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The Best Of Sade

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THE BEST OF SADE
2LP: Epic 477793 1, 12 November 1994 (UK)
CD: Epic 477793 2, 12 November 1994 (UK)
CD: Epic 500594 2 (Remastered), 13 November 2000 (UK)


Your Love Is King (3:41) edit / Hang On To Your Love (4:29) edit / Smooth Operator (4:16) re-recorded single version edit / Jezebel (5:23) / The Sweetest Taboo (4:25) / Is It A Crime (6:16) / Never As Good As The First Time (3:58) remix edit / Love Is Stronger Than Pride (4:17) / Paradise (3:36) remix / Nothing Can Come Between Us (3:52) remix / No Ordinary Love (7:19) / Like A Tattoo (3:36) / Kiss Of Life (4:10) edit / Please Send Me Someone To Love (3:40) / Cherish The Day (6:17) Sade remix long version / Pearls (4:35)

Mastered: Ian Cooper
Musicians: Sade Adu (vocals), Andrew Hale (keyboards), Stuart Matthewman (guitars and sax), Paul S Denman (bass), etc.
Photography: Albert Watson (Sade Adu), Jo Strettel (Andrew/Stuart/Paul)
Design: Peter Brawne

Side 2 starts with 'The Sweetest Taboo', side 3 with 'Paradise', side 4 with 'Kiss Of Life' on LP.

UK chart: #6
US chart: #9
US R&B chart: #7



 '94年、デビュー10周年の節目に発表されたシャーデー初のベスト盤。アデュの顔写真以外、アーティスト名もタイトルも何もない簡潔なカヴァーに、シャーデーが10年の間に築き上げてきた確かなキャリアが感じられる(写真はアルバート・ワトソンが監督した'93年のPV「Feel No Pain」からのスチール)。

 収録内容は、それまで発表された全4枚のアルバムからシングルを中心に、彼らの代表曲を基本的に時系列で並べたものになっている。ここでしか聴けない曲というのはないが、同年初頭のサントラ盤『PHILADELPHIA』に提供されていたカヴァー曲「Please Send Me Someone To Love」がここで手に入るのがファンには嬉しい。
 選曲でひとつ面白いのは、「When Am I Going To Make A Living」「Turn My Back On You」「Feel No Pain」という3つのシングル曲を外した代わりに、アルバム曲「Jezebel」「Like A Tatoo」「Pearls」が収録されている点。いずれもシングル向きではないが、シリアスでメッセージ色の強い印象的なナンバー。これによってこのベスト盤は、単なるシングルの寄せ集めとは一味違う、シャーデーのアーティスト性を多面的に捉えた、きちんとしたアルバム作品としてのクオリティも兼ね備えたものになっている。彼らの最良の作品だけで構成された、まさしく“シャーデーのベスト”と呼ぶに相応しい濃密な一枚である。


 ファンというのは大抵、好きなアーティストのオリジナル・アルバムはすべて揃えているものなので、コレクターでもない限り、ベスト盤を買う必要というのは基本的にない。レアな未発表曲やB面曲などが収録されていれば話は別だが、この『THE BEST OF SADE』の場合、サントラ提供曲「Please Send Me Someone To Love」を除き、すべてオリジナル・アルバムに収録されている楽曲なので、ファンにとってはさほどアピールする点がないようにも思われる。では、このベストは初心者向けの単なるお買い得盤なのかというと、実はそうでもない。

 スリーヴやブックレットには何の記載もされていないが、ここに収録されているシングル曲の多くは、アルバム版ではなく、実はシングル用のエディット/リミックス/別ヴァージョンである。かなり些細な違いなので、各オリジナル・アルバムを持っていても、よほどマニアックなリスナーでない限り、この点に気付かず聴き流しているかもしれない。聴き流していても別にちっとも悪くないのだが、せっかくなら違いに気付いて、このベスト盤の有り難みを感じてみたいところだ。

 というわけで、以下、収録元のオリジナル・アルバムごとに、各曲のヴァージョンについて言及していくことにしたい。


Diamond2.jpg
Your Love Is King (3:41) edit
Hang On To Your Love (4:29) edit
Smooth Operator (4:16) re-recorded single version edit

 まずは1st『DIAMOND LIFE』(1984)から3曲。オープニングを飾るのは、'84年2月に本国イギリスで発売されたデビュー曲「Your Love Is King」。より有名な彼らの代名詞「Smooth Operator」で安易に始まらないところが、「Your Love Is King」原理主義者の私としては嬉しい。採用されたのは7インチ・エディット。短縮箇所は "Never letting go / Never gonna give it up" とアドリブ風に歌われる終盤の8小節(繋ぎ目は "Touch me" と "I'm coming" の間)。'00年リマスター再発『DIAMOND LIFE』やPVでもこのエディット版が使われているので、むしろノーカットのオリジナル版の方が今となってはレアと言えるかもしれない。終盤の8小節を含むオリジナル版は、リマスター前の旧『DIAMOND LIFE』CD、『DIAMOND LIFE』LP、あるいは「Your Love Is King」12インチで聴ける。

 イギリス・デビュー曲に続き、2曲目はアメリカでのデビュー曲となった「Hang On To Your Love」('84年12月発売。イギリス未発売)。これもエディット版で収録。間奏部(16小節)と、それに続くスキャットのブリッジ部分(8小節)の計24小節がざっくりカットされた上、最後のフェイドアウトもかなり早い。オリジナルのアルバム版はちょうど6分なので、1分半も短縮されていることになる(ちなみに、更に細かいことを言うと、リマスター『DIAMOND LIFE』の「Hang On To Your Love」は旧盤に較べてフェイドアウトが10秒ほど早い)。

 '84年9月発売、イギリスでの第三弾シングル「Smooth Operator」(アメリカでは第二弾シングル。'85年3月発売)は、再録音シングル版で収録(「Smooth Operator」には2つのスタジオ録音がある。この曲の録音違い、イギリス盤とアメリカ盤『DIAMOND LIFE』での収録違いに関するややこしい事情は、以前「Smooth Operator」シングルの項で触れた)。冒頭の語り部分は7インチ版同様にカットされているが、7インチで無理やり2小節に切り詰められていたドラム&パーカッションのイントロは、ここでは本来の4小節になっている。
 個人的にこのベスト盤に何も不満はないが、敢えて欲を言うと、「Smooth Operator」は「Red Eye」とメドレーになった12インチ全長版で収録してもらいたかった。'00年リマスター再発の際にボーナス収録もされず、B面集やレア・トラック集の類も一向に出ない状況を考えると、せめてライヴで定番となっている「Red Eye」くらいはここで速やかにCD化しておくべきだったと思う。

 『DIAMOND LIFE』からのシングル曲では、イギリスでの第二弾('84年5月発売)だった「When Am I Going To Make A Living」が未収録。スモーキー・ロビンソンに歌わせたくなるような爽やかで甘酸っぱい青春R&Bの佳曲だが、PVもヴィデオ集『Life Promise Pride Love』から外された。曲のテーマ含め、本人たちにとっては振り返ると少し青臭い感じがして、違和感があったのかもしれない。


Promise2.jpg
Jezebel (5:23)
The Sweetest Taboo (4:25)
Is It A Crime (6:16)
Never As Good As The First Time (3:58) remix edit

 2nd『PROMISE』(1985)からのシングルは3曲すべて収録され、更にアルバムから「Jezebel」が加えられた。
 「The Sweetest Taboo」('85年10月発売)と「Is It A Crime」('86年1月発売)はアルバム版でそのまま収録。「The Sweetest Taboo」は4分25秒と記されているが、実際にはアルバム同様、きちんと4分36秒ある(ちなみに、この曲の12インチには5分30秒の長尺版が収められている)。

 「Never As Good As the First Time」('86年4月発売)は、大幅に手が加えられたシングル用リミックスの7インチ版。リミックスと言っても、オケを作り替えて原曲を全く別物に改造する'90年代以降のそれではなく、純粋な意味での“再ミックス”である。ただ、この曲のシングル再ミックスは、追加録音されたリロイ・オズボーンのヴォーカルで始まるイントロに顕著な通り、オリジナルのアルバム版とは劇的に印象が異なる。完成度が高いのは圧倒的に再ミックスの方で、両者を聴き較べると、アルバム版はいかにもショボく、ほとんどデモのようにしか聞こえない。これは恐らく、アルバム版に納得いかず、シングルで仇を返したということなのだと思う(アルバム制作期間にゆとりがなかったのだろう)。この再ミックスは、12インチでは5分6秒の長尺版(全長版)で収録されている。当然、PVに使われたのも再ミックスの方。CD化されているのはこのベスト盤だけなので、何気に貴重である。


Promise2.jpg
Love Is Stronger Than Pride (4:17)
Paradise (3:36) remix
Nothing Can Come Between Us (3:52) remix

 3rd『STRONGER THAN PRIDE』(1988)からは、アルバム冒頭に連なる鉄壁の3曲をそのまま収録。が、第一弾シングル「Love Is Stronger Than Pride」('88年4月発売)を除く2曲は、アルバム版とは異なるシングル用の再ミックスでの収録。

 「Paradise」('88年6月発売)の再ミックスは、サビのカッティング・ギターが削除され、代わりに“デケデケデケデケ”という低音リフが加えられている点、ヴォイス・パッド音が強調され、サビ以外に終盤部分にも加えられている点、全体を覆っていたリバーブ感が後退し、ビートが立った立体感のある音像になっている点などがアルバムのオリジナル・ミックスと異なる。イントロが8小節分縮められ、30秒近く短くなっている点も違う。約3分半のこの再ミックスは、「Paradise」7インチと3インチCDシングルに収録されていた。

 「Nothing Can Come Beteween Us」('88年8月発売)の再ミックスは、「Paradise」ほどアルバム版と大きく違わないものの、やはり同様に、全体的にリバーブが掛かってモワ~としたジャジーな音像が、立体感・遠近感のあるシャープなものに変わっている(リズム・ギターに注意しながら聴くとよく分かる)。このへんは単純にセンスの問題なので、アルバムとシングルどちらのミックスが良いか、というのは人によって意見が分かれると思う。ただ、シングル発売を前提とした場合、メリハリの効いたパンチのある再ミックスの方が、オリジナル・ミックスより優れていることは間違いない。
 尚、ミックス違いの他に、間奏部分が2箇所縮められ、時間が30秒ほど短縮されている点もアルバム版と異なる。4分弱のこの再ミックスは、「Nothing Can Come Beteween Us」7インチと5インチ/3インチCDシングルに収録されていた。

 『STRONGER THAN PRIDE』からのシングルでは、第4弾「Turn My Back On You」('88年11月発売)と、フランスのみで切られた「Haunt Me」('89年3月発売)が未収録。フロア向けの「Turn My Back On You」が落とされたのは理解できるが、名作バラード「Haunt Me」は収録して欲しかった気もする(そうすると、『STRONGER THAN PRIDE』冒頭4曲そのまま収録することになってしまうが。リロイ・オズボーンとデュエットする極上の'93年ライヴ版で収録という裏技もある)。


Deluxe2.jpg
No Ordinary Love (7:19)
Like A Tattoo (3:36)
Kiss Of Life (4:10) edit
Cherish The Day (6:17) Sade remix long version
Pearls (4:35)

 '94年の時点での最新作『LOVE DELUXE』(1992)からは、最多となる5曲を収録。やはり最近作が最も自分たちのベストに近いということなのだろう。3つのシングル曲の他、アルバムから「Like A Tattoo」「Pearls」も収録。『LOVE DELUXE』全9曲の内、なんと過半数の5曲である。

 「No Ordinary Love」('92年10月発売)の7インチとCDシングルには5分22秒のエディット版が収録されていたが、ここでは7分を超えるアルバム全長版がそのまま使われている。かなり強気だ。

 「Kiss Of Life」('93年5月発売)はアルバムより1分半短いシングル用エディット。2回目のブリッジ部分("He built a bridge to your heart")、2回目のサビ後の間奏~サビ~間奏がカットされている。
 
 「Cherish The Day」('93年7月発売)はシングル用のリミックス版で収録。ビートが重ねられ、ブレイクビーツのコーダ部分が加えられた最強ヴァージョンで(ヴォーカルのミックスも一部異なる)、ライヴもこのスタイルで演奏されている。死ぬほどカッコいい。12インチ、CDシングル共に、ロング版(6分18秒)とショート版(5分18秒)の両方収録されているが、ここではロング版が使われている(ちなみに、「Cherish The Day」は7インチでは出ていない)。

 『LOVE DELUXE』からのシングルでは、第二弾「Feel No Pain」('92年11月発売)が未収録。ジャケに「Feel No Pain」PVのスチールを使っておきながら収録しないというのも変な話だ。ベスト盤収録に十分値する曲だが、アルバム全体のバランスを考慮した末の落選なのだと思う。「Pearls」を最後に置いたのは確信的だと思うが(『LOVERS ROCK』の世界に繋がるような余韻も残す)、しかし、「Like A Tattoo」までわざわざベスト盤に入れる必要があったのか、というと、個人的には疑問が残る。


Philadelphia2.jpg
Please Send Me Someone To Love (3:40)

 サントラ盤『PHILADELPHIA』(1994)に提供されたパーシー・メイフィールドのカヴァー「Please Send Me Someone To Love」が、最後から3番目、「Kiss Of Life」と「Cherish The Day」の間に収録されている。'93年に録音されたもので、このベスト盤発表時点でシャーデーの最新曲ということになる。
 「Feel No Pain」が落ちた理由は、ブルージーなこの曲とカラーが被るからではないか。どちらを収録するか、という二者択一になり、商品性を考慮に入れた上、結局、サントラ提供でレア度が高く、尚かつ、最新録音でもあるこの曲が選ばれたような気がする。レイドバックしたこの曲のムードは、「Kiss Of Life」からも自然に繋がり、その後にブルース・ギターのチョーキングと共に「Cherish The Day」のひんやりした空気が流れ込む展開も鮮やかで、一種の異色作でありながら、このベスト盤の中でとても上手く機能しているように思う。


 というわけで、このベスト盤は一見あまりにも普通でありながら、実はさりげなく商品性も完成度も高い。個人的には、「Like A Tattoo」を削り、代わりに「Smooth Operator」~「Red Eye」のメドレーを入れたい思いもあるが(ついでに、何とかサントラ提供曲「Killer Blow」も入れたい。あと、「Haunt Me」も)、ともかく、初心者はもちろん、たとえオリジナル・アルバムをすべて持っていても買って損はない、あらゆるレベルのファンが楽しめる内容になっている。実際、私が最もよく聴くシャーデーのアルバムは、結局これだったりする(おいおい)。なんと言っても“ベスト・オブ・シャーデー”なのである。これ以上のものがあるはずがない。

 最初に買うべきシャーデー作品を初心者のためにひとつ選ぶとすれば、私ならまずいきなりPV集『Life Promise Pride Love』を推す。音盤であれば、このベスト盤。そして、もう一枚買う余裕があれば、その後に出された現時点で唯一のアルバム『LOVERS ROCK』。2本のライヴ映像作品を観てステージ・パフォーマンスの素晴らしさを知る必要もあるが、ひとまずそれでシャーデーのアーティスト性は把握できる。

 ちなみに、オリジナル・アルバムでシャーデーの最高傑作を問われれば、私は迷うことなく『LOVERS ROCK』を挙げる。最も好きなアルバムを問われれば、『STRONGER THAN PRIDE』のA面、と答えるしかない。私はそういうシャーデー・ファンである。

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