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珍R&B入門 ディアンジェロでつながる人々 1989-94【8】



マーヴィン・ゲイの系譜




 Captured
 (Ephraim Lewis)
 
 EASIER SAID THAN DONE
 FRIENDS WOULD TELL ME
 "THE BEST WAS YET TO COME"
 SHACKLED SLAVE TO MY OBSESSION
 WOULD I DARE CONFESS TO YOU?
 
 言うは易しさ
 友人曰く
 「人生はまだこれから」
 妄想に取り憑かれた僕
 いっそ君に打ち明けようか?
 
 FANTASIES STILL HAUNT ME
 A DREAM OF... HOW OUR PASSION WOULD BE SET FREE
 STOLEN DAYS WE SHARED
 I NEVER KNEW YOU CARED
 QUITE LIKE YOU SAID YOU DID
 YOU CAPTURED MY HEART
 
 幻想が頭から離れない
 僕らの情熱が解き放たれてゆく夢
 奪われし2人の日々
 君が僕のこと
 そんなに想ってくれてたなんて
 君は僕の心を捕らえた
 
 HOW MANY TIMES WOULD I NEED TO SAY
 OVER AND OVER IN DARKER SHADES OF GREY
 SHACKLED SLAVE TO MY OBSESSION
 WOULD I DARE CONFESS TO YOU?
 
 何度言えばいいのだろうか
 繰り返し 薄暗い闇の中
 妄想に取り憑かれた僕
 いっそ君に打ち明けようか?
 
 HOW DO YOU STILL HAUNT ME?
 AFTER ALL OUR PASSION WE'VE BEEN SET FREE
 STOLEN DAYS WE SHARED
 I NEVER KNEW YOU CARED
 QUITE LIKE YOU SAID YOU DID
 YOU CAPTURED MY HEART
 
 どうしても君が心から離れない
 そうして僕らの情熱は解き放たれた
 奪われし2人の日々
 君が僕のこと
 そんなに想ってくれてたなんて
 君は僕の心を捕らえた
 
 YOU DAZZLED ME BLIND
 OH WE'RE SAILING HIGH
 A LONELY LOVE TO FIND
 YOU CAPTURED MY HEART
 
 君が眩しすぎる
 ああ 僕らは風を切る
 侘しい恋路
 君は僕の心を捕らえた
 
 WELL YOU SAID YOU WANT TO STAY WITH ME FOREVER
 BABY, I READ THE LINES UPON YOUR FACE
 (OOH PRETTY BABY)
 IF YOU WANT TO STOP BY ME
 ALL YOU HAVE TO DO IS CALL ME
 I'LL BE THERE
 YOU CAPTURED MY HEART
 
 ずっと僕と一緒にいたいと言ったよね
 君の顔にそう書いてあるもの
 (ああ 可愛い君)
 僕の顔が見たくなったら
 いつでも電話をくれればいい
 待ってるよ
 君は僕の心を捕らえた


EL_Skin.jpg
SKIN (1992)
EPHRAIM LEWIS

 早すぎたイギリスのディアンジェロ、イーフレイム・ルイス。ディアンジェロを'90年代ソウル・ミュージックの陽画(ポジ)だとすると、彼の音楽はその陰画(ネガ)のような趣を持つ。訳出した「Captured」は、デビュー作『SKIN』のベスト・トラックのひとつ。何というあやしさ、そして、切なさだろうか。ここで歌われる秘めやかで狂おしい恋は、イーフレイムの実人生について知ると、ある具体的なイメージを纏うことになるかもしれないが、この歌を彼個人の人生と結びつけて理解する必要は全くない。作品の普遍性を理解し、『RHYTHM & BLUES』(1998)でこれを取り上げたロバート・パーマー(イーフレイムと同じくマーヴィン・ゲイ信奉者)の選曲眼はさすがである。『SKIN』の制作を手掛けたジョナサン・クォンビーは、近年、ベンジャミン・クレメンタインという大いなる異才を再び世に送り出してもいる。

 イーフレイム・ルイスについて詳しくは、過去記事“Ephraim Lewis──忘れじの閃光”をお読みいただきたい。今回の短期連載“珍R&B入門 ディアンジェロでつながる人々 1989-94”は、Dファンにイーフレイムの存在を知ってもらうために考えた。他にも取り上げたかったアーティストはいるが(ジョージ・マイケル、ジェフリー・ウィリアムズ、D・インフルエンス、ヤング・ディサイプルズ、ジェリーサ、マッコイ、ジャズマタズ、アレステッド・ディヴェロップメント、トニ・トニ・トニ、ジョイなど)、幅を広げすぎると収拾がつかなくなるので、現在のディアンジェロの音楽と共振するロック色の強いアーティストを中心に計8組を選び、各々の必殺曲の歌詞を和訳することにした。取り上げた曲の多くは特にメッセージ色が強いわけでもないし、詞の内容を知らなくても鑑賞には差し支えないかもしれないが、何を歌っているのか理解できた方が感動が深まるのは確かである。拙訳は意訳・超訳が過ぎると思う方もいると思うが、原文の持つリズムやテンポを文意と同等に扱うのが私のやり方なので(歌詞和訳は基本的に字幕翻訳のつもりでやっている。歌詞は歌唱と同じスピードでスウィングしなけりゃ意味がないと思う)、悪しからず御了承いただきたい。

 '90年代後半にニュー・クラシック・ソウル〜ネオ・ソウル勢が登場する前、アメリカでは'80年代後半にレトロ・ヌーヴォー(アニタ・ベイカー、ルーサー・ヴァンドロス、バイ・オール・ミーンズなど)、イギリスでは'90年代初頭にアシッド・ジャズと呼ばれる原点回帰/温故知新的な黒人音楽の流れがあった。今回取り上げた'90年代前半の珍R&Bアーティストたち──いずれも自作自演家──は、ちょうどその狭間の過渡期に登場し、主に'70年代のニュー・ソウルやファンクを参照しながら、メインストリームの純R&Bとは異なる独自のオルタナティヴなソウル・ミュージックを作ることで、ネオ・ソウルが生まれる土壌を整備する役目を果たした(シャーデー『LOVE DELUXE』もこの範疇に含まれる)。同時期のアメリカで、ヒップホップの台頭と絡んでブラック・ナショナリズムの再浮上(マルコムX再評価)や、ロドニー・キング事件〜ロサンゼルス暴動があったことも思い出しておきたい。当時は、マイケル・ジャクソンでさえ車を破壊するような時代だった。

 こうして'90年代前半のニュー・クラシックな珍R&Bを振り返ると、ディアンジェロは出るべくして出た才能という感じがする一方、端からヒップホップを前提にしている点で、やはりそれまでとは決定的に異なる存在だったことが分かる。Macのオペレーティング・システムで言うと、ディアンジェロの登場によってOS 9時代からX時代に一気に移行したような感じである。イーフレイム・ルイスが生きていたら、アメリカの“OS D”に対して、一体どのようなOSを提示していただろうか。



珍R&B入門 ディアンジェロでつながる人々 1989-94【1】──Terence Trent D'Arby
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新R&B入門 ディアンジェロでつながるソウル・ディスク・ガイド 1995-2015
林剛、荘治虫・著/スペースシャワーブックス/1,600円/'15年7月31日発売
(ネオ・ソウル・ファン必携のディスク・ガイド本。今回の連載は、もちろんこの本に触発されている。年代順でもアルファベット順でもなく、まるで自分の部屋のレコード棚を真剣に整理するようなリスナー視点のアクロバティックな仕分け法が素晴らしい。林剛氏は、過去にもこれと似たやり方で『LADY SOUL〜ブラック・ビューティ・ミュージック・ガイド』という傑作ディスク・ガイド本を作っている)

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