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Benjamin Clementine──礎石



cornerstone n. (建物の壁体の外角に積む)隅石(quoin).(定礎式に用いられる)隅の礎石:起工時に年月日を刻み基礎の主要な一角に据えられる:lay the 〜 of …の定礎式を行なう. 肝要なもの,必要不可欠なもの[人],基本的なもの[人]:the 〜 of democratic government 民主政治にとって不可欠なもの.(一般的に)土台,基礎,礎:the 〜 of the argument 議論の根拠.

──小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版)




 Cornerstone
 (Benjamin Sainte Clementine)
 
 I'm alone in a box of stone
 When all is said and done
 As the wind blows to the East from the West
 Unto this bed my tears have their solemn rest
 
 石の箱の中に一人きり 
 つまるところ 結局は 
 西から東へ風が吹くがごとく
 この床で涙が安らぎを迎えるまで
 
 I am lonely, alone in a box of stone
 They claimed to love me, but they're all wrong
 For I have been lonely, alone in a box of my own
 And this is the place I will say I've only belonged
 
 僕は独りぼっち 石の箱の中に一人きり
 愛してくれると人は言うが みんな間違いだ
 僕はずっと独りぼっち この箱の中に一人きり
 自分の居場所はここでしかなかった
 
 It's my home
 
 我が家よ
 
 It wasn't easy getting used to this; I use to scream
 It's not true that it's only when a door is locked
 That nobody enters
 Cause mine had been opened till your own demise
 But none had come, well who am I?
 What have I done?
 
 受け入れがたいことだった 叫びもした
 誰も入って来ないのは
 ドアに鍵がかかっているからじゃない
 最後の最後まで僕は開けておいたのだから
 でも誰も来なかった 僕は何者?
 僕が何をした?
 
 I have been lonely, alone in a box of my own
 They claim to be near me but they're all lying
 For I have been lonely, alone in a box of my stone
 And this is the place I now belong
 
 僕はずっと独りぼっち この箱の中に一人きり
 そばにいてくれると人は言うが みんな嘘だ
 僕はずっと独りぼっち 石の箱の中に一人きり
 こここそが自分の居場所なのだ
 
 Home home home home home
 
 家 家 家 家 家
 
 Friends I have met, lovers have slept and wept
 Promises to stay had never been kept
 This bare truth of which most won't share,
 I hope you share
 
 出会った我が友たち 恋人たちは眠り 涙し
 共にいるという約束は決して守られない
 誰も認めたがらないこの明白な真実を
 あなたと分かち合えたなら
 
 Cause I have been lonely, alone in a box of my own
 They claim to love me
 And be near me, but they're all lying
 I have been lonely, alone in a box of my stone
 And this is the place I now belong
 
 僕はずっと独りぼっち この箱の中に一人きり
 愛してくれると
 そばにいてくれると人は言うが みんな嘘だ
 僕はずっと独りぼっち 石の箱の中に一人きり
 こここそが自分の居場所なのだ
 
 It's my home.
 
 我が家よ


 ベンジャミン・クレメンタインの記念すべきデビュー曲「Cornerstone」。'13年6月に発表されたデビューEPの表題曲であり、1stアルバム『AT LEAST FOR NOW』('15年1月12日発売)にも収録されている彼の代表曲である。'13年10月、彼は英BBCの長寿音楽番組〈Later... with Jools Holland〉に出演してこの曲を歌い、一躍脚光を浴びた(その際、番組に同席していたポール・マッカートニー卿から、今後も音楽活動を続けていくよう激励されたという)

 ピアノの弾き語りで歌われる美しいワルツ・バラード。まるで自分の掌をじっと眺めるような歌である。切々と歌われる歌詞は、人間の本質的な孤独について書かれている。人はひとりで生まれ、ひとりで生き、ひとりで死んでいく。誰も他人を知り得ないし、他人は自分を知り得ない。誰も入って来ることができない“自分”なるものの意識の在処を、ベンジャミンは“我が家”と呼ぶ。その“我が家”は、自分の“礎(cornerstone)”であり、同時に“墓”でもある(“石の箱”が暗示するものはそれしかない。“床”とも歌われている)。彼は孤独に恐怖しながらも、自分はここにしか在りえないのだ、と力強く歌う。人生を祝福するような“It's my home”のリフレインは感動的だ。

 完璧なデビュー曲だと思う。自己意識について歌った哲学的な歌だが、“石”という言葉の使い方が詩的で美しく、イメージが聴き手の頭の中にすんなり入ってくる。そして、胸を打つ。「Cornerstone」は、ベンジャミン・クレメンタインという歌手の定礎碑であるだけでなく、墓碑にもなり得る歌だ。彼は50年後もこの歌を美しく歌っているに違いない。自分の人生さえ締め括れるような歌を開口一番に歌ってしまうこの男は、いったい何者だろうか。

 「Cornerstone」を聴きながら、私はトム・ウェイツのある歌を思い出した。孤独を“我が家”と歌った似たような名曲である。次回はそれを訳出したい。


※原詞は『AT LEAST FOR NOW』ブックレット掲載の表記に準じる。実際の歌唱とは部分的に異なることを断っておきます。



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