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Robert Palmer──'79年のホット・サマー・ナイト



 英国の熱きブルーアイド・ソウルマン、スーツが似合う粋なサウンド・スタイリスト、ロバート・パーマー。追悼特集の第5回目となる今回は、没後10年の'13年秋に突如として蔵出しされた彼の'79年のお宝ライヴ映像を紹介することにしたい。

 ロバート・パーマーと言えば、モデル美女たちをわんさか侍らせた'80年代の一連の音楽ヴィデオ過去記事を参照)が有名だが、彼は決してスケベな伊達男ではなく、様々な音楽を洒脱なマナーで解釈しながら、'70年代から独自のソウル道をエレガントに歩み続けた本当に素晴らしい歌手/アーティストである。そんな彼の魅力がダイレクトに伝わってくるのがライヴ・パフォーマンス。ステージではいつもひたすら熱く歌いまくって観客を魅了したロバート・パーマー。'79年、30歳当時の激クール&ホットな姿にシビレよう!


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ROBERT PALMER LIVE AT MUSIKLADEN EXTRA
Original broadcast: Summer 1979 (Germany)
Rebroadcast: 27 September 2013 (Germany)

Love Can Run Faster / Under Suspicion / Come Over / Pressure Drop / Man Smart, Woman Smarter / Bad Case Of Loving You / Can We Still Be Friends / Sailin' Shoes / Hey Julia / Sneakin' Sally Through The Alley / Best Of Both Worlds / Night People

Personnel: Robert Palmer (vocals, guitar), Kenny Mazur (guitar), Steve Robbins (keyboards), Jack Waldman (keyboards), Pierre Brock (bass), Jose Caldo (drums)

 世界中の様々なアーティストが出演した西ドイツの音楽番組〈Musikladen〉。この番組には、観客のいるスタジオで一組のアーティストがワンマン・ライヴを行う“〜Extra”という特別シリーズがあった。これはそのロバート・パーマー出演回。'79年夏に放映されたきり、これまでブートレグでも全く出回っていなかった幻の映像が、彼の没後10年に合わせた'13年9月27日(命日の翌日)にドイツのBRαというチャンネルで再放映された。ただでさえライヴ映像が少ないロバート・パーマーだけに、希少価値だけでも十分だが、内容がこれまた殺人的に素晴らしい。ファンはもちろん、彼をよく知らない人にも是非見て欲しい正真正銘のお宝映像である。

 このテレビ出演は、5thアルバム『SECRETS』時代のもの。ミーターズやリトル・フィートと組んで洒脱なニューオーリンズ・ファンクでソロ・キャリアをスタートさせたパーマーは、レゲエやカリブ音楽の影響も受けながら、徐々に都会的で洗練されたソウル/ファンク・サウンドを聴かせるようになり、'79年発表の『SECRETS』では、当時台頭していたニュー・ウェイヴと呼応するように、本格的にロック・サウンドにも取り組み始めた。音楽性を急速に広げ、彼が新たな聴衆を獲得しつつあった時期の大変に面白いライヴだ。

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 バックを務めているのは、ドラムを除き、すべて『SECRETS』の録音メンバー。ベースのピエール・ブロックは、'70年代後半のアーバン・ソウル時代のパーマー作品を支えた人物。鍵盤のジャック・ウォルドマンは『SECRETS』から参加し、'80年代前半のニュー・ウェイヴ時代のパーマー作品を支えることになる人物(ナイトフライトやクラウス・ノミ作品などにも参加する器用人。'86年に33歳で早世)。新旧入り交じるメンバーの演奏は、時代の転換点ならではのスリルに溢れて聴き応え十分。アルバム同様、非常に引き締まった密度の濃い演奏が楽しめるが、放映された12曲のうち、『SECRETS』収録曲は僅か3曲のみ。『SECRETS』の特色でもあるニュー・ウェイヴ感覚のソリッドなロック・ナンバーは、スマッシュ・ヒットにもなった「Bad Case Of Loving You(米ポップ・ロック歌手、ムーン・マーティンの'78年作のカヴァー)くらいのもので、基本的には'70年代らしいソウル/ファンク、あるいはレゲエの要素を強く引きずった内容になっている。『DOUBLE FUN』『SOME PEOPLE〜』といった'70年代後半のアルバムの大ファンである私にとっては逆にこれが嬉しかったりするのだが、『SECRETS』期のバンドだけあって、旧レパートリーにもどこかしら新鮮な時代の空気が感じられるのがこれまた面白い。

 後年のコンサートでは披露されなくなる曲がほとんどで、生演奏自体、初めて聴く曲もあったりしてファンとしては興奮が尽きない。「Pressure Drop(トゥーツ&ザ・メイタルズのレゲエ曲カヴァー)、「Man Smart, Woman Smarter(ハリー・ベラフォンテのカリプソ曲のニューオーリンズ・ファンク調カヴァー)などで聴かれる粘りの利いた熱いソウル歌唱には'70年代のパーマーならではの良さがあるし、終盤で披露される1stアルバム収録の必殺メドレーは、クラヴィネットが弾む冒頭の「Sailin' Shoes」から鬼のようにシャープでファンキーだ。「Night People(アラン・トゥーサン作のリー・ドーシー楽曲カヴァー)は『DOUBLE FUN』収録の洗練されたアーバン・ファンク・サウンドとは一味違うニュー・ウェイヴっぽいスパイスが利いた演奏で、これまた強烈。ピエール・ブロックの弾くゴツゴツした重量感たっぷりのチョッパー・ベースがたまらない。

 どの時期のツアーでもそうだが、ロバート・パーマーはライヴで複数の曲をメドレー形式で披露することが多かった。このテレビ・ライヴでも、多くの曲が切れ目なく、次々と畳みかけるように披露されている。ジェイムズ・ブラウンをはじめ、ファンク系のアーティストはライヴで曲間に休止を入れないパターンが多いが、それは永続性がファンクにとって非常に重要な要素だからである(この演奏スタイルは、言うまでもなくディスコやクラブのDJに引き継がれている)。様々な音楽に手を染めたロバート・パーマーだが、彼のキャリアに一貫していたのは、ファンクの追求、あるいは、リズムというものに対する強いこだわりである。彼はいつも面白いリズムを探求していた。ライヴでのメドレー式の演奏からは、ファンキーでリズム・コンシャスな彼の音楽の魅力がアルバム以上に強く伝わってくる。

 ひとつ残念なのは、彼の究極の代表曲「Every Kinda People」(前作『DOUBLE FUN』収録)と、『SECRETS』の白眉でもある彼の自作曲「What's It Take?」が含まれていないこと。実は、このテレビ・ライヴ映像(約42分)はショウを完全収録したものではなく、実際に見れば分かるが、明らかにショウの途中から始まっている。「Every Kinda People」はこの時点でのパーマーの最大のヒット曲でもあるので、演っていないわけがない。恐らく序盤に披露されたのだろう。ショウの収録最中、スタジオ内でちょっとしたボヤ騒ぎ(?)でもあったのか、パーマーがMCで何度かそのことに言及している。映像がショウの途中から始まるのは、もしかするとそれが関係しているのかもしれない。もし全長版が残っているなら、何としても見てみたいものだが……。

 ちなみに、ロバート・パーマーは'79年9月から11月にかけて、北米〜欧州で『SECRETS』を引っ提げたツアーをやっている。その時のボストン公演(収録日不明)の様子を収めた『BAND IN BOSTON』という有名なプロモ・ライヴ盤があり、そのメンバー紹介を聴くと、ツアーではバンド・メンバーが3名入れ替えられたことが分かる(Steve Robbins→Alan Mansfield、Jose Caldo→Dony Wynn、Kenny Mazur→?)。この点から、〈Musikladen Extra〉の出演時期は、'79年7月の『SECRETS』発売から間もない'79年7〜8月頃と思われる。

 ロバート・パーマーのお宝ライヴ映像〈Musikladen Extra〉は、ネットで簡単に入手できる。DVDファイル(VIDEO_TS)のダウンロード・リンクを張っているブートレグ共有サイトがあるので、興味のある人は早めにゲットしておこうこことかここなど。販売しているサイトもあるが、買ってはいけない)。これは是非ともオフィシャルで発売して欲しい!


 ロバート・パーマー追悼特集はまだまだ続く……(?)。


Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 1)
Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 1½)
Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 2)
Robert Palmer──パーマー娘におぼれて(part 2½)

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