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Phony PPL──だから僕は月が好き(スマイル大賞2015)



 昨年の大晦日、私は「Love Never Felt So Good」を歌ったマイケル・ジャクソンに“スマイル大賞”という特別賞を贈った。'14年、人々に最も微笑みを与えたことを讃える賞だった。マイケルのために用意した賞だったが、'15年の今年、この賞に値する素晴らしい曲を発表した音楽グループがいる。そのグループとは、フォニー・ピープル。受賞曲は、'15年1月に発表された彼らのアルバム『YESTERDAY'S TOMORROW』に収録されている「Why iii Love The Moon」である。この曲がどれほど素晴らしいかは、マイケルのために作られた賞が贈られる点から察してもらいたい。そして、是非とも聴いていただきたい。

 フォニー・ピープル Phony PPL は、ニューヨーク、ブルックリンを拠点に活動する黒人グループ。基本的にはヒップホップだが、ソウルともR&Bともポップともロックとも言える。音楽性の幅広さや具体的なサウンド・センス、また、集合体としての雰囲気は、ジャネール・モネイのワンダランド・アーツ・ソサエティによく似ている。“過去の未来”というアルバム・タイトル通り、レトロ・フューチャー感覚の音を聴かせるが、ワンダランドのようにコンセプチュアルなアート志向はなく、やっていることに全く大袈裟さや力みがないのが良い。そして、より洗練されている。驚くべきバランス感覚と自然さで、彼らは'10年代最高水準のポップ・ミュージックをあっさり生み出してしまっている。『YESTERDAY'S TOMORROW』を聴いたとき、私はジャネールの『THE ELECTRIC LADY』に足りなかった(と私が感じた)ものがすべて詰まっているような気がした。

 「Why iii Love The Moon」は、ロマンチックで純粋、そして少しビターな、聴き手の心にストレートに訴えかけるような曲である。美しい。とにかく美しい。ボブ・マーリー──生きていれば今年70歳──が健在で、もしスティーヴィー・ワンダーの提供曲を歌ったら、こんな風になっていたかもしれない。マーリーやスティーヴィー、あるいは、ビートルズの作品のように、誰もが良さを理解し、共有することができる普遍的な“歌”。それはまさしく、誰の頭上にも等しく輝き、人の心をそっと癒す夜空の月に似ている。「Why iii Love The Moon」は、ポップ・ミュージックそのものに対するとびきりのオマージュであり、フォニー・ピープルというグループの姿勢を端的に示す作品でもあると思う。

 「Why iii Love The Moon」はアルバムからシングルに切られ、'15年12月21日に音楽ヴィデオも公開された。今年はこの曲を和訳して締め括りたい。では、良いお年を!




 Why iii Love The Moon
 
 Real Love's So Hard To Find
 Just When You Think You've Found It
 The Illusions In Your Eyes...
 
 真の愛は滅多にない
 やっと見つけたと思えば
 目に映るのは幻……
 
 Thats Why iii Love The Moon
 Every Night Its There For You
 Its Constant
 Unlike These Human Beings
 Who Lie About What It Seems To BE
 You Think The Earth Is Where Yu Stand
 Your In The palm Of Someones Hand
 And Thats Why iii Love The Moon
 Cuz' Its Always There For Me
 Every night About My Window
 And That's Why iii Love the Moon
 Cuz It's Always There For Me
 Every Single NiGht I Look Outside
 It's Right There For Me
 And My Mind
 And Thats Why i Love The Moon, Yeah
 Because People Can Consume My Love
 In The WronG way
 So i Send It Up
 ...at NiGht
 ...at NiGht
 ...at NiGht
 
 だから僕は月が好き
 それは毎晩 君のために
 休むことなく
 人間たちとは違って
 何も信じ込ませない
 君は地球の上にいると思ってる
 君は誰かの掌の中にいる(*)
 だから僕は月が好き
 それはいつも僕のために
 毎晩 窓のところに
 だから僕は月が好き
 それはいつも僕のために
 夜ごと外に目をやれば
 そこにいて 僕の心を
 癒してくれる
 だから僕は月が好き
 世の中は僕の愛を
 食い潰してしまうから
 打ち上げよう
 ……夜空に
 ……夜空に
 ……夜空に
 
 Real Love's So Hard To Find
 Just When You Think You've Found It
 The Illusions In Your Eyes It Blinds Us All
 So Be Careful Where You Look For Love
 Just Be Careful Where You Look For Love...
 
 真の愛は滅多にない
 やっと見つけたと思えば
 目に映るのは幻 誰もが盲目になる
 愛を探すなら慎重に
 愛を探すなら慎重にね……
 
 Yo , Yo , Yo
 Thats Why I Let The Moon Shine
 (cause' Through The Time I've Been Confused On How To Move On)
 Stuck In Between What Wasn't and What Could Be The Truth haaa
 (Still Up TryinG to Escape the Demons in My Room Yo)
 You See Its No Change DroppinG we Learn To maintain Profit
 And How Could anybody Else feel Pain when They Brainwash us
 And Watch us Every time we make ExchanGes (we Slaves)
 Locked in A Box we Use Our Mind Just To Escape all the same Shit
 Im Tired Of The Pain
 Love Is Blind To The Flame
 Thats Why I Look Up Never Hide Behind Sky's When It Rain
 Promises Cooked Up Exercising through Denying the pain
 Thats Why I Look For Find Whatever Lies In The Rain
 Cuz' Shit Change
 I Dont Blame My Father For Lampin' I Believe That Helped
 Went From Trying To Grow As Your Son To Trying to Grow as Myself
 So Understand it when Im Stranded, takinG chances, Know I Need That Fall
 Flat On my Back You Just Relax and Kick your Seat Back, Uhh
 Cuz' When You Think...
 Thats When You Let Time Run And Escape What Your Mind's Loving Thats What You Think
 So What You Think?
 If Love Was Easy to Find We Wouldn't Need It To Complete Our Lives, SO...
 
 Yo , Yo , Yo
 だから月を輝かせるのさ
 (これまで俺はずっと道に迷ってた)
 何が嘘か真か分からず立ち往生
 (自分の部屋の悪魔どもから逃れようと)
 相変わらず俺たちは利益のことを考えてる
 洗脳されてりゃ苦痛も感じないし
 監視されてても分からない(俺たち奴隷)
 お決まりの袋小路から抜け出そうと必死
 苦しみは懲り懲り
 愛は炎を見失い
 だから俺は上を向く 雨が降っても隠れない
 約束なんてでまかせ 苦しみをごまかす言い訳
 だから俺は雨の中に何があろうと探す
 変わるんだ
 照らしてくれた親父に感謝しとくぜ
 おかげでここまで育ったぜ
 行き詰まったら もがいて転ぶのも大事ってこと
 俺は仰向け あんたも肩の力を抜いてみりゃ
 思うだろ……
 のんびり構えりゃ煩悩からも抜け出せるって
 そうだろ どうたい?
 愛が簡単に見つかるもんなら誰も人生に求めないさ だから……
 
 PEACE TO THE MOON
 PEACE TO THE STARS
 PEACE TO SATURN
 AND PEACE TO MARS
 
 月にこんばんは
 星にこんばんは
 土星にこんばんは
 火星にこんばんは


(*)in the palm of someone's hand 誰かの掌中にある:(人に)支配されている、コントロールされている、という意味の慣用表現。後半のラップ部分に出てくる“brainwash(洗脳する)”という語と呼応している。

■『YESTERDAY'S TOMORROW』は一般的にはデジタル配信のみだが、フォニー・ピープルの公式通販サイトでCDが購入可能。CD自体は15ドルだが、日本から買うと送料が23.95ドルもかかり、5,000円近い料金になってしまう(支払いはPayPal。購入すると、ブルックリンの彼らの事務所からPriority Mailで発送され、7日後に東京に到着する)。これは是非とも普通に流通させてもらいたい。
■本記事冒頭の画像は、アンリ・ルソーの絵「カーニバルの夜(Carnival Evening)」(1886年/油彩・カンバス/114×87cm)。『YESTERDAY'S TOMORROW』のジャケットと「Why iii Love The Moon」から私が勝手に思い出しただけで、フォニー・ピープルとは何の関係もない。




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