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Philadelphia [soundtrack]

Epic_EK57624.jpg
PHILADELPHIA
CD: Epic EK 57624, 4 January 1994 (US)

Bruce Springsteen - Streets Of Philadelphia (4:13) / Peter Gabriel - Lovetown (5:27) / Pauletta Washington - It's In Your Eyes (3:44) / Ram - Ibo Lele (Dreams Come True) (4:13) / Sade - Please Send Me Someone To Love (3:42) / Spin Doctors - Have You Ever Seen The Rain (2:39) / Indigo Girls - I Don't Wanna Talk About It (3:36) / Maria Callas - La Mamma Morta (4:48) / Neil Young - Philadelphia (4:03) / Howard Shore - Precedent (4:04)

Please Send Me Someone To Love
Written: Percy Mayfield
Produced: Sade, Hein Hoven
Mixed: Hein Hoven
Recorded: Conway Studios and Ameraycan Studios, Los Angeles in 1993
Musicians: Sade Adu (vocals), Stuart Matthewman (guitar), Paul S Denman (bass), Andrew Hale (keyboards), Trevor Murrell (drums), Karl Vanden Bossche (percussion), Gordon Hunte (guitar)



 トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン主演、ジョナサン・デミ監督の映画『フィラデルフィア(Philadelphia)』(1993)のサントラに、シャーデーが新曲「Please Send Me Someone To Love」を提供。'93年のツアー時期に録音されたものらしく、録音には当時のバンド・メンバーがそのまま参加している。一発録りのようなレイドバック・ムードが印象的な、いかにも『LOVE DELUXE』期の置き土産といった感じの小品である。


PM.jpg 曲はパーシー・メイフィールド(1920~84/写真)、'50年のNo.1 R&Bヒットのカヴァー。
 メイフィールドは、張りのあるバリトン・ヴォイス、ジェントルかつ苦味の効いたブルース・バラード作品で'50年代初頭に人気を博した歌手/ソングライター。後にレイ・チャールズ「Hit The Road Jack」(1961)の作者としても名を上げる人物である。写真からも分かる通り、男前なルックスも大きな魅力だったが、不幸にも'52年に交通事故に遭い、その後、顔面がバイク事故後の北野武のように変形してしまったという洒落にならない人でもある。しかし、たとえ顔が醜く歪んでも、彼は不屈の精神で歌手として表舞台に立ち続け、60歳を過ぎても、コンサートではそのカリスマ性で女性客を熱狂させたという。パーシー・メイフィールド、実にカッコいい男である。

 「Please Send Me Someone To Love」は、自作自演曲としては彼の最大のヒットにあたる。失意・傷心が多く題材にされた彼の作品の中でも、この曲は同時にシリアスな社会的メッセージ性を含んでいるのが特長。神に対する素朴な訴えかけが胸を打つ、ブルース版「What's Going On」「Why Can't We Live Together」とも言うべき名作である。
 
 
 Please Send Me Someone To Love
 (Mayfield)
 
 Heaven please send to all mankind
 Understanding and peace in mind
 But if it's not asking too much
 Please send me someone to love
 Someone to love
 
 神さま すべての人々に
 理解と安らぎの心をお与えください
 そして もしよろしければ
 この私に誰か愛する人をお与えください
 誰か愛する人を
 
 Show the world how to get along
 Peace will enter when hate is gone
 But if it's not asking too much
 Please send me someone to love
 Please send me someone to love
 
 皆が共に生きていける方法をお示しください
 憎しみの去る時 平和が訪れるでしょう
 そして もしよろしければ
 この私に誰か愛する人をお与えください
 誰か愛する人をお与えください
 
 I lay awake night and ponder world troubles
 And my answer is always the same
 That unless men put an end to this damnable sin
 Hate will put the world in a flame, what a shame
 
 夜もすがら この世の諍いについて考える
 私の答えはいつも同じ
 この忌まわしい愚行を終わりにしない限り
 世界は憎しみの炎に包まれてしまう なんてことだ
 
 Just because I'm in misery
 I don't beg for no sympathy
 But if it's not asking too much
 Please send me someone to love
 Please send me someone to love
 
 私の心は痛んでいます
 憐れみは乞いませんが
 しかし もしよろしければ
 この私に誰か愛する人をお与えください
 誰か愛する人をお与えください
 
 
 メイフィールドは決して美声の持ち主ではないが、悲哀と苦痛が滲むその艶やかで芯のある歌唱は、ビリー・ホリデイの世界にも通じるものがある。そのブルース感をシャーデーは独自の流儀で、'90年代らしい倦怠感を伴いながら見事に蘇らせている(空に垂れ込める雲のように、静かに空間を浮遊するシンセの音色がとりわけ素晴らしい)。私はこのカヴァーによって、『LOVE DELUXE』というアルバムに“ブルース”という大きなテーマが潜んでいたことに気付かされた。

 映画『フィラデルフィア』は、エイズを理由に会社を不当解雇されたトム・ハンクス演じる若手敏腕弁護士が、会社を相手に訴訟を起こし、デンゼル・ワシントン演じる黒人弁護士と共に、偏見と闘いながら勝訴するまでを描いた法廷闘争劇。メイフィールドが「Please Send Me Someone To Love」を書いた背景には人種差別があるが、そこで発せられる普遍的な問いかけは、『フィラデルフィア』の文脈では、同性愛、HIV/エイズに対する偏見と差別へ向けられる。残念ながら、シャーデーのカヴァーはサントラ収録のみで、実際に劇中では使用されていない(と思う。確認のため再見したが、エンドロール含め、どこにも聴くことはできなかった)が、エイズで死にゆく主人公の祈り、孤独感とも合致した素晴らしい選曲だと思う。
 シャーデーのサントラ参加は、恐らく、エイズに対する偏見を扱った作品内容に共鳴してのことなのだろう。彼らは後に、エイズ・チャリティの名コンピレーションである〈RED HOT〉シリーズのひとつ、『RED HOT+RIOT』(2002/エイズで死去したフェラ・クティへのトリビュート盤)にも参加している。

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