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BRUT for male Sade fans

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 ブリュット(ブルート)Brut という名の男性用フレグランスをご存じだろうか。グリーンの瓶がトレードマークのこの香水、'64年に発売されて以来、世界中の男性に愛用され続けている人気アイテム。男性用フレグランスとしては、現在も世界で売り上げのトップ3に入るという定番商品だ。

 香りに気を遣うお洒落でアダルトな男性も、香水なんて軟弱なものはつけないという男性も、シャーデーのファンであれば、この香水だけは知っておいたほうがいい。というのも、シャーデー・アデュはこのブリュットの香りに目がないからである。


 アデュが無類のブリュット好きだということを、私はDetails誌'92年12月号のインタヴューで知った。彼女がそれを語ったのは、これまたなかなか興味深い、彼女のファースト・キスに関する話題でのこと。

───ファースト・キスは覚えてますか?
「ええ、覚えてるわ。彼はアフターシェーブにブリュットをつけていた。私、ブリュットの香りって大好きなのよね」
───うああ、僕もつけてくればよかったー。
「だったら、いきなりキス攻めに遭ってたわよ。グッピーみたいにキスしちゃうところだわ。バールでもないとひっついて離れないくらい。ブリュットは大好きなの。それが私の冴えない初キスだったわね。14才くらいだったかしら。相手はすごく背が高い大男で。名前は覚えてない。ディスコで会ったの。私が初めて行ったディスコで、ウェスト・クリフという店だったわ」

 この記事を読んだ私が、速攻でブリュットを購入したことは言うまでもない。

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色々あります

 ブリュットはファベルジェ Fabergé というブランドが'64年に発売した商品。ファベルジェというのは、もともと19世紀末~20世紀初頭にかけてロシア皇室の御用達として繁栄した宝石商の名称で、これが後に名前だけアメリカの実業家に買われ、化粧品ブランドとして発足した。そのファベルジェの看板商品がブリュットで、宣伝広告にはかつてモハメド・アリなども登場したことがあるという。

 私自身は香水というものを身に付ける習慣がない無粋な野郎なので、ブリュットという商品の存在自体、シャーデーのこのインタヴューを読むまで全く知らなかった。“ブリュット”という単語は、シャンパンの辛口を意味するあのブリュットで、この香水も、辛口な大人の男を演出するダンディな香りが売りであるらしい。日本の通販サイトで見つけた紹介文を請け売りしておくと、

「フゼア・ノートのクラシカルで強いダンディズムを感じさせる香りに仕上がっており、まさに辛口な大人の趣きを滲ませる、厳格な佇まいの一品。ラベンダー、アニス、レモン、バジル、ベルガモットなどが渋く香り立つトップから、ゼラニウム、イランイラン、ジャスミンなどがエレガントなフローラル・ブーケをにおい咲かせるミドルへ。ラストはサンダルウッド、ベチバー、パチョリ、オークモス、バニラ、トンカビーンズ、アンバーなどが溶け合って、リッチで底深いスウィートで身体を包み込み、品の良いセンシュアリティを浮かばせてくれそうです。まさにフゼアのお手本のような、オーソドックスな香り。大人のスーツ姿によく似合うでしょう。調香カール・マン」

だそうだ。さっぱり意味が分からない。


 さて、香水に関する知識ゼロ、ヘヴィスモーカーで嗅覚すら怪しい私が、試しにブリュットを購入して早速嗅いでみたところ……。ずばり言って、トイレの芳香剤のような匂いがする。もっとも、私はどんな香水を嗅がされても、トイレの芳香剤、としか形容できない自信があるので、これを信用してもらっても困る。

 手の甲にひと吹きスプレーして思いきり嗅いでみると、最初はちょっと柑橘系の爽やかスパイシーな香りがするのだが、しつこく嗅いでいるうちに、仄かに甘みが匂い立ってくるような複雑なニュアンスも感じられるだろうか。嫌な匂いではない。香水なのだから当たり前だが、誰にとっても好感を与える香りであると思う。ひとつ断言できるのは、これは確実に女の匂いではないということだ。男と女の匂いの何がどう違うのかというと説明に窮するが、これが男性用フレグランスだという点は香水に疎い私でも理解できる。辛口な大人の男の趣き、と言われれば、確かにそういう気もしてくる。う~ん、マンダム。いや、マンダムではないのだが、そういう男の世界が広がっていくような香りなのである。

 ともかく、アデュはこのブリュットの匂いが大好きだということである。彼女の好きな男性のタイプ自体、恐らくこのブリュットが似合うような、タフでセクシーで包容力のある男くさい男なのではないだろうか。もしアデュに会う機会があれば、男性ファンは是非ブリュットでダンディにキメておきたい。彼女はきっと君をグッピーのようにキス攻めにしてくれるはずだ。


 ところで、先に引用したDetails誌のインタヴューの続きが面白いのでついでに紹介。14才でのファースト・キスの話の後、James Ryanというこの押しの強い男性インタヴュアーは、アデュから初体験の話まで聞き出しているのである。

───初体験のほうはどうなんですか。
「それは話したくないわ。そんなにいいもんじゃなかったし。屋根裏でね」
───いくつの時?
「そこまではちょっと」
───いいじゃないですか。
「15才の時」
───別に普通じゃないですか。
「まあ、そうね。おかしなことに、それまで男の子には興味がなかったのよ。私はなんか小っちゃくてパッとしない感じで。拒まれたくなかったのよね。それで男の子たちを避けて、代わりに馬と時間を過ごすようになったの」

 アデュもなんだかんだでちゃんと答えるところがいい。彼女はこういう話題でも変に逃げたりせず、結構ざっくばらんに受け答える。さすが大人の女なのである。

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