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ありがとう2013年! ゆく音くる音

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 年末になると、大体どこも“年間ベスト・アルバム”というランキング企画をやる。私は今までやったことがなかったが、'13年の今年はやることにした。理由のひとつは、今年は例年に比べて気に入った新譜やアーティストについて記事を書くことが割と多く(飽くまで当ブログ比だが)、年間ベスト・アルバム選をやれば、それがそのまま今年の主要記事のインデックス代わりになると思ったからである。フェイバリットとして上に選出した作品はいずれも'13年に発表されたもので(ひとつだけ'12年作品)、10組のアーティストのうち、7組に関しては年内に何らかの記事を書いた。本記事末に関連記事をリストアップするので、詳しくはそちらをご覧頂きたい。


万歳孤独──Stromae『Racine Carree』

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 1位は、あたりまえだのストロマエ。これはぶっちぎりの1位である。こういうEDM系の音を私は普段あまり聴かないのだが、彼は別格。フロア向けの享楽的なダンス・ミュージックの側面もあるが、ストロマエはベッドルームでの傾聴にも十二分に値する本当にシリアスで素晴らしいシンガー・ソングライター/ミュージシャンだ。ものすごく乱暴に言うと、アヴィーチー feat. アロー・ブラック「Wake Me Up」をたった一人でやれる男。内心、単なる一発屋かとも思っていたが、8月に発表された3年ぶりの2nd『RACINE CARREE(平方根)』で見事に実力を証明した。音楽性の幅を格段に広げ、ワールドワイドな音楽をエレクトロニックな音像にスマートに落とし込んだ洒脱な収録曲は、手広くヴァーサタイルでありながら一貫した作家性があり(ロバート・パーマーの名作『PRIDE』を彷彿させたりもする)、同時に非常にインティメイトに聴き手に訴えかける。不可解な自分を平方根によってどこまでも開平していくような歌世界。延々と弾き出される小数の列がそのまま電子ビートの躍動となり、私たちを永続的なダンスに駆り立てる。思考放棄ではなく、考えるがゆえに彼は踊るのである。幕開けの電子アフロ・キューバン曲「Ta Fete」から涙が出るほどの感動に襲われる。圧倒的な祝祭感に溢れた電子音響。その張りぼての音の陰には常に虚無が潜む。このアルバムはまるで独りぼっちの祭である。自己の深淵を覗き込むような孤独な視線が、これほど自然に力強いダンス・ビートと結びついた音楽を私は知らない。予想を遙かに超える普遍性と深みを持った感動的なポップ・ミュージックで、まさしく1位に相応しい風格がある。“ジャック・ブレルの再来”という形容はもはや不要だろう。この男は本当に凄い。この2ndで彼は、人生の哀歓を表現するための独自のアルゴリズムを見事に完成させたと思う。惜しむらくは、仏語ゆえ、彼の表現の要でもある歌詞が十分に理解できないこと(泣)。ストロマエについては、先行曲「Papaoutai」の発売日(5月13日)に合わせて、ごく簡単にキャリアを紹介する記事を書いたものの、この2ndアルバムに関して私には残念ながらきちんと語る能力がなく、発売以来、激賞したくてもできないという苦悶にずっと喘いでいた(正直に言うと、今回の年間ベスト企画は何としても彼をプッシュしたい私の苦肉の策だったりする)。彼の素晴らしさはサウンドからも十分に伝わるとは思うが……。丁寧な対訳つき日本盤の発売を切望する!

【日本語で読めるお薦めストロマエ記事】
あたりまえだのストロマエ│カストール爺の生活と意見(2013.8.19)
待った、待ったストロマエくん・・・・│Bonne M...!!(2013.8.22)
軽いルックス&重い歌詞、ストロマエが好き│長谷川たかこのパリのふつうの生活(2013.9.22)
※“カストール爺の生活と意見”の筆者である向風三郎氏は、かつてフランスのポピュラー音楽を日本に紹介/輸入する“O'French Music Club”(1996〜2007)という最高に素晴らしいサイトをやっていた方。私はその愛読者の一人だった(著書も持っている)。取り上げる音楽は違うが、拙ブログは実はそのサイトから莫大な影響を受けている。



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iTunes Festival('13年9月24日)でのパフォーマンスも素晴らしかったアロー・ブラック

 5位のアロー・ブラックと6位のジョン・レジェンドは同点。従兄弟なんじゃないかと思うくらい似ている両者は全く甲乙がつけがたい(アロー・ブラックのジャケが真ん中の方がレイアウト的に見映えが良いのでこの順になった)。レジェンド『LOVE IN THE FUTURE』は、ジャネル・モネイなど話題の新譜が多数控える9月の直前時期(8月30日)に発売され、当時は数回しか聴く余裕がなかったのだが、今じっくり聴いて改めて良さを実感する。“進化”ではなく、期待通りに(いや、それ以上の)“深化”を遂げた名作である。これぞ未来のレジェンド。9月10日、ジャネル・モネイの新譜発売日にアップした記事のタイトル“未来はすでに始まっている”は、実はレジェンドの新譜が素晴らしいことを暗に示すものでもあったのだが、多分、誰も気づかなかっただろう(私も気づかなかった)。

 一方、アヴィーチーとの共演曲「Wake Me Up」でなぜかいきなり世界中で1位になってしまったアロー・ブラック。メジャーに移籍した3年ぶり待望の3rd『LIFT YOUR SPIRIT』は、そんな勢いと間口の広さを感じさせる快作に仕上がった。サウンドも、マニア好みのヴィンテージ・ソウル風から、メジャー感漂うクリアでコンテンポラリーなものに変わったが、前作のオーセンティックなソウル志向は基本的に変わらず。冒頭に収録された「Wake Me Up」のアコースティックな自演版に顕著だが、ジョン・レジェンドが『EVOLVER』でやろうとしたことを、節度を持って無理せず自己流でやり通した感じもある。前作『GOOD THINGS』(2010)発表当時、私はアロー・ブラックのことを単なる懐古的なヴィンテージ・ソウル野郎だと勘違いして、ろくに聴かずにうっかりスルーしてしまった。おかげで来日公演('11年1月、ビルボードライブ東京)も見逃す始末。頼むからもう一度来て欲しい。この人は是非ともライヴを体験して記事を書きたい。

 7位のローラ・マヴーラは、6月の来日公演が最高に素晴らしかったのだが、アルバムに関してはちょっと小綺麗に音(編曲やミックス)がまとまりすぎたような気がする。ライヴでの瑞々しいサウンドがスタジオ録音にも反映されると良いのだが……。それでもフレッシュな感性が滲む佳作には違いない。ウェンディ・モーガンとのタッグによる音楽ヴィデオは文句なしに素晴らしかった。

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リフ・コーエン嬢(と小便小僧)

 8〜10位はあまり順位は関係ない(オセロ風に黒白交互に並べたらこうなった。レディーファーストでジョージ・マクフライが第10位)。8位のリフ・コーエン『A PARIS』は、実はデニーシャ&シーンHIS AND HERS(クアドロンやミロシュじゃ物足りない!というライのファンにお薦めの男女R&Bデュオ)とどちらにするかで最後まで悩んだのだが、リフ嬢の方が幅が出て面白いかと思って選んでみた(美人だし)。リフ・コーエンは、リジー・メルシエ・デクルー、クリスティーナ、リオといったZEレコードの歌姫、ブリジット・フォンテーヌ(&アレスキー)、オノ・ヨーコ、あるいは、ビョークのようなハイブロウなキテレツ女性アーティストを好むロック・マニアのオッサンを瞬殺しそうなテルアビブ出身/パリ在住の才女である。選出したデビュー作(本国イスラエルでは'12年8月発売)は、ロック色が強すぎて個人的にはベタ惚れというほどでもなかったのだが、様々な可能性を感じさせるユニークな個性と気骨を積極的に買うことにした(二度書くが、美人だし)。

 9位のジャネル・モネイは決して無下にしたわけではなく、シリーズものということもあり、他のアーティストを優先的に上位にした結果、この位置になっただけである('10年だったら彼女を1位にした)。シリーズ完結編となる次回作は、これまで以上にシアトリカルな作品になるか、あるいは、もしかするとその前に番外編的なカヴァー集が出たりするのではないかと私は予想している(シンディ・メイウェザー名義とかで)。っていうか、早く日本に来い!


STP'S FAVORITE ALBUMS OF 2013
1. Stromae - RACINE CARREE music video
2. Alice Smith - SHE music video
3. Twin Danger - POINTLESS SATISFACTION music video
4. Rhye - WOMAN music video
5. Aloe Blacc - LIFT YOUR SPIRIT music video
6. John Legend - LOVE IN THE FUTURE music video
7. Laura Mvula - SING TO THE MOON music video
8. Riff Cohen - A PARIS music video
9. Janelle Monae - THE ELECTRIC LADY music video
10. Willy Moon - HERE'S WILLY MOON music video

STP'S LUCKY MUSIC BAG: PLAYLIST OF 2013
1. Alice Smith - Fool For You
2. Rhye - Open [studio live]
3. Sarah Blasko - God-Fearing
4. Fiona Apple - Hot Knife
5. Bombay Bicycle Club - Carry Me
6. Maya Azucena - Dance Revolution
4. Basement Jaxx - What A Difference Your Love Makes
8. Laura Mvula - Green Garden
9. C2C - Happy feat. D.Martin
10. Pharrell Williams - Happy
11. Zeds Dead - Demons
12. Flume & Chet Faker - Drop The Game
13. The Rookies - Paris Love
14. Caro Emerald - Tangled Up
15. Quadron - Hey Love
16. Denitia and Sene - She's Not The Only One.
17. AlunaGeorge - You Know You Like It
18. Jessy Lanza - Kathy Lee
19. Lorde - Royals
20. Beyonce - Yonce
21. A$AP Rocky - Fashion Killa
22. Natalia Kills - Problem
23. A$AP Rocky - F**kin' Problems feat. Drake, 2 Chainz & Kendrick Lamar
24. Robin Thicke - Blurred Lines feat. T.I. & Pharrell
25. Daley - Remember Me feat. Jessie J
26. Mayer Hawthorne - Her Favorite Song
27. Alicia Keys - Fire We Make feat. Maxwell
28. Snoop Lion - Torn Apart feat. Rita Ora
29. Lion Babe - Treat Me Like Fire
30. Jesse Boykins III & MeLo-X - Black Orpheus
31. Chris Turner - LiquidLOVE
32. Omar - The Man
33. Bilal - Back To Love
34. Prince - Breakfast Can Wait
35. PJ Morton - Only One feat. Stevie Wonder
36. John Legend - Who Do We Think We Are feat. Rick Ross
38. India.Arie - Cocoa Butter
39. Rokia Traore - Melancolie
39. Ester Rada - Life Happens
40. Kellylee Evans - And So We Dance
41. Stromae - Formidable
42. Oxmo Puccino - Pam Pa Nam
43. Ayo - Fire feat. Youssoupha
44. Chambao - Ahi Estas Tu feat. Nneka
45. Riff Cohen - Jean Qui Rit Jean Qui Pleure
46. Chinawoman - Vacation From Love
47. Twin Danger - Coldest Kind Of Heart
48. Black Atlass - Paris
49. Jhene Aiko - Mirrors
50. London Grammar - Wasting My Young Years
51. Woman's Hour - To The End
52. Teresajenee - Ode To October
53. L'Orange - Alone feat. Blu
54. Blu & Exile - Ease Your Mind feat. Andy Allo
55. Oddisee - Own Appeal
56. Gavlyn - Guilty Pleasure
57. Curren$y - Chandelier
58. Tokyo Shawn - I Know You
59. Big Boi - Apple Of My Eye
60. Janelle Monae - PrimeTime feat. Miguel
61. Sy Smith - Nights (Feel Like Getting Down) feat. Rahsaan Patterson
62. Bad Rabbits - Can't Fool Me
63. Dam-Funk & Snoopzilla - Hit Da Pavement
64. The Internet - Dontcha
65. Eminem - Rap God [live @ YouTube Music Awards]
66. Fashawn - The Beginning
67. The Delfonics - Stop and Look (And You Have Found Love)
68. Robin Hannibal - Amends
69. Justin Timberlake - Suit & Tie
70. MED - Classic feat. Talib Kweli
71. will.i.am - Bang Bang [Great Gatsby version]
72. The Correspondents - Fear & Delight
73. Lauriana Mae - Money Mae
74. Lana Del Rey - Young And Beautiful
75. Willy Moon - Get Up (What You Need)
76. John Newman - Love Me Again
77. The Heavy - Curse Me Good
78. Lady - Get Ready
79. Myron & E - If I Gave You My Love
80. Black Joe Lewis - Come To My Party
81. Kendra Morris - Miss You
82. Naughty Boy - Think About It feat. Wiz Khalifa, Ella Eyre
83. Ella Eyre - Deeper
84. Harleighblu - Enough Now
85. Valerie June - Pushin' Against A Stone
86. Laura Marling - Master Hunter
87. Sam Lee - The Ballad of George Collins
88. Laura Welsh - Cold Front
89. Atoms For Peace - Ingenue
90. Yoko Ono Plastic Ono Band - Bad Dancer
Bonus videos:
91. P-Square - Personally
92. ???
93. ???
94. ???
95. ???

 アルバムのついでにお気に入り曲も選んでみた。こちらは音楽ヴィデオが制作されているシングル曲を中心に、アルバム選から漏れたアーティスト、アルバム選では引っ掛からないような作品を優先的に取り上げた。基本的に'12年末〜'13年にヴィデオが公開されたもので揃えたが、それ以前の作品もいくつか含まれている。曲そのものが好き、アーティストが好き、単にヴィデオが好き──いずれかの理由で選んだ。適当に思いつくままプレイリスト的に並べただけで、決して優劣をつけたわけではない。順位ではなく、単純に曲順だと思って頂きたい。大雑把ではあるが、似たような雰囲気や傾向の音楽/映像作品が私なりの仕分けで関連動画的に並べてあるので、リストをざっと眺めて好きな作品があったら、その前後をチェックしてみることをお勧めする(福袋でも開けるつもりで)。思わぬ掘り出し物があるかも?!

※'12年1月にTwinDangerVEVO(現在閉鎖)で初公開され、後に非公開にされて長らく見られなくなっていたツイン・デンジャーの音楽ヴィデオ2本「Pointless Satisfaction」「Coldest Kind Of Heart」(動画の説明欄にBlue Noteのクレジットが入っていた)は、彼らの公式YouTubeチャンネル、twindangerで復活し、現在視聴できるようになっている(投稿されたのは'12年12月14日だが、私がツイン・デンジャーの記事を書いた'13年前半の時点ではチャンネル上になかったので、しばらく非公開設定になっていたと思われる。Blue Noteからの発売が立ち消えになったことが関係しているのだろうか)。ツイン・デンジャーのCD『POINTLESS SATISFACTION』は、'13年秋にリニューアルされた彼らの公式サイトを通じて一時期購入できるようになっていたが(サイト内でリンクされているSquare Marketのページに商品としてリストアップされていた)、現在は商品リストから消え、再び入手できなくなっている。'13年秋に断続的に新録音が公開されていたSoundCloudの新たな公式アカウントからも音源が消えてるし……(もともとあった別の公式アカウントの音源は残っている)。どうなってんの?!

※ヴァネッサ・パラディの新曲「Love Song」('13年4月26日公開)が「Pull Up To The Bumper」みたいで何気にカッコよかったのだが、音的にも映像的にもリスト内に入れる場所がなかったため除外したことを付記しておきたい。




 私は音楽通でも何でもない。日頃からアンテナを張って幅広く最新の音楽状況をチェックしているわけではなく、たまたま見つけて気に入ったものを繰り返し聴くことが多い。アルバム選の3位にまさかのツイン・デンジャー(笑)が入っている時点で明らかだと思うが、ここに選んだ作品は、'13年を代表する重要作だとか、最先端の面白い音楽、あるいは、これから流行りそうな音楽とかでは全くなく、飽くまで私が今年、個人的にときめきを覚え、感銘を受け、愛聴したものに過ぎない。知らずに聴き逃している素晴らしい作品は世界に無数にあるだろう。こういうランキングはともすると趣味自慢的になりがちで、この記事も結局その域を出ていないように思うが、上述したような理由で今年は敢えてやってみた。運良く出会えた'13年の様々な音楽作品。選外になったアーティストも含め、感動を与えてくれたミュージシャンたち一人ひとりに“ありがとう”と言いたい。

 さて、来年、シャーデーの新譜は出るだろうか(出ないだろうなあ……)。
 2014年も素晴らしい音楽と出会えますように!


【年間フェイバリット10アルバム関連記事】
Rhye──究極の背中ミュージック(2013.3.23)
Twin Danger @ Billboard Live TOKYO 2013(2013.4.30)
Stromae──ストロマエは男前(2013.5.13)
Stromae──死ぬまでテ・キエロ(2013.5.14)
シャーデー大賞2013を占う(2013.6.12)
Laura Mvula @ Billboard Live TOKYO 2013(2013.7.4)
未来はすでに始まっている(ジャネル・モネイ関連記事目録)(2013.9.10)
ジョージ・マクフライ vs ビフ・タネン(2013.9.11)
Alice Smith──シャーデー大賞2013(2013.12.30)

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