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Prince追悼和訳メドレー【5】──接吻



 プリンス追悼特別企画。'80年代の彼の名曲群から6曲を厳選し、その歌詞を1日ひとつずつ訳していく弾丸和訳メドレー(全6回)。

 第5回で取り上げるのは、「When Doves Cry」「Let's Go Crazy」に続くプリンスの3曲目の全米1位獲得曲「Kiss」(1986)。この曲は元々、ブラウンマーク(レヴォリューションのベーシスト)が制作を手掛けるPaisley Park所属のファンク・バンド、マザラティへの提供曲として書かれたが、プリンスのギター弾き語りデモから制作されたマザラティのトラックが上出来だったため、そこにプリンスが手を加え、結局、自分の作品として発表した。そういう意味では、一種の異色作と言えるかもしれない。チキン・スクラッチが入ったブルース形式のファンク楽曲は、まさにジェイムズ・ブラウン「Papa's Got A Brand New Bag」(1965)の'80年代版といった趣。メロディの輪郭をはっきりさせるマザラティによるゴスペル調バック・ヴォーカルも効果的だ。プリンスの自演曲は彼にしか歌えないようなクセのある曲が多いのだが、ブルースとゴスペルの伝統に忠実に従った「Kiss」には、歌う人間を選ばないスタンダード感のようなものがある。サウンドは変なのに、楽曲の構造そのものは古典的なので、非常に親しみやすい。2年後の'88年には、トム・ジョーンズをフィーチャーしたアート・オブ・ノイズによるカヴァー・ヒットも生まれた。それまでトリックスター的な存在だったプリンスは、この曲の全米1位獲得によって、初めて国民的アーティストの座に就いたような気がする。

 歌詞は相変わらずエロい。が、そこには聴き手の抵抗感を解きほぐす独特のユーモアや愛嬌がある。プリンスは公然とエロいことを歌っても許される稀有な存在だった。プリンスなら“一晩で23種の体位”とか歌っても、みんな“しょうがねえなあ”という感じで苦笑しながら受け入れるのである。キャラ勝ち、と言ってもいいかもしれない。彼の性的な歌が、“猥褻”ではなく、立派な芸術的表現、あるいは“芸風”として、社会的にはっきりと認められたのが、この「Kiss」ではなかっただろうか。彼はそういう表現の自由を、自らの音楽的才能で見事に勝ち取った。愛の調教師=プリンスのイメージを決定付けた重要曲だ。


 Kiss
 (Prince)
 
 U don't have 2 be beautiful
 2 turn me on
 I just need your body, baby
 From dusk till dawn
 U don't need experience
 2 turn me out
 Just leave it all up 2 me
 I'm gonna show u what it's all about
 
 美人じゃなくたって
 惹かれちゃう
 欲しいのはキミの体
 夕暮れから明け方まで
 経験がなくたって
 まいっちゃう
 任せてくれれば大丈夫
 ちゃんと教えてあげるから
 
 U don't have 2 be rich
 2 be my girl
 U don't have 2 be cool
 2 rule my world
 Ain't no particular sign I'm more compatible with
 I just want your extra time and your...kiss
 
 金持ちじゃなくたって
 彼女にしちゃう
 クールじゃなくたって
 降参しちゃう
 キミとボクは相性バツグン
 延長戦に行かせてよ ××××× キッスで
 
 U got to not talk dirty, baby
 If u wanna impress me
 U can't be 2 flirty, mama
 I know how 2 undress me, yeah
 I want 2 be your fantasy
 Maybe u could be mine
 U just leave it all up to me
 We could have a good time
 
 下品な口はきいちゃダメ
 感心できないよ
 軽過ぎちゃダメさ
 服くらい自分で脱げるとも
 キミの妄想になりたいのさ
 ボクのも叶えてくれるかな
 任せてくれれば大丈夫
 二人で楽しめるから
 
 U don't have 2 be rich
 2 be my girl
 U don't have 2 be cool
 2 rule my world
 Ain't no particular sign I'm more compatible with
 I just want your extra time and your...kiss
 
 金持ちじゃなくたって
 彼女にしちゃう
 クールじゃなくたって
 降参しちゃう
 キミとボクは相性バツグン
 延長戦に行かせてよ ×××× キッスで
 
 Yes
 I think I wanna dance
 Gotta, gotta
 Little girl Wendy's parade
 Gotta, gotta, gotta
 
 そうさ
 踊りたい気分
 さあ さあ
 可愛いウェンディのパレード
 さあ さあ さあ
 
 Women not girls rule my world
 I said they rule my world
 Act your age, mama, not your shoe size
 Maybe we could do the twirl
 U don't have 2 watch Dynasty
 2 have an attitude
 U just leave it all up 2 me
 My love will be your food, yeah
 
 女の子じゃなくて 女性 
 ボクを虜にするのは女性なんだ
 成長しよう 靴のサイズの話じゃない
 そしたら回転ダンスだってできる
 『ダイナスティ』を観て
 背伸びしなくてもいい
 任せてくれれば大丈夫
 ボクの愛でキミは大人になる
 
 U don't have 2 be rich
 2 be my girl
 U don't have 2 be cool
 2 rule my world
 Ain't no particular sign I'm more compatible with
 I just want your extra time and your...kiss
 
 金持ちじゃなくたって
 彼女にしちゃう
 クールじゃなくたって
 降参しちゃう
 キミとボクは相性バツグン
 延長戦に行かせてよ キッスで


Dynasty ダイナスティ:'81〜89年に米ABCテレビのゴールデン枠に放映されていた大ヒット・メロドラマ。大富豪一家の愛憎劇を描いた、『渡る世間は鬼ばかり』のセレブ版みたいな内容。


Prince_Kiss2.jpgPrince_Kiss3.jpg
Prince_Kiss4.jpgPrince_Kiss5.jpg
サザンオールスターズの作品──「チャコの海岸物語」(1982)、『Nude Man』(1982)
「ボディ・スペシャルII」(1983)、「ピースとハイライト」(2013)


 4月末の記事“追悼 PRINCE──ビートに抱かれて”で、私はプリンスを明石家さんまに準えた。より近い類比として、日本でプリンスに似た存在のミュージシャンをひとり挙げるとしたら、(岡村靖幸ではなく)桑田佳祐である。彼はサザンオールスターズを率いてプリンスと同じ'78年にデビューし、プリンスよりも4〜5年早く、似たような“革命”を日本の音楽界にもたらした。サザンにとっての「Purple Rain」が「いとしのエリー」(1979)だとすれば、「Kiss」に当たるのは「チャコの海岸物語」か('60年代っぽかったり、ちょっと肩の力を抜いて作ったような感じも似ている)。新たな語彙と語法、そして、類い希な作曲能力によって、桑田は日本のポップ・ミュージックの基準を作り替えた。芸風が似ていることは言うまでもない。プリンスは、言ってみれば、日本で桑田佳祐がやったことを世界規模でやったアーティストである。彼の偉大さは音楽ファンなら誰もが知っているし、その功績はとてもNaverで簡単にまとめられるようなものではない。

 桑田佳祐が急死したら、一体どれだけ多くの日本人が悲しむだろう。いて当たり前の人が、突然いなくなった。プリンスの急逝で世界中の音楽ファンが受けたショックというのは、つまり、そういうものだったと思う。



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Prince追悼和訳メドレー【2】──1999年
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Prince追悼和訳メドレー【5】──接吻
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