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Pharrell Williams──自由!



 アップル社の新たな音楽配信サービス、Apple MusicのCMタイアップ曲として'15年6月30日に発売されたファレル・ウィリアムズの新曲「Freedom」。これは、'15年2月のグラミー授賞式で披露された彼の「Happy」のパフォーマンス──イントロをマイナー調にアレンジし、途中で両手を上げて“無抵抗だ、撃つな(Hands Up, Don't Shoot)”のジェスチャーをした──の延長線上にあるプロテスト・ソングである。

 ピアノのリフを軸にしたゴスペル色の強いアーシーな曲調は、ニーナ・シモンからの影響を感じさせる。自然の様々な生命を歌い込んだ歌詞も含め、思い出されるのは、彼女が歌って公民権運動時代の自由讃歌になった「Feeling Good」である(詳しくは過去記事“Nina Simone──私は自由”を参照)。「Feeling Good」は、5月にアヴィーチーによるリメイク版が発表されたのに続き、7月初旬に発売されたニーナ・シモンへのトリビュート盤『NINA REVISITED』でローリン・ヒルが入魂の直球カヴァーを聴かせ、ニーナが歌ってから半世紀も経った'15年の今、再び“時代の歌”になりつつある。自由の尊さを謳うファレルの「Freedom」が、閉塞感を伴うマイナー調の重苦しい曲になっているのは、「Feeling Good」がその開放的な歌詞に反して重かったのと同じことである。要するに、自由が脅かされているからこそ、自由について歌う。サビで“自由(Freedom)”の一語を絶叫するファレルの声には、明らかに怒りが混じっている。ここは自由民主主義の国じゃなかったのか? 一体どうなってんだ?! という歌である。

 '14年8月にファーガソンで起きた事件を機に再び緊迫化しているアメリカの人種間対立は、安保法案という大きな火種を抱える私たち日本人にとっては気にする暇もない対岸の火事のようでもあるが、決してそんなことはない。丸腰の黒人青年を白人警官が問答無用で射殺し、それが不起訴になることと、“これはおかしい、ちょっと待て”と国民の過半数が反対する法案を有無を言わさず成立させることは、いずれも国家権力の濫用であり、民主主義の原理に背く暴挙だからである。国は、国民の生命、自由、幸福を追求する権利を守らなければいけない。守ることを目的にそれを踏みにじるというのは、どう考えてもおかしな話である。

 戦争は平和である(WAR IS PEACE)
 自由は服従である(FREEDOM IS SLAVERY)
 無知は力である(IGNORANCE IS STRENGTH)
 
 '84年にアップル社MacintoshのテレビCMでもモチーフにされたジョージ・オーウェルの古典『1984年』(1949)。そこで描かれる全体主義国家オセアニアの3つのスローガンがこれだった。これはそのまま現在の日本の与党の隠れたスローガンであるように思える。国民のためだと主張しながら、首相は我々に対して“服従せよ”と暗に言っている。きちんと説明すると言いながら、我々に無知でいることを求めている。

 “自由”の定義がすり替えられようとしている今、ファレルの「Freedom」を聴きながら、この言葉の意味と重みをもう一度よく考えたい。




 Freedom
 (Pharrell Williams)
 
 Hold on to me
 Don't let me go
 Who cares what they see
 Who cares what they know?
 Your first name is Free
 Last name is Dom
 Cause you still believe
 In where we're from
 
 僕につかまれ
 放さないで
 誰が言おうと
 何と言おうと
 君の名は“自”
 下の名は“由”
 僕らの本来の姿を
 君が忘れない限り
 
 Man's red flower
 It's in every living thing
 Mind, use your power
 Spirit, use your wings
 
 人の赤い花は
 すべての衆生に
 頭よ 働け
 魂よ 翔け
  
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由
 
 Hold on to me
 Don't let me go
 Cheetahs need to eat
 Run, antelope
 Your first name is King
 Last name is Dom
 Cause you still believe
 In everyone
 
 僕につかまれ
 放さないで
 飢えるチーター
 逃げろレイヨウ
 君の名は“王”
 下の名は“国”
 みんなのことを
 君が信じる限り
 
 When a baby first breathes
 When night sees sunrise
 When the whale hops the sea
 When man recognizes
 
 赤子が産声を上げるとき
 夜が日の出を迎えるとき
 クジラが海に舞うとき
 人が目醒めるとき
 
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Breathe in
 
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由
 息づけ
 
 We are from heat
 The electric one
 Does it shock you to see
 He left us the sun?
 Atoms in the air
 Organisms in the sea
 The sun and yes, man
 Are made of the same things
 
 電撃的な熱から
 僕らは生まれた
 太陽を授かったことに
 君は慄くかい?
 大気の中には原子
 海の中には有機体
 太陽 そして人間は
 同じものでできている
 
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 Freedom
 
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由
 自由




 '15年6月27日、ファレルはイギリスのグラストンベリー・フェスティバルに出演し、最後に新曲「Freedom」を披露した(上の動画で「Happy」は29分48秒から、「Freedom」は33分10秒から始まる。BBC公式チャンネルで「Freedom」の単独動画も公開中)。「Freedom」のイントロで、彼はイギリスの観衆に向かってこう言っている。

「今夜はとても特別なものを皆と共有したい。〈Freedom〉という歌だ。いいか、君が銀行口座にいくら持っていようと、そんなことはどうでもいい。君の家がどれほど金持ちだろうと、君がどこの出身だろうと、そんなことはどうでもいい。君が人間だったら、自由ってものが必要だ。人生には自分のことを縛り付け、あれこれ指図する人だとか物事が付きものだ。でも、いいかイギリス、今夜は皆で自由を手にするんだ! その身体にイギリス人の素晴らしい血が流れているなら、俺の掛け声に合わせて、自由がどんなものか世界中に見せてやってほしい。いくぞ、イギリス。さあ、“自由”!(Tonight I wanna share something really special with you guys. It's a song called "Freedom". You see, I don't care how much money you have in the bank account. I don't care how rich your family is or where you come from. If you're a human being, you need some sort of freedom. There's always somebody in your life or something in your life trying to chain you down and tell you what you can and can not do. But tonight, England, we're gonna get freedom! So tonight, if you have beautiful English blood in your body, I want you to show the rest of the world what freedom looks like when I say "Freedom". England, are you with me? Say "Freedom"!)

 「Freedom」は、「Happy」と同じく非常に普遍的な歌である。これは、人種差別を巡るアフリカ系アメリカ人たちの闘いであるだけでなく、私たち日本人を含むすべての人間の闘いでもある。終戦70年となる'15年8月半ば、ファレルはこの歌を歌いに日本にやってくる。



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