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Benjamin Clementineの放浪の旅



 新作『I Tell A Fly』('17年9月15日発売予定)を引っ提げ、6月10日にパリから始まったベンジャミン・クレメンタインの〈The Wandering Tour〉がスゴいことになっている。7月8日に彼がバルセロナの音楽フェス〈Cruïlla〉に出演したときの最新映像をYouTubeで見てぶっ飛んだ。怪人? 怪物? エイリアン? イギリスからフランス経由で現れた裸足の吟遊詩人は、今、とてつもない何かに姿を変えつつある。


 今回の“放浪”ツアーのショウは、前半で新作『I Tell A Fly』収録曲、後半で1st『At Least For Now』の代表曲を中心に聴かせる構成のようだ。バンドは、ベンジャミン・クレメンタイン(ヴォーカル/ピアノ)に、ベース、ドラム、キーボード、女性バック・ヴォーカル×5(!)を加えた9人編成。楽器担当の3人は青いつなぎ、ステージ後方にずらりと並ぶ女性バック・ヴォーカル5人は白いつなぎを着ている(ちょっとダウン・タウン・ブギウギ・バンドっぽい)。これまではベンジャミンも青いつなぎを着ていたが、7月8日のバルセロナ公演では、彼だけフリル付きの白シャツ+黒パンツというグラマラスな衣装に変わっている。

 YouTubeに7月8日バルセロナ公演のオーディエンス撮り映像(約42分)が投稿されている。撮影されたのは6曲。どれもスゴい。オペラチックな女性バック・ヴォーカル隊を従えた演奏の奇抜さに加え、「Phantom Of Aleppoville」(この曲から撮影位置が変わる)以下の4曲は、リフレインを延々と引っ張る終盤の曲展開が圧巻だ。



00:00 - By The Ports Of Europe
03:42 - God Save The Jungle
06:57 - Phantom Of Aleppoville
15:30 - Condolence
26:34 - Cornerstone
34:02 - London

 今回のツアーでベンジャミンは頻繁にピアノを離れ、積極的にステージを動き回っている。「Condolence」終盤のリフレイン──“I'm sending my condolence to fear / I'm sending my condolence to insecurities”──では観客に合唱を促すが、11分に及ぶバルセロナ公演のパフォーマンスでは、合唱させるだけでなく、歌詞に合わせて観客たちをしゃがませたり立ち上がらせたりしているのが面白いより良いアングルと最高のカメラワークで撮影された神動画あり。7月6日のスロバキア公演の映像も良い)。孤独を“我が家”と呼ぶ傑作デビュー曲「Cornerstone」は、陽が落ちかけた屋外会場の雰囲気とも相まって素晴らしい情趣を感じさせるより良いアングルの動画あり)。最後の「London」では、サビのフレーズ──“When my preferred ways are not happening, I won't underestimate(なかなか道は開けなくても、へこたれるもんか)”──を原曲とは全く違うゴスペル調の節に乗せて延々と繰り返し、客席にも下りる熱演で不思議な祝祭空間を生み出している(どういう流れでこのリフレインに繋がるのか、YouTubeの断片映像からはよく分からないが)。必ずしも彼のファンとは限らないフェス会場の人々を、独自の世界に見事に引き込んでいるのが分かる。

Sending_my_condolence.jpg
to_fear.jpg
観客を巻き込んだ「Condolence」の楽しいパフォーマンス(これは笑える)

 “スクリーミン・ジェイ・ホーキンスとニーナ・シモンの私生児”というのがこれまでの私の基本的なベンジャミン・クレメンタイン観だったが、今回のツアーの彼の様子を見ると、リトル・リチャードと初期デヴィッド・ボウイ(『The Man Who Sold The World』〜『Hunky Dory』あたり)のハイブリッドのような印象も受ける。彼の佇まいはそれくらいビザールで妖しく、同時に強烈なカリスマ性を感じさせる。キャラや音楽性は異なるが、この妖気は、駆け出しの頃のプリンスにも通じるものがあると思う。それまでの常識とは相容れない異質な表現が大衆に受容されていく様子を、このオーディエンス撮り動画ははっきりと捉えている。

 あまりに規格外すぎて語りにくいのか、それとも単純に言葉の壁のせいなのか、日本でベンジャミン・クレメンタインは悲しくなるほど話題にされていないが、遅かれ早かれ日本の音楽ファンも気付くだろう。50年後の人々は、彼のことを間違いなく“伝説”と呼んでいる。“歴史は今日作られる(History will be made today)”──彼の顔に大きくそう書いてあるのが、あなたには見えないか?



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