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Prince──アルファベット通り



 前回のキャット特集に続き、今回は彼女がラップで参加したプリンスの「Alphabet St.」(1988)を和訳する。「Kiss」を彷彿させるブルース進行のシンプルなファンク・ナンバー。“Make Love, Not War”的な歌詞には、プリンスらしい言葉遊びが溢れている。散りばめられたヒントを基にアルファベット文字を組み合わせると、一体どんな単語が出来上がる?


 Alphabet St.
 (Prince)
 
 I'm goin' down 2 Alphabet Street
 I gonna crown the first girl that I meet
 I'm gonna talk so sexy she'll want me from my head 2 my feet
 
 アルファベット通りへお出かけ
 最初に出会う娘がボクのお目かけ
 セクシーなおしゃべりで 彼女はボクに腰くだけ
 
 I'm gonna drive my daddy's Thunderbird
 A white rad ride, '67 so glam it's absurd
 I'm gonna put her in the back seat and drive her 2 Tennessee
 
 親父のサンダーバードを転がす
 ピカピカの白い車 67年型のイカすやつ
 彼女を後ろに乗っけて ひと走り テネシーまで
 
 I'll say excuse me, baby
 I don't mean 2 be rude
 But I guess tonight I'm just not in the mood
 So, if U don't mind I would like 2...watch...can I?
 
 でもって 悪いね ベイビー
 無礼をする気はないけれど
 ちょっと今夜はその気になれなくて
 もしよかったら 是非とも……拝見を……いかが?
 
 We're goin' down, down, down if that's the only way
 2 make this cruel, cruel world hear what we've got 2 say
 Put the right letters together and make a better day
 
 どんどん行こうよ それっきゃないなら
 このヒドい世界にボクらの主張を伝えてやるのさ
 正しく文字を組み合わせ より良い日にしよう
 
 Maybe it's the only way, yeah, yeah, yeah, yeah
 
 それっきゃないだろ YEAH YEAH YEAH YEAH
 
 Cat, we need U 2 rap
 Cat, we need U 2 rap
 Don't give it 2 us slow
 Cause we know U know
 New power soul
 Gotta gotta go!
 
 キャット ラップを頼む
 キャット ラップを頼む
 たるいのは勘弁だ
 いっちょ頼むぜ
 ニュー・パワー・ソウル
 そら行け そら行け!
 
 Talk 2 me lover come and tell me what U taste?
 Didn't your mama tell U life is 2 good 2 waste?
 Didn't she tell U Lovesexy was the glam of them all?
 If U can hang, U can trip on it, U surely won't fall
 No side effects and the feeling last 4-ever
 Straight up - it tastes good, it makes U feel clever
 U kiss your enemies like U know U should
 Then U jerk your body like a horny pony would
 U jerk your body like a horny pony would
 Now run and tell your mama about that!
 
 アンタ 味を聞かせてちょうだいな
 ママに言われなかった? 人生ムダにするな
 極上なのはラヴセクシーって
 ありつけたらおめでとさん
 副作用ナシ 効果永遠
 ゴクリといけば有頂天
 敵でも構わずキスしちゃう
 角つきの仔馬みたくピクピクしちゃう
 角つきの仔馬みたくピクピクしちゃう
 さあ ママに話してあげなさい!
 
 And while U're at it tell your papa about this!
 
 ついでにパパにもな!
 
 Put your love down there when U wanna get shot
 Put your love down there when U wanna get shot
 Put your love down there when U wanna get shot
 Put your love down there when U wanna get shot
 
 撃たれたければ愛を捨てろ
 撃たれたければ愛を捨てろ
 撃たれたければ愛を捨てろ
 撃たれたければ愛を捨てろ
 
 Yea, oh, Alphabet Street
 Yea, oh, Alphabet Street
 
 イェー オー アルファベット通り
 イェー オー アルファベット通り
 
 A B C D E F H I love U
 
 エイ ビー シー ディー イー エフ エイチ アイ シテル


 “We're goin' down, down, down”で始まる最後の4番で、プリンスは“このヒドい世界にボクらの主張を伝えてやるのさ”と社会的なメッセージを発している。そして、こう歌う。

  正しく文字を組み合わせ より良い日にしよう
 
 さて、どのように組み合わせればよいのか。4番を読む限り、正しく文字を組み合わせて作られる単語は“PEACE(平和)”であるように思われる。しかし、この歌の他の部分を聴くと、同じく“P”で始まる全く別の英単語が思い浮かぶ。“PUSSY(マンピー)”である。
 
 1〜3番で歌われているのは、アルファベット通りなる場所へ繰り出して、女の子を興奮させるという“ボク”の妄想談である。彼女を車に乗っけてテネシーまでドライブする“ボク”は、彼女をさんざん誘惑しておきながら、“今夜はその気になれないんだ”などと言っておあずけを喰らわし、代わりに“(彼女の行為を)拝見したい”と言う。

 キャットによる後半のラップ部分では、話者の女が恋人の男に向かって、彼が味わう“あるもの”について喋る。媚薬めいたそれには“ラヴセクシー”という名称が与えられているが、具体的に彼は一体何を味わっているのか。

 そして、“アルファベット通り”という場所。“ボク”はそこに向かって“going down”する。“going down”は“(道を)まっすぐどんどん進んでいく”という意味だが、文字通り“下りていく、下の方へ行く”という意味でもある。女性の体を下方向へ進んでいくと何があるだろう。“アルファベット通り”は、つまり、マンピーを表す一種の伏せ字、隠喩として捉えることができる。“ボク”は“アルファベット通り”へ行き、セクシーな“おしゃべり”(舌)で女の子を発情させる。“おしゃべり”は、同時に“おしゃぶり”でもあるだろう。プリンスはこの歌で、はっきりそれとは分からない形で、巧妙にクンニリングスについて歌っているのである。

 “アルファベット通り”=マンピーにめでたく辿り着いた“ボク”。しかし、喜ぶのはまだ早い。次に“ボク”は、そこであるもの(ある文字)を見つけなければならない。それは何か。

  A B C D E F H I love U
 
 曲のエンディングで、女性(イングリッド・シャヴェイズ)が恍惚とした声で“A”から“I”まで順に発音していくアルファベット文字──“I love U”と締め括られる──には、“G”の一文字が抜けている。うっかり言い忘れたわけではなく、当然、“G”に特別な意味があることを示唆するためだろう。“G”は何を示しているのか。マンピーにある“G”と言えば、答えはひとつしかない。“ボク”は、マンピーのG-SPOTを探しているのである(曲のキーであるGを指している、という説もあるが、あまり説得力を感じない。むしろ、Gスポットの歌だからキーをGにした、と考えるべきだろう。前年に発表されたプリンス制作のジル・ジョーンズ「G-Spot」──「Alphabet St.」とよく似た言葉遊びソング──のキーはFだったが……)

 しかし、この意味深な“G”は、プリンスの作家性、また、この曲が収録されている『Lovesexy』というアルバムの性質を踏まえると、“GOD(神)”の“G”とも解釈できる。神の探求か、はたまた、Gスポットの探求か。“PEACE(平和)”なのか、それとも“PUSSY(マンピー)”なのか。プリンスにとってそれらは不可分であり、いずれも全身全霊をかけて追求すべきものに違いない。彼にとって、平和とはすなわちマンピーであり、神とはGスポットなのだ。“ラヴセクシー”とは、つまり、そういうことだろう。平和とマンピー、神とGスポットを同時に語る男──それがプリンスである。


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〈Lovesexy〉ツアーのキャットとプリンス

 前回記事でも紹介した'13年のインタヴューで、キャットは「Alphabet St.」について以下のように話している。彼女のラップはソルトンペパに影響されたものだそうだ(彼女はソルトンペパの同時期のヴィデオ「Push It」で振付を手掛けてもいる)

「あの歌の本当の意味を知ってる? 人から教えてもらったわ! 私はただスタジオで歌ってただけ。ちっとも知らなかったわ。本当よ。神に誓ってね。
 プリンスと二晩か三晩スタジオに入ってて、私はクタクタだった。彼は疲れた私を置いていった。“僕はもう帰るから、自分のヴォーカルを録音しといて。戻ってきたら出来を確認させてもらうから”ってね。
 私がソルトンペパを好きなのを知ってて、彼はこう言った。“しっかりやれよ。さもないとソルトンペパから笑われるぞ!”。私はペイズリーパークのスタジオAに取り残された。一度、彼から卓の操作を教えてもらって、自分のパートを録ったわ。ちゃんとね。
 プリンスってのは、もし分からないことがあったら、一度やってみせてくれるの。絶対できるとその人を見込んでね。もちろん、彼の期待は裏切りたくない。だから私は“やってやるわよ。ソルトンペパが何さ。私が好きなのを知ってて、わざわざ言うなんて!”って。私のラップがうまくいったとしたら、それはソルトンペパを意識していたせいよ」(29 May 2013, Dyes Got the Answers 2 Ur ?s)


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サンダーバード──67年型(上)と68年型(下)。いずれもヘッドライト不使用時

 ちなみに、「Alphabet St.」の音楽ヴィデオ、および、〈Lovesexy〉ツアーでステージに登場したフォード社の白いサンダーバード(4ドア式)は、曲中で“(66年)67年型”と歌われているが、実際には恐らく68年型である。67〜69年の3つの型はどれも似ているのだが、フロントグリルにそれぞれ特徴がある(66年型は全く違う)。プリンスの68年型サンダーバードは、エンブレムが入った左右の開閉可能なグリルをしまい込み、ヘッドライトを使用状態にしたものと思われる。

 これを検証するため、私はネット上でサンダーバードの画像を見まくった。一応、68年型という結論に達したものの、よく見ると、プリンスのサンダーバードは中央のグリルの網の目の数が一般的な68年型と微妙に違っていたりする。謎だ……。

Aplphabet_St5.jpg
グリルを収納してヘッドライトを出した68年型サンダーバード

 私はプリンスの白いサンダーバードをそっくり再現したミニカーが欲しい。そして、それを走らせて遊びたい(どこに?)。



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