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Fleetwood Mac──大いなる愛



 2017年、フリートウッド・マック『Tango In The Night』(1987)が遂にデラックス版でリマスター再発される……という“噂”。




 Big Love
 (Lindsey Buckingham)
 
 Looking out for love
 In the night so still
 Oh I'll build you a kingdom
 In that house on the hill
 Looking out for love
 Big, big love
 
 愛を捜している
 夜のしじまの中
 丘の上のあの家に
 王国を築いてあげよう
 愛を捜している
 大いなる愛を
 
 You said that you love me
 And that you always will
 Oh you begged me to keep you
 In that house on the hill
 Looking out for love
 Big, big love
 
 君は言ったね
 いつまでも僕を愛すと
 丘の上のあの家に
 ずっと囲ってほしいと
 愛を捜している
 大いなる愛を
 
 I wake up alone
 With it all
 I wake up
 But only to fall
 
 そんな夢から
 ひとり目覚める
 目覚めても
 落ちていくだけ
 
 Looking out for love
 Big, big love
 Just looking out for love
 Big, big love
 
 愛を捜している
 大いなる愛を
 捜し求めている
 大いなる愛を


looking out for “恋にご用心”という日本盤の対訳はおかしい。“look out for”には“〜に用心する”だけでなく、“〜を捜し求める”という意味もある。前者の場合は命令形が普通。文脈的にも、ここは後者の意味である。“叫び声に目覚めれば ひとり/だけど 目覚めてみても/ただ 落ち込むだけ”というミドルエイトの訳も変だ。“with it all”の“it”は、主人公が見る“夢、幻想”を指している。“叫び声”という訳語はどこから出てきたのだろう。他人の訳に文句はつけたくないが(翻訳に絶対的な答えはないし、誤読・誤訳は誰にでもある)、個人的に思い入れの強い作品なので指摘させていただく。今回はなるべく意訳を避けたが、表題にもなっている“big love”は、気持ち的には“運命の愛”と訳したいところ。


 フリートウッド・マック『Mirage』(1982)のデラックス版が'16年7月にWarner Bros./Rhinoから発売される。34周年記念……ではなくて、これは来年で発表30周年を迎える名作『Tango In The Night』デラックス再発への布石ではないかと思う(思いたい)

 「Big Love」は『Tango In The Night』からの1stシングル曲。当時、MTVジャパンでこの曲のヴィデオを観たとき、10代前半だった私は得も言われぬ恍惚を覚えた。何か大人の世界を覗いたような気がした。番組司会のマイケル富岡とセーラ・ロウエルが“Ooh, ah...ってのがいいですね”と言いながら、アンリ・ルソーの画集を持ち出して『Tango In The Night』のジャケットとの類似を指摘していたこともよく覚えている。それが私のフリートウッド・マックとの出会いだった。私にとっては、プリンス「When Doves Cry」と共鳴する'80年代屈指の名曲である。




 「Big Love」と言えば、リンジー・バッキンガムの'97年のこのパフォーマンス。彼は『Tango In The Night』発表直後にバンドを離脱したので、マックの'87年ツアーで「Big Love」は披露されていない。彼らのライヴで初めて「Big Love」が披露されたのは、リンジーが10年ぶりにバンドに復帰し、'97年5月、MTVの企画で特別コンサート──『The Dance』として同年にCD/VHS発売──が行われた時だった。リンジーはガット・ギター一本で「Big Love」をフラメンコ風に演奏し、観客の度肝を抜いた。情熱を通り越して、狂気すら感じさせる凄まじいパフォーマンスである。まさに“ドゥエンデ”(魔力)が宿っている。この独演版は、もともと彼の'93年ソロ・ツアーで披露されていたものらしい。『The Dance』で初めてこれを観た時、私は本当にぶったまげた。スティーヴィー・ニックスを同伴した'98年のパフォーマンスも素晴らしい。以後、このパフォーマンスは彼のトレードマークのようになっている。




「これはだいぶ前に書いた曲で、丘の上の家にひとりで暮らす孤独な男を歌ったものだった。僕は今も同じ丘の上に住んでるんだけど、新しい家で家族と一緒に暮らしてる。全く違う風にね。だから、今となっては皮肉な感じもするんだけど……。皆さんご存じの曲です」

 これは'05年のライヴ映像(DVD『Soundstage Presents Lindsey Buckingham Live In Concert』より)。冒頭で上記のように曲紹介をしている。いつ演っても凄い。一度でいいから生で聴きたい……と思い続けて早十数年。マックが無理なら、リンジー・バッキンガムだけでもいい。是非、日本に来てほしい。ビルボードライブ規模のハコでこれを食らったら、私は間違いなく号泣する。

 プリンスはかつてCNN〈Larry King Live〉のインタヴュー('99年12月10日放映)で、自分が聴いて育ったアーティストとして、サンタナ、ラリー・グレアムと共にフリートウッド・マックの名前を挙げている。プリンスの他界で心が折れている人は、気晴らしにフリートウッド・マックを聴いてみてはいかがでしょう。


FURTHER LISTENING:
Stevie Nicks - Stand Back (1983)
(「Little Red Corvette」に触発されて書かれたスティーヴィー・ニックスのヒット曲。プリンスがクレジットなしでレコーディングに参加し、シンセを演奏している)
Lindsey Buckingham - Time Bomb Town (1985)
(サントラ盤『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に提供されたリンジーのソロ曲。「Big Love」のプロトタイプのようにも聞こえる隠れ名曲。制作は『Tango In The Night』と同じくリンジー・バッキンガム&リチャード・ダシェット)
Fleetwood Mac - Big Love [demo]
('86年のデモ録音。「Erotic City」みたい。“Ooh, ah...”の声はデモ段階からあった!)
Lindsey Buckingham - Doing What I Can (1992)
(3rdソロ『Out Of The Cradle』収録の“続「Big Love」”。こちらの方が'86年のデモ版に近い雰囲気。リンジー・バッキンガムの本性は“男性版ケイト・ブッシュ”で、ソロ作は実にエキセントリック)
Alice Smith - Another Love (2013)
(アリス・スミスによるフリートウッド・マック「Dreams」似の名曲。翌年、プリンス&サードアイガール『Plectrumelectrum』で取り上げられた。アリスはライヴで、プリテンダーズ「Don't Get Me Wrong」とあわせて、実際に「Dreams」をカヴァーしてもいる)
Res - The Chain (2013)
(リースによるマックの痛快カヴァー。マック4曲+スティーヴィー・ニックス1曲を“揚げ直した”彼女の傑作カヴァーEP『Refried Mac』より)



TO BE CONTINUED...



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