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Vicki Anderson──昨日



 ジェイムズ・ブラウン、マイケル・ジャクソン、そして、プリンス。この10年で3人ともいなくなってしまった。

 '16年12月25日の今日は、彼らを偲んで「Yesterday」という曲の歌詞を和訳したい。誰でも知っているビートルズのあれだが、私が皆さんに聴いてほしいのは、かつてジェイムズ・ブラウン・レヴューの歌姫だったヴィッキー・アンダーソンが歌うヴァージョンである。

 '71年3月、パリ、オランピア劇場で行われたジェイムズ・ブラウンのショウで、彼女は中盤に登場してこの曲を歌う。そのショウのライヴ映像で彼女のヴァージョンに触れたとき、学校の音楽の教科書にも載っていた「Yesterday」という有名曲に、私は生まれて初めて感銘を受けた。聴き慣れたビートルズ版とはまるで違う。作曲家が歌う歌と、歌手が歌う歌はこうも違うのかと思った。もちろん、ポール・マッカートニーは作曲家であると同時に優れた歌手でもあるし、音楽ファンとして私は彼のことを心から尊敬している。しかし、ヴィッキー・アンダーソンの歌唱は、ポールの書いたメロディ以上に感情の起伏を生々しく細やかに表現し、この曲を更なる高みへ押し上げていた。彼女の歌う「Yesterday」を聴くと、私は涙が出そうになる。

 「Yesterday」(1965)は、恋人を失った人間の歌である。幸福だった過ぎし日“昨日”に想いを馳せる感傷的な歌詞は、前年に発表されたトニー・ベネットの「When Joanna Loved Me」を彷彿させる。失恋の歌ではあるが、失われた過去に対する眼差しは、恋愛というテーマに関係なく、多くの人の共感を誘うものだろう。ヴィッキーの歌うこの歌が、音楽ファンの私の心に今、深く沁み入る。あなたは昨日を信じますか?




 Yesterday
 (Lennon/McCartney)
 
 昨日は悩みなど無縁に思えた
 今は心も晴れそうにない
 信じるのは昨日
 
 急に別人になってしまった私
 心には暗い雲が立ちこめる
 昨日は突然訪れた
 
 なぜ彼は去ったのか どうして 何も言わずに
 私の言葉がいけなかった 今では懐かしい昨日
 
 昨日 恋はただ楽しい遊びだった
 今はどこかに閉じこもりたい
 信じるのは昨日
 
 なぜ彼は去ったのか どうして 何も言わずに
 私の言葉がいけなかった 今では懐かしい昨日
 
 昨日 恋はただ楽しい遊びだった
 今はどこかに閉じこもりたい
 信じるのは昨日
 
 信じるのは昨日
 信じるのは昨日
 あなたは昨日を信じる?



DO YOU BELIEVE IN YESTERDAY?──蘇る“昨日”のあれこれ

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James Brown - Love Power Peace (2014)
ジェームス・ブラウン ライヴ・イン・パリ'71 完全盤

 '71年3月8日、パリ、オランピア劇場でのJBのライヴ盤。アメリカの再発レーベル、Sundazedから'14年にLP発売されていた『Love Power Peace』(1992)の完全版が、'16年11月、遂にCD化された。ヴィッキーの「Yersterday」はここで聴ける。同時期に同会場で撮影された映像版(ブートレグとして昔から有名なJBの最強ライヴ映像。『Love Power Peace』音源とは別公演)はいつになったら公式発売されるのか。尚、『Love Power Peace』完全版とあわせてCD化された'72年9月のライヴ盤『Get Down With James Brown: Live At The Apollo Volume IV』も素晴らしい。家宝がまた増えた。


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Come Together: Black America Sings Lennon & McCartney (2011)

 イギリスの再発レーベル、Aceから'11年に発売された『Come Together〜』は、'60〜'70年代の米黒人アーティストたちによるレノン/マッカートニー楽曲のカヴァー版を集めた好編集盤(モーメンツの「Rocky Raccoon」がヤバい!)。ここには、'72年に27歳で夭折した歌姫、リンダ・ジョーンズ版の「Yesterday」(1968)が収録されている。ヴィッキー・アンダーソン版に近いコテコテの熱血ソウル解釈(ヴィッキーも参考にした?)は、編集盤の趣旨によく合っているとは思うが、明らかにやり過ぎ、歌い過ぎである。聴き較べると、ヴィッキーの歌唱の繊細さがよく分かる。

 ちなみに、『Come Together〜』の好評を受けて、'16年9月には同編集盤の続編『Let It Be: Black America Sings Lennon, McCartney and Harrison』も発売された(スティーヴィー・ワンダーによる「We Can Work It Out」のオリジナル超えカヴァーがどちらにも未収録なのはなぜだろう。第二集には'69年のディオンヌ・ワーウィック版が収録された)。Aceは“Black America Sings〜”をシリーズ化しており、ビートルズ集の他に、アメリカの黒人アーティストたちが歌うボブ・ディラン集、バカラック/デヴィッド集、オーティス・レディング集、サム・クック集も出ている。ローリング・ストーンズ集もお願いしたいところ。


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En Vogue - Funky Divas (1992)

 「Yesterday」のカヴァーでソウル/R&Bファンが真っ先に思い出すのは、『Funky Divas』収録のアン・ヴォーグ版ではないだろうか。アカペラで始まるストレートなヒップホップ・ソウル解釈。上を向いて歩くような爽やかなビタースウィート感が最高だ。

 その他、一体いくつあるか分からない「Yesterday」カヴァーの中で個人的に割と好きなのは、『That's The Way Love Is』(1970)収録のマーヴィン・ゲイ版。レイドバックした編曲も味があるし(甘ったるいストリングスが余計)、何より曲のナイーヴな雰囲気が彼の個性とバッチリ合っている。そして、当たり前だが、死ぬほど歌がうまい。モータウン勢によるカヴァーでは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズによる『Special Occasion』(1968)収録のしっとりとしたスウィート・ソウル解釈も秀逸だ。


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Kadhja Bonet - Yesterday (2015)

 ロサンゼルスの新進女性シンガー・ソングライター、カジャ・ボネイが、'15年9月にBandcampで「Yesterday」のカヴァーを発表している。哀切なヴィッキー・アンダーソン版とは正反対の、柔和で甘美なソフト・ロック調カヴァー。歌詞も原曲通りで、オリジナルのビートルズ版を愛する人にはこちらの方が親しみやすいだろう。

 自称“1784年生まれ”のカジャ・ボネイ(できれば“カデャ・ボネイ”と書きたい)は、ロバータ・フラックをエイドリアン・ヤングがプロデュースしたような'70年代風アシッド・フォーク・ソウルを聴かせる女性。端麗な容姿、ノスタルジックなサウンド・センス、制作にイタイ・シャピラ(ライ、デコーダーズ)が関与している点などから、マラ・ルビーを連想させたりもする(マラが'40〜'50年代から'70年代初頭にタイムスリップした感じ)。彼女は'16年10月にデビュー・アルバム『The Visitor』を発表した。



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