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Michael Jackson──脱出

Xscape21.jpg


 Xscape [Original Version]
 (Michael Jackson/Rodney Jerkins/Fred Jerkins III/LaShawn Daniels)
 
 Open up, 6
 He's gone!
 
 6番房 開けろ
 いないぞ!

 
 Everywhere I turn, no matter where I look
 The system's in control, it's all run by the book
 I got to get away so I can free my mind
 Xscape is what I need
 Away from the electric eyes
 
 四方八方 どこを向いても
 管理体制が敷かれ 制度に支配されてる
 ここから抜け出して心を解放しよう
 脱出しなければ
 監視の目を逃れて
 
 No matter where I am, I see my face around
 They pin lies on my name, then push them town to town
 Don't have a place to run, but there's no need to hide
 I've got to find a place
 But I won't hide away
 
 どこへ行っても自分の顔を目にする
 僕に濡れ衣を着せ 町から町へ嘘をばらまく
 逃げ場所はないが 隠れることはないさ
 抜け道を探すんだ
 僕は逃げも隠れもしない
 
 Xscape, got to get away from the system rules in the world today
 Xscape, the pressure that I face from relationships has to go away
 Xscape, the man with the pen that writes the lies that has no end
 Xscape, I do what I wanna cause I gotta please nobody but me
 
 脱出 現代社会の束縛から抜け出すんだ
 脱出 厄介な付き合いに悩まされるのは御免だ
 脱出 次から次へと嘘ばかり書き立てる売文屋
 脱出 僕は自分のために好きなことをやるまでさ
 
 Sometimes I feel like
 I've gotta get away
 
 ときどき思うの
 抜け出さなきゃって

 
 I tried to share my life with someone I could love
 But games and money is all she ever thought of
 How could that be my fault when she gambled and lost?
 I'm tired of silly games
 It's time to make a change
 
 愛する人と人生を共にしようとしたのに
 彼女は駆引きや金のことしか頭になかった
 賭けに負けたからって なぜそれが僕のせいに?
 茶番にはうんざりだ
 もうお終いにしよう
 
 Why is it I can't do whatever I want to?
 When it's my personal life and I don't live for you
 So don't you try to tell me what is right for me
 You be concerned about you
 I can do what I want to
 
 なぜ自分の好きにしちゃいけないのさ?
 この人生 あんたのために生きてるわけじゃない
 あれこれ指図するのはやめてくれないか
 自分の心配をしたらどうだ
 僕は好きにさせてもらう
 
 Xscape, got to get away from the system rules in the world today
 Xscape, the pressure that I face from relationships has to go away
 Xscape, the man with the pen that writes the lies that has no end
 Xscape, I do what I wanna cause I gotta please nobody but me
 
 脱出 現代社会の束縛から抜け出すんだ
 脱出 厄介な付き合いに悩まされるのは御免だ
 脱出 次から次へと嘘ばかり書き立てる売文屋
 脱出 僕は自分のために好きなことをやるまでさ
 
 When I go, this problem world won't bother me
 This problem world won't worry me no more
 
 抜け出せば 面倒な世界に煩わされることもない
 もう苦しむこともなくなるんだ
 
 Xscape
 Xscape
 Xscape
 Xscape
 
 脱出
 脱出
 脱出
 脱出
 
 Xscape, got to get away from the system rules in the world today
 Xscape, the pressure that I face from relationships has to go away
 Xscape, the man with the pen that writes the lies that has no end
 Xscape, I do what I wanna cause I gotta please nobody but me
 
 脱出 現代社会の束縛から抜け出すんだ
 脱出 厄介な付き合いに悩まされるのは御免だ
 脱出 次から次へと嘘ばかり書き立てる売文屋
 脱出 僕は自分のために好きなことをやるまでさ
 
 Sometimes you just wanna escape
 Gotta get outta here!
 
 脱走したくなる時があるもんさ
 抜け出そうぜ!

 
 You want me? Come and get me
 
 僕をお探し? 掴まえてごらん
 
 
 (訳:Abeja Mariposa)


Xscape19.jpg
Xscape is what I need(「Xscape」を読み解くための映画4本)

 マイケル・ジャクソンにひとつだけ質問することができたとしたら、私は彼にお気に入りの映画を訊ねる。好きな映画には、人生に対するその人のヴィジョンが明確に表れる。“好きな映画は何ですか?”という問いは、“あなたはどういう夢を見るのが好きですか?”という問いとほとんど同じである。

 マイケルは『ショーシャンクの空に』が好きだったに違いない。「Xscape」のオリジナル版を聴いてそう思った。彼はティム・ロビンス演じる主人公に強く共感したと思う。当然、スティーヴン・キングの原作も読んだだろう(そして、キングと組みたいと思ったかもしれない)

 ある朝、目覚めると、なぜか自分がおぞましい“毒虫”に変身している。見知らぬ男たちが家に押し掛け、自分を罪人呼ばわりし、部屋を荒らす。全く身に覚えのない罪で法廷に立たされる──'93年以降、児童虐待の濡れ衣を着せられてからのマイケルの人生は、カフカの小説の主人公のそれと同じくらい不条理で、孤独で、恐怖に満ちたものだったと想像する。「Xscape」でマイケルは、そうした理不尽で息苦しい世界を、オーウェル『1984年』や『未来世紀ブラジル』の管理社会と重ね合わせて描いているように思われる。監獄のような世界からティム・ロビンスのように脱出する──そんなイメージでマイケルは「Xscape」を書いたのではないか。

 “xscape(escape)”、“get away”という語句の和訳には少し注意が必要だろう。いずれも“逃げる、逃亡する”という意味であることに違いはないが、そこにネガティヴなニュアンスはない。マイケルにしてみれば悪いことは何もしていないのだから、そもそも“逃げる”必要はないのである。“Don't have a place to run, but there's no need to hide / I've got to find a place / But I won't hide away”という部分にその心理がよく表れている。追い詰められてはいるが、隠れる必要はない。こそこそする必要はないのだ。“I've got to find a place”の“place”は、“逃げ場”ではなく、マイケルの思考を想像して換言すれば、“ここではないどこか”、つまり、“自由になれる世界”のことだろう。マイケルの意図かどうかは不明だが、純粋に芸術的な点から見れば、“escape”の綴りを“xscape”としたのは正しかったと思う。それによって、単なる(ネガティヴな意味での)“逃亡”ではないことが示唆できるからである。

 自由への脱出を歌った「Xscape」。この曲が『INVINCIBLE』から外されたのは、楽曲、歌詞ともに、数年前に発表した「Scream(および、「They Don't Care About Us」)を彷彿させるためかもしれない。『INVINCIBLE』は“21世紀型マイケル”を標榜した非常に前向きで意欲的なアルバムだった。私生活のことでいつまでも愚痴をこぼしたくない、過去のどの作品とも違う新たなサウンドで再スタートするんだ、という思いが強くあったのではないか。あるいは、レコード会社との確執──「Xscape」の歌詞内にもそれを思わせる箇所がある──が影響しているのかもしれない。この傑作が『INVINCIBLE』から外れたことを今にして多くの人が不思議がるが、仮に収録されていたら、“「Scream」に似てるね。また同じような歌だね”くらいの印象しか持たなかったかもしれない。そして、私たちは再び彼の私生活のことを話題にしただろう。『INVINCIBLE』から「Xscape」を外したことは、ある意味では正しかったと私は思う。とはいえ、その完成度の高さを考えれば、お蔵入りという扱いは、やはり不当以外の何ものでもないだろう。

Xscape20.jpg

 外された理由が何であれ、ともかく「Xscape」は、未発表曲、あるいは新曲として、'14年、倉庫から“脱出”を遂げた。かつて彼が見た夢の断片がここにある。改めて驚愕せずにはいられない。まったく、なんという天才、そして、なんという人生だろうか。


TO BE CONTINUED...


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