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沢田研二@北とぴあ さくらホール 2009



 沢田研二(61)のコンサートを観た。
 
 昨年12月3日に東京ドームで3万人を集めて行われた還暦記念コンサート(約6時間半で80曲を熱唱)が話題になり、再び地味に人気上昇中のジュリー。現在、彼は6月にリリースした6曲入りEP『Pleasure Pleasure』を引っ提げて全国ツアーを敢行中だ。

 今年のジュリーは、1月に6公演の正月コンサート、2月には内田裕也と2日間の特別ジョイント・コンサート、4月には26公演の音楽劇、6月に新譜を自分のインディ・レーベルから発表し、6月5日から9月24日にかけてそれを聴かせる全32公演の全国コンサート・ツアー、11~12月には再び舞台、というスケジュールで活動している。人気に関係なく、沢田研二は毎年大体こういう感じで黙々とハードワークを続けているのである。

 私は沢田研二の大ファンというわけではないが、昨年の秋頃から個人的に山口百恵にハマったせいもあって、彼女と同時代に活躍した彼の作品や活動に改めて興味を持つようになっていた。決定的な契機は、やはり、テレビ放映された還暦記念コンサート〈ジュリー祭り〉で異様なガッツを見せつけられたこと。新聞広告で今回の全国ツアーの追加公演情報を知り、私はここで一度ジュリーの生のステージを観ておこうと思った。


 コンサートは初めてだが、私が生ジュリーを目にするのはこれが2度目。1度目は遥か昔、彼が主演した『夢二』という映画の公開初日舞台挨拶の時で、場所は、原宿駅前の空き地に作られたテント小屋のような奇妙な仮設映画館の中だった。'91年のことなので、もう18年も前のことだ。ジュリーがまだ辛うじて往年の美男イメージを保っていた頃で、ギャグも飛ばさず二枚目俳優らしく淡々と挨拶する姿が印象に残っている。本編『夢二』の前に彼の「SPLEEN」という最新曲の音楽ヴィデオが上映され、それがえらくカッコよかったことも記憶にある。
 それから時の過ぎゆくままにその身をまかせていったジュリーは、現在ではすっかりメタボおじさんのキャラが定着している。予習のために10年ぶりくらいに聴いてみた新譜『Pleasure Pleasure』はストレートなロックンロール作品で、可もなく不可もない平均的な出来といった印象。ヴォーカルに張りはあるが、声質が野太くなっているのがさすがに年齢を感じさせるか。あまり過度の期待をせずに会場に足を運んだ。

 会場は東京の王子駅のすぐ近く、北とぴあという区営の多目的施設内にあるさくらホール。キャパ1300人。今でも普通に1万人、頑張れば3万人を動員する沢田研二にしては、かなり小さめのハコだろう。7000円のチケットはもちろん即日完売。私の席は2階席の真ん中あたりだったが、会場自体が狭いのでステージはかなり近く感じられた。場内を埋め尽くす観客は、ほぼ100%中高年の女性。“皆さん、今日は婦人会の集まりでもあるんですか?”というジュリーのMCで分かったが、この日はいつにも増して女性率が高かったようだ(尚、ここで紹介するジュリーのMCは完全に記憶で書いているので、細部は必ずしも正確ではないことを予め断っておく)。


 定刻の18時30分過ぎ、昨年のアルバム表題曲「ROCK'N ROLL MARCH」で勢い良く開演。タムタムのビートが利いたミドル・テンポの佳曲。バンドのイントロに乗って白いスーツ(ジャケットの裾の後ろが片方長い)姿のジュリーがステージ袖から飛び出してきた。まず、身体全体に比して顔がやけに大きいのが印象的。体型はドーム公演の時と同じくらいで、ここ10年くらいのジュリーとしてはかなりスリムさを保っている方だと思う。
 バンドはギター2人+ドラム+キーボードの4人。ジュリーのバンドにベースがいないということに、不覚にも私はこの時初めて気が付いた。テレビでも観ていたのに、なぜ今まで気付かなかったのだろう。ベースレスのバンドなど普通はちょっと想像できないが、キーボードの低音&ギター2本が作る厚みで、さほど違和感はない。一体いつからこの編成なのだろうか?

 会場の年齢層は高いが、それでも半分くらいの人が立って盛り上がる。ジュリーのライヴは、歌謡ショウではなく、完全にロック・コンサートである。予想通り、全く知らない新しめの曲が連発され、ジュリーは精力的にステージを動き回りながら熱唱。
 3曲目を終えたところで挨拶のMC。“やって来ました、さくらホール! 駅のすぐそばです!”。喋ると途端にダミ声で、漫談師キャラに早変わりする。新作『Pleasure Pleasure』やドーム公演DVDに関する軽妙な宣伝トークで場内は和やかな雰囲気に。慣れた調子で中高年女性の気持ちを掴む様子は、まさに“歌う綾小路きみまろ”といった感じだ。“今日は皆さんよくご存じの曲……あまりご存じでない曲……全然ご存じでない曲(笑)など、織り交ぜてお送りしたいと思います。どうぞ一緒に楽しんでいって下さい”。
 挨拶に続く4曲目は、新作の表題曲「Pleasure Pleasure」。場内はよりヒートアップ。この曲ではサビにちょっと変則的なハンドクラップが入るのだが、客席の中高年女性たちは、事前に皆で揃って練習していたのか?と思うほどピタリとこれに合わせる。すごい。

 新曲や馴染みのない曲が更に何曲か続いたところで、突然「勝手にしやがれ」。もちろん場内は爆発的に盛り上がる。サビの“ア~ア~”で会場中が両手を上げてユラユラさせる光景は壮観だ(これだけでなく、女性ファンたちはジュリーの振りのひとつひとつをそっくり真似る)。こうした往年のヒット曲はやはりサービスなのだろう、ジュリーも軽く歌い流す感じで、アクションもかなりおどけ気味(決して手を抜いているわけではない)。こういうちょっと屈折したパフォーマンスに、沢田研二らしい現役根性が滲み出ているように思う。
 「勝手にしやがれ」よりも、むしろそれに続いて歌われたスロー「明星 -VENUS-」('87年『告白 -CONFESSION-』収録)、「我が窮状」('08年『ROCK'N ROLL MARCH』収録)が良い。控え目なバックの演奏で、ジュリーの声の艶がよく引き立つ。声は少し枯れるところもあるのだが、こうしたスローで聴かせる骨太で繊細な表現力はやはり素晴らしい。ここで初めて鳥肌が立った。

 バンドのインスト演奏を挟んで後半。ジュリーはドーム公演で見られた白いインディアン衣裳で再登場。この無意味な派手さこそジュリーだと知りつつ、それにしても“どうしたんだ!”と言いたくなる衣裳である。曲はドーム公演1曲目に歌われたアップ「そのキスが欲しい」('93年『REALLY LOVE YA!!』収録)。続いて、ジョン・レノン「Instant Karma!」風な後期の代表曲「単純な永遠」('90年『単純な永遠』収録)。この辺の曲なら私もそこそこ馴染みがあるので付いていける。
 インディアン衣裳を脱ぎ捨て、次はドーム公演でハイライトにもなったスロー「いくつかの場面」('75年『いくつかの場面』収録)。自分の過去を切々と物語りながら反芻するこの曲は、還暦を過ぎた沢田研二が歌うと非常に深みがある。今のジュリーは、イケイケ路線や予定調和的な等身大ロック路線よりも、こうしたストーリーテリングを重視したスロー系の曲が圧倒的に良いと思う(控え目なアレンジでシンプルに歌を聴かせるようなアルバムを作って欲しい)。「いくつかの場面」に続いて歌われたのは、同時期の代表曲「時の過ぎゆくままに」。もちろん良かったが、「勝手にしやがれ」同様、結構あっさり。
 それ以降は再び新曲を中心に熱演して最後まで盛り上げていった。新譜からの曲はライヴの方が遙かにパワフルで充実している。事前に2回しか聴いていなかった新譜を帰宅後に改めて聴き、ライヴで印象的だった曲が実は新譜収録作品だったことに気付いてビックリしたほどだ(特に「Smash the Rock」。ライヴでは、かつての佳曲「ポラロイド・ガール」っぽいサビがやけに魅力的に聞こえた)。

 アンコールは、まずジュリーが一人だけ出てきて漫談タイム。ジュリーは基本的に曲間で全くと言っていいほどMCをせず、ガンガン曲を連打していくのだが、その代わり喋る時は思いきり喋る。ここでは10分ほど喋っただろうか。インフルエンザ流行に関する時事ネタ(“マスクしてる方もいらっしゃいますが、そんなもんしたって移るときは移るんでっせ! 皆こっち向いてるから僕が一番危ない。みんな後ろ向け!”)などに続いて、様々な浮き沈みを経験した40数年間のキャリアをタイガース時代から振り返り、いま再び人気が出ていることを不思議がる。自分の体型をネタにした冗談も快調だ。“長くてあと20年、短くて10年(笑)。死ぬまで歌い続けます!”と言って最後は会場を湧かせた。
 “忌野清志郎が僕に唯一書いてくれた曲”という紹介で「KI・MA・GU・RE」('89年『彼は眠れない』収録)。この曲だったかどうかは定かでないが、ジュリーがペットボトルの水を口に含んで噴射するパフォーマンスがあった。「カサブランカ・ダンディ」のあれだ。相変わらず見事な吹きっぷりで、これが生で観られたのには感動した。「探偵~哀しきチェイサー」('78年『今度は、華麗な宴にどうぞ』収録)、「いい風よ吹け」('99年『いい風よ吹け』収録)という通向けの曲に続いて、最後の最後は「TOKIO」。ステージを飛び出し、観客席エリアに伸びる壁沿いの壇まで行って盛り上げた。最初に右側へ行き、ステージを横切って左側にも行くと見せかけて“行かないよ~”とUターンするところが可笑しい(その後、きちんと左側にも行ってサービスした)。演奏終了後の退場時もたっぷりおどけて、持ち前の三枚目ぶりを発揮していた。

 場内の明かりが点いた時は、開演からほぼ2時間半が過ぎていた。内容としては標準的なものだったと思うが、このヴァイタリティと密度はやはり凄い。往年のヒット曲はほんの数曲だが、馴染みのない作品も楽曲の良さと気合いの入った歌唱で十分に聴かせる。満腹である。


 沢田研二は懐メロ歌手になることを頑なに拒み、ディナーショウの類も一切やらず、毎年新譜を発表してこのようなツアーを続けている。今回初めてコンサートに行った私は、終演後、まるでマラソン選手が走りすぎる様子を沿道からほんの束の間目撃したような気分だった。何かに取り憑かれたようにステージ上をヨタヨタと走るジュリー。24時間テレビで走る三流芸能人を応援するくらいなら、私は是非ジュリーのコンサートに足を運んでもらいたいと思う。ジュリーは別に地球を救うために走っているわけではないが、60歳を越えても尚、現役で一流を保ち続ける彼のパフォーマンスは、24時間テレビよりも遥かに感動的である(彼は40年以上も走っているのだ)。ジュリーは少なくとも「サライ」よりいい歌を歌うし、その歌声は確実にその場に居合わせた観客を幸福にする。

 現在、沢田研二のコンサートに訪れるファンは恐らくほとんど固定化していて、何かの拍子に時たま私のような潜在的ファンがそこに加わる感じなのだと思う。ジュリーは好きだがコンサートには行ったことがない、という人はきっとたくさんいるだろう。何せ、かつては一億人が彼の歌に聴き入っていたのだから。そして、今もその夢の続きが生で聴けるのである。この記事を読んだあなたも、何かの拍子に沢田研二のコンサートに行くことがあればいいなと思う。


 セットリストは不明だが、7月25日の大宮ソニックシティ公演のものをネット上で見つけたので紹介しておく。恐らく私が行った公演もほぼ(あるいは、全く)同一だと思う(「あなたに今夜はワインをふりかけ」はアンコールのような気がしていたが、多分この位置が正しいのだろう)。個人的には「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」「晴れのちBLUE BOY」あたりを生で聴いてみたかったが、叶わなかった。

01. ROCK'N ROLL MARCH(2008)
02. AZAYAKANI(2001)
03. 銀の骨(1995)
04. Pleasure Pleasure(2009)
05. Smash the Rock(2009)
06. 強いハート(1996)
07. すべてはこの夜に(1984)
08. 勝手にしやがれ(1977)
09. 明星 -VENUS-(1987)
10. 我が窮状(2008)
11. 届かない花々(2004)
12. (Instrumental)
13. そのキスが欲しい(1993)
14. 単純な永遠(1990)
15. いくつかの場面(1975)
16. 時の過ぎゆくままに(1975)
17. 僕は歌うよ(2009)
18. 睡蓮(2003)
19. BAMBINO EXCUSE(2009)
20. NAPOLITAIN(2009)
21. 緑色のkiss kiss kiss(2009)
22. あなたに今夜はワインをふりかけ(1977)
23. さよならを待たせて(1995)
-encore-
24. KI・MA・GU・RE(1989)
25. 探偵~哀しきチェイサー(1978)
26. いい風よ吹け(1999)
27. TOKIO(1980)


 尚、沢田研二に関しては、いずれ山口百恵との抱き合わせ企画でまとまったエントリーを書きたい。



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