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Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 2)



 ロバート・パーマーのヴィデオ「Addicted To Love」は、'86年のMTV大賞で5部門にノミネートされ、最優秀男性アーティスト・ヴィデオ賞(Best Male Video)を受賞した。また、'99年に発表されたMTVの歴代ヴィデオ100選では、見事8位に輝いてもいる(ランDMC「Walk This Way」を除き、'86年の他作品をすべて抑えてのランクイン。ちなみに、1位はマイケル「Thriller」)。パーマーの代名詞にもなったこのヴィデオは、それだけ強烈に人々の記憶に焼き付き、愛されている。

 誰でも知っていて、真似しやすく、尚かつどこか笑えるこのヴィデオは、'13年に似たような趣向のヴィデオで大ヒットしたロビン・シック「Blurred Lines」と同じく、多くのパロディ作品を生むことにもなった。オリジナル版を振り返った“パーマー娘におぼれて(part 1)”に続き、今回は、各々思い思いのなりきりぶりが楽しい「Addicted To Love」パロディの数々を一挙に紹介する。


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YOU AIN'T SO TOUGH (1987)
Artist: Dance Like A Mother | Director: Andy Morahan

 僅かシングル2枚で消えたイギリスの徒花女性デュオ、ダンス・ライク・ア・マザーのヴィデオ。“あんたは強がってるだけ、あんたには私のような女が必要なのよ”というダンス・ポップ・チューンを、バンド役のイケメン男性たちをバックに歌う。まさに「Addicted To Love」の男女逆転版。演奏場面の合間には、ロッカールームでボディケアに勤しむ男たちの姿。エンディングではロバート・パーマーの写真もしっかり登場(ロッカーの鏡に飾られている)。ブルネットのヴォーカリスト&ブロンドのギタリストという女性コンビは、もろにハートのアン&ナンシーを思わせるが、実は、特大ヒット「Alone」を生んだ同年のハートのアルバム『BAD ANIMALS』には、ずばり「You Ain't So Tough」という同名異曲が収録されている。どちらが先だったのかは不明だが、どうしようもなくハートのパクリ感が漂うダンス・ライク・ア・マザー。「Addicted To Love」のパロディをいち早くやったコンビとして辛うじて歴史に名を残す。


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WILD THING (1988)
Artist: Sam Kinison | Director: Marty Callner

 セックス・ドラッグ&ロックンロールな芸人、サム・キニソンによるトロッグスのカヴァー。そのヴィデオ内に、僅かワン・シーンではあるが、黒スーツ姿のキニソンが両脇におネエちゃんたちを侍らせて歌う「Addicted To Love」のパロディ場面が登場する。ヌード・モデルのジェシカ・ハーンをフィーチャーした典型的なバカ・ロック・ヴィデオで、セクシズム全開の実にストレートなパロディ。エアロスミス、ボン・ジョヴィ、ラット、スラッシュ、トミー・リー、ビリー・アイドル(頭悪そうな表情が最高)などなど、当時のハードロック系バッドボーイたちも多数出演。見終わった後、ハーンの巨乳以外、全く何も記憶に残らない凄まじく空虚な作品。


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WILD THING (1988)
Artist: Tone Loc | Director: Tamra Davis

 ご存じ、トーン・ロックの特大ヒット(キニソンによる上記のトロッグスのカヴァーとはもちろん同名異曲)。使える物は何でも利用するヒップホップ精神の真髄のようなヴィデオ。ヴァン・ヘイレン使いのロッキッシュなトラックに乗せてやりたい放題。モデルの中にきちんとアフリカ系が混ざっているのも良し。粗いモノクロ映像もクールで、オリジナル版以上に低予算風なのも最高だ(製作費350ドルらしい)。やはり、これだけふてぶてしく人を喰っていないとパロディはつまらない。早くもパロディ大賞決定か? ちなみに、モデルの後方にいるグラサンDJは、どうやらレーベルメイトのヤングMCのようだ(彼はこの曲を共作している)。この後、ヤングMCも「Bust A Move」で特大花火を打ち上げるが、トーン・ロック同様、残念ながらあっさり消えてしまう。アスタ・ラ・ビスタ!


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UHF (1989)
Artist: Weird Al Yankovic | Director: Jay Levey

 パロディ王、アル・ヤンコヴィックがパーマーのヴィデオを見逃すわけがない。自身の主演コメディ映画『パロディ放送局UHF』の主題歌ヴィデオの中で、しっかり「Addicted To Love」を料理。モデルが全員、メガネに口ヒゲのヤンコヴィック娘になっている(両方混ぜたらなぜかロン・メイル風、というのも笑える)。パーマーの歌い方の真似も大袈裟で可笑しい。パッと見た感じ似ているが、よく見ると全然違うあたりのズッコケ感はさすがの貫禄。このヴィデオにはロバート・パーマーの他に、ガンズン・ローゼズ、ジョージ・マイケル、プリンス、トーキング・ヘッズ、ピーター・ガブリエル、ZZトップ、ビリー・アイドル、インエクセス、ビートルズらのパロディが洪水の如く登場する。ちなみに、ヤンコヴィックは'86年に「Addicted To Love」のパロディ・ソング「Addicted To Spuds(イモにおぼれて)」も作っている。


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ON THE GREENER SIDE (1989)
Artist: Michelle Shocked | Director: unknown

 女だって負けていられない。フォークお姉ちゃんのミシェル・ショックトは、ダンス・ライク・ア・マザー同様、逆に男どもを従えて気持ち良さそうに歌ってみせる。映像的に敢えてあまり似せず、自己流にアレンジしているところに好感が持てる。一部をグリーンに加工したモノクロ映像もお洒落。後半ではビキニ水着のマッチョ男たちも登場。尻をアップ&ドリーで見せるショットなど、かなり「Simply Irresistible」なところもある。愛嬌溢れる爽やかな作品。最優秀女性パロディ賞を進呈したい。


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FOREVER YOUR GIRL (1989)
Artist: Paula Abdul | Director: David Fincher

 「Straight Up」に続くポーラ・アブドゥルの大ヒット曲のヴィデオ(監督は引き続きデヴィッド・フィンチャー)。音楽ヴィデオの撮影現場をモチーフにした作品の中に、小さな女の子3人がパーマー娘に扮する場面が出てくる。かわいい〜。こうして他のアーティストのヴィデオに頻繁にパロディ場面が登場するのを見ると、「Addicted To Love」が与えたインパクトの大きさがよく分かる。


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MR. BLOBBY (1993)
Artist: Mr. Blobby | Director: unknown

 '90年代にBBCで放映されていたバラエティ番組〈Noel's House Party〉の名物キャラクターがミスター・ブロッビー。番組内のドッキリカメラのコーナーから生まれた斑点お化けで、“ブロッビー!ブロッビー!”と喚きながら破壊行為に及ぶ、子供に大人気のゆるキャラ(?)だったらしい。ズバリ「Mr. Blobby」という脳天気な曲が作られ、これが'93年12月に全英1位を記録する大ヒットになってしまった。そのヴィデオの中に「Addicted To Love」のパロディが登場する。何ともトホホな画で、最後はブロッビーがドラムセットに突っ込み、セットが崩壊するというオチ。このヴィデオには他に、シェイクスピアズ・シスターの前年の大ヒット「Stay」のパロディも出てくる(本物のマルセラ・デトロイトが出てくるので驚いたが、よく見るとオリジナル版のMV映像をそのまま使っていて、ブロッビーとの絡みのショットだけ代役だった)


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MAN! I FEEL LIKE A WOMAN! (1999)
Artist: Shania Twain | Director: Paul Boyd

 シャナイア・トゥエインまでパロディに挑戦。半分男装のトゥエインがマッチョなイケメン男性たちを侍らせ、“女は楽しくやらなきゃ!”と歌う女性上位主義なヴィデオ。オリジナル版の男尊女卑的な部分をそのまま反転させたもので、正しい女性版を作ればこうなるという好例か。ただ、シャナイア・トゥエイン自身にあまりユーモア感覚が感じられないのが難点で、パロディとしてもストレート過ぎていまいち面白くない(これがライザ・ミネリだったら……)。女性版「Addicted To Love」パロディは主役の女性のキャラが大事。しかし、このヴィデオの男たちはどれも似ていて、見分けのつかなさに関してはオリジナルのパーマー娘を超えているかも。


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PEPSI AD: THE JOY OF PEPSI (2001)
Artist: Britney Spears | Director: Joe Pytka

 '01年にブリトニー・スピアーズが出演したペプシのコマーシャル。ペプシの歴史を彼女出演の再現映像で振り返るヴァージョンの中に、'89年の「Simply Irresistible」CFが出てくる。ブリトニーのパフォーマンス自体はどうということはないが、注目すべきは背景のパーマー娘たちの映像で、これがオリジナル版をそのまま再利用している。サウンドトラックはブリトニー自身が歌う「Simply Irresistible」。


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CHRISTMAS IS ALL AROUND (2003)
Artist: Billy Mack | Director: Richard Curtis

 ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソンら出演の恋愛コメディ映画『ラブ・アクチュアリー』(12月のロンドンを舞台にした男女19人の恋愛群像劇)。劇中で、ビル・ナイ演じる中年の落ち目ロック・スター、ビリー・マックが復活を賭けて発表するクリスマス・シングル曲のMVがパーマーのパロディになっている。サンタ姿のセクシーおネエちゃんたちがバンド役を務めていて、後半では全員ランジェリー姿でポールダンス。ロック・ヴィデオの典型イメージを狙ったもので、これ自体はどうしようもなく陳腐だが、そのいかにもな点に意味がある映画内の架空MV。ゆえに、純粋なパロディとしては評価しにくいのだが、もともとロックMVのパロディであるパーマーのヴィデオから皮肉とユーモアを抜くとこうなる、という面白い例ではあるだろう。劇中ではビリー・マックの持ち歌「Love Is All Around」の焼き直しという設定だが、同曲は実際にはトロッグスの'68年のヒット。「Christmas Is All Around」は同映画サントラ盤に収録され、実際にビリー・マック名義でシングル発売もされた。


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1985 (2004)
Artist: Bowling For Soup | Director: Smith + Borin

 テキサス出身のロック・バンド、ボウリング・フォー・スープ。彼らのヒット曲「1985」のヴィデオ内に「Addicted To Love」のパロディが登場する。'80年代にティーンエイジャーで、スターになることを夢見ていたデビー(現在では高校生の二児を持つただの主婦)を主人公にした歌で、歌詞にはブルース・スプリングスティーン、マドンナ、U2、ブロンディなどなど、当時のポップ・スターの名前がたくさん出てくる。ヴィデオは、主人公デビーの家の向かいにボウリング・フォー・スープが住んでいるという設定で、ガレージの中で彼らが次々に'80年代のアイコンに扮してみせるというもの。巨漢ギタリストが扮するパーマー娘には、パロディならではのとぼけた味がある(マツコ・デラックスみたい)。この作品には他にもジョージ・マイケル、モトリー・クルーのパロディが登場。最初は無視していたデビーが、終いには車のボンネットの上をホワイトスネイク「Here I Go Again」のタウニー・キテイン風に転げ回り、旦那から“おまえ、何やってんだ?”とつっこまれるオチも良い。'80年代MTV世代の共感と郷愁を誘う秀作。


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ADDICTED TO LOVE (2004)
Artist: Andrea Merkx | Director: Andrea Merkx

 ニューヨークで活動するアーティストの作品。専門はデジタル・ヴィデオや写真を使ったヴィジュアル・アート一般のようだが、音楽活動もしているらしい。同一画面内に複数の自分を登場させる合成作品を多く制作していて、これもその中のひとつ。曲はチッコーネ・ユースを思わせる「Addicted To Love」のチープなカヴァーで、全員を彼女自身が演じている。映像も実にチープ。均一ルックスのパーマー娘たちを逆に同じ人間が演じてしまうというのも、パロディとしてはありそうでなかった。但し、全員同一人物というワン・アイデアだけで、それ以外の魅力に乏しい作品なので、これでフル・コーラスの長さを引っ張られるのはちょっとキツい。もう一捻り欲しいところ。


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ADDICTED TO OIL (2006)
Artist: Big News | Director: Phillip Wilbum

 ロサンゼルスの芝居小屋、Improv Olympic Westで週1回上演されていた1時間のスケッチ・コメディ・ショウ〈Big News〉。役者と脚本家、総勢40名近くの人間によって作られ、政治からセレブのゴシップまで、毎回その週の新鮮な時事を扱ったお笑いライヴで人気を博していた。これはその〈Big News〉制作のパロディ。'06年1月31日に行われたブッシュ米大統領の一般教書演説での発言“米国は石油依存症に陥っている(America is addicted to oil)”をネタにした替え歌パロディで、タイトルはそのまんま「Addicted To Oil(石油におぼれて)」。採掘場をバックに、石油資源を浪費するアメリカの自動車社会に警鐘を鳴らしている。道端で演奏する彼らの前を車がビュンビュン通過していくのが可笑しい。出演は全員〈Big News〉の役者で、そこでブッシュ役を担当するフィリップ・ウィルバムがヴォーカルと監督を務めている。撮影時に小雨が降っていたらしく、よく見るとカメラに水滴がついていたり、楽器がいかにもあり合わせ風なのもいい感じ。〈Big News〉公式サイト(現在は消滅)によると、'06年2月2日の舞台でブッシュの一般教書演説がネタにされているので、そこで上映されたとすると、構想から撮影・編集まで僅か1日の超即席ヴィデオということになる。よくやるなあ。


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RESISTANT TO BASE (2006?)
Artist: Scott Johnsgard Jr. | Director of photography: Scott Ellison

 有機化学をネタにした「Addicted To Love」の替え歌パロディ。これは凄い! 歌詞は実験室での化学実験の様子を綴ったもので、LDA、KOH、ブチルリチウム、ヒドラジンなどの専門用語が連発され、アルキル化だの、pH値、pKa値がどうだのと歌われている。門外漢にはさっぱり意味不明だが、化学の知識がある人にはこれだけでも相当面白いのではないか。ヴィデオは、実験衣姿の胡散臭い教師役の青年と、絶妙なルックスの女子生徒たちが教室内で演奏しているというもの。パーマーの表情やアクションの真似はもちろん、カメラワーク、カット割りもオリジナル版を完璧に再現している。背景に黒板を持ってきたアレンジも技あり。研究書類、ビーカー、モップなどを使った小ネタが挟まれるのも可笑しい。冒頭にMTV風の曲クレジット(アーティスト名、曲名、アルバム名、レーベル名)もきちんと入っていて、アルバム名が『PEPTIDE(ペプチド)』、レーベル名が“Heavy Water Records(重水レコーズ)”という、これまた化学ネタで余念がない(パーマーのアルバム名『RIPTIDE』『HEAVY NOVA』に掛けている)。バンドを始めて2日くらいの連中がやっているような演奏にも侮れないものがある。フィルム調のアナログな質感のせいで、とぼけた味わいが増しているのも特筆もの。もの凄い完成度だ。
 ヴォーカルのスコット・ジョンズガード・Jrは、テキサスA&M大学で化学、哲学、数学などを学ぶ傍ら、Ingeniosus Studiosというマルチメディア・デザイン事務所でサウンド・エンジニアリング/音楽制作に携わっていた人物。撮影監督としてクレジットされているスコット・エリソンは、ジョンズガードと同じ'85年生まれの映画青年。処女短編『Karoshi』(2004)にはジョンズガードも参加していた。よく分からない連中による怪作だが、トーン・ロック「Wild Thing」と同点でパロディ大賞に決定したい(この作品を私は'07年にYouTubeで発見し、当時、制作スタッフについて調べたことがあった。今回、6年ぶりにスコット・ジョンズガード・Jrについて検索したところ、'10年に24歳の若さで亡くなっていたことが判明して絶句。冥福を祈りたい)


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GORDON'S DREAM (2006)
Director: unknown

 マサチューセッツのバブソン大学の学生が学祭用に制作した2分20秒の作品。音楽ヴィデオではなく短編映画なのだが、個人的に最も笑えたパロディのひとつがこれだ。舞台は大学の教室。講義中、主人公のゴードンはノート・パソコンで「Addicted To Love」のヴィデオを見ながら居眠りしてしまう。夢の中で彼はロバート・パーマーに変身し、女の子たちを侍らせて「Addicted To Love」を歌う(音はパーマーのオリジナル版が使われている)。ゴードン娘はなぜか全員タイ人。気持ちよく歌っていたところ、“コラー!”と机を叩かれ、先生に起こされてしまう。周りを見回すと、夢の中でゴードン娘だったクラスメイトのタイ人の女子たちが呆れた顔で彼を見ている、というオチだ。ゴードン、恥ずかしっ!
 モデル役が全員タイ人なのは、恐らく西洋人にとって東洋人が皆同じような顔に見えるからだろう。ヴィジュアル的にもパロディ的にも、かなりいい線をついていると思う。オリジナルをうろ覚えで再現したような素人くさいカメラワークも味があって良い。いかにも友達から借りてきました的なヘフナーのヴァイオリン・ベースもご愛嬌。情けないへなちょこコピーぶりが、なんとも“オレの夢”といった感じで、うまく笑いに転化しているのが素晴らしい。ゴードンを起こすのが女の先生であるところも的確。技術的には稚拙なのだが、作品としてはとても巧くできている前回紹介したロビン・シックの和製パロディ「ブラード・ラインズ〜今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪〜“俺たちツイてるぜ”ヴァーション」は、これと全く同じ切り口の作品)。女を侍らしたパーマーのヴィデオには、男なら誰でも憧れるカッコよさと、同時に、そうした男の夢をファンタジーとして自ら笑い飛ばす冷静なユーモアがある。この短編パロディ映画は、パーマーのヴィデオに対する実に正しいオマージュになっていると思う。審査員特別賞を進呈したい。


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GREEN LIGHT (2007)
Artist: Beyonce | Directors: Melina Matsoukas, Beyonce

 ビヨンセのヴィデオにもパーマー娘ネタが。パロディというわけではないが、バックの女性ダンサーたちにそれ風のメイク&ファッションをさせている。セクシーな衣装と群舞はいかにも「Simply Irresistible」だ。男性誌的な女性像をデフォルメしたパーマー娘のイメージを利用し、女の側から逆に攻撃をしかけるビヨンセ。ここでパーマー娘は完全に彼女の兵隊と化している。さすがの女戦士っぷりである。後半では白黒コスチュームのおっかなそうな女性バンドも登場。ジャネル・モネイの「Q.U.E.E.N.」ヴィデオ、『ポリー・マグー』にばかり気を取られたが、よく考えたらこれにも似ている。


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EMERALD NUTS AD: GOLF (2008)
Director: Brian Lee Hughes

 アメリカのお菓子、エメラルド・ナッツのテレビ・コマーシャル。男2人がゴルフ仲間のマークの家を訪れる。が、玄関で呼んでも応答なし。時計を見て片方の男が慌てる。
男1:まずい、「恋におぼれて」女たちが……!
男2:なんだって?!
 ゴルフクラブを構えて恐る恐る裏庭へ向かう2人(1人はエメラルド・ナッツを食べている。笑)
男1:マークのやつ、エメラルド・ナッツを3時のおやつに食べないから疲れちまうんだ。このままじゃ「恋におぼれて」の女どもに仲間にされちまうぞ!
 裏庭には衝撃的な光景が。そこでは、疲れて眠りこけるマークの顔にパーマー娘たちが自分たちと同じメイクをしようとしていた。2人と目が合った瞬間、彼女たちは空へ飛び去る。“3時に友だちを守ってあげよう”(ナレーション)。おやつにエメラルド・ナッツを食べないと大変なことになる、というCFである。オッサンが化粧されるというのが笑いどころだが、これは是非とも女性が被害者になるヴァージョンを作って欲しかった(OLとか主婦とか)。発表から20年以上経っても普通にCFのネタにされる「Addicted To Love」!


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ALLERGIC TO CATS (2011)
Artist: Raqswell & The CATastrophes | Director: unknown

 猫アレルギーに悩む女性による替え歌パロディ。ぬいぐるみの猫たちをバックに、眼鏡をかけた冴えない感じの中年女性が歌う。彼女は実際に猫アレルギーらしい。視覚的な分かりやすさ、模倣しやすさだけでなく、替え歌にしやすい点でも「Addicted To Love」は格好のパロディ・ネタである。


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ADDICTED TO LOVE (2011)
Artist: Raymond Penfield | Director: Gina Ramirez

 最後に紹介するのは、カリフォルニア州オリンダ在住のレイモンド・ペンフィールドさん、御年94歳(!)による「Addicted To Love」カヴァー。少々トウの立った美女たちに囲まれ、ループタイでカッコよく決めたレイモンドさんが日溜まりの中で自慢の喉を披露。爺さん、歌うまい! のどかなウクレレのカントリー・アレンジに心が和む。彼を立てる女性たちも素晴らしいと思う。みんなめちゃめちゃ楽しそうだ。高齢化社会におけるひとつの理想を体現した傑作。ロバート・パーマー本人が聴いたらさぞかし感銘を受けただろう。最優秀シニア・パロディ賞を進呈!

 レイモンドさんのように、男はいつまでもカッコよくありたいもの。バカな夢を見る男を、女性はなるべく温かい目で見守って欲しいものである(“バカじゃないの”とか無下に扱わないでください)。男たちよ、レイモンド爺さんに続け!



Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 1)
Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 1½)
Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 2)
Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 2½)
Robert Palmer──'79年のホット・サマー・ナイト

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