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DJ Spinna - Best Of Sade Mix

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DJ Spinna - BEST OF SADE MIX
CD: Off The Wall Records OTWR 20070002, 2009 (US)

By Your Side / Bullet Proof Soul / Cherish The Day [Pal Joey Remix] / Feel No Pain [Nellee Hooper Remix] / No Ordinary Love / Is It A Crime / Love Is Stronger Than Pride [Mad Professor Remix] / War Of The Hearts [DJ Spinna Refreak] / The Sweetest Taboo / Siempre Hay Esperanza / Keep Looking / Super Bien Total / Kiss Of Life / Cherry Pie / Maureen / Turn My Back On You / Paradise / Nothing Can Come Between Us / Hang On To Your Love / Give It Up / Smooth Operator / Red Eye


 DJスピナが手掛けたシャーデーのミックスCD。『DIAMOND LIFE』をネタにしたパロディ・ジャケで、聴かせる前からツカミはOK。

 もともとブートレグとして流通し、後に内容を薄めて正規盤に昇格したスティーヴィー・ワンダー関連音源のDJミックス『THE WONDER OF STEVIE』(2003)、クインシー・ジョーンズ関連音源をミックスした『TRIBUTE TO THE Q』(2004)に続く、彼のアーティスト・ミックス第三弾。大のシャーデー・フリークであるスピナが、“一生聴けるベスト・コンパイル”をコンセプトにしたという入魂のDJミックスだ。

 まず驚くのは、スティーヴィー、クインシーに続いて、彼がシャーデーを取り上げたという事実。シャーデーは確かに幅広い世代の様々な音楽ファンから格別の思いを寄せられているグループだと思うが、こうして、スティーヴィー、クインシーという、ポピュラー音楽全体の発展に莫大な貢献をしたレジェンドたちと同列で扱われるのを見ると、やはり感慨深いものがある。シャーデー作品が、もはや時代もジャンルも超越した不動のクラシックとなっていることを実感させるような企画盤である。


 2年前に出たポール・ナイスによるミックスCD『SADE BLENDS』は、ブレンド・ミックス集でもあり、シャーデーをヒップホップの世界に引き込む独創的な傑作ミックスだったが、スピナのこの作品は、オーソドックスなDJミックスでシャーデーの名曲群が丁寧にプレイバックされるのが特徴。たまにエフェクトをかけて音をいじることはあるが、スクラッチや2枚使いなどは一切せず、基本的にレコードそのままの音をフェイド・イン/アウト、あるいはディレイで素直に繋いでいく。ミックスCDと言うより、DJ視点で選曲されたシームレスのベスト盤と言ったほうが近く、まさに『BEST OF SADE MIX』という感じの内容になっている。

 まず、オープニング。小川のせせらぎのSEから「By Your Side」がフェイド・インしてくる演出がなかなかいい。ポール・ナイスは締めに使っていたが、この曲はやはり、使うなら頭か最後に置くのが無難だろうか。その穏やかなムードをディレイで消しつつ、「Bullet Proof Soul」でいきなりダークに急変させる最初の繋ぎが実に素晴らしい。クールな打ち込みにジャジーなサックスとピアノが絡むこの曲で、一気に濃密なシャーデーの世界が広がる。ここで、“ああ、やっぱシャーデーいいわ~”と誰もが思う(はず)。そして、そのまま更に「Cherish The Day」「Feel No Pain」「No Ordinary Love」と『LOVE DELUXE』作品を連発し、ひたすらクールに攻めていく(しかし、「Cherish The Day」をこの位置であっさり使ってしまうとは……)。
 スピナが最初に勝負に出るのは、次の「Is It A Crime」。「No Ordinary Love」をディレイで消してあの必殺イントロをカマし、引き続き曲の要所にディレイをかけながら聴かせる。DJミックスでこの6/8のスローを使った彼の心意気とシャーデー愛に拍手。ここまでが第一部という感じか(ちなみに、「No Ordinary Love」→「Is It A Crime」という流れは、'93年ツアーの曲順を意識している気がする)。

 「Is It A Crime」の次は、やけにショボい繋ぎでマッド・プロフェッサー・リミックスの「Love Is Stronger Than Pride」(流れ的にもどうかと思うが)。そしてその後、このCDにだけ収録のスピナによる「War Of The Hearts」リミックス。ビートをブレンドし、軽くシンセで味付けしただけの簡易リミックスなので、それほど有り難がるようなものではない。
 で、これに続けて「The Sweetest Taboo」をカマす瞬間が最高なのだが、気合いが入りすぎてイントロの音量が妙にデカいのが笑える。どや?どや?(大阪弁)というスピナの顔が見えるようで微笑ましい。


 という具合に、徐々にホットな曲を増やしつつ中盤以降も進んでいくのだが、正直に言って、スピナが考えた曲順や繋ぎには結構粗も多かったりする。ひとつひとつの繋ぎは良くても、全体の流れの中でせっかくの名曲たちが魅力を相殺してしまっているようなところがあるのだ。同時代の同系統の曲を固めすぎるのも驚きやメリハリに欠けるし、繋ぎの詰めの甘さもかなり目立つ。

 例えば、「Paradise」(Extended Remix)→「Nothing Can Come Between Us」という流れで言うと、ここではそれぞれの終わりと始め(歌い出し部分)をロング・ミックスし、「Paradise」のオケに「Nothing~」のヴォーカルを乗せるという、かなりいい感じの繋ぎ方をしているのだが、残念ながらキーが合っていない。また、「Paradise」「Nothing~」の2曲は『STRONGER THAN PRIDE』の曲順そのままで、普通に続けて聴く分には良いのだが、こうしたDJミックスで繋げた場合、先行する「Paradise」のビートが強烈すぎるため、フェイド・アウトで「Nothing~」に移りきった時、どうにも盛り下がってしまう。いくら最高の曲でも、繋げ方や曲順によっていくらでも駄曲になり得るものである。「Paradise」と「Nothing~」をこの方法で繋げたいなら、2つをロング・ミックスした後、「Nothing~」には移らず、もう一度「Paradise」に戻し、そこから別の適当な曲に移るのが正解ではないか(Extended Remixなら十分その余裕がある)。音程のずれについてはCDJを使えば解決できるが、それを反則とするなら、この繋ぎは断念するべきだろう。実際に自分で繋げてみたわけではないのであまり偉そうなことは言えないが、少なくともスピナのこの繋ぎはNGだと思う。「Paradise」を聴きながら「Nothing~」の歌メロを口ずさんでみたことのある私には、彼の心理はよく理解できるのだが。

 選曲、曲順、繋ぎ方に関して、私にはこうした細かい不満がいくらでもあるが、それもスピナ同様、シャーデーに格別の思い入れがあるからこそである。“一生聴けるベスト・コンパイル”を謳うなら、あらゆる視点からもっと考え抜かなくてはダメだ。技(芸)のレベルとしては、ポール・ナイスが「一本」、スピナはせいぜい「有効」というのが私の個人的なジャッジ。

 ポール・ナイスのミックスCDは、まず各曲のブレンド具合に耳がいくが、実はアルバム一枚通した全体の流れもよく計算されている。然るべき場所に然るべき曲が配置され、展開に全く隙がないのだ。シャーデーのヒップホップ的な可能性をコンセプトにした異色編集盤でありながら、音をそのまま聴かせたスピナよりも、遙かにシャーデーの魅力を正しくヴィヴィッドに捉えていると思う。ナイスが一流のDJであると同時に、音楽を聴く筋金入りのプロであることがよく分かる。きちんと理解しているからこそ、ああいう芸当もできるのだ。
 もちろん、スピナ自身がシャーデーを深く聴けていないなどと言うつもりは毛頭ないが、この『BEST OF SADE MIX』という作品に関して言えば、DJミックスとして聴くにも、ベスト盤として聴くにも、内容があまりに恣意的で中途半端ではないだろうか。私は一応3回ほど通して聴いたが、その度にポール・ナイスのミックスが聴きたくなり、実際すぐにディスクを交換して、“イエ~イ、やっぱナイス!”というパターンを繰り返してしまった。

Spinna_Sade.jpg

 ちょっと辛口になってしまったが、しかし、例えば、シャーデーの新譜発売を記念したイベントのようなものがあって、そこにスピナがひょっこり現れてこのセットをプレイしたとしたら、私だって絶対に盛り上がるに決まっているのだ。作品としての完成度が云々以前に、スピナほどの名のあるDJがこのような思い切った企画盤を出したこと自体が素晴らしいし、何より、シャーデーを愛する彼の気持ちがひしひしと伝わってくるのが嬉しいではないか。
 シャーデー最高だよね~、という彼のメッセージに、ここはやはり素直に微笑みたい。いずれシャーデーが新作を発表する折りには、是非、彼をリミキサーに指名してあげて欲しいと思う。


追記('12年6月18日):
 タイムズ・ノイエ・ローマン「Sade Is In My Tape Deck」について書いたことがきっかけでこのミックスCDを思い出し、購入時以来、約3年ぶりに聴き返してみた。スピナのミックスは私がこの記事で書いているほど悪くなかった。むしろ、すごく良い。聴きながら何度も唸ってしまった。決して多くはないシャーデーのオリジナル音源だけを使ってここまで繋げたのはやはりさすがである。なんで私はこんなにいちゃもんをつけていているのだろう。スピナとシャーデー、というだけで手放しで賞賛されてしまう空気が何となく気に喰わなかったのかもしれないし、面白すぎるポール・ナイスの改造ミックスと較べすぎてしまったのかもしれない。結局のところ、自分なりのシャーデー観を持っている私にとって、他人の作ったベスト・テープは素直には受け入れがたいものだったのだと思う。

追記2('12年10月19日):
 当ブログの開設5周年を記念して、自作のシャーデー・ミックス『STRONGER THAN PARADISE』を制作した。スピナよ、俺の生き様を見ろ!




パロディ・ジャケに気をつけろ(ブラック~クラブ・ミュージック編)

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