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楽園

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 『STRONGER THAN PRIDE』(1988)からの第二弾シングル曲「Paradise」。ライヴ映えのする抜群のアップで、コンサートではいつも大いに盛り上がる。全米R&Bチャートで堂々の1位を記録(総合チャートでも16位のヒット)。

 パーカッションが南国の熱風を感じさせつつ、サウンドは実にクール。「Smooth Operator」「The Sweetest Taboo」と続いてきたラテン調のシングル曲、あるいは、1st収録の同じ16ビート・ファンク「Cherry Pie」などと較べると、この曲がいかに研ぎ澄まされているかが分かる。特に違うのはビートの立ち具合である。'90年代以降、ヒップホップの影響を受けながら独自のシンプルなサウンドに磨きをかけていく彼らだが、そのソリッドなフォームはここでほぼ完成されていると言ってもいいだろう。

 楽曲同様、歌詞もアップリフティング。シャーデー版「I Feel Good」、あるいは「Jumpin' Jack Flash」とでも言いたくなるような、いつ聴いても吹き飛ばされる問答無用の必殺曲である。


 Paradise
 (Adu/Hale/Matthewman/Denman)
 
 浜から砂をさらってしまおう
 いっそこの世界をあげてもいい
 あなたを風に乗せて連れてこよう
 いい気分
 
 あなたは
 私のもの
 とっても
 いい心地
 私はあなたのもの
 あなたは私のもの
 まるで楽園
 
 いっそこの世界をあげてもいい
 いい気分
 
 あなたは
 私のもの
 私はあなたのもの
 いい心地
 まるで楽園
 
 浜から砂をさらってしまおう
 いっそこの世界をあげてもいい
 あなたを風に乗せて連れてこよう
 いい気分
 
 あなたは
 私のもの
 とっても
 いい心地
 私はあなたのもの
 あなたは私のもの
 まるで楽園
 
 なんて素敵な人生
 なんて素敵な人生
 なんて素敵な人生
 なんて素敵な人生
 
 分かちあいたい
 この人生を あなたと
 分かちあいたい
 
 分かちあいたい
 この人生を あなたと
 分かちあいたい
 
 なんて素敵な人生
 まるで楽園


 「Love Is Stronger Than Pride」同様、この歌詞も非常にシンプルで、短歌的な趣を呈している。恋人との一体感が“極楽”気分と歌われ、まるで自分が天地の創造主にでもなったかのような恍惚が訪れる。かと言って、幸せボケの呑気な歌ではなく、重く沈み込むベース・ラインを足がかりに、高みにグングン昇っていくようなテンションが漲っているのが最高だ。世界をガツガツ肯定していくようなこの闇雲な推進力こそファンクの真髄だと思う。

 実は、マーヴィン・ゲイにこれとよく似た歌がある。『THAT STUBBORN KINDA' FELLOW』の最後にも収録されているジャンプ・ナンバー「I'm Yours You're Mine」(1962)がそれだ。作者は、マーヴィンの最初の妻であるアンナ・ゴーディ(ベリー・ゴーディの姉)とウィリアム・スティーヴンソン。似ているのは歌詞である。
 
 僕は君のもの 君は僕のもの
 君は僕のもの 僕は君のもの
 何も2人を邪魔することはできない
 
 君に出会えて幸せさ
 この腕に君を抱かせておくれ
 君がそばにいると
 まるでこの世は天国さ

 私はあなたのもので、あなたは私のもの。そして、やはり気分は“極楽”である。これだけならまだしも、“Nothing's gonna ever come between us”というフレーズが、『STRONGER THAN PRIDE』からの第三弾シングルで、アルバムで「Paradise」と並べられた「Nothing Can Come Between Us」(マーヴィン・ゲイに歌わせたい!)に酷似しているとくれば、結びつけるなという方が無理だろう。「I'm Yours You're Mine」は、もしかするとアデュのお気に入りナンバーだったのかもしれない。

 「Paradise」と被る曲がもうひとつ。超絶ドラマー、ビリー・コブハムの代表曲「Stratus」(1973)のリフを借用したマッシヴ・アタックの名曲「Safe From Harm」(1991)である。緩やかにうねる16ビートに、地を這うようなベース。ダビーな広がりを持つUKらしい冷ややかな音像。両者はギターが爆裂するライヴでの加熱具合も似ている(シングル「Love Is Stronger Than Pride」のB面曲「Super Bien Total」がカルデラ「Sky Islands」に酷似していたことも思い出したい)。ソウルIIソウルが「Keep On Movin'」でグラウンド・ビート・ブームの口火を切るのが'89年。「Paradise」は、そんな季節の到来を予感させる鋭い名作でもあると思う。

 あと、何の関係もないが、沢田研二に「おまえがパラダイス」(1980)という佳曲がある。シャーデーがパラダイス!……単にこれが言いたかった。



※この記事は、もともと記事番号(URL)216で投稿され、'16年8月1日にfc2によって凍結された記事を、テキストの一部を削除した上、新たなURLで再投稿したものです。詳しくは“お知らせ:凍結記事復刻について”をご覧ください。

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