辛さを、息子がいかに克服していくかという点。そこに人間の成長というものがある。その過程が子供の視点で、悲しい大人によって語られているわけ」──ケイト・ブッシュ(1985, The Kate Bush Club


■「Cloudbusting」は、ピーター・ライヒ(1944〜)著『A Book of Dreams』(1973)に基づく'85年発表のケイト・ブッシュの歌、および、その内容を忠実に映像化した音楽ヴィデオ/短編映画。ヴィデオでは、雲を操る機械を作った精神分析家ヴィルヘルム・ライヒ(1897〜1957)とその息子ピーターの父子の絆、そして、ライヒ博士がアメリカ政府機関に連行される顛末がドラマチックに描かれている。少年ピーター役はケイト・ブッシュ。圧倒的な存在感を見せる父ヴィルヘルム役は、ケイトが大ファンでもあったという名優ドナルド・サザーランドが演じている。ケイトが小さな子供(12歳)に見えるよう、長身の俳優を考慮した上での配役でもあった。当初、サザーランドの事務所は出演依頼を断ったが、サザーランド自身が脚本に興味を示し、2本の映画撮影の合間を縫って本作に出演した。原案にはケイトと共に鬼才テリー・ギリアムが関わり、絵コンテも執筆している。彼の提案により、監督はモンティ・パイソン『ライフ・オブ・ブライアン』(1979)、『バンデットQ』(1981)、『未来世紀ブラジル』(1985)で編集を務めていたギリアム組のジュリアン・ドイルが担当。ギリアム作品に通じる幻想的な傑作に仕上がった。ケイトによると、作品は原作者ピーター・ライヒからも賞賛されたそうだ──“彼が気に入らなかったらどうしよう、自分が間違った解釈をしていたらどうしようと思っていたんだけど、彼は作品を観て、とてもエモーショナルで、状況がよく捉えられていると言ってくれた。本当に報われた思いがしたわ”(1987, The Kate Bush Club)。

【参考文献】
Cloudbusting - Kate Bush In Her Own Words

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