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King Corville──キング・オブ・MJイング



 この世にはマイケル・ジャクソンの影響を受けたダンサーが無数にいる。アッシャー、ニーヨ、クリス・ブラウンのような音楽界のフォロワーから、プロ/アマのダンサー、物真似芸人まで、人によって影響の受け方、MJスタイルの咀嚼の仕方は様々だ。MJファンとして私もこれまでそうしたダンサーを数多く目にしてきたが、中でも最も凄いと思ったのが、今回紹介するコーヴィル・コフィーという男である。

 コーヴィル・コフィー Corville Cuffy──別名、キング・コーヴィル──は、イギリス在住のストリート・ダンサー。年齢、出身地、生業といった詳しい経歴は一切不明。分かっているのは、彼がとにかくMJを愛していること、そして、MJイングの比類なき達人だということだけである。

 MJイング(MJ-ing)というのは、フリースタイルのMJ流ダンスのことを言う。ブレイキング(Bボーイング)、ポッピング、ロッキング、ワッキング、ヴォーギング、ジューキングといった様々な種類のダンスがあるように、MJスタイルに特化したダンスというものがある。と言っても、あらかじめ誤解のないよう断っておくと、現時点で“MJイング”という言葉は決してダンスのカテゴリー名として定着しているわけではないし、また、コーヴィル自身が自分のダンス・スタイルをそう呼んでいるわけでもない。しかし、彼のダンスはそうとしか呼びようがないものなのだ。もし“MJイング”というものが存在するなら、それはコーヴィルのような踊りのことを指すに違いない。様々なダンサーを手本にしながら独自のスタイルを創造したマイケル・ジャクソンのダンスは、それ自体でひとつの立派なカテゴリーになり得る。コーヴィルはそのことをはっきりと証明するダンサーなのである。

 コーヴィルは自身のYouTubeチャンネル(kingcorville)で、MJ曲に合わせて踊るダンス動画をたくさん公開している。どれも激ファンキーで、目が離せない。驚くべきことに、ほとんどの曲で彼のダンスはMJ本人を超えている。是非、ご覧いただきたい。彼こそは“キング・オブ・MJイング”である。


KING CORVILLE: KING OF MJ-ING

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 コーヴィルは'09年秋からYouTubeに自分のダンス動画を投稿し始めた。ヒップホップ、R&B、ソカなど、様々な曲で踊っているが、中でも素晴らしいのが、MJ曲に乗って踊るMJイング動画の数々。上のサムネイル画像群は、'10年から'15年現在までに投稿されたそれらの中から、必見のベスト・パフォーマンス、面白動画を私が厳選して時系列で並べたものである。画像にリンクが張ってあるので、どれでも適当な曲を選んでご覧いただきたい。

 MJイングとは、先述した通り、飽くまでフリースタイルのMJ流ダンスのことであり、決してMJの物真似パフォーマンスのことではない。コーヴィルのダンスを見て、“ちっともマイケルに似てない”、“マイケルはそんな動きはしない”と思う人もいるかもしれないが、マイケル的でありながら、マイケルとは違う踊りをすることがMJイングの重要な点だということをご理解いただきたい。

 上のサムネイルを見て、多くの人はまず「Billie Jean」が気になると思うが、先に言っておくと、これはこの中で最も面白くない動画である。いや、十分に面白いのだが、MJイングを知る上では最も見るべきでない動画だと言える。と言うのも、「Billie Jean」のパフォーマンスに関しては、MJ本人が生涯を通して完璧な型を完成させていて、他人が新たな解釈を加える余地がほとんど残されていないからである。コーヴィルは「Billie Jean」においてもかなり自由に踊っているが、それでも大部分でMJのお馴染みのルーティンをなぞっている。そのようにしか動きようがないからだ。単にMJの模倣であれば、他にもっと上手い人間がいる。「Billie Jean」を見ても、MJイングの面白さ、コーヴィルの本当の凄さは分からない。

 MJイングの面白さは、マイケルが生前にダンス・パフォーマンスを行わなかった曲ではっきりと分かる。上に挙げた動画の中で、コーヴィルのMJイングのベストとして私が特に押したいのは、「Whatever Happens」「Cheater」「Sunset Driver」の3つである。コーヴィルはMJのあらゆるダンス・ムーヴを体得していて、いかなる曲に対してもMJ流儀で対応することができる。また、実際にMJがやっていた動きだけでなく、MJが取り入れていたポッピングやロッキングのスタイルも身につけているため、MJらしさを損なうことなく、ダンサーとしてMJと同じくらい自由でスポンテニアス(自発的)に踊ることができる。MJだったらこう動くだろう、と推測するのではなく、MJのボキャブラリーをすべて吸収した上で、純粋に自分が動きたいように動いているのである。なので、彼のダンスはMJの物真似ではない。仮に彼がムーンウォークをやったとしても、それはBボーイがヘッドスピンやウィンドミルをやるのと同じことで、飽くまでMJイングというダンス・スタイルの特徴的な技のひとつとして使われるに過ぎない。Bボーイが様々な技を組み合わせて自分だけの踊りをするように、コーヴィルも様々なMJムーヴを組み合わせて自分だけの踊りをしているのである。

 彼の踊りは確かにMJを手本にしているが、MJ自身はコーヴィルのように踊ることはできないだろう。“彼のダンスはMJ本人を超えている”と冒頭で書いたのは、そういう意味である。どっちが優れているとか、巧いとか、そういう不毛な話ではない。こんな踊りは絶対こいつにしかできない、と人を感動させることができた時、そのダンサーは先人を超える。コーヴィルのダンスは確実に超えていると私は思う。

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レ・ツインズ──「Whatever Happens」を使ったコミカルなパフォーマンス

 ベストとして挙げた3曲のダンスは、音に対するコーヴィルの反応が特に素晴らしい。彼は“リズムの奴隷”と化し、音楽を身体の動きに完璧に翻訳している。見ていてとにかく気持ちがいい。『MICHAEL』が発売された'10年12月にレコード店前の路上で踊っている「Whatever Happens」は、“Whatever, whatever, whatever”という1番のサビのフック部分での動き──身体をしならせながら波打つように後退する──が印象的だ。「Beat It」の振付を流用したこの動きは、日本でも有名なフランスのイケメン双子ダンサー、レ・ツインズ Les Twins が、同じく「Whatever Happens」を使ったパフォーマンスで見せていたものである。コーヴィルはそれを取り入れながら、レ・ツインズとはまた違ったMJ流儀の素晴らしいダンスを披露している。レ・ツインズに対するコーヴィルの返答とも言えるこのMJイング動画は、レ・ツインズが同年8月にアメリカのダンス大会で行ったパフォーマンスの人気動画LES TWINS World of Dance San Diego 2010 WOD | YAK FILMSと同じタイトルが付けられていることもあり、コーヴィルの動画の中で最も多くの人に視聴されている('15年9月現在、再生回数約63,000回)

 「Whatever Happens」でも見られるが、コーヴィルの踊りでひとつ特筆しておきたいのは、スピンである。ご存じの通り、スピンはMJの十八番である。彼は誰よりも美しく回転できるダンサーだった。MJのあらゆるダンス・ムーヴの中で、最も彼らしさが表れているのがスピンだったと思う。コーヴィルのスピンは、MJと全く違う。コーヴィルは両腕を胸の位置で畳み、まるで竹トンボのように回転する。そのままどこかへ吹っ飛んでいきそうな勢いである。途中で回転軸が傾き、実際に吹っ飛んでしまうのだが、わざとそうしているようにも見える。こんな風にスピンするダンサーは見たことがない。私はコーヴィルの竹トンボ・スピン(と勝手に呼んでおく)が大好きだ。この豪快で個性的なスピンもまた、彼のMJイングに特別な魅力を与えていると思う。

 MJイングの醍醐味は、MJが生前にダンス・パフォーマンスを行っていた曲においても存分に味わえる。中でも必見は「Wanna Be Startin' Somethin'」。コーヴィルはMJ以上にポッピング度の高い動きで、最高にファンキーな踊りを見せてくれる。後半のブレイク部分(“Hee-Haw!”)の決まり具合はどうだろう。はっきり言って、MJ本人よりも踊れている。「Billie Jean」はともかく、「Wanna Be Startin' Somethin'」でMJ以上に踊れるというのは半端じゃない。もしMJイングの世界大会が行われたら、コーヴィルは間違いなく優勝候補の一人だろう。

 コーヴィルのMJイング動画の多くは、6月25日のMJ命日などに行われたファン・イベントの場で撮影されている。MJの他界から2〜3年のうちは、命日にO2アリーナ周辺で大規模なファンの集いがあったらしく、他のMJファンたちとMJイングをする彼の姿が見られる('11年の命日の「Beat It」は最高)。最近はかつてほど人が集まらないようだが、それでもコーヴィルは追悼を続け、毎年、MJの命日になると街へ出て一人でMJイングのパフォーマンスをしている。私は3年ほど前、YouTubeでレ・ツインズの動画を漁っている時にコーヴィルの存在に気づき、それからは毎年、MJの命日や誕生日の後に投稿される彼のMJイング動画を楽しみにしている。今年、'15年の命日は「Invincible」「Unbreakable」「She Drives Me Wild」の3曲だった。先日、8月29日のMJ誕生日に行われたファン・イベントでの最新パフォーマンス「Ease On Down The Road(いつもよりロッキング度高め!)Give In To Me」も相変わらずの素晴らしさである。私はコーヴィルのMJイング動画をまとめてDVDに焼き、落ち込んだ時などによく見ている。彼の踊りは見る人に元気を与えるからである(路上で「P.Y.T.」や「They Don't Care About Us」を踊る素晴らしい動画も以前あったが、残念ながら現在は消えている。著作権問題で削除されたり、地域別視聴制限がかかることもあるので、彼のダンスを気に入った人は片っ端から動画を保存しておくべきである)

 マイケルとは違う踊りをすることがMJイングの重要な点だと書いたが、MJイングにおいて何よりも大切なのは、マイケル・ジャクソンに対する深い敬意と愛である。コーヴィルの踊りには、全身からマイケルに対する想いが溢れ出ている。“俺はマイケルが好きなんだ!”と身体全体で叫んでいる。マイケルに対する自分の愛を、自分なりに表現すること。それがMJイングだとも言える。マイケルを愛する人なら、誰にでもMJイングはできる。さあ、あなたも今日からMJイングを始めてみませんか?



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