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宮崎と茨城



私は宮崎に住んでいるのですが、近々茨城に行こうと思っています。
しかし、飛行機など全くわからないもので…
茨城には茨城空港があるんですよね?
茨城空港着の飛行機で行けばいいんですか?




 「茨城」は、黒人ジャズ・トロンボーン奏者、コーリー・キングの1stソロ・アルバム『Lashes』(2016)に収録されています。しかし、奇妙なことに、コーリー・キングは茨城出身ではなく、テキサス州ヒューストンの出身です。また、その歌詞を読んでも、曲名が“茨城”である理由はさっぱり分かりません(恐らく茨城に対して何か特別な思いがあるのでしょう)。

 更には、コーリー・キングはトロンボーン奏者であるにもかかわらず、この曲でもアルバムでも、一切トロンボーンを吹いていません。代わりに歌っているのですが、ジャズ・ヴォーカル作ではなく、音は完全にインディー・ロックです。『Lashes』を聴いたら、誰も彼のことをジャズ・ミュージシャンだとは思わないでしょう。聞くところによれば、彼はトム・ヨーク(レディオヘッド、アトムズ・フォー・ピース)やブライアン・イーノが好きなのだそうです。『Lashes』の類似作品として、エスペランザ・スポルディングがロック界の巨匠トニー・ヴィスコンティと組んだ『Emily's D+Evolution』(2016)が挙げられますが、実はそこにもコーリー・キングが『Lashes』の参加ミュージシャンと共に絡んでいたりします。

 最近はジャズ畑の人間が別ジャンルの音楽をやるのが流行ってますよね。もしジャズ・ミュージシャンだと知らされずに、単純に音だけ聴かされたら面白いと思うか、と言うと、ちょっと微妙かもしれませんが……音楽界全体の活性化にも繋がりますし、これはこれで良いのではないでしょうか?




 次に「宮崎」ですが、これはロサンゼルスの新進R&B歌手、ガラントのデビュー・アルバム『Ology』(2016)に収録されています。ビートがいい感じでディラってるネオ・ソウル感覚のメロウ&スムーズな美曲です。驚いたことに、途中でグルーヴ・セオリー「Tell Me」(1995)のサビ“Tell me if you want me to〜”が引用されます。エル・ヴァーナーに半分「Tell Me」のパクリのような「Only Wanna Give It To You」(2011)という曲がありましたが、ガラントは、誰にもはっきりそれと分かる形で「Tell Me」のサビを自分の曲中に巧みに織り込んでいます。文字通りの引用、あるいはオマージュと言えるでしょう(アルバムにもきちんと「Tell Me」のクレジットが入っています)。

 タイトルの“宮崎”は、実は地名ではなく、人名です。ガラントは宮崎駿の大ファンで、インタヴューでも彼について熱く語っています。

「僕はずっと日本の文化やアニメが大好きでね。大学ではずっと日本語を履修して、ペラペラになれるよう勉強してた。宮崎は素晴らしい監督だし、僕の最愛の長編アニメ映画のいくつかは彼やそのスタジオの作品だよ。とにかく彼の映画が大好きなんだ」(2016, The Music Ninja)

 この発言から“宮崎”という曲名が宮崎駿を指すことは分かりますが、しかし、歌詞に宮崎駿との明確な接点は何ひとつ見つかりません。何の関係もない曲に“宮崎”というタイトルを付けてしまうところに、宮崎駿に対する彼の並々ならぬ愛情が感じられます。

 '15年に「Open Up」という曲を耳にしたとき、私はガラントのことを単なるザ・ウィークエンドのフォロワーだと思い、大して興味を持ちませんでした。ところが、どうでしょう。「宮崎」に惹かれてアルバムを聴いてみると、素晴らしいではありませんか。確かにザ・ウィークエンドっぽい曲もありますし、'80〜'90年代のポップス/R&Bテイストを浮遊感のあるアンビエント的な音像で処理している点は同じですが、ヴォーカルにはよりオーセンティックでスピリチュアルなソウル感覚があります。トレードマークにもなっている透き通った官能的なファルセットを聴いて、ガラントは“新世代のマックスウェル”だと確信しました。シールを敬愛し、共演(←素晴らしい!)まで果たしているのも納得ですね。

 「宮崎」の他には、デヴ・ハインズがマックスウェルをプロデュースしたような80s調の「Episode」、シールと似たUK感が漂う「Percogesic」、マックスウェル顔負けの狂おしいファルセットを聴かせる「Jupiter」、ジェネイ・アイコと歌うレイドバックした'70年代ソウル風のミディアムスロー「Skipping Stones」(エイドリアン・ヤング制作)あたりが特に気に入りました。『Ology』は後半のディープな流れが良いですね。隠しトラックで入っているシングル曲「Weight In Gold」のリミックスも素晴らしい。メルボルンの美少年歌手、トレ・サミュエルズとセットでお薦めしたい新人ユル&Bアーティストです。個人的にはザ・ウィークエンドよりも良いと思うのですが、いかがでしょうか?


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GALLANT - album OLOGY released 6 April 2016
COREY KING - album LASHES released 9 September 2016



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