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シャーデー新PV「Soldier Of Love」公開

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 '10年1月11日、Amazon.comでシャーデーの新曲「Soldier Of Love」のヴィデオが初公開された。監督は「Love Is Stronger Than Pride」(1988)以来のシャーデーの盟友、ソフィ・ミュラー。私が今回の新譜で最も楽しみにしていたもののひとつが、このヴィデオ作品だったのだが……これは、期待に応えて余りある驚きの作品である。


 舞台は、暗雲が垂れこめるアメリカ西部の荒野(“wild wild west”)。屋外ロケではなく、スタジオ撮影されたもので、色使いと併せ、10年前のヴィデオ「By Your Side」の人工的でシュールな自然風景を思い出させる。“愛の戦士”に扮したシャーデー・アデュ(ナウシカ風?)が、大勢の戦士たちと共に登場する。アデュが髪を振り乱して白馬に跨ったり、投げ縄を振り回したりする場面には、この曲が参照しているマカロニ・ウェスタンのイメージがダイレクトに反映されている。戦闘的で官能的なアデュの姿が実にカッコいい。

 西部劇モチーフで馬に乗ったアデュが登場するあたりは想定内だったが(ソフィ・ミュラーの起用と併せ、拍子抜けするくらい期待通りだ)、さすがに予測できなかったのは、この新作ヴィデオがシャーデー初の群舞ヴィデオになったことである。

 ヴィデオに登場する白黒混成の戦士たちは、ブラック・パンサー党を思わせる戦闘服に身を包み、指揮官アデュの前で軍隊風の群舞を披露する(アデュはダンサーの一人と組んで踊る場面はあるが、群舞には参加せず、こちらに背を向けて直立不動で部下が踊る様子を見守っている)。そして、ヴィデオの最後、戦士たちは俯いて右手の拳を高々と頭上に掲げる。'68年メキシコ・シティ五輪の表彰台上で、アメリカの黒人選手トミー・スミスとジョン・カルロス(200m走で金と銅)が、人種差別に抗議して行った“ブラックパワー・サリュート”の引用である。

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'68年メキシコ五輪──黒い手袋をはめて拳を掲げるスミスとカルロス

 シャーデーの新作ヴィデオで行われたこの無言のパフォーマンスが意味するものは、もちろんひとつしかないだろう。半年前に亡くなったマイケル・ジャクソンに対するトリビュートである。

 シャーデーのヴィデオで一体なぜ群舞なのか? このヴィデオの軍隊風の群舞は、マイケル「Jam」「They Don't Care About Us」などのステージ・パフォーマンスを彷彿とさせる。発煙筒を持って踊る男は、「Smooth Criminal」からの引用に見える。これらのダンス・パフォーマンスがマイケルに関する言及であることは疑いようのないことに思える。
 人種差別と闘い続け、その変革に莫大な貢献を果たしたマイケル・ジャクソン。彼もまた勇敢な“愛の戦士”だった。ここでシャーデーは黒人アーティストの一人として、同じ戦いを戦った偉大な先達であり、ある意味“戦没者”とも言える彼に対し、静かに深い敬意と追悼の意を表明している──そうでなくて、一体何だというのだろう?


 それにしても、シャーデーはこのブログの読者なのか、と思うくらい、完璧に我が意を得たヴィデオが届けられ、私はちょっと驚いている(アデュが20歳の時に観たジャクソンズの'79年ロンドン公演に関する先日の記事も併せてお読み頂きたい)。振付師は一体誰なのか(ラヴェル・スミスとかだったら泣くぞ)。このヴィデオに関しては追って詳しい情報も出てくると思う。改めて、当ブログの“Music Videos”のカテゴリーで取り上げたい。



追記('10年1月13日):
 当初、“ヴィデオには他のシャーデーのメンバー3人は登場せず”という記述をしていたが、junさんからメールでご指摘を頂いた。2回目のサビ部分で映る、巨大な布を棒に巻き付けて丸めている男たちが他のメンバーではないか、とのこと。早速もう一度観てみると……あああ、これは確かに。逆光でシルエットになっている上、現時点では低解像度版しか公開されていないので判りにくいが、アデュの後ろで“巨大な布丸め機”(名称不明)を動かしている男たちは3人いて、左から、ポール・デンマンアンドリュー・ヘイル(髪伸ばした?)、スチュアート・マシューマンに見える。間違いないだろう。
 しかし、地味な出演だ。群舞のダンサーの中にデンマンあたりが紛れていたら面白いな、などと私は思っていたのだが……。ご指摘ありがとうございました。


追記2('10年1月14日):
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 ブラックパワー・サリュートの直前に挿入されるアデュのこの最後のカット。彼女は真上に向けて銃を撃つジェスチャーをする。とても印象的なカットで、最初に観た時から気になっていたのだが……ようやく読めた。このジェスチャーは、軍人などの葬儀の際、空に向けて一斉に空砲を撃つ“弔銃”を模しているのではないか。
 ここでは誰かが弔われている。そして、彼女の合図に続いて行われるブラックパワー・サリュートは、死者が黒人であることを示すだろう。やはり、これはマイケルの葬儀だ。


追記3('10年1月30日):
 新譜のEPK映像(シャーデー公式サイトで公開中)で、「Soldier Of Love」ヴィデオの振付師がファティマ・ロビンソン Fatima Robinson であったことが判明した。かつてマイケルの名作ヴィデオ「Remember The Time」(1992)を手掛けた女性振付師である。

| Sade News | 03:36 | TOP↑

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