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Aretha Franklin & Eurythmics──紅組に勝利を!




「アレサは4人の男と一緒に現れた。手作りの焼き菓子をたっぷり持ってね。レコーディングの最中、彼女がスタジオ内で〈The Way We Were(追憶)〉を僕と2人きりで歌ってくれたことがあった。歌いながら目に涙を浮かべていてね。とにかくすごかった。アレサと一緒にマイクに向かうアニーを見ながら、彼女のことをとても誇りに思ったのを覚えてるよ」
──デイヴ・スチュワート(2005, "Be Yourself Tonight" liner notes)




 Sisters Are Doin' It For Themselves
 (Annie Lennox/Dave Stewart)
 
 Now there was a time when they used to say
 That behind every - "great man"
 There had to be a - "great woman."
 But in these times of change you know
 That it's no longer true.
 So we're comin' out of the kitchen
 'Cause there's somethin' we forgot to say to you (We say)
 
 その昔 こう言われていた
 “立派な男性”の後ろには
 “立派な女性”がいるものと
 でも 時代が変わった今
 それは過去の妄言
 私たちは台所から飛び出していく
 今こそ言ってやろうじゃないの(さあ)
 
 Sisters are doin' it for themselves.
 Standin' on their own two feet.
 And ringin' on their own bells.
 Sisters are doin' it for themselves.
 
 女は自分のために生きていく
 己の両足でしっかり立ち
 自分たちの鐘を鳴らしながら
 女は自分のために生きていく
 
 Now this is a song to celebrate
 The conscious liberation of the female state!
 Mothers - daughters and their daughters too.
 Woman to woman
 We're singin' with you.
 The "Inferior sex" got a new exterior
 We got doctors, lawyers, politicians too.
 Everybody - take a look around.
 Can you see - can you see - can you see
 There's a woman right next to you.
 
 これはお祝いの歌
 女性の地位をめぐる意識解放に乾杯!
 母たち 娘たち そのまた娘たちも
 女という女が
 あなたと一緒に歌う
 “男に劣る女”は新たな顔を持つ
 医者だって弁護士だって政治家だっている
 みんな 周りを見てごらん
 ほら ほら ほら
 すぐ隣に女性がいる
 
 Sisters are doin' it for themselves.
 Standin' on their own two feet.
 And ringin' on their own bells.
 Sisters are doin' it for themselves.
 
 女は自分のために生きていく
 己の両足でしっかり立ち
 自分たちの鐘を鳴らしながら
 女は自分のために生きていく
 
 Now we ain't makin' stories
 And we ain't layin' plans
 'Cause a man still loves a woman
 And a woman still loves a man
 (Just a same though)
 
 作り話をしてるわけじゃない
 何か企んでるわけでもない
 それでも男は女を愛するし
 女は男を愛するのだから
 (相変わらずね)


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歌う女同盟──アレサ・フランクリンとアニー・レノックス(デトロイトのスタジオにて)

 '85年10月にシングル発売されたユーリズミックスアレサ・フランクリンの共演曲「Sisters Are Doin' It For Themselves」。ウーマンリブを歌ったゴスペル調のパワフルな曲だ。ここまでストレートだと男の私が聴いても気持ちがいい。もともとティナ・ターナーに共演のオファーが出されたが、都合がつかなかったためアレサの出番となったらしい(あまりにもフェミニズム色が強い歌詞にティナ側が難色を示したとも言われる)

 この曲は同年に発表された双方のアルバムに収録されている。ユーリズミックスは『BE YOURSELF TONIGHT』でスティーヴィー・ワンダーとも共演(「There Must Be An Angel」)。一方、アレサは『WHO'S ZOOMIN' WHO』でピーター・ウルフとも共演している(「Push」)。今では珍しくないが、音盤上で黒人アーティストと白人アーティストの共演が普通に行われるようになったのは'80年代のことだった。草分けは、やはりポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー「Ebony And Ivory」(1982)だろうか。以後、「We Are The World」のような大集合企画も含めて、異人種共演曲がさかんに作られるようになった。


欧米にはなぜ〈紅白歌合戦〉がないのか?

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今年の優勝は紅組よ〜!

 '09年10月にマジソン・スクエア・ガーデンで行われた〈ロックの殿堂〉25周年記念コンサートで、アレサ・フランクリンとアニー・レノックスは再共演を果たしている。「Sisters Are Doin' It For Themselves」かと思いきや、2人が一緒に歌ったのは「Chain Of Fools」だった。上の画像がその時の様子。

 画像キャプションを考えている時にふと思ったのだが、欧米にはどうして〈紅白歌合戦〉がないのだろう? グラミー賞並みに昔からやっていれば、アレサ・フランクリンは間違いなく最多出場回数、最多トリ回数の大記録を打ち立てていたはずである。ダイアナ・ロス、ディオンヌ・ワーウィック、グラディス・ナイト、ティナ・ターナーといった大御所がそれに続くだろう。白組だったらスティーヴィー・ワンダー、スモーキー・ロビンソン(北島三郎っぽい)、ライオネル・リッチーなどが常連歌手になっていたと思われる(故人ならジェイムズ・ブラウンやレイ・チャールズ。JBは逮捕によって出場不能時期もあるが……)。レディー・ガガとニッキー・ミナージュが衣装で競い合ったり、ウィリー・ネルソンやケニー・ロジャースあたりが意味もなく毎年出てたり、紅組と白組がラップで応援合戦を繰り広げたりする様子を想像するだけでも楽しい。トリで「Living In America」や「It's A Man's Man's Man's World」を歌うJBをしみじみと眺めながら過ごす大晦日はさぞかし乙なものだろう。やればグラミー賞なんかより絶対に面白いと思うのだが……。欧米人にはやはり賞レースの方が面白いのだろうか?

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優勝は頂きよ〜!──第53回グラミー賞、紅組によるパフォーマンス

 '11年の第53回グラミー賞には〈紅白歌合戦〉的な瞬間があった。その年のグラミーは、5人の女性歌手──ヨランダ・アダムズ、マルティナ・マクブライド、クリスティーナ・アギレラ、ジェニファー・ハドソン、フローレンス・ウェルチ──によるアレサ・フランクリンへのトリビュート・パフォーマンスで幕を開けた。彼女たちが歌うアレサの名曲メドレーは、ほとんど紅組の応援パフォーマンスである。更に面白いのは、メドレーの一番最後に歌われた曲が、「Respect」でも「Think」でも「A Natural Woman」でもなく、「Sisters Are Doin' It For Themselves」だったという点。意外と言えば意外な選曲だが、彼女たちが紅組の応援団であると考えれば実に納得がいく。すべての女性を励まして鼓舞するこの女性讃歌は、アレサ・フランクリンという女性の存在を見事に象徴しているように思う。

 「Sisters Are Doin' It For Themselves」は欧米版〈紅白歌合戦〉に打ってつけの歌だ。これと「Lady Marmalade」さえあれば、紅組の優勝は間違いなしだろう(今年は「Bang Bang」か)

 ……それにしても、欧米に〈紅白歌合戦〉がないのはなぜなのか? 大勢の歌手が男女二手に分かれてチーム対抗戦を繰り広げる音楽番組のことである(私が知らないだけで、もしかすると存在する?)。その答えというわけでは決してないが、ひとつ興味深いデータがあるので紹介したい。

 世界経済フォーラムという国際機関が'06年から毎年発表している“男女平等指数ランキング(Global Gender Gap Report)”というものがある。10月28日に発表されたその'14年版で、日本は調査対象142ヶ国中、なんと104位だった。日本は極めて男女不平等社会だという調査結果である。このランキングは、世界各国の男女格差の少なさを4分野──職場進出、教育、健康、政治参加──で指数化し、その平均点で順位が決められる。日本は、女性の“政治参加”(女性国会議員の割合、女性閣僚の割合、過去50年間の女性大統領や首相の数)が129位、“職場進出”が102位で、他国に大きく遅れをとっている。総合順位トップ5の国は、1位から順にアイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク。北欧社会は女性思いなのか、あるいは、単に女が強いのか。ドイツは12位、フランスは16位、カナダは19位、アメリカは20位、イギリスは26位、イタリアは69位。先進7ヶ国中、日本はぶっちぎりの最下位である。恐らく、下位になればなるほど男女の役回りに違いがある国ということになるのだろう。“女性に重い物を持たせる国ランキング”と見て開き直ることもできるが(但し、“男が家事や育児を手伝う国ランキング”と考えることもできる)、日本の104位というのはいくらなんでも低すぎると思う。もしかすると、歌手を性別で振り分け、“男らしさ/女らしさ”を称揚する〈紅白歌合戦〉は、男女平等に対する意識が低い日本ならではの催し物なのかもしれない。

 ちなみに、世界経済フォーラムによると、世界の男女格差は調査開始の'06年から僅かしか埋まっておらず、このペースだと職場での平等を達成するのにあと81年かかるそうだ。男女平等の世界が訪れるのは2095年(予定)である。「Sisters Are Doin' It For Themselves」は、今後も当分、女性たちに歌われていくことになりそうだ。


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 参考までに、最後に「Sisters Are Doin' It For Themselves」に関するアニー・レノックスの発言を紹介しておく(ロッキング・オン誌での発言は海外記事が出典だが、原文が入手できないため同誌の訳文をそのまま引用する)

──「Sisters〜」はメッセージ・ソング的な曲でしたが、あの曲を発表したためにフェミニズム論者というレッテルを貼られたということはありませんか。

「あるわ。他の人から寄せられる期待が大きすぎるとプレッシャーになって……私はデビー・ハリーでもなければスージー・スーでもないのに。フェミニスト運動のシンボルやリーダーにされるのもイヤ、私は本当に平凡な人間よ。私にできることといったら、精神的に自立していてしかもやさしさや繊細さを失っていない女の人にむかって“ねえ、私たちはみんな一緒。孤独ではないの”って呼びかけることぐらい。そこまでしかできないわ」

「デイヴにしても私にしても、ロック関係のプレスの話をまじめに聞こうとは思っていないの。『REVENGE』はコテンパンに批評されたけど、実際には私たちの作品のなかでもいちばん出来のいい部類に入る作品だわ。スティーヴィー・ワンダーやアレサみたいな黒人ミュージシャンたちと、おたがいに尊敬しあいながら仕事をすることができたし──プレスのなかには、白人がブラック・ミュージックにとりくむことをとやかくいう人もいるけど。ダイアナ・ロスがラスヴェガスの白人観光客向けの曲を歌っても文句をいわないくせに、いったいどうしてなのかしら」(April 1987, Rockin'on)

「私が書いた曲の大半は、自分が個人的に抱える混乱だとか、何らかの苦しみや美しさを表現したいという欲求から生まれている。普遍的で個人的な思いから歌が生まれてくるの。もっと政治色の強い歌を書いてもよかったと思うけど、自分にそういう力があるとも思えなくて。〈Sisters Are Doin' It For Themselves〉はとてもアンセム的で分かりやすい歌だけど、私にとっては珍しいタイプの作品なのよ。たとえば、ピーター・ガブリエルの〈Biko〉のように、アパルトヘイトの実態を一個人の物語として描いた素晴らしい歌がある。スティングは〈They Dance Alone〉で、息子を亡くしたチリの女性たちのことを書いた。どちらにも私はすごく感銘を受けたんだけど、そういう歌って滅多にあるものじゃない。頑張ってそういう素晴らしい歌を書きたいものよね」(March 2012, TimeOut.com)



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