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Janet Jackson──逃・避・行





 ♪エス・カ・ぺイド──そう口にするだけで幸せになる。なんて素敵な言葉だろう。

 「Escapade」(1989)。この歌が私は死ぬほど好きだ。ジャネットの曲の中で2番目くらいに好きかもしれない。イントロ──飛行機の離陸音のようなあのノイズ!──を聴いただけで泣きそうになるくらい胸がわくわくする。賑やかな祭りの広場でジャネットが仲間たちとわいわい歌い踊るヴィデオも大好きだ。

 マイケル・ジャクソン「Xscape」に因んだ脱線記事、その2。前回のJB「Escape-Ism」に続き、今回はジャネットの“Xscape”ソング「Escapade」を取り上げる。




 Escapade
 (Janet Jackson, James Harris III, Terry Lewis)
 
 As I was walkin' by
 Saw you standin' there
 With a smile
 
 道すがら
 あなたの笑みに
 出会ったの
 
 Lookin' shy
 You caught my eye
 Thought you'd want to hang
 For a while
 
 はにかんだ
 あなたに惹かれて
 思ったの ちょっと今晩
 どうかしらって
 
 Well I'd like to be with you
 And you know it's Friday too
 I hope you can find the time
 This weekend to relax and unwind
 
 ご一緒できないかしら
 だって今日は金曜でしょ
 お暇なら嬉しいわ
 週末で羽をのばすのよ
 
 My mind's tired
 I've worked so hard all week
 Cashed my check
 I'm ready to go
 I promise you
 I'll show you such a good time
 
 一週間働きづめで
 うんざりしてるの
 お金もおろして
 準備は万端
 約束する
 最高に楽しいことが待ってる
 
 Come on baby let's get away
 Let's save our troubles for another day
 Come go with me we've got it made
 Let me take you on an escapade (let's go)
 
 さあ 抜け出そうよ
 悩み事なんか後回しにして
 出掛けようよ 絶対だから
 一緒に逃避行へ繰り出そう(さあ)
 
 Es-ca-pade we'll have a good time
 Es-ca-pade leave your worries behind
 Es-ca-pade you can be mine
 Es-ca-pade an escapade
 
 逃・避・行 楽しもうよ
 逃・避・行 心配事は忘れて
 逃・避・行 私と一緒に
 逃・避・行 逃避行
 
 So don't hold back
 Just have a good time
 We'll make the rules up
 As we go along
 And break them all
 If we're not havin' fun
 
 遠慮はいらない
 楽しくいきましょ
 いろんなルールを
 2人で決めて
 退屈したら
 片っ端から破っちゃおう
 
 Come on baby let's get away
 Let's save our troubles for another day
 Come go with me we've got it made
 Let me take you on an escapade (let's go)
 
 さあ 抜け出そうよ
 悩み事なんか後回しにして
 出掛けようよ 絶対だから
 一緒に逃避行へ繰り出そう(さあ)
 
 Es-ca-pade we'll have a good time
 Es-ca-pade leave your worries behind
 Es-ca-pade you can be mine
 Es-ca-pade an escapade
 
 逃・避・行 楽しもうよ
 逃・避・行 心配事は忘れて
 逃・避・行 私と一緒に
 逃・避・行 逃避行
 
 My mind's tired I've worked
 So hard all
 Worked so hard all week
 I just got paid, we've got it made
 Ready to go
 I promise you I'll show you
 Such a good time
 
 この一週間
 ずっと働きづめで
 うんざりしてるの
 お給料も出たから大丈夫
 準備万端
 約束する 最高に楽しいことが
 待ってる
 
 Come on baby let's get away
 Let's save our troubles for another day
 Come go with me we've got it made
 Let me take you on an escapade (let's go)
 
 さあ 抜け出そうよ
 悩み事なんか後回しにして
 出掛けようよ 絶対だから
 一緒に逃避行へ繰り出そう(さあ)
 
 
 『RHYTHM NATION 1814』からの3rdシングル。'90年初頭にシングル化され、全米総合チャート、R&Bチャート共に1位を獲得した大ヒット曲である。楽曲や編曲(特にストリングス)はもろにプリンスを彷彿させる。ジャネット版「Raspberry Beret」を作ろう、というジャム&ルイスの発想から生まれた曲だと推測する。後に「Runaway」(1995)という続編のような曲が作られ、そちらも大ヒットした。

 歌詞は至ってシンプル。街で出会った男の子をジャネットが逆ナンして、“週末だから一緒に楽しみましょう”と誘うハッピーな歌である。四半世紀も私の心に染みついている歌なので、自然と日本語が浮かんでサクサク訳すことができた。

 表題にもなっている“escapade”は、手元の辞書によれば、“脱線(的行為)、とっぴな行為、冒険、いたずら”という意味の名詞である。翻訳が好きな人には言うまでもないことだが、辞書に載っている訳語というのはプリセット音源のようなもので、そのままでは大抵使い物にならない。まともな翻訳をするには、文脈に合わせて加工するか、自分で適当な訳語を捻り出す必要がある。『RHYTHM NATION 1814』日本盤の対訳を試しに見てみると、“escapade”に“はめをはずす”という日本語が当てられていた(わざわざツタヤに行って確認したぞ)。全くその通りには違いないのだが、私がこの歌に感じるワクワク感・ドキドキ感は、残念ながらそれでは説明がつかない。

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JALのCF「Rhythm Nation」篇──空港内でランニングマン

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JALのCF「Escapade」篇──クロマキーで滑走路へ

 「Escapade」がヒットしていた'90年当時、ジャネットはJALのテレビCFに出演していた。CFには、ジャネットが空港内で踊る「Rhythm Nation」篇と、滑走路で踊る「Escapade」篇の2ヴァージョンがあった。どちらも良かったが、ジャネットたちがランニングマンのステップをやる「Rhythm Nation」篇のカッコよさは特に忘れがたい。外タレのテレビCFの中でも屈指の名作だと思う。ジャネット……飛行機……飛行……飛行……逃避行! “escapade”の決定的な訳語が私の頭に浮かんだのは、このJALのCFを思い出した瞬間だった。

 サビの“Es-ca-pade”は、まさに“逃・避・行”である。意味も音も完璧に合致する。これしかないべ。和訳の限界を極めたという満足感を得ることができたが、しかし、それでも釈然としない思いは残る。“escapade”は、結局のところ“escapade”でしかあり得ないのではないか。というのも、“Es-ca-pade”というサビのフレーズが、音としてあまりにも素晴らしいからである。英語が母国語でないせいもあるだろうが、私にはこの言葉が“ビビデ・バビデ・ブー”や“スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス”などと同じような魔法の言葉に聞こえるのだ。音のインパクトが意味に勝っている。なので、正直に言うと、サビ部分は本当は以下のように訳したい。

  エスカぺイド 楽しもうよ
  エスカぺイド 心配事は忘れて
  エスカぺイド 私と一緒に
  エスカぺイド 逃避行
  
 そのまま呪文のように片仮名で表記する。邪道と言えば邪道だが、そう訳すしかない歌だという気もする。3行目の“you can be mine(私と一緒に)”は、少し遊んで“旅は道連れ”としても面白いかもしれない。“Es-ca-pade an escapade”という結びのラインは、途中に“で”を入れて“エスカぺイドで逃避行”とすると更に魔法の言葉っぽくなるだろう。私にとって“escapade”は、唱えるだけで幸せになる魔法の言葉なのだ。

 実際に和訳してみて、改めて素晴らしい歌だと思った。破って楽しむためにわざわざルールを作る(=ルールは破るためにある)、という発想も好きだ。「Xscape」を書いた時、もしかするとマイケルの心のどこかに、ジェイムズ・ブラウン「Escape-Ism」と共に、妹が歌う「Escapade」があったかもしれない。



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