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Buikaの新作『Para Mí』を聴く


PARA MI
Digital: Warner Music Spain, 12 May 2017

Ni Contigo Ni Sin Ti / Dios De La Nada / Para Mí / Pizzica Di Torchiarollo / Hijos De La Luna

Produced by Concha Buika


 3月の来日公演が最高だったブイカ。あれから2ヶ月経った'17年5月12日、『Vivir Sin Miedo』(2015)に続く彼女の新作『Para Mí』が配信リリースされた。彼女のキャリアでは初となるEP。来日公演の感動を思い出させてくれる嬉しい作品だ。


 EP『Para Mí』はカヴァー3曲を含む全5曲入り。このうち、表題曲を除く4曲が先日の来日公演(私が観たブルーノート東京公演の2ndショウで披露されていたものだ。ギター、カホン、エレキ・ベース、トロンボーンによるシンプルなアコースティック・サウンドも来日公演の印象とほぼ同じ。詳しいクレジットがないので分からないが、バンドは来日メンバーと同じではないだろうか。ポップ畑のマーティン・テレフェをプロデューサーに迎えてきちんと音を作り込んだ前作『Vivir Sin Miedo』とは打って変わり、キャリア初の単独セルフ・プロデュース作である今作は、バンドの生演奏を主体にした非常にあっさりした作り。EPということもあるのだろう、気負いは全く感じられず、良い意味で力が抜けている。

 先行シングルとして4月28日に発売された「Ni Contigo Ni Sin Ti」は、フラメンコ・ポップ歌手のマンサニータの'80年発表曲(アルバム『Espiritu Sin Nombre』に収録。正式な原題は「Ni Contigo Ni Sintigui」)、「Dios De La Nada」はカマロン・デ・ラ・イスラの'84年発表曲(アルバム『Viviré』に収録)のカヴァー。いずれもオリジナル版に近い素直な解釈で、ブイカの素地であるフラメンコ色がよく出ている。

 現在のブイカの世界ツアー名にもなっている表題曲「Para Mí」──英語で“For me”の意味──は、しっとりとしたスロー・バラード。ブイカのスペイン語歌唱に応じるように、中盤で男性歌手の英語歌唱が入る。ブイカらしい深い情味に溢れた曲だ。

 「Pizzica Di Torchiarollo(トルキアローロのピチカ)」は、イタリアのサレント地方の町、トルキアローロに伝わるピチカという民謡を取り上げたもの。ブイカはこれをルンバ・フラメンカ調にアレンジし、見事に自分のレパートリーにした(正しい綴りは“Torchiarolo”のはずだが、ブイカ版の曲名表記は“l”がひとつ多い)。エンツァ・パリアーラというイタリアの女性フォーク歌手が'09年に発表したヴァージョンと聴き較べると、ブイカの解釈の上手さがよく分かる。この曲は来日公演でも観客の受けが非常に良かった。素晴らしい選曲と編曲。サビ部分に加えられたブイカの多重録音ヴォーカルが独特の無国籍的な民謡風情を漂わせる。

 異色なのは、最後の「Hijos De La Luna(月の子供たち)」。前作のレゲエ路線を引き継いだこの曲は、来日公演ではフラメンコ・ギターが活躍する風変わりなサウンドだったが、スタジオ版は割とオーセンティックなルーツ・レゲエ風の音作り。これはこれでパワフルで良いが、個人的には、いかにも“スパニッシュ・レゲエ”といった妙味のあるライヴ演奏の方が好きだった。とはいえ、多重録音によるブイカの分厚いヴォーカルは迫力満点。ブイカとレゲエの相性はやはり抜群である。ちなみに、来日公演ではもう1曲、「Tiger Eyes」という強烈なレゲエ曲が披露されていたが、そちらは今作には未収録。次回作に回されたのだろうか?

 これまでのジャズやアフロキューバン色は後退し、『Para Mí』は、ブイカのキャリアで最もストレートにフラメンコ色が出た作品になった。彼女の素顔に最も近い作品と言ってもいいかもしれない。全5曲、僅か20分の簡素な内容だが、聴くほどに味わい深い。これを聴いていると、またライヴが観たくなってくる。毎月来日してくれー!


追記('17年5月22日):



 この記事を書いた翌日の5月19日、「Ni Contigo Ni Sin Ti」の録音風景をフィーチャーした『Para Mí』のプロモ動画「Para mí (Official video spot)」がブイカの公式YouTubeチャンネルにアップされた。そのクレジットによると、「Ni Contigo Ni Sin Ti」の録音メンバーは以下の通り。

Buika (vocals), Jesus De Rosario (guitar), Ramón Porrina (cajón, percussion), "Piraña" Porrina (cajón, percussion), Josue Ronkio (bass), Genara Cortés (backing vocals)

 来日時と同じメンバーに、ヘナラ・コルテスという女性フラメンコ歌手──ブイカ、ヤスミン・レヴィ他、地中海周辺の女性歌手たちをフィーチャーしたハビエル・リモンの名作『Mujeres De Agua(水の女性たち)』(2010)にも参加していた──がバック・ヴォーカルで加わっている(トロンボーンは同じく来日メンバーのサンティアゴ・カニャダ Santiago Cañada だろう)。

 『Para Mí』は3月の来日以前に録音済みだったようだ。スタジオ内(プロモ動画参照)でブイカが左手の中指にはめている大きな指輪は、3月4日のブルーノート東京公演(2ndショウ)の際、最前列に座っていた年配の日本人女性客にプレゼントされた。




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